「呼ばれたのは百十三年振りじゃ 割り切れぬ数字…不吉な半 奇数!! 怖そろしい怖そろしい…」
プロフィール
※人間時代から犯罪を重ね過ぎた結果、保身のために名前を変え続けて逃げていたため、いつしか本人も本名を忘れてしまったらしい。
概説
鬼舞辻無惨配下の精鋭である十二鬼月にて「上弦の肆」に位列される鬼。
別名分裂鬼。
外見は半天狗という名前に反し、天狗らしい特徴が特になく、八十七歳くらいの「曲がりきった背筋に額に角と大きなコブを持つ小柄な鬼の老人」の姿はむしろぬらりひょんを彷彿とさせる。
ちなみにこのコブは人間時代(老年期)からあったため、鬼となって角が生えた以外はほとんどそのまんま(一応、目元の爛れたようなシワ?や真っ赤な目など鬼化による変異はしている)。
分身体の天狗っぽい服装の翼を持つ空喜や、羽団扇を武器にする可楽、錫杖を武器にする積怒、十文字槍を武器にする哀絶、それらが融合した憎珀天の瞳には上弦の印たる「上弦」「肆」が刻まれているが、本体は常に目を裏返した(白目を向いた)状態なので確認できない。死に際に目を見開いた姿をよく見ると刻まれていることがわかるが、妓夫太郎のようにかなり小さい。
服装は着流しだが、原作とアニメでは着物の柄が異なる。
原作は立涌花菱だが、アニメはシンプルな立涌文様。
本体・分身体に共通して、褐色肌とエルフ耳、スクエアネイルのような長い爪、
紫色に変色した額、2本の角を持つ。(全員角男子)
怯え鬼(本体・分身体)以外は、目の下もひび割れて紫色に変色している。
分身体の、喜怒哀楽鬼と憎珀天の身長は、公式には書かれていない。
だが、ufotableから刀鍛冶の里編のキャラクター絵巻カフェの開催が発表され、里編の登場人物のシルエットが描かれた時は
喜怒哀楽鬼は不死川兄弟と同じ位の身長で、憎珀天は炭治郎と同じ位の身長だった。
よって、喜怒哀楽鬼は180cm位、憎珀天は165cm位。
性格
老人口調だが、上弦としての威厳や威圧感、鬼の凶暴性は皆無で、非常に小心かつ卑屈。
上弦に連なる強い実力を持ちながら、常に涙を流して身をガタガタ震わせ、“些細な事柄にも”何かと理由をつけては「怖ろしい」「ヒィイイイ!」と怯えている。
加えて異常なほどの被害者意識の持ち主で、不都合な相手や状況は全て「自分を虐めている」のだと捻じ曲げて解釈し、逃げ切れず追い込まれれば虐められた報復と称して逆上し暴れまわる。
鬼になる前からこの有様だったようで、身勝手な理屈をつけた盗みや、逆恨みの報復殺人を常習的に繰り返していた。
本編でも自身を討伐しようとする柱はおろか鬼殺隊士相手にも『力のない弱い者(自分)をイジメる』と微塵も疑わず、悲鳴を上げながらおどおどと逃げ惑う姿には威厳も風格もまるで感じられない。
そんな気弱でネガティブ思考な一方で、幼少期から虚言癖があり重度の嘘つきで、それでいて用意周到かつ狡猾で抜け目がなく謀略に長けた面を持つ。
上弦の陸兄妹の敗死により、無限城に召集された際には、玉壺が猗窩座に「九十年ぶりでございますかな? もしや貴方がやられたのかと心が踊った…いえ、心配しておりました」とイヤミ混じりの挨拶をするや遠くから「恐ろしい恐ろしい、暫く会わぬ内に玉壺は数も数えられなくなっておる」と毒づき、「呼ばれたのは百十三年振りじゃ。割り切れぬ数字…不吉な丁 奇数!!怖ろしい怖ろしい…」と迷信深さを感じさせる独り言を呟いた後は、不機嫌な無惨の一挙手一投足に平身低頭していた。
※ちなみに奇数は半なので半天狗も数えられてない。単行本でも修正されなかったが、ノベライズ版やアニメでは「半」。
ただ、上弦でも格下な上陸兄妹が22人の柱を喰っている事からすると、それ以上の柱達を喰らった事が想像に難くない彼が「力のない弱者」であるはずがない。
『自分だけは危ない目に遭いたくない、責任を負いたくない』という彼の徹底した自己保身と他力本願の根本姿勢の歪みきった精神性には、炭治郎が怒りを露にして
