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概要編集

捕鯨とは、クジラ捕獲することである。イルカ漁を含む。

また、それとは別に下記のことを指す場合もある。


捕鯨問題編集

アメリカ合衆国オーストラリアフランススペインブラジルなどでは反捕鯨運動が盛んである。これらの国は、過去に鯨油目的で大規模な捕鯨を行っていた(油を採った後の鯨肉は捨てていた)が、先住民を除いてクジラを食用とする文化が存在しない(後述)


東アジアの日本、北欧のノルウェーアイスランドデンマーク領フェロー諸島及びグリーンランドではクジラ肉を食べる文化があるため現在でも捕鯨が行われる。北極圏に面する国々、アメリカロシア等は先住民の捕鯨は認めているが商業流通は認めていない。


日本とノルウェーとアイスランドは商業捕鯨再開を目指して足並みを揃えていたが、日本は2018年12月に長年加盟していたIWC(国際捕鯨委員会)を脱退して商業捕鯨を再開する決定を下した。また、カナダは1982年にIWCを脱退している。

韓国もクジラを食用とする文化があるが、日本の捕鯨に反対する立場から自国を非捕鯨国であるとしており、「網に偶然掛かってきてしまった鯨のみ」食用にしていると主張している(とは言うものの、韓国国内にはクジラの専門料理店が数多く存在し、「偶然掛かった」にしては不自然なぐらい多数の鯨が消費されている事実もあり、意図的に捕鯨を行っているものとみられる)。

ただし、「混獲」と称した疑似捕鯨は韓国よりもむしろ日本の方が遥かに根深い。韓国の混獲事情と同様の統計を取れば、当然だが日本の方が遥かに数が多く、複数の絶滅危惧種がイルカ漁の道具を用いて密漁されていることも判明している。また、韓国は2018年に鯨類の混獲へのレスキュー隊を組織したり、沿岸警備隊が密猟を毎年取り締まっており、実際に逮捕者を続々と挙げている。

反捕鯨運動は「環境保護に名を借りた反日運動」であるとする言説もあるが、実際には日本ばかりをターゲットにしているわけではない。アイスランドやノルウェーでもシーシェパードなどの反捕鯨団体の抗議活動は盛んで、捕鯨船を体当たりで沈没させられた事件も起っている上に、船のみならず近海で捕った鯨を解体する為の施設などの建築物への攻撃も行なわれている。

ただし、シーシェパードはそもそもカナダのアザラシ猟への抗議を目的として発足した団体であり、ロシアでは反捕鯨団体は容赦なく銃撃されるため、現在ではロシアでの抗議活動は行なわれていない(過去はやっていた

アメリカ合衆国やカナダでは、先住民族のインディアンエスキモーの沿岸捕鯨が許可されているが、反捕鯨団体はこれにも抗議行動を行っている。

もちろん、どの国の捕鯨への攻撃が大規模/激しいかは「その団体にとって実行しやすいか?」などの要因も有る以上、例えば、ある反捕鯨団体がA国とB国の捕鯨船・捕鯨施設を攻撃した場合、A国の方の被害が圧倒的に大きかったからと言っても、その反捕鯨団体がA国の方をより敵視しているとは限らない。

日本では「クジラは捨てるところがない」と言われ、鯨ひげ内臓など余すところなく活用しており、捕鯨の歴史は紀元前13,000年頃の縄文時代以前から始まる。鯨の体内から稀に採取する事が出来る高品質の「竜涎香」は、現代ではその希少性から数千万円から数億円ほどの高額で取引される場合がある。

平安時代以降、仏教伝来によって「殺生禁止」が一般的となった日本においては山中で穫れる鳥や魚肉が貴重な動物性タンパク質の源だった(詳細はこちらを参照)

温暖な日本で冷凍鯨肉の流通が始まったのは、19世紀以降の熱力学の発展により冷蔵手段が一般化した昭和以降であり、それまでは日本でも産業面では油が主目的であり、腐敗しやすいため保管に適さない肉の部分が捨られていた割合も実際は多かった。

これに対し、土地の大部分が北緯40度より北方に位置するため(秋田・岩手より北側、大部分が青森北海道と同じ)大部分が寒冷な気候の欧州では、古来より食料に依存し、乳製品や農耕用としての需要から飼育と食肉文化が発達していた。

沿岸部に居た鯨を取り尽くしてしまって遠洋へと漁場が移動するにつれ、冷蔵冷凍技術がない当時においては持ち帰りが困難となり、徐々に食用とすることができなくなっていった。なお、鯨肉が利用されなくなったにもかかわらず捕鯨が継続された理由は、鯨油やクジラヒゲなどに工業原料としての価値があったためである。そして沿岸から離れる過程で、鯨を食用と見る発想そのものが失われていった

鯨を食べる文化は日本でも地域により差があったので、「古来から日本はクジラの隅から隅まで有効活用したが、西洋人は鯨油目的で油を搾った後は捨てていた」という理解は、「食肉文化においては」全く正しいという訳ではない。

