「俺を止められた奴はいねえ。俺が一番速い!」
CV:伊藤健太郎
概要
某鉄道沿線やその周囲の街で次々と人を襲い、「切り裂き魔」と呼ばれて世間を騒がせていた鬼。
白目が黒く染まった恐ろしい目をしている。
とにかく己の速度と韋駄天足に絶対の自信を持っている鬼であり、加速する血鬼術を使って凄まじい速さで走る事ができる。その他の攻撃手段として、鬼特有の鋭い爪で獲物を切り裂く。
※タイトル名の"音速"の鬼とは速いことの例えとして、音速という枕詞を使っている為、彼が実際に音速並の速さで走れると言う訳ではない。
人物像
性格はいかにも鬼らしい身勝手で残忍極まる卑劣漢で、好き嫌いが非常に激しいのが特徴。美味そうな人間は喰うが、口に合わない不味そうな人間は喰わずに爪で切り刻み、夜通し痛めつけて楽しむという残虐な趣味を持つ。実際に冒頭で襲われた車掌も殺されたものの喰われた様子はなかった為、鬼でありながら「切り裂き魔事件」として世間を騒がせていた。
また、鬼となった事で人間の食料に対してはかなりの嫌悪感を抱いており、作中では煉獄が持っていた弁当を「臭い」と言い捨てて踏み潰していた(鬼が人間の食べ物を受け付けなくなるのは原作通りの設定なのだが、ここまで露骨に嫌悪感を抱いているのは彼くらいであり、上記の好き嫌いの激しい性格が原因だと思われる)。
一方で、その好き嫌いの激しい性格が災いしてか、実際に喰った人間の数はそれ程多くはなかったらしい。本作の前日に女性を切り刻んだ事件では、煉獄達が駆け付ける前に退散したものの、それはあくまでただの偶然に過ぎず、煉獄達の接近を感知できていた訳ではなかった事を会話から煉獄に見抜かれている(そもそも直接煉獄と対峙しても煉獄が柱だと見抜けてはいなかった)。
これらの事からも、鬼としてはあくまで下位の鬼であるという事が分かる。ただし、既に血鬼術を発現していた為、鬼としての元々の素質は高かったと思われる(あるいは稀血などの鬼の味覚で美味に感じ、少人数で大幅な強化ができる人間を喰っていたのかもしれない)。
また、人を切り裂くのもあくまでその時の気分に応じた娯楽でしかない為、女性の件では途中で飽きたのか、結果的に女性は治療を進めれば将来的には傷跡も残らない程度の傷で済んでおり、はっきり言って無駄に痕跡を残すだけの非常に雑なものだった。他にも作中では煉獄を挑発する為だけに、無駄に能力を見せびらかすような事もするなど、お世辞にも頭が良いとも言えない。
血鬼術『加速』
全身の痣を青く光らせて、凄まじい速度で加速する能力。
弱点は一定時間しか加速できない事に加えて、全身の痣が光ってから加速が始まる為、加速に入るまでに一定のタイムラグがある点が挙げられる。ただし、軌道なども自由に変えられる上に、再加速までのインターバルも意外に短いので、単純な移動以上に逃走や回避に特化した能力であり、実際に人質を盾にしたとはいえ一度はあの煉獄から逃れるなど、彼が過信するのも無理からぬ能力だと言える。煉獄からも挑発とはいえ「逃げ足の速さは大したもの」と評されている。
また、何気に作中に登場した一般の鬼で、純粋に身体能力を強化する術を持つ鬼は珍しい。
作中での行動
40人もの乗客が失踪した事件を受けて運行中止になった事で、機関庫へ回送中だった無限列車の車掌を殺害。その後、運行再開にあたっての最終整備の為に整備工場へと運び込まれた無限列車にそのまま潜んでいたが、任務でやって来た煉獄杏寿郎の接近に気付いた事から姿を現し、咄嗟にタツ坊と呼ばれる若い作業員の少年を人質に取る。
少年の頬と胸に爪を立てて傷つけながら、彼を直接盾代わりにする事で流石の煉獄も迂闊に踏み込めないようにした上で、嘲笑いながら挑発するという卑劣極まりない戦法に出る。
さらに煉獄が持ってきた牛鍋弁当を嫌悪し、先に自身が傷つけた女性が鬼殺隊の保護下に置かれてもう手出しができないと知るや、煉獄に吠え面をかかせたいというだけの理由で、牛鍋弁当の作り主であるトミを殺害すると宣言。その前に人質として捕らえていた少年を殺そうとするも、一瞬の隙を突いて接近した煉獄に両腕を斬り落とされて少年を救出された為、彼が少年を助けて庇った隙に俊足で整備工場を脱出し、そのままトミのいる駅へと俊足を飛ばして向かう。
