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コククジラ

こくくじら

ヒゲクジラ亜目コククジラ科に属するクジラ。コククジラ科唯一の種である。
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概要

(餌の影響からか)ヒゲクジラとしては小型なので、和名ではコク、コクジラ、チゴクジラとも呼ばれる。漢字では『克鯨』、『児童鯨』と表記する。
体長は12~15m、体重は40t弱。体表は灰色だが、ある程度年を経た個体は、全身にフジツボやクジラジラミなどの寄生生物を付着させているため、白のまだら模様になっている。尾部の背面には数個の小さな瘤(こぶ)が連なっており、背びれはない。寿命は50-60年と考えられているが、他の鯨の事例を考慮すると、実際は人間より長生きなのかもしれない。また、ヒゲクジラでは唯一、上あごが下あごよりも長く、畝もほぼない(2本が喉元に走っている)。クリーム色のヒゲ板は硬くて短い。食事の関係で、右利きが多いため、フジツボなどの付着が左右に偏りがはっきりしている。

これらのことから、ヒゲクジラ類でもかなり原始的な名残を残しているとされる。

  • もっとも原始的なのはコセミクジラで、最近になって実は絶滅した原始的なクジラの生き残りであることが判明し、新たな「生きた化石」となった。この事により、なぜあんなにも小型なのかが説明がつくかもしれない。

いわゆる3P型という特徴的な交配形態をしている。これは、もう一頭の雄が別の雄と雌の交尾を下から支え、そして雄同士がポジションを交代するというものである(参照)。平和的な乱交という意味では、たとえば他にセミクジラが知られる。

東側と西側の個体群とでは、実は亜種レベルに近い差異が骨やプロポーション、遺伝子的に存在したのではとされており、アイヌの記録などでも東側個体群より黒っぽいカラーリングがあった可能性がある。この「黒いコククジラ」は、近年にも本来の大西洋個体群の分布である北極地方でも見られている。近年日本で確認されてきた個体の全ては東側の特徴を持っていり、非常にやせ細っていた。つまり、元々のアジア系のコククジラは、現在は既に絶滅したか機能的絶滅に近い状態に陥った可能性がある。日本の捕鯨では「アオサギ」など3種類ほどに分類されていたが、科学的な根拠は不明。

悪魔の魚(デビルフィッシュ)」や「鬼神」など、不名誉な呼び名が付けられたこともあったが、これらはおそらく、捕鯨時代、子供を守ろうとして人間と戦った母親の姿に由来している。

韓国では、お産のお供に海草を食べるという逸話があり、海草の効能を人間がそこから学んだという逸話もある。

彼らは餌の形態からか、大型の鯨類では最も沿岸に依存する鯨種と言っても過言ではない。外洋や深い海域に出ること(ほとんど)なく、沿岸部を南北に往復し、2万kmを回遊する(現生哺乳類の年間の回遊距離としては、おそらく最長のものであるが、沿岸線に沿った回遊であるのも長距離に無関係ではないのかもしれない)。

現在生存している北太平洋の個体群は