「性根のねじ曲がった悪鬼」
と真っ向から糾弾。その頸を必ず斬ると決断した。
ただし、本体は自分の分身体が暴れ回るなか、「善良な弱者でこれほど可哀想なのに誰も同情してくれない」と怯えてひたすら逃げ回っている。
また、炭治郎に自分の罪を糾弾された際には怯えつつも「この儂に脅しだと?」とイラつきながら逆ギレしており、そもそも初登場時に玉壺を挑発するような発言をしたりと、根本の性格は積怒や憎珀天に近いものだったのかもしれない。
公式ファンブックで明かされた無惨の評価は『普通 たまにうざく感じるが許容範囲内』とのこと。
能力
血鬼術 『分裂能力』
「悪い奴らは喜怒哀楽が倒してくれる…」
高速再生能力と固有の血鬼術を持つ分身を生み出す血鬼術。それぞれ若い頃の自分を模した、
喜怒哀楽の文字を刻まれた舌を切れば再生速度が落ちるが、気休め程度にしかならず、頚を斬っても斬られた鬼を母体とした分身体がプラナリアのごとく分裂するだけなので絶対に倒せない(一応攻撃力は弱体化する)。
ナレーション曰く「追い込まれるほど強くなる鬼」。
さらに、
を生み出した。
そのカラクリは強いストレスにさらされた本体が、窮地に陥れば陥るほど、それぞれの感情に対応した凶悪無比な分身体を生み出すというもの。
本体を見つけださないかぎり、理不尽な多対一の消耗戦を強いるこの鬼の単独討伐は実質不可能。柱が2人以上居たとしても撃破は困難を極めるだろう。
ただし、本体から供給されるエネルギーは決して無限ではなく、頚を斬られても死なないとは言え血鬼術や再生に分裂体が力を使いすぎれば本体の消耗を招く。
そして分裂体も人格があるせいなのか、本体の都合もお構いなしに力を使うなど完全に制御できている訳ではない。無惨のように情報を常時共有する能力は無く、互いの状況を肉眼で把握し、口頭で意思疎通や指示を行う必要があるため、ただ万能な能力ではない。
積怒(せきど)
「何も楽しくはない、儂はただひたすら腹立たしい」
CV:梅原裕一郎
老人の半天狗の着流しをそのまま着用する分裂体。
「腹立たしい」と神経質に怒っているが、常に本体を守ることを考えるその言動は冷静沈着。
前線からやや離れた位置から油断しがちな他の分身達を厳格に統率しつつ、手にした錫杖を鳴らして中距離から殺傷力自体は低いが、動きを妨害する強烈な雷撃で広範囲に渡って放つ。
なお、この錫杖から発せられる雷撃は味方(本体、分身体は同じ細胞を持つ)を巻き込む恐れがない。
が、ちぎれた空喜の足を絶縁体に雷撃を防いだ炭治郎の機転には積怒自身も目を見開く。
可楽(からく)
「おおおお、これは楽しいおもしろい、初めて食らった感触の攻撃だ」
CV:石川界人
いついかなる時も楽しむ事を優先する陽気な戦闘狂。
武器は人間をたやすく吹き飛ばす突風を起こすヤツデの葉の団扇。
団扇を巨大化させれば炭治郎曰く「体がひしゃげる」風圧で建物を押しつぶすほど威力を上げることもできるが、武器を奪われると逆用されてしまう。
作中では、竈門禰豆子と交戦して興味を優先しすぎた結果、冷静さを失い手痛い反撃を喰らう一面もあり、積怒からも呆れられている。
空喜(うろぎ)
「カカカッ、喜ばしいのう 分かれるのは久方振りじゃ」
CV:武内駿輔
翼と猛禽類のような手足を持つ一番天狗に近い分裂体。性格は異様なほどハイテンションで享楽的。
見た目の通り飛行能力を持ち、金剛石をも砕くと豪語する爪と口から繰り出す音波が攻撃手段。
こちらも自分の楽しみを優先するために人間を痛め付け、最初から全力を出さない悪癖がある。
哀絶(あいぜつ)
「哀しい程弱い…」
CV:斉藤壮馬
可楽や空喜と比べて冷めた性格をしており、「哀しい」と後ろ向きな言葉をよく口にする。
乱戦下でも卓越した槍術で串刺しにする殺傷力だけならずば抜けているが、致命傷になりうる攻撃に倒れない不死川玄弥に翻弄される。
