概要
食用(しょくよう)には、以下の2つの語義がある。
いずれの語義でも、「人間の」という限定条件を大前提とするのが基本的用法である。
例えば、ペットや家畜のための食物は、「餌」や「飼料」であって、それらは「食用」に該当しない。
そこのキミ、ペットフードを食べるんじゃあないッ!
諸言語
英語では、"edible(エディブル)" の形容詞形が「食べられる(可食の)」「食用の / 食用(に適する)」の意味になる(※b,c)ので、日本語「食用」の第1義とおおよそ対訳語の関係にある(※e)。
なお、ここで「おおよそ」の一語を添えているのは、日本語「食用」のほうに「食べられる(可食の)」の語意が少し薄いことを英語 "edible" との違いと見ていることによる。
また、"edible" は、「食用に適したマリファナ製品」を指すスラングでもあるため、単なる「食用」の対訳語と考えていると、意図せずラリってしまいかねないので要注意。
英語 "edible" は、「食べられる(可食の)」を意味するラテン語 "edibilis(エディビリス)" を語源としている(※d)。
日本語音写形「エディブル」は、外来語として通用しており、特に「食用花」を意味する「エディブル・フラワー / エディブルフラワー(英語:edible flower|cf.Wikipedia:ja)」は広く使われている。
関連イラスト1
左から順に解説する(以下同様)。
3. 青果は食用作物(人間が低加工状態で食用とするために栽培する作物)として誰もが真っ先に思い浮かべるもの。人間は、食用作物のほかに、工芸作物(人間が高加工状態で何かに利用するために栽培する作物|コーヒーノキ、ワタ、イグサ、ゴムノキなど)、飼料作物(加工または直接家畜の食料とするために栽培される作物|飼料用トウモロコシなど)、その他(観葉植物など)を栽培している。
5. ファンタジー世界の感謝祭。食肉など様々な食材で溢れている。
6. 生肉(熱加工していない食肉〈※f〉)の塊。精肉(食用に適した形に整えた食肉〈※f〉)の塊。霜降り牛肉食べたい。じゅるり♪
9. 食用…昆虫。昆虫食も地域によっては当たり前だったりする。これからは地域によらず、全世界的に食用が常識になったりするとかしないとか…。
10. 食品用金箔(食用金箔)なんてものもある。もちろん、消化はできない。それと、あまり知られてないけど、食品用銀箔(食用銀箔)もある(※g)。いずれも、和菓子や懐石料理の飾り付けなどに使われている(※g)。「食用金銀箔」で検索すれば広く市販されていることも判る。英語では、「食用金箔」を "edible gold foil"、「食用銀箔」を "edible silver foil" という。また、日本では昭和初期から口腔摂取してもよい金銀箔を「薬品用金銀箔」名義で丸薬などのコーティング剤として使っており、これには、湿気除け、カビ除け、長期保存の効果がある(※g)。
11. 猫缶は食用ではありません。日本人は猫を食べたりしていませんので、外国の皆さんはご安心下さい。確かに、「ツナ缶」「サバ缶」「イワシ缶」などと同じ流れで「猫缶」があれば、文字づらにドキッとするかも知れない。「猫の肉入り缶詰」じゃないのかと早合点する人が出てくるのも無理からぬ話ですが、すみません、紛らわしくって。「猫の餌入り(キャットフード入り)缶詰」なんです。
12. 猫缶とは違う意味で、猫鍋も食用ではありません。野生動物だった頃の習性を今でも忘れていない猫ちゃん達が、木の洞(うろ)に似た鍋という容れ物に不思議な魅力を感じてド嵌りしてしまっているわけで、「煮えたかどうだか食べてみよう」なんて話ではないのです。
13. 金魚も食用ではありません、ふつうは。
14. ひよこに自分達の将来を教えるのは鬼畜の所業。いずれ食卓に上がっていただく家禽の皆さまに食育すんなし。
15. スクリーマーは、RPG『ダンジョンマスター』名物、地下の迷宮内で現地調達できる食材のごとき超絶雑魚モンスターなのだ。ブロッコリーのように見えるが、そうではない。『天空の城ラピュタ』の巨大樹でもない。こいつは、ゴソゴソと音を立てながらときどき思い出したように移動する超鈍足・最弱の動物系モンスターで、倒せば食用になる肉を残す。ホヤをさばいて食べられるキミなら、無限増殖する「スクリーマーの肉」(cf.Google検索)を主食にしながら地下迷宮を冒険できるはず!
禁忌な食用
先述したとおり、「食用」という語には「人間の」という条件が大前提として存在している。
それゆえに、人間以外の動物が食べる物について「食用」という語は用いない。
また、肉食動物の獲物にもなりがちであった時代の化石人類の話や創作された世界観での話でない限り、人間が他の生物に喰われる側に回る(食用にされる側に回る)ことは異常な事象であるため、それらは「人喰い」という語で総称されている。
そしてまた、人間が「人肉」を「食用」の対象に含むのは、少なくとも現代の人間社会においては極めてハードルの高いタブー(禁忌)である。
従って、人間が同族である人間の食べる、いわゆる「食人」「カニバリズム」に関しても、「食用」という語は用いない。
ただし、「獣や怪物に人が喰われる」や「獣や怪物に人を喰わせる」、「人が人を喰う」「人に人を喰わせる」などといった事象については、強いタブーが存在するだけに、それが却って刺激的なテーマとして扱われる傾向にもある。
関連イラスト2
1. 我々のご先祖様が、直立二足歩行を始めながらも未だウホウホ言っていた頃、つまり猿人の進化段階にあった頃、割と頻繁に襲われて喰われていただろう肉食獣の第一候補がこいつ。そう、樹上から突然襲い来るヒョウ(豹)なのだ! これぞリアルなマンイーター!
2. 藤子・F・不二雄のSF短編漫画『ミノタウロスの皿』にヒロインとして登場するミノアは、ミノタウロスのような種族が支配する惑星にあって、人間と肉牛の立場が逆転したような価値観の下で生きている、食肉用の少女。我々の世界における肉牛に相当する家畜として生まれた彼女は、食べ頃になれば、当然のこととして命を刈り取られて食肉になる運命にある。
3. 高木命(高木さん)は、pixivユーザー「TNSK」のオリジナルキャラクター。彼女は、自分のお肉(人肉)を売って生計を立てている不老不死の女の子で、gynophagia(ガイノフェイジア|女性を調理して食べるという考えに基づいた性的倒錯)に特化したキャラクター設定がなされている。
脚注
- 出典等
※a1 「食用」 コトバンク > 小学館『精選版 日本国語大辞典』
※a2 「食用」 コトバンク > 小学館『デジタル大辞泉』
※b 「食用」 コトバンク > 小学館『プログレッシブ和英中辞典』第4版
※d "edible" Online Etymology Dictionary(オンライン・エティモロジー・ディクショナリー)
※e 「edible / eatable / palatableの違いと使い方」 「ネイティブと英語について話したこと」
※f 「「精肉」と「生肉」のお肉の違いとは?分かりやすく徹底解説します!」 株式会社CHIYO「丸玄」
※g 「食品用金箔・薬品用金箔」 堀金箔粉株式会社「食品用金箔・薬品用金箔」