無惨「頭を垂れて蹲え 平伏せよ」
概要
鬼舞辻無惨が選別した直属の配下で、“最強”の十二体の鬼。
鬼の素養にも優劣があり、優れた者はより多くの人間を喰らう事ができる(鬼は身体の維持の為に最低限の人喰いが必要だが、素養の無いものは短期間に一定量以上の人数を喰らおうとしても身体が受け付けなくなってくる)。
これらの鬼はより多くの人喰いをする事によって力を増すだけではなく、無惨からさらなる血を授けられる事によって急速に力を増す。
中でも十二鬼月に選ばれる鬼達は数百人の単位で人を喰らうだけの素養があり、さらに無惨から多くの血を分け与えられて強化された結果、その力は通常の鬼殺隊士では文字通り『歯が立たない』領域に達している。
鬼は潜在的に強さへの渇望と、無惨への忠誠を刷り込まれている他、十二鬼月となった者にはある程度の自由裁量(群れを作るなど)が許される事から、十二鬼月に選別される事を至上の名誉としている。
しかし、最高幹部などと言えば聞こえは良いが、本質的には無惨が自らの姿や能力を鬼殺隊士の目に晒す事無く、鬼殺隊を壊滅させる為に選出された十二体の手駒というだけに過ぎない。
実際にその起源も、戦国の時代に現れた始まりの呼吸の剣士達に対抗して、無惨が自身の代わりに戦わせる強力な鬼を求めたのが始まりである(これにはかつて無惨自身が始まりの呼吸の剣士に挑んだ結果、殺されかける寸前までいったというトラウマも影響している)。
ちなみにその当時のメンバーは黒死牟しか登場していないが(なお彼はこの当時から“上弦の壱”である)、その後は江戸時代の頃に定員が十二体に増枠されて現在の十二鬼月となった。その為、鬼殺隊や“柱”と比べると意外にもその歴史自体は浅い。
加えて完全な実力主義の為に、選別された後も更なる力の鬼が現れる・素養を無惨に見限られた場合は容赦なくその席位を剥奪されて、無惨の機嫌次第では問答無用で処刑される事もある。
彼等十二鬼月は、内部でさらに“上弦”の六鬼と“下弦”の六鬼に分かれており、最強たる主席は“上弦の壱”、最弱である末席は“下弦の陸”となる。 十二鬼月に選別された鬼はその目に証となる席位を刻まれるが、上弦が両目に刻まれる(例:右目に“上弦”・左目に“参”)のに対して、下弦は片目のみに刻まれる(例:左目に“下伍”)等、両者はハッキリとした差別化がされている。
数字の昇格及び降格は無惨によって定められている。しかし例外として、下位の鬼が上位の鬼に対して“入れ替わりの血戦”と呼ばれる一対一の勝負を申し出て、勝利した場合は無惨の許可の下で敗北した鬼を殺して吸収する事で自己をさらに強化し、その上で自身の階級を上位のものに置換する事が可能である。
特に上弦以降の昇格は全てこれで決定されるが故に、席位は一切の疑いを挟む余地すらない実力順となっている(作中で昇進した事が明確なのは童磨のみだが、童磨に敗れた当時の上弦の弐が猗窩座であるのか、それとも他の鬼だったのかは不明である)。
よって上弦と下弦では実力に天地程の差があり、同じ十二鬼月でも下弦の鬼達は上弦の鬼達に見下され蔑まれている。
また、上弦の鬼のみが鬼への勧誘が認められている(これは上弦の鬼が無惨の血が最も濃い為に、人間を鬼に変えやすいという理由もある)など、上弦の鬼は複数の特権を有しており、そこでも上弦と下弦では明確に待遇に大きな差がつけられている(ただし、鬼を集めて家族と称して独自の集団を支配する事を許されていた累や、実力は弱かったものの向上意欲の高さから処刑まではされずに席位剥奪だけで済んだ響凱などの例外もおり、結局鬼の待遇は無惨に気に入られるかどうかで決まる)。
また、鬼の同族嫌悪という性質もあるのだが、構成員同士は基本的には互いに階級を巡って争うライバルでしかない為に、同じ十二鬼月の構成員同士の関係は非常に悪い。というより最早半敵対関係とすら言える程に、互いに非常に殺伐とした関係となっている。
そもそも無惨の命が無い時は、一部例外を除いてそれぞれが好き勝手にそれぞれの場所でバラバラで行動しており(無惨の命があっても互いに協力したり連携したりする事はほぼ無い)、基本的には互いに集まったり関わったりする事もないので、構成員同士の横の繋がり自体も非常に希薄であり、一つの集団や部隊としては殆ど機能していない。