- 激涙刺突(げきるいしとつ)
十文字槍によって前方の5方向に突きを繰り出す。まともに喰らえば人体など容易く穴だらけになる。
憎珀天(ぞうはくてん)
「不快、不愉快、極まれり」
CV:山寺宏一
今までにないほど追い詰められ、一向に敵を排除できない分身達の不甲斐なさに業を煮やした積怒が自分一人で本体を守護するべく、他の3人を半ば強引に吸収・合体した最強の分身。
容姿は最も若々しく半天狗の少年期そのものであり、背中に「憎」の文字が書かれた5つの太鼓を背負い、動物の牙に似た形状のバチを持った雷神の様な出で立ちをしている。
名前通り憎しみを具現化しているが、性格は傲岸不遜かつ威圧的。
台詞だけ聞けば正義の味方のようだが、実際は本体を「か弱い弱者」とし、それを苛める鬼狩りの剣士を一方的に悪人と決めつけて自身だけを善とする、半天狗の歪んだエゴイズムの化身である。
また、少年のような見た目に反して声や雰囲気自体が凄まじい威圧感を放っているらしく、玄弥曰く「手足に力が入らなくなる」模様。
分身体とはいえ上弦クラスが4人合体しただけあって今までの分身達とは比べ物にならないほど高い戦闘力を持ち、喜怒哀楽全員の血鬼術だけでなく憎珀天自身も固有の術を扱える。
その上、こいつも分身体に過ぎないので、頚を斬っても意味がない。
作中では炭治郎一行を追い詰めたが、恋柱・甘露寺蜜璃の参戦で戦いが振り出しに戻る。
しかし、初見殺し極まりないその性質を利用して頸を斬られながらも蜜璃を一度は破り、彼女を喰らおうとするも炭治郎達の介入で失敗。
蜜璃が意識を取り戻した後は、本体を追おうとする炭治郎達への追撃を阻止され再び交戦。猛攻を仕掛けるも、痣を発現させた彼女にギリギリまで足止めされ、最期は炭治郎達が本体を仕留めた事で消滅した。
恨みの鬼が憎珀天が力を使いすぎていると言っていたことから本体と意思疎通が出来ず、本体である怯えの鬼の力を温存させておくということが出来ないため喜怒哀楽の分身体達よりも燃費が悪かったことが覗える。
- 無間業樹(むけんごうじゅ)
木の竜を召喚する、憎珀天固有の血鬼術。半天狗からの呼称は「石竜子(トカゲ)」。
炭治郎の分析では、この石竜子は一度に呼べる数が五本まで、それらの射程が66尺(約20m)と推定したが、これは本体の消耗を防ぐ為の縛りに過ぎず、実際の上限は無いに等しい。
竜の口は血鬼術の砲台にもなり、多面的、多角的な攻撃を仕掛ける事も可能。
また、1本の最長距離を超えて逃げた相手には、アケビの実のように伸ばした石竜子の口から別の石竜子を召喚する事で射程圏内に持ち込む事ができる。
- 狂鳴雷殺(きょうめいらいさつ)
2頭の木竜から空喜の音波と積怒の雷を同時に放つ技。広範囲に広がる厄介極まりない技。
- 狂圧鳴波(きょうはつめいは)
下記の通り憎珀天本体の口から狂鳴を放つ。まともに受ければまず体の形は保てないが甘露寺は特異体質の為耐えることが出来た。
更にそこに加え、上記の喜怒哀楽の鬼全ての血鬼術を攻撃力が増した状態で扱う。
上述のように、石竜子の口から発生させるだけでなく、本体の口からも発動が可能(作中では、空喜の音波攻撃「狂圧鳴波」を至近距離で蜜璃に浴びせた)。
さらに複合技として、石竜子を介して複数の血鬼術を一度に発動させる事も可能。
上弦の肆に相応しい実力の持ち主であるが、結果だけ見れば痣を発現した蜜璃1人に足止めされたため、柱またはそれに匹敵する者たちを複数相手にする上位3名には劣る。
怯えの鬼(仮称)
「ひぃぃいぃい!」
CV:古川登志夫
半天狗の本体。
姿は最初の基本形態と同じだが、ネズミ並みの小人。
戦線から離れたところで隠れている為に、探知能力持ちの剣士でもない限り見つけるのは至難の業。
さらに見つかった場合は、戦おうともせずにとてつもない速度で一目散に逃げていく。