絶対に追いつける訳がないと高を括りながら、まずトミの孫のふくに手をかけようとしたころで煉獄が駆け付け、一瞬でふくを奪われ足の健を斬られる。
咄嗟に駅に逃げ込んだ為に、改めて標的を駅の中に残っていたトミに変更しようとするが、追いついた煉獄に再び阻まれる。移動可能な空間が限定されている駅の通路にまんまと追い込まれた事と、ここに至ってようやく煉獄の実力に気付き始めたのか、冷や汗をかいて焦りながら「試してみようじゃねえか、俺がこのババアの喉を切り裂くのが先か、お前が俺の頸を取るのが先か」と挑発をするも、煉獄に「試すには及ばない。お前は…遅い!」と返された次の瞬間には、炎の呼吸・壱ノ型「不知火」で頸を斬り飛ばされ、自分がいつ倒されたのかも認識できないまま消滅した。
無限列車を探っていた部下の鬼殺隊士は、彼が無限列車の連続失踪事件の犯人だと当初は認識していたのだが、実際に戦った煉獄はこの音速の鬼の実力と犠牲者の数が見合わない事や、無限列車に残っていた鬼の気配はもっと強大で不気味なものだった事から真犯人は別にいると判断し、その日の夜から運行が再開される無限列車に自らが乗車して調査を行う事を決める。
余談
同じく煉獄主役のエピソードで倒された笛鬼や呪雨鬼同様、鬼となった経緯や人間時代については描写されていないが、彼の服装や俊足から人間時代は飛脚だったのではと言われている。
また、鬼の痣に覆われた外見は後に登場する猗窩座にも似ており、猗窩座の場合は彼が人間時代に彫られた罪人としての入れ墨が鬼の痣と混じって全身に広がったものなので、同じように罪人だった可能性がある。
鬼になって日の浅い下級鬼である事を加味すると、人間だった頃の音速の鬼は郵便制度の発達や新たな輸送手段の登場で飛脚の仕事が減りつあある時代に生き、職を失い食うに困って罪を犯したと推測可能である。無限列車周辺に潜伏していた事も、人間時代に抱いていた鉄道業への恨みに起因するのかもしれない。
とはいえこの推察は彼に同情の余地がある事を示すよりは、『再就職の努力よりも犯罪行為を選ぶような短慮で、そのくせ我が身の不遇を鉄道のせいにして逆恨みする身勝手な人物』という悪い解釈に繋がる。(※飛脚は基本的に上述した新しい輸送業者で働くことが出来たし、あぶれた場合でも優れた肉体労働者として働き口には比較的恵まれていた)
そして作中における切り裂き魔の行為も、その場の気分で気に入らない者を襲う「身勝手」であり、後始末を考えない「短慮」である。下劣な性質ほど鬼化した後も引き継がれやすい事は上位の鬼達が示している通りであり、彼も人間時代からろくでなしだった可能性が高いだろう。
無限列車の中に潜んでいた事や、そこを中心にその周辺で活動していた事から、彼は無限列車の真犯人=魘夢に鬼殺隊を撹乱する為に、あえて泳がされていたのではないかと煉獄達は推測していたが、実際に上記の通り彼の行動はあまりにも短絡的で杜撰であり、本人もあまり頭が良いとは言えない事からも、魘夢の性格を考えても囮として体よく利用されていた可能性は高い。
また、基本的な鬼としては稀血の次に好物と言っても過言ではない女を食うことすらなくただ痛めつけるだけの行為しかしておらず、殺そうとしていた少年も食べるつもりすらなかったことで視聴者からは「オッサンとかが好みなの?」と思われ、見た目やその推測からあらぬ疑いをかけられた。
入れ墨姿に声、禿げた頭に素早さなど、鬼滅の刃より少し前の時代が舞台の作品に名を馳せた脱獄王を思わせる。
関連タグ
関連・類似項目
- 姉蜘蛛の姉、蟷螂鬼:同じくアニメオリジナルの鬼。
- 佩狼、笛鬼、呪雨鬼:同じく煉獄杏寿郎を主人公とした作品で彼に倒された鬼達。前者は柱になるきっかけとなった当時の下弦の弍。
- バータ:同じく速さが自慢だった敵の1人。こちらも相手に圧倒的な力の差を見せつけられ敗北した点も類似している。
- 通り魔(地獄先生ぬ~べ~):同じく「切り裂き魔」と呼ばれるジャンプ作品の怪物。鋭い爪で人々を襲撃する点も類似している。
- スラッシュ・ビストレオ:同じく列車よりも速い足を持つ実力者。