その要たる柱の討伐も十二鬼月の主要任務の反面、鬼殺隊士が柱になる為の条件の一つに十二鬼月の討伐経験が挙げられており、その化け物じみた強さ故に百年以上顔ぶれが変わっていない上弦に対して、下弦は正直な所「頑張れば倒せる」くらいの実力しか持たず、上記の通り無惨の機嫌次第で降格や処刑される事もある為に、構成員の入れ替わりが激しい。
そして那田蜘蛛山編後に、とうとうしびれを切らした無惨によって、下弦の枠が正式に解体された事で、十二鬼月の定員は上弦の六体のみとなった。その為、これ以降は鬼側では「十二鬼月」という名称は殆ど使われなくなり、単に「上弦」と呼ばれるようになった。
公式ファンブックの大正コソコソ噂話によると、十二鬼月の名前は無惨が名づけているとの事。加えて無惨はより強い鬼が欲しい為に、今まで上弦になれた鬼達と類似した体質や血質の人間をピンポイントで狙って鬼にしているとの事で、彼の最終目的である日光を克服した鬼を生み出す選定基準も上弦である。
上弦
上弦の壱 黒死牟
CV:置鮎龍太郎
黒い長髪を束ねた剣士姿の鬼。
六つの目を持つ異形の貌を有し、額と頬には炎を思わせる痣が浮かんでいる。冷静沈着かつ理知的な性格で、同族嫌悪を刷り込む呪いの下にあってなお、徹底した上下関係と秩序を重んじる。
全集中の呼吸と血鬼術を統一させた強力な闘技を操り、四百年以上主座に君臨し続ける最強の鬼にして最強の剣士。
上弦の弐 童磨
CV:宮野真守
虹色の瞳に血を被ったような白橡色の髪を持つ、整った容姿の青年鬼。
猗窩座より後に鬼となり初登場時には上弦の陸だったが、その才により短期間で現在の地位にまで上り詰めている。万世極楽教という新興宗教の教祖をしており、そこの信者達(特に女性)を食べる事を救済としている。
猗窩座の攻撃さえものともせず、優れた身体能力に加えて強力な氷の血鬼術を得意とし、鋭い対の扇を武器とする。十二鬼月の次席に相応しい実力を有している。
上弦の参 猗窩座
CV:石田彰
全身に入れ墨が入った赤い短髪の鬼。
百年以上も上弦の座を不動のものとし、鬼殺隊最高位の剣士である柱も幾人も葬っている。
“破壊殺”という血鬼術を用いて、鍛え抜かれた身体能力のあらゆる機能を純粋に強化して戦う。自らを「武の道を極める者」と称して策を弄さず真正面から鬼殺隊士と戦い、実力を認めた隊士は鬼としての「無限の修練」に誘おうとする。強者との闘いを好む徹底した武闘派であり、それゆえに残虐性も強い。
その一方で、それとは対照的に「弱者」の事は過剰なまでに忌み嫌っている。
ただし女ばかり選り好みする童磨とは逆に、女を食べないどころか手出しすらしたがらないという奇癖を持っている。
上弦の肆 半天狗
CV:古川登志夫
分身体は
般若のような風貌をした老人の姿の鬼。頭の2本角や醜い顔等最も鬼らしい外見をしている。
一見常に何かに怯えている小心者で十二鬼月の面子も何も無いがその本質は純然たる外道。人であった頃より全てを他者に擦り付け、逃げ続けた挙げ句に人の道を外れた鬼。
頚を斬られ追い込まれる度、分裂して若返った“分身体”を生み出す凶悪な血鬼術を使用する。
分身体には舌に喜怒哀楽の文字が刻まれておりそれぞれが独自の強力さを持つ為、隊士一人では柱クラスですら物理的に討伐困難な強さを誇る。
分身体にも全員目に「上弦」「肆」の文字が刻まれ、上弦の肆にふさわしい高い戦闘力を持つ。
上弦の伍 玉壺
CV:鳥海浩輔
壺の中から煙の如く罷り出る人外の容姿をした鬼。その姿は両目に“口”が、口と額に“眼球”が存在するという、怪異じみた姿である。 人間時代から『芸術家』としての一面を持ち、彼の壺は高く売れる事から無惨に気に入られている。しかし、その本性は自分が殺した人間や生き物を改造して飾り付けて、それを芸術作品と称して披露する猟奇殺人鬼である。ちなみにこれは人間だった頃から変わっていない。
壺を使った空間転移を得意とし、それを利用した情報収集や探知探索に長ける。
また、頸を無惨に切断されても死なない、柱をも1人で封殺しかける等、上弦の伍の位に相応しい実力を持つ。
人間時代は兄妹で、“呪い”の制約下でも共生して活動している二身一体の鬼。遊郭を狩場としている。
上弦の鬼からの勧誘で鬼になったことが判明している例。
妹の堕姫は表の花魁。
艶やかな高級女郎としてとある遊女屋の日の当たらない部屋を拠点とし、見目麗しい女性などを好んで喰らう。時折起こす癇癪を除けば完全に人間の生活に溶け込み、目に適った遊女や丁稚を時折行方不明にさせている。帯状の武器を生み出して血鬼術を使用する。
兄の妓夫太郎は裏の身剥ぎ。