その上、喜怒哀楽の鬼達の猛攻をかいくぐって頚を斬る必要がある為に、討伐には柱級の力と頭数が必ず求められる。
見た目に反して本体は頑丈そのもので、頚に至っては小指程度の太さにもかかわらず、斬ろうとした日輪刀が逆に折れてしまう程の強度を誇る。
もっとも、日輪刀が折れたのは呼吸を扱えない玄弥による一刀だったという事も要因の一つだが、大口径南蛮銃の弾が至近距離で直撃しても通用しなかっただけにその防御力は折り紙付きである。
おまけに禰豆子の血鬼術で生み出した爆血刀ですらその頸を落としきれない。見つけにくい上にひたすら頑丈ですぐに逃げるというこの本体の正体には、玄弥も鬼殺隊の人間がこれまで半天狗にやられて来た際の構図が見えた事から、
「くそったれが 見つけられるかこんなもん普通」
「ふざけんな小賢しい!憤懣やる方ねえ!!」
と苛立ちを隠せなかった。
また、窮地に追い込まれると己の身を守るべく、その時に抱いた強い感情を血鬼術によって、新たな分身として具現化させて分裂する。上述の喜怒哀楽の鬼達はこうして生まれており、その上限は半天狗が窮地に追いやられる度に増えていく。
ただし上記の通り、生み出した分裂体の数だけ半天狗本体も消耗していく致命的欠点もあり、分裂体の増産は諸刃の剣でもある(加えて小さすぎる為にエネルギーの蓄えが比較的少ないのか、力の消耗が他の十二鬼月よりも顕著) 。
また、あくまでひたすら頑丈で素早く逃げるというだけで、本体自身の戦闘力は皆無である。
総じて、半天狗の恐ろしさは単純な戦闘力でなく、とにかく攻略における厄介さを極めている事にある。
恨の鬼(仮)
CV:古川登志夫
「お前はああ 儂がああああ 可哀相だと思わんのかァァァァア!!!」
「 弱いものいじめをォォ!するなァァァァァ!!! 」
半天狗の本体(怯の鬼)を巨大化させたような見た目の分身体。
こちらも分身体の為に頚を斬られても死なず、心臓の中に半天狗の本体を隠している。
作中では、土壇場で本体が巨大化したように見せかけて、本体の頸を斬ったと錯覚させる(本当は恨の鬼の頸なのに)ことで油断させ、その隙に本体(もしくは頸を切り落とされた恨の身体)が人間を捕食して、仕切り直しを図るという小賢しい仕掛けであった。
さらに本体を日光から守る役割も果たしており、少しの間であれば日光下でも活動が可能。
憎珀天と同じく押し付けの化身のような性格で、上記の台詞にもそれが現れている。被害者妄想も加わって今までの身勝手さも健在であり、玄弥からも「お前の理屈は全部クソなんだよ!!」と一蹴された。
なお、アニメ版では空喜と同じ超音波攻撃を口から放っている。(原作では「コォォォ」と音を立て放とうとした瞬間に禰󠄀豆子の攻撃により中断されている)
活躍
無限城での上限の鬼の召集にて初登場。
無惨の言葉に終始怯え続け、最終的に玉壺と共に行動するよう下知が飛び、鳴女によって何処かへ飛ばされた。
そこから、玉壺と共に刀鍛冶の里へと侵入。
炭治郎と無一郎のいる宿坊に、突然正面から出現し、炭治郎が繰り出した咄嗟のヒノカミ神楽「陽華突」を躱すが、無一郎の霞の呼吸肆之型「移流斬り」で頸を落とされる。
しかし消滅するどころか、「積怒」と「可楽」に分裂し、無一郎を可楽の葉団扇で吹き飛ばし、二人を分断する。
無一郎は炭治郎の提案を受けて里中央部へ向かい、炭治郎と禰豆子が二体を相手取る。さらにダメージを受けて「空喜」を生み出し、炭治郎と禰豆子を分断するが、空喜の俊速の秘密を体重の軽さと見破った炭治郎の奇策で、元いた宿坊へと戻される。
さらに玄弥が参戦して空喜を散弾銃で吹き飛ばすが、今度は「哀絶」を生み出して玄弥を返り討ちにする。
こうして竈門兄妹&玄弥による四対三の戦いにもつれ込み、多勢に無勢で優位に戦いを進めていく。
