🌽概要
イネ科トウモロコシ属に属する穀物。漢字表記は「玉蜀黍」「包谷」「六谷」「稖頭」など。スイートコーンは「野菜」と扱われることもある。一般的には種を食用・飼料用・デンプン原料にされるが、観賞用の「ポッドコーン」というものもある。実の色は日本では黄色と白(あるいはそれらの混じった「バイカラー」)がメジャーだが、赤や紫、黒等も存在する。
植物学的トウモロコシ
高さ2m近くにもなる一年生草本。茎は太い。また葉もイネ科植物としては幅広い。発祥はアメリカ大陸の中央アメリカとされる。
果実は短い柄で茎に付く。果実の先端にはふさふさした毛がついているが、これは雌しべである。すなわち毛がふさふさしているほど多くの実が入った出来の良いトウモロコシであるということになる。
種類と利用法
多様な品種があり、種の性質が著しく異なる。
日本では一般的に「トウモロコシ」と言うと甘くてやわらかいスイートコーン(甘味種)を思い浮かべると思われる。スイートコーンは野菜として流通しており、新鮮なうちに茹でたり焼いたりして食べる。なかには生のままで食べられる品種もある。また若いうちに摘んでヤングコーンとして軸ごと食べる方法もある。そのまま食べられる種類のトウモロコシとしては他にワキシーコーン(糯種)というものがあり、モチモチした食感が特徴的だが日本ではマイナー。
世界的にはデントコーン(馬歯種)の栽培が最も多いが、これは茹でても硬くて人間には食べられず、日本では主に飼料用である(北海道での栽培が多い)。デントコーンは北米で特に大量に生産され、トウモロコシデンプンである「コーンスターチ」や異性化糖(コーンシロップ)の原料にもされる。
フリントコーン(硬粒種)は乾燥させて粉に挽くなどの加工をしてから、ポレンタというお粥や、薄焼きのトルティーヤにして食べる。ポップコーン(爆裂種)は未加工の状態ではほとんど出回っていないが、加熱して爆ぜさせたスナック菓子としては馴染み深い。
トウモロコシを使った酒としてはバーボンウイスキーが知られるほか、アンデス地方では古くからチチャと呼ばれる口噛み酒が伝統的な祭礼に使われていた。
実以外の利用
雌しべは利尿薬になり、体内の余計なカリウムや塩分を排出してくれるという。「とうもろこしのひげ茶」で検索すればすぐに見つかる。
実を取った後の芯はプラスチック原料やバイオエタノールなど化学原料として用いられる。
主食にするときの注意
高カロリーで収穫率が高く主食として申し分のない穀物だが、含有するナイアシン(ビタミンB3)が吸収しにくい形で固定されており、ナイアシン誘導体であるトリプトファンも少ないという難点がある。
トウモロコシが含んでいるナイアシンを利用したい場合、「石灰水や木灰水に一晩浸す」・「調理中に木灰の上澄みを加えて煮込む」などのアルカリ処理(ニシュタマリゼーション)をして含有ナイアシンを吸収しやすくすることが必要になる。
もしそのひと手間をせずにトウモロコシばかり食べていると、口内炎、皮膚炎、精神障害、消化器異常といった全身をむしばむビタミンB3欠乏症にかかってしまう。
トウモロコシを主食にしていた中央アメリカの先住民は収穫したトウモロコシ種子にアルカリ処理を行い、さらにインゲン豆というビタミン・アミノ酸にすぐれた副食との併せ技でナイアシン(の他に、必須アミノ酸であるリシンなど。主食穀物はリシンが足りない場合が多い)を補って栄養バランスを保っていた。
それを知らずに持ち帰ったヨーロッパ人は前述のビタミンB3欠乏症に罹患した。
特に小麦が取れずトウモロコシを主食にした北部イタリアでは、重症ビタミンB3欠乏症がペラグラ(イタリア語で「皮膚の痛み」を意味する)と呼ばれ、猛威を振るった。
魚介類や各種豆類などの副食が豊富な環境であればナイアシンが補えるので問題ないが、トウモロコシばかり摂取している北朝鮮北部の農村でペラグラが広がっているという報告がある。
呼び名
……これらはすべて、日本におけるトウモロコシの呼び名である。非常に多様な呼び名があることがお分かり頂けるだろうか。
関連タグ
コーンスナック コーンスープ/コーンポタージュ バターコーン 焼きとうもろこし