コオロギ食
こおろぎしょく
コオロギ食とは、コオロギを食用に加工して食べること(昆虫食の一つ)である。
野生のコオロギの食用は東南アジアやアフリカ中南部で見られる。昆虫食のなかでは割とメジャーな部類で、「コオロギは未知の食材」というのは誤りである。
食用のコオロギを養殖することも一部で行われている。
野生のコオロギを食べる場合、雑食性で不潔なものを食べている場合があるので、1日程度絶食させフンを出させるか、腸自体を取り除いてから火を通して食べるのが基本である。
調理法は地域によって焼く、炒める等、様々なものがあるが、タイでは体長4〜5cmのタイワンオオコオロギを脚をとってから天ぷらにしたり、串焼きのバーベキューにしたりする。
先進国で食べられるコオロギはほぼ養殖したものである。ヨーロッパでは加熱後粉末にしてパン生地に混ぜる例がある。
コオロギを養殖して食べる地域も存在する。伝統的にコオロギを食べる習慣があるタイの北部と東北部では、1998年から現在まで盛んに食用コオロギの養殖が行われている(ただタイの他の地域ではあまり食べられていない)。
一部の識者は食用コオロギの養殖は低コストで環境負荷が小さい新たなタンパク源になると主張している。
具体的には小さな場所でも飼育できること、必要な水や餌が少ないこと、比較的従業員の負担が小さいこと、約35日で成虫になる成長の早さ、雑食性なので残ってしまった食品でも育てられること等が挙げられる。SDGsのひとつに挙げられることもある。
ただ、低コスト化はさらなる養殖技術の向上と大量生産が前提になっていて現時点ではかなり高価である。そもそも本当に低コストな食材なのか異論は少なくない。
日本でコオロギ食の大手として有名だったのが、徳島大学発のベンチャー企業「グリラス」。
徳島大学の基礎研究をベースにコオロギ食の社会実装を目指すフードテックスタートアップであり、メディアに取り上げられることも多かった。
ただ、コオロギ食がインターネット上で物議を醸すことも珍しくなかった。その論点は色々。
- コオロギを食することに嫌悪感を訴える人
- コオロギは食べるのは危険であると信じる人
- マスメディアで過剰に注目を浴びたことから陰謀を疑う人
- フードロスを削減することにより食料問題は解決できると考える人
- そもそもコオロギ食を推進することが本当に環境問題や食料問題に効果的なのかと考える人
- 欧米の畜産業の儲けに響く(これは反菜食主義や反捕鯨にも共通する動機)
などである(ただし「コオロギ食が危険」という主張には明らかなデマも多い)。
特に2022年11月にグリラスが小松島西高校でコオロギ食を提供するとSNSを中心に炎上。この余波でグリラスは数々の商談が取り消されると、事業拡大もストップ。
結局、グラリスは2024年11月7日、徳島地裁に破産手続きを申し入れることになる。
これ以降も日本でコオロギ食の普及を唱える人は一定数いるが、広く受け入れられているとは言い難い。