疑似餌の役目も担う堕姫に力と命を分け与えた上で、狩場の構築・維持を全任し、普段は彼女の帯内で眠って過ごしている“上弦の陸”の“本質”である。
堕姫単体に勝る剣士が現れた時のみ這い出して、最愛の妹を泣かせた落とし前を取り立てる。
優れた戦術眼を持ち、鎌と強力な毒の入った自身の血を血鬼術で自在に操る。
上弦(後任)
千年を経て欲する物を見つけた無惨が空席となった肆・陸へと据えた二鬼。ちなみに本来は補充要員である下弦を無惨が一掃してしまった影響もあって、人材不足で伍は不在のままである。
新・上弦の肆 鳴女
CV:井上麻里奈
琵琶を持った一つ目の鬼。血鬼術により無惨の根城「異空間無限城」を管轄する。
その能力は空間系最上位に位置しており、極めて高い希少性と有用性の為に、元々十二鬼月とは別に無惨から特別に重用されていた。そして戦死した半天狗に代わって上弦の肆の席を与えられる。
新・上弦の陸 獪岳
CV:細谷佳正
鬼になった元・鬼殺隊の剣士。黒く染まった白目に翡翠色の瞳と、頬に紋様といった風貌の青年鬼。戦死した堕姫と妓夫太郎に代わって上弦の陸の席を与えられた。 ただし、黒死牟によって最近鬼にされたばかりで鬼としては新人である為か、事実上はあくまでも人数合わせの為の補欠のような扱いであり、少なくとも作中の時点では上弦に相応しい実力があったとは言い難い。
“雷の呼吸”の使い手であり、相手の身体を崩壊させる血鬼術を組み合わせた強力な闘技を使用する。
下弦
下弦の壱 魘夢
CV:平川大輔
夢を操る血鬼術を行使する。夢の中は完全に彼が優位となる領域であり、柱ですら圧倒されうる力を有する。また、目を合わせた相手を瞬時に昏睡させる術も用いる。他人の絶望する顔を見るのが何よりも好きという異常な趣味嗜好を持った鬼である。
下弦の伍(累)の敗死を受け下弦の実力不足に立腹した無惨に処分される運命だったが、その醜悪な心根を気に入られ、特別に無惨から更なる血を分け与えられた上で、炭治郎と柱の抹殺を命じられる。
下弦の弐 轆轤
CV:楠大典
柱に挑む為に、無惨にさらなる血を分け与えてくれるよう懇願するが、懇願という行為を指図と解釈されて殺害された。
下弦の参 病葉
CV:保志総一朗
粛清から逃れようと無惨の前から全速力で逃亡するも、気付いた時には『上座から一歩も動いていない』無惨に頸を引き千切られており、そのまま死滅した。
CV:植田佳奈
己と柱との実力差を理解しており、柱と対峙した場合は逃亡を考えていた。
その思考を無惨に読まれて、必死に申し開きをしたが、自分の言う事を否定された事への不快感と、手駒として無意味という判断から無惨に喰われた。
下弦の伍 累
CV:内山昂輝
鋼の硬度を持つ糸を自在に編み張る血鬼術を用いる白髪の少年鬼。
十二鬼月の中では下位だが無惨に気に入られていた。那田蜘蛛山に根城を構え、他の鬼と共に「家族」を形成して活動していた。作中で最初に登場した現役の十二鬼月である。
下弦の陸 釜鵺
CV:KENN
累が敗れた事で、無惨から下弦の十二鬼月の実力不足を叱責された際に、「そんな事を俺たちに言われても」という心の声を読まれる。そのような思考が不遜とみなされて、無惨に喰われた。
下弦(前任)
元・下弦の陸 響凱
CV:諏訪部順一
体に複数の鼓を入れた異形の鬼。
炭治郎が出会った時点で、無惨から才覚を見限られ既に十二鬼月から降ろされていた。
十二鬼月への復籍を果たすべく、稀血の人間を喰らう事で力の強化を図っていたが、炭治郎に倒される。自分の縄張りである館の空間を鼓により自在に操る血鬼術を用いる。
元・下弦の壱 姑獲鳥
小説「風の道しるべ」にて登場。
特殊な香を焚いて、その香りを吸った者を幻術の中に閉じ込めるという血鬼術を使う。
「自分が幸せになる」為に大勢の子供をさらって自己満足の育児をしては衰弱させ、自分の中に還して幸せにするという理由で食していた。不死川実弥と粂野匡近の2人によって討伐された。
元・下弦の弐 佩狼
煉獄杏寿郎外伝にて登場。
黒いコートを羽織り、白目と黒目が反転した目をした男性の警官隊士の様な風貌の鬼であり、影の血鬼術と銃を用いた戦法を得意とし、他にも笛鬼と同様に影の魔犬を呼び出して操る事も可能である。
かつて自らのプライドを傷つけた「煉獄」への復讐を目論み、何年も力を蓄えて十二鬼月までのし上がった鬼であり、作中では煉獄への復讐の為に、東京の帝都中に時限爆弾を仕掛けて無差別攻撃を行う。