だが炭治郎が禰豆子から爆血刀を授けられ、徐々に戦いで成長し始めると徐々に劣勢に持ち込まれる。さらに彼の鼻の良さで「分身と本体は別」と勘づかれてしまい、とうとう隠れていた本体「怯えの鬼」を発見され、炭治郎が玄弥に本体の頸を斬るように命じ、遂に玄弥の日輪刀が半天狗の頸を捉え、最初の頸への一太刀を許してしまう。
それでも頸の堅さで一度目を凌ぎ、奥の手として四体の分身を合体させて「憎珀天」を生み出し、「無間業樹」での圧倒的な物量で三人を追い詰める。
そして無間業樹に炭治郎を食わせるが、間一髪のところで恋柱・甘露寺蜜璃が窮地に駆けつける。
蜜璃の恋の呼吸に無間業樹を捌かれるが、彼女が自分の不死身のカラクリを知らないことを察してわざと懐まで接近させ、「狂圧鳴波」で葬り去ろうとする。だが至近距離での一撃を耐えられ、彼女の特異体質を看破。
さらに炭治郎たち三人に時間を稼がれ、蜜璃の復活と本領発揮を許してしまう。
それでも本体を戦場から逃し続けるが、炭治郎たちの追跡を振り切ることが出来ず、夜明けに向けて徐々に追い詰められていく。
夜明けが差し迫る中、炭治郎・禰󠄀豆子・玄弥の三人から逃亡し続けるも、炭治郎にヒノカミ神楽「円舞一閃」で捕捉され、二度目の頸への攻撃を許してしまう。
だが寸前で「恨の鬼」を生み出し、炭治郎の日輪刀が頸に刺さったまま、炭治郎の口元を鷲掴みにして窒息させようとする。
それでも三人は止まらず、遂には竈門兄妹と共に崖から転落する。さらに転げ落ちた野原から逃走を図るが、憎珀天に力を注ぎ過ぎたせいで弱体化し始める。
丁度その時、里の人間が三人潜んでいるのを見つけ、彼らを喰らって力を取り戻そうと画策。
追いかけてる最中、無一郎から投げられた新たな日輪刀を構えた炭治郎に恨の鬼の頸を切られ、朝日も昇り始めるが、残った恨の鬼の体を活かして頸がないまま里の人間へ襲いかかった。だが、朝日で死にかけてる禰豆子と里人の命の選択で散々迷った末に、禰豆子に叱咤激励された炭治郎が再起し、恨の鬼を追いかけながら、この土壇場で本体の臭いを嗅いで「透き通る世界」に覚醒した彼によって、本体が心臓に潜んでいるのを見破られる。
「見つけた 心臓の中」
「今度こそお終いだ卑怯者 悪鬼!!」
炭治郎は里の人間を庇う形で間に割って入り、半天狗の手を斬り落とし、まず食事を阻止。
「命をもって 罪を償え!!」
※アニメでは炭治郎が「卑怯者!!」と思いながら恨の鬼をジャンプでハードル走のように飛び越え、「悪鬼!!」と思いながら剣を構え、着地して割って入る。手を切り落とされ、食事を阻止された後、前述のセリフに戻った。
さすがの半天狗もエネルギーが尽きたのか、お得意の分裂を出す余裕もなく、裁きの刃が迫るその刹那……
「なんでお前さんは人から盗むんだ しかもあれ程… 目の見えぬ私たちに優しくしてくれた方から」
「儂が悪いのではない!!」
「この手が悪いのだ」
「この手が勝手に!!」
─なんじゃこれは
「別の町でも貴様は盗みと殺しを繰り返していた様だな 同情の余地もなし」
「滅相もない、ワシには無理でございます このように目も……」
「貴様は目が見えているだろう」
「手が悪いと申すか!! ならばその両腕を切り落とす!!」
「明日打ち首とは可哀相に 私が助けてやろう」
「貴様がなんと言い逃れようと事実は変わらぬ 口封じしたとて無駄だ」
─人間の頃のワシか?これは……
「その薄汚い命をもって罪を償うときが必ず来る」
──走馬灯か
とある盲人から盗みを咎められ、奉行所へ告発しようとする彼を口封じに殺害。しかし結局奉行所へ送られ、そこで裁きを受けることとなるが……
自身は盲人だから不可能だと弁解する半天狗に対して、奉行はそれが嘘だと看破。尚も見苦しく言い逃れする彼に対して打ち首を言い渡す。ところがその日の晩、たまたま居合わせた無惨によって鬼となり、報復のために奉行の寝込みを襲った…
己の悪行を突きつけるかのごとき走馬灯を見た半天狗はついに頸を刎ねられ、朝日に焼かれて瞬く間に消滅。そして本体を喪った憎珀天も程なくして塵となり消え去った。
