概要
沖縄本島や久米、西表、石垣、渡嘉敷の各島、そして台湾に生息するオオムカデ属(スコロペンドラ)に属する、深い森の沢沿いに生息するムカデの一種。
学名は Scolopendra alcyona (スコロペンドラ・アルキオーナ)。種小名の由来はギリシャ神話に登場し、ゼウスによってカワセミに変えられた女性アルキュオネから。
沖縄の伝承に伝わる「海に住む龍神はムカデを非常に恐れているので、安全祈願として船にムカデの旗を掲げていた」という故事から「リュウジンオオムカデ(琉神大百足)」という和名が付けられた。
正式に命名される前では、マニアの間からヤンバルオオムカデと呼ばれていた。
地元では前々からその存在自体は知られており、高額で売り買いされるケースも多々あった為、法政大などの研究チームが保護の為に調査した結果、生態の観察に加えてその形状や遺伝子解析から2021年に新種のムカデと判明した。
当時オオムカデ属の新種が確認されたのは1878年以来143年ぶりの出来事で、本種は国内から初めて日本人によって記載・命名された種でもある。
2021年7月1日~3年の期限で、種の保存法に基く緊急指定種にウスオビルリゴキブリ、ベニエリルリゴキブリと共に指定され、現在は捕獲や販売、譲渡が禁止されている。
形態・生態
日本と台湾に生息するムカデでは最大の大きさを誇り、体長約20cm、体幅約2cmの親指の太さほどある。美しい青緑に近い翡翠色の体色を持つ。
世界で3例目となる水中にも棲む事ができる半水棲のムカデで、普段は森林内の渓流沿いの陸地で暮らしているが、身の危険を感じると水中に飛び込み、じっと身を潜める習性を持つ。また、日本最大の川エビであるコンジンテナガエビやサワガニ類などの同所的に生息する水中の生物を捕食する為に水の中へ潜る事もある。泳ぎは得意で、川の流れに逆らって泳ぐ事もできる。コオロギやマダラゴキブリなどの昆虫を捕食するが、好物は甲殻類。
同じく日本最大級で渓流に生息し水中に潜るクモであるオオハシリグモとは、互いに捕食関係にあり、どちらが食われるかはその時次第。