曖昧さ回避
概要
直翅目(バッタ目)剣弁亜目(キリギリス亜目)のうちコオロギ上科に分類される昆虫のこと。狭義ではその中でケラ以外の種類を指して称する。
多くが中型の昆虫であり、種類によって体長1cm未満から4cm以上に及ぶ。体色は茶色や黒が一般的。
他の直翅類(バッタやキリギリス等)と比べると、前翅は背面の平たい箱状に畳み、お尻の2本の尻尾のように発達した尾毛とメスの針状の産卵管が目立つ。他の剣弁類と同様触角は長い糸状で、前脚の肘に楕円形の聴覚器官(耳)が付いている。
発達した後脚でジャンプするが、その勢いは基本バッタやキリギリスほどではない。ただし体の外骨格は比較的柔らかく、狭い隙間を通り抜けるのに優れている。
キリギリス等と同様鳴くのは基本オスだけで、前翅の発音器を高速に擦り鳴き声(摩擦音)を出す。鈴を転がすような声で鳴く。
羽化した成虫は、本来は飛翔できる大きな後翅を持つが、幼虫の間に何らかのストレス(怪我や気温の上昇・低下)をこうむると羽化しても発声用の前翅だけで飛翔用の後翅は生えない。
さらに無事後翅を持って羽化しても先ほど挙げたようなストレスを被ると、すぐに翅が抜け落ちてしまう。
食性は雑食性。基本的に夜行性で日中は物陰や巣穴に隠れている。
世界中から3,700種ほど知られている。日本では国内最大種のエンマコオロギや、ペットショップで餌用に販売されているヨーロッパイエコオロギ、並びにフタホシコオロギおよびその大型改変種クロコオロギが有名。
人間との関わり
世界的には虫を食べるペットの生餌として最も広く利用されており、昆虫食が一般的な地域ではかなり普遍な食用昆虫の一つとなっている(食用コオロギ)。他にも虫相撲、観賞用のペットになれる。
環境音用コオロギとしての使い道もあるが、クロコオロギの場合した動画の様に1匹でも防音対策をぶち抜いて離れた部屋にも響き渡らせるほど非常にうるさいので注意。
見慣れないと屋内性のゴキブリによく似ており、都会の子供に誤解される。体は堅くなく特に腹がブニブニしており、捕まえてトラウマになった方もいるだろう。
食用コオロギについて
野生のコオロギを食べることは日本ではマイナーだがかつての長野県などで行われていた。東南アジアやアフリカでは野生コオロギの食用は広く見られる。味は小エビに似ているとされ、調理法によってはピーナッツに似た味がするという。
イエコオロギなど食用コオロギを養殖する例もあり、以前から日本各地のローカル自販機などで珍味やゲテモノとしても販売されている。伝統的にコオロギを食べる習慣のあるタイでは多数の養殖場が商業ベースで存在している(ただし消費は北部と東北部に集中していて他の地域ではあまり食べない)。
また、食用のイエコオロギやフタホシコオロギは鶏や牛と比べて環境負荷が非常に低いという説があり、近年人口増によるタンパク質供給不足に呼応して食用コオロギが注目されている。
内閣府の食品安全委員会が食用コオロギに懸念を示していると話題になったことがある。これは同委員会がEFSAの2018年の資料を紹介したことを元にしているのだが、EFSAはイエコオロギについて芽胞や生物濃縮、アレルギーなどの懸念を示しつつも、これらが解決されて食用とされる可能性にも触れており、食用のイエコオロギを一概に否定しているわけではない。実際、EFSAは2021年にイエコオロギにはアレルギー以外の懸念はなく、食用利用は可能だと発表している(食品安全委員会はこの発表も紹介している)。
http://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu05010960149 2018年の資料
https://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu05670510149 2021年の資料
おからや牛乳の廃棄問題や、昆虫食自体への嫌悪もあって「何故以前から現場の悲鳴が上がっていたそちらへの支援や対処を無視してわざわざ唐突に湧き出たようなコオロギ事業に金を出すんだ」「コオロギを食わなきゃいけなくなるほど追い込まれる前に何とかできるようにしろ」と疑問や非難の声が多数聞かれた。
- 廃棄問題に対しては現代日本では安価でおいしく、多彩な食生活を実現することに重点を置いており、それは「食糧を使い切ること」とは別物という意見がある。フードロスがあるから貧しいのではなく、食糧にかなりの余裕があり、豊かだからこれだけのフードロスが発生するのである。また、自由競争の市場経済ではある程度生産された食品の売れ残りも発生する。
- 牛乳に関しては保存できる期間が短く、牛乳の需要も供給量も変化しやすいため、ある時は廃棄されまたある時は不足しがちなのが実情である。例として、年末年始は牛乳の需要が低下し余りがちになるために「年末年始牛乳消費拡大PR」が行われている。
話を食用コオロギに戻すとコオロギを推す意見があるのは先述したように将来のタンパク源不足への対策である。タンパク質は増産が難しく穀物が足りていてもタンパク源が足りないということがありうる。おからと牛乳はそのままではあまりタンパク源にならない。牛豚鶏や豆や魚介類など従来のタンパク源の増産は簡単でないとされる。
食用コオロギは飼育に場所や水があまり必要なく、雑食性で米ぬかやおからなど今まで廃棄されていたものをエサにしても育つので安価なタンパク源になるという意見があるのである。
ただ、これらは更なる養殖技術の向上と大量生産が前提になっており、少数生産の現時点では食用コオロギはかなり高額である。
また消費者に受け入れられることが必要だが、コオロギに関するデマが拡散し、デマを信じるものが(マスメディアも含めて)多数存在する現時点では普及は現実的ではないという見方が強い。
主な種類
国内
- アリヅカコオロギ
- ウミコオロギ
- エンマコオロギ
- オカメコオロギ
- カマドコオロギ
- コガタコオロギ
- タイワンエンマコオロギ
- タンボコオロギ
- ツヅレサセコオロギ
- フタホシコオロギ
- ヒメコガタコオロギ
- ミツカドコオロギ
- スズムシ
- マツムシ
- オケラ
海外
- アフリカオオコオロギ
- タイワンオオコオロギ
- ヨーロッパイエコオロギ
- ヨーロッパクロコオロギ
コオロギをモチーフとしたキャラクター
ケラをモチーフとしたものは該当記事を参照。
日本
- ベル星人(『ウルトラセブン』)
- ギラーコオロギ(『仮面ライダー』)
- オルタナティブ、オルタナティブ・ゼロ、サイコローグ(『仮面ライダー龍騎』)
- グリラスワーム(『仮面ライダーカブト』)
- コオロギ怪人(『仮面ライダーBLACK SUN』)
- コオロギン(『地球戦隊ファイブマン』)
- ミューズィックのマズアータ(『天装戦隊ゴセイジャー』)
- コロボーシ、コロトック(『ポケモン』)
- ヤングクリケット(『メイドインワリオ』)
海外
- ジミニー・クリケット(『ピノキオ』)
- クリキー(『ムーラン』)
余談
河野太郎氏は2022年にある企業のコオロギ料理を試食したことから一部で食用コオロギ推進派ではないかと言われ、「コオロギ太郎」というあだ名をつけられた。ただ、本人は推進派ではないと主張している。
関連タグ
メモリーズオフ…第1作目の主人公とその悪友が第2作目の主人公にかき氷の上に潰したコオロギをかけた「かきコオロギ」なるものを食べさせようとしてトラウマを植え付けたことがある。