しかし、死に際に始めて太陽を克服した鬼が視界に入っており、半天狗の視界を通してそれを知った無惨は歓喜。誰も殺せず戦死したにも拘らずそれを得たのを皮肉なしで賞賛し、その鬼を我が物として、千年の願いを叶えるため、忌々しい鬼狩りを今度こそ皆殺しにするため、最後の決戦の準備を進める事になる。
よって半天狗の戦果は戦いよりも情報という形となった。
余談
半天狗の過去
原作漫画は見開き2ページの継ぎ接ぎ状態でしか描かれていないが、それだけでも救いようのない性格であることがわかる。
だが後に情報が補完され、
- 元から性格は気弱で嘘つき。しかしやられたらやり返すタイプで、しかもその際は自分がやったとバレない様に手回しをしてから行うという狡猾さと徹底ぶり
- 分身たちは自身の若い頃の姿を模している
- さらに保身のために長年、自分の名前や年齢、生い立ちをその場その場で変え続けたために、人間だった頃から自分の本名・何者なのかすら完全に忘れた。
- 何度か妻と子供を作った時もあったが、虚言癖や不誠実さを責められた結果、自分が虐げられたと逆上し妻子を殺すのを繰り返してきた。
そして老齢に差し掛かかったある日、強面の相手とぶつかったのを盲人の振りをしてやり過ごした経験に味を占めて白目をむいた目の見えない老人の姿を演じるようになり、それからは目が見えない自分を善意で世話をしてくれる人々につけこんでは、その相手に盗みと殺人を繰り返すという生き方をするようになった
※上弦の鬼でありながら、両目とも瞳が見えない状態でいた事・時透&炭治郎の前に現れた際に這いつくばるような姿勢だった事も、盲人を装っていた名残(及び一般の弱小な鬼だと誤認させるため)だと推測できる
鬼になった事で半天狗もまた人間の頃の記憶は失われていたのだが、その本質は全く変わっていないどころかむしろ悪化している事が示され、まさに「生まれながらの外道」と呼ぶにふさわしい最低の人間だったようだ。
トドメシーン
原作では恨みの鬼の心臓ごと体内にいる本体の頸が斬られているのに対し、アニメでは恨みの鬼の体を斬られて、その反動で上空に放り出されたところで頸を斬られ、日光で消滅するという最期を遂げている(ただし、本体の頸を斬られている時に恨の鬼が炭治郎の頭を右手で掴んで抵抗するところは同じ)。 回想シーンが自分が何をしてきたのかを『映像』として回想している時点でそもそも目が見えないこと自体が嘘であることも同時に表現した秀逸なシーンでもある。このたった2ページにあらゆる要素を詰め込んだ回想は読者に強いインパクトを与え、この回が掲載されてしばらくの間このシーンのコラ画像が大量に作成され、他作品も巻き込んで爆発的に増加した。
地獄にて
ファンブック2巻では地獄にて無惨が日の呼吸に斬られた感想について一言「不快」と評したことに激しく共感し、「すぐに治らないし、すごく痛かった ひどいやつらだ」と涙を流しながら零していた。明確に日の呼吸で斬られたのは、分身たちが「日暈の竜 頭(かぶら)舞い」を受けた時くらいなので、彼らの斬られた感覚がフィードバックされたのかもしれない。
服装
哀絶が着ている服は作務衣と呼ばれる僧侶の修行などで使われるれっきとした服装…なのだが、ジャージを着ているように見える、などと原作の段階からネタにされていた。アニメ版では更にカラーリングが分かりやすくなり、青いジャージを着ているとネタにされるようになってしまった。
因みに作務衣は和服の一種ではあるが、歴史上明治時代に使われていた物ですらどのような形であったかは不明であり、昭和40年代に永平寺で使用が確認された物が源流となっており、大正時代の作務衣に関する資料は現状発見されていない。
本体
「逃げ足が早く頑丈」「素早く走る小人のような姿」から、読者や視聴者からはメタルスライム、小鬼になったアリエッティ呼ばわりされた。
担当声優
