「不快 不愉快 極まれり」
「極悪人共めが」
「何ぞ?貴様 儂のすることに何か不満でもあるのか
のう 悪人 共めら」
CV:山寺宏一
概要
竈門炭治郎に頸を斬られかけ、追い詰められた本体を護衛するために怒り鬼積怒が空喜・可楽・哀絶の3名を吸収・合体した姿。「可楽と混じっていたことを腹立たしい」と言っていた積怒自身が自ら他の3人を強制的に取り込んだのがどこか皮肉的である。
分裂体の面々は、最初に現れた老人体(人並みサイズ)から積怒・可楽が、そこからさらに空喜・哀絶が「分離」したわけだが、憎珀天は逆に「分かれた状態から一体に」なっているので、"分裂"体というと語弊があるかもしれない(まあ本体からは分かれているので矛盾はしないが)。
また原作ナレーションでは
「窮地に追い込まれ、爆発的に力を発揮するのは人間だけではない」
「半天狗という鬼はこれまで何度も窮地に追い込まれた。そしてその度に己の身を守ってくれる強い感情を血鬼術により具現化・分裂し、勝ってきた鬼だ」
「追い込まれれば追い込まれる程、強くなる鬼だ」
という解説がされており、この説明からすると、追い込まれた半天狗が爆発的に能力を向上させた結果生まれたもの(つまり元々は存在していなかった)と考えられる。
容姿
鬼というよりも雷神や四天王・毘沙門天といった荒っぽい神(仏像)を思わせる出で立ちで、背中には「憎」の一字が書かれた連鼓(雷様の太鼓)を装備。また武器として獣の牙を思わせる2本のバチを持っており、これで連鼓を叩くことで血鬼術を発動する。
外見年齢が喜怒哀楽の鬼たちより更に若々しくなっているのも特徴で、彼ら4人が青年なら憎珀天は少年。身長は炭治郎(165㎝)と同等かそれ以下しかなく、作中でも蜜璃や炭治郎、玄弥はいずれも「子供」「ガキ」と評している(19歳の蜜璃が「私の弟とそんな変わらない年格好」と独白していた辺り、10代前半くらいということになるのだろう)。
半天狗の分裂体はいずれの姿も舌に「それぞれが司る感情を示す漢字一文字」が刻まれていたが、彼だけは文字が刻まれているか確認できる描写が原作にはなかった。アニメではしっかりと舌に「憎」の漢字一文字が刻まれている。
衣装や装飾は喜怒哀楽のものが元になっていると思われる。
耳飾り:空喜の腰の装飾
腕:哀絶の作務衣
腰:積怒の衣
足:可楽の袴
人物
一人称は「儂」で、ベースが積怒ということもあってか、見た目にそぐわず古風なしゃべり方をする(アニメ版では意外に落ち着いたトーン)。
傲岸不遜で極めて威圧的な態度を取り、自身を善、本体を「善良な弱者」と称し、何百という人間を喰い殺して来た事実を棚に上げて、本体の首を斬ろうとする者たち全員を容赦なく「極悪人」と決めつけて非難・断罪しようとする。
その在り方は、半天狗のネジ曲がった価値観をよく体現しており、彼の醜悪な利己主義と責任転嫁の集大成たる化身といったところか。
初登場時のBGMがまるで勧善懲悪モノの時代劇の正義の味方のようであり、これはある人物との関係の当て擦りで作曲されたものではないかと推測する声もある。
アニメでは炭治郎とのやり取りが追加されており、「儂が喰った人間共の中に貴様の身内でも居たのか?」「(そうでないのなら)貴様には関係なかろう」とさも当然のように言い切り、
「関係あるかないかの問題じゃない」「人を助けることに理由なんて要らない」「そんなこともわからないお前の方が余程鬼畜だろう」と指摘されても、不快そうな表情を見せるだけでやはり耳を貸さなかった。