また、日本や中国の漁村で(恵比寿竜王竜宮信仰等により)捕鯨がタブーとされて地方が存在した事も判明している。明治時代の近代捕鯨初期には、肉や血で海を汚す捕鯨業者と他の漁業との軋轢も多く、漁民らが暴動を起こした事も複数ある(鮫浦事件が特に有名)。また、「親子鯨を捕らない」や「西洋捕鯨のせいで日本の捕鯨が衰退した」などは近年では都市伝説であり、積極的に親子鯨を捕っていたりセミクジラコククジラなどは古式捕鯨でも殲滅されつつあった可能性が指摘されている。

江戸時代の捕鯨は、油脂(照明農薬などの用途)を主目的にした組織的で少なからぬ人手が必要になる産業であり(例えば鯨を捕る際には船団で行なう場合が多く、鯨から油脂を抽出する作業も工数を要した)、業者の帳簿などの記録も残っているが(要は人や金銭や必要な物資・資材を管理する為に、ちゃんとした文書や帳簿が必要な規模の産業だったのである)、それを見る限りではマッコウクジラなどの捕りやすく大量の油脂が取れる鯨は、江戸時代でも早い内に日本近海では捕り尽されてしまっている。

明治時代までは、脂肪層を塩蔵した「皮鯨」が主に流通しており、江戸大坂などの都市部でも鯨肉を素材に調理した「鯨鍋」や鯨の吸い物などの料理が知られていたが、軟骨から内臓まで余す所なく食用にしていたのは房総半島などの一部の漁村だけだったようである。

西洋式の捕鯨技術が入ってきた当初は、保存に難があったことにより、油を絞った後の残渣の大半を捨てていたが、これが上述の漁民の軋轢を生み出したこともあり、鯨肉を積極的に使用する機運が高まった。

昭和に入ると、捕鯨母船に冷凍設備が備えられ、鯨肉が全国流通するようになった。特に戦後食糧難時代には鯨肉が貴重なタンパク源としてもてはやされ、学校給食の貴重なおかずとして利用される等、全国に普及した。

鯨肉の味は、鯨の種類・部位・保存法・調理法などによってマチマチであり、塩鯨と呼ばれる、保存性が良いためかつて日本で広く流通していた鯨肉の塩漬は、はっきり言ってタンパク質を摂取する為の食品ではなく、現代の日本人にとっては塩分を摂取する為の食品にしか思えないレベルで塩の味しかしない(生肉ではなく塩漬けなので、当たり前である。別の食物で例えれば、塩味のしない塩など無い。とは言え、塩鯨の塩味は現代の一般的な辛塩の塩鮭どころの話ではない)

一方、建国(1776年)から2世紀少々しか経っていないアメリカ合衆国では、鯨肉を食用とする習慣がないために全国流通することはなかったが、クジラ自体の食用はタブーでも何でもなく、漁師や漁村の関係者らが鯨肉を食べる場合もしばしばあった。アメリカ合衆国の小説白鯨」は、作家ハーマン・メルヴィルが実際にアメリカ捕鯨船に乗って取材した後に執筆された小説で、聖書を大量に引用しながら、アメリカ捕鯨という職業の風習や、捕らえた鯨の処理方法、嗜好で鯨肉を食べちゃう漁師の事まで、詳しく記述されている。詳しく知りたい人には絶好の資料、おすすめ。

しかし、鯨油は19世紀における米国の主産業でも有り、1854年の黒船来航は米国本土から見て太平洋の反対側に位置する日本での捕鯨船への薪・水・食料の補給が目的の一つだった。

美味しんぼ』などで反捕鯨運動とキリスト教を結びつける俗説が広められたが、誤りである。

キリスト教においてクジラやイルカは聖なる動物でも何でもない。神に象って創造されたわけでも霊魂を持っているわけでもないという意味で他の動物と同じである。

聖なるものの象徴にされる動物も存在するが、イエス・キリストの象徴である子羊聖霊の象徴であるも普通に食用である。

キリスト教にはユダヤ教イスラム教のような食料規定が殆ど存在しない。

ただし、ユダヤ教の食の規定カシュルートでは、タコは食べてはいけないとされる「鱗の無い魚」に該当し、イスラム教(主にシーア派)やキリスト教(東方正教会を除く)でも類似の規定によって、タコを食べることが禁忌に触れると考えられている

反捕鯨の思想的背景は、環境保護・アニマルライツ(動物の権利)思想やニューエイジである。

(第2次大戦後における欧米の反捕鯨運動は、むしろ、近代以降の欧米において「キリスト教に代表される旧来の欧米の文化・思想を乗り越える」「東洋思想などの欧米以外の思想を取り込む」事を目的とした思想・運動・文化から派生したもの)


関連タグ編集

クジラ クジラ目 漁業

ウェラーマン:19世紀頃の捕鯨を題材にしたニュージーランド民謡

美味しんぼ 捕鯨トリオ

和歌山県 二階俊博

ハープーン:アメリカの対艦ミサイル。名は大型のを発射する捕鯨砲に由来する。

22号対水上電探大日本帝国海軍で使用された対水上レーダー。正式名は「仮称二号電波探信儀二型」と言い、終戦直後はGHQに航空機やレーダーに関する研究・開発・生産が禁止されていたため、当時の食糧危機を解消するために許可された捕鯨船へ搭載された。

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