半天狗の声を担当する古川登志夫は、オーディションでは玉壺と半天狗の二役を受ける予定だったが、マネージャーから「半天狗一本でお願いします」との要請を受けて合格したとのこと。
分身体についても全員に別の担当声優が割り振られており、担当した声優もかなり豪華である。山寺宏一に関しては発表前の視聴者予測でも「分身体全員を一人で演じることが出来そうだから」という理由で半天狗の候補としてよく上がっていた事もあり、まさかの分身体の一体としての出番には驚きの声が多発した。
因みに以前から「何とか鬼滅の刃に出してもらえませんか?」と発言していた事でも知られる。
アニメOPについて
刀鍛冶の里編の敵として登場するものの分身体を描いてはネタバレになってしまう。
OPでは樹の球体の中から目だけ見せ、その後に石竜子が甘露寺蜜璃に襲い掛かるというシーンになった。
分身体を描かず本編とも矛盾しない形でボスとして描かれる形となっている。
考察
本体の舌には「怯」という字が刻まれているが、これは「いつも怯えている」こと以外に「卑怯者」を意味すると考えるファンも多い模様。
また分身体を生み出す能力は「その場その場で生い立ちや年齢などを偽り続けた」事に通じ、出で立ちの違う彼らも舌に文字が刻まれている事で「同一人物である証拠」となり、舌を斬ると僅かだが再生が遅れてスキができることも、二枚舌の嘘つきだから"舌"が弱点……と考えられる。まして白目を向くとその目線は舌とは逆方向になるわけだが、そうまでして目を背けてきた「本性」が到底隠せないほどの状態で現れている事に気づいてもいないのはなんという皮肉だろうか。
また、作中開始時点では「上弦の肆」であった彼だが、元々の位は「上弦の参」であった可能性がある。
というのも、上弦の序列は上弦同士で戦う入れ替わりの血戦にて上下するが、分身体ならともかく半天狗本体に「入れ替わりの血戦」を挑む度胸や向上心があるとは考えにくい為、半天狗の序列は下がる事はあっても上がる事は無かったであろうと考えられる。
そしてそこに、上弦の陸から弍になった童磨の存在を考慮すると、
1.半天狗が自発的に序列を上げたとは考えにくい為、最初から上弦の肆以上の席次に居た可能性が高い
2.童磨と半天狗どちらが先に上弦になったか作中では不明だが、童磨が上弦の陸の時代に既に上弦は6体揃っている可能性が高く(作中終盤で上弦の伍が空席になっている為確定では無いが)、それ以降に半天狗が加入して序列を上げたとは考えにくい
3.その後童磨は席次を陸から弍に上げている為、半天狗は童磨の出世により席次を落とした事になる
という根拠から半天狗は「黒死牟、猗窩座に次ぎ3番目に上弦に加入し、上弦の参の地位を与えられたが、のちに童磨の出世により上弦の肆に席次を落とした」と考えられる。
キメツ学園
17巻にて判明。
泣きながら校内の廊下を這い回る老人として学園の怪談となっている。
人間の姿をしておらず、常に恨み言を呟いている。
自分より体が小さい人を見つけると襲いかかり持ち物を盗む。
頭が大きく腫れているのは、中等部の時透君のかかと落としを喰らったからだそう。
小説版では、その後カナエによって除霊されて、強制的に成仏させられた事が明らかになった。
スピンオフ作品キメツ学園!では、宿直の先生によってお札(製作者はカナエ先生)を貼られ、たびたび強制成仏させられていることが明らかになった(数日後には復活している)。
本編と同じく分裂能力も健在で、単行本3巻のおまけ漫画で無一郎のカカト落としを食らって本体を含む6つに分裂している。
また玉壺に勝手に誕生日を設定され祝われたこともある。その際にはある意味被害者だったにも拘わらず、訳あって煉獄と宿直当番を代わった宇髄に御札で滅された(数日後復活した)。
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上弦の鬼