一方で、主である鬼舞辻無惨への忠誠心は非常に高く、「儂に命令して良いのはこの世に御一方のみぞ」と発言している。
また他の上弦たちと同じく強烈な威圧感を放っているようで、炭治郎は一睨みされただけで「息がつまる なんて威圧感だ 心臓が痛い」と戦慄し、その声を聞いた玄弥は「重い 声が 威圧が 手足に力が入らなくなる 立ってられねぇ」と独白。しかも原作ではミシミシと体が軋むようなオノマトペまでついており、憎珀天の"圧"の凄まじさが窺える(アニメ版では立っているのがやっとで動きが取れない様子も描写されている。加えて玄弥は身体能力が低いせいもあるだろうが)。
加えて積怒ベースのおかげなのか、空喜や可楽とは違って油断・慢心から来る舐めプは全くせず、格下である炭治郎たち相手にも全力で叩き潰そうとする戦闘スタイルも相まって隙がない。
戦闘能力
血鬼術として樹木の竜「石竜子(トカゲ)」を操って戦い、その口を砲台として喜怒哀楽の能力も撃てる(威力が増している上に合わせ技も可能)。ちなみに哀絶の槍術「激涙刺突」も石竜子の口から撃つスタイルで、刺突の数がかなり増えている。肉弾戦も可能だが、積極的には行わない。
高い攻撃力+広い攻撃範囲に加え、あくまで分裂体の一体に過ぎないため「頚を切ったところで絶対に倒せない(=本体を滅さない限りは再生し続ける)」という特権もしっかり持っており、勝利するにはこいつを相手取りながら本体を捕捉、頚を落とすという絶望的な条件をクリアしなければならない(いっそ陽光を浴びせられれば良いが、逃げ足の早い半天狗を夜明けまで拘束し続ける方が大変だろう)。
「痣」を発現させてブーストのかかった柱であれば単騎でも何とか足止めできるようだが、それでも消耗は避けられず、そもそも半天狗の戦闘スタイルは「戦闘を分身体に任せて敵の消耗を誘い、本体自身は逃げ隠れに徹して時間を稼ぐ」事なので、上弦トップ3のような規格外のバケモノではなくても十分すぎるほど手強い。
とはいえ欠点も存在し、分身体故に血鬼術の発動・肉体再生の両方とも本体のエネルギーを使用しており、超広範囲の術を連発することもあってか、非常に燃費が悪い。加えて本体の消耗などお構いなしで動き続けるため、本体には尋常ではない負担が掛かる。
コイツにとっては目の前の「悪人」を滅する事が最優先なのだろう。
血鬼術
「石竜子(とかげ)」
樹木の龍頭を召喚して操る技。
この「石竜子」の射程は概ね66尺(約20m)程のようだが、石竜子の口から更に別の石竜子を召喚するという力業でリーチを伸ばすことも可能。樹木そのものが持つ大質量で押し潰すことや、何重にも巻いて本体を隠し逃がすなど攻防一体の性能を持つ。
そんな石竜子は敵を捕食し押し潰すこと以外にも砲台として使用されており、憎珀天が背面の太鼓を叩くことによって、強化された積怒の雷撃、空喜の超音波、可楽の突風(風圧)、哀絶の刺突(衝撃波?)を放ってくる。
能力の行使にもインターバルは必要なく、他の分裂体と互角に渡り合えていた炭治郎が呼吸する余裕すらないほどの速度と頻度で連発してくる。
- 『狂鳴雷殺』
石竜子から積怒の雷撃と、空喜の超音波を放つ技。前者を喰らえば衝撃で動きを止められ、後者を喰らえば鼓膜が破壊され平衡感覚を失ってしまうほどの威力を持つ。
- 『狂圧鳴波』
憎珀天自身の口から空喜の超音波を放つ技。
至近距離でこれを食らった蜜璃は持ち前の特異体質で耐えきったが、憎珀天の独白を見る限り常人なら体が原型を保てなくなるレベルの威力がある。
- 『血鬼術 無間業樹』
大量の石竜子で広範囲を埋め尽くす技。この石竜子からも攻撃が放てるため、尋常ではない攻撃範囲を持つ。
半天狗の持つ技の中で唯一血鬼術と呼称されている技でもある。
- 落雷
石竜子を介さずに、憎珀天本体が雷撃を発することも可能。
本編での活躍
初登場は刀鍛冶の里編の終盤である116話。
半天狗本体の首を斬ろうとするも、爆血刀の効力が切れ、手詰まりとなった炭治郎の背後に突如として出現。石竜子による攻撃で炭治郎たちを一蹴すると本体を石竜子で逃してしまう。
そして本体を襲う鬼殺隊の面々を『極悪人』と称し、凄烈な罵倒を浴びせるが、その言葉で炭治郎の逆鱗に触れてしまう。しかし圧倒的な力で玄弥、禰󠄀豆子、炭治郎を完封し、あと一歩のところまで追い詰めるが、恋柱・甘露寺蜜璃が参戦。
攻撃そのものを斬るほどの腕前を持つ蜜璃の実力と速度に最初は驚きこそすれ、首を刎ねても殺せないという初見殺しギミックを活用して『狂圧鳴波』、そして追撃で蜜璃に走馬灯を見せるほどのダメージを与えるが、炭治郎たちの介入により失敗。
そして後輩たちの言葉に奮起し、痣を発現させた蜜璃と激突。
痣を影響で身体能力が大幅に向上した蜜璃の想像以上の実力で抑え込まれ、炭治郎たちが本体を滅するための隙を与えてしまう。だがその状況でも、冷静に蜜璃の体力が切れるまで間髪入れず攻撃を放ち続ける。
しかし、最期は半天狗の本体の首が斬られたことで存在を保てなくなり、塵となって消えていった。
余談
見た目がどう見ても子供の鬼であることから、アニメ本放送前は四分身同様の若手男性声優か、或いはベテランの女性声優が演じるとばかり思っていた者が多かった。
また本体役の古川登志夫氏による演じ分けを期待する声も多く上がっており、その配役に注目が集まっていた。
そしてアニメ刀鍛冶の里編第七話で満を持して登場を果たしたが、前編の章ボスと同じく、放送中に山寺氏がCVを務めていることを判別できた視聴者は非常に少なかった。これは山寺氏が今まで演じてきたどの役とも全く異なる声色を用いていたためで、放送中は堀川りょう氏や吉野裕行氏と勘違いした視聴者が多く、堀川氏や吉野氏の名前がTwitterでトレンドに上がっていた。
ところがEDクレジットにて「憎珀天:山寺宏一」との表示を見た視聴者は驚愕。放送終了後には山寺氏の技量、声優の本気を思い知らされた視聴者によって深夜のSNS界隈が騒然となり、今度は山寺氏の名前がTwitterでトレンド入りした。
なお、山寺氏は2020年放送の「声優コレクション」という番組内で本作にて不死川実弥を演じる関智一氏と共に朗読劇を行った際、アフレコ前に「鬼滅出(ら)れますよね?」と出演に対して意欲を示しており、関氏も「スタッフに言っておきます!」と返していた。そのため、約2年越しの満を持しての出演となった。出演にあたって、山寺氏はインタビューにて「この役は僕にとって大きなチャレンジです。」と並々ならぬ想いを語っている。
また、主人公・炭治郎の声優を務める花江夏樹氏とは新旧『おはスタ』MCという関係性であり、他局でまさかのドリームマッチが実現することとなった(因みに現在のMCである木村昴氏はムキムキねずみを、同じく花江氏と共にMCを務めていた小野友樹氏は無限列車編オリジナルドラマCDに登場する呪雨鬼を担当しているため、『おはスタ』MC全員が『鬼滅の刃』に関わる形となった。)。
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半天狗の分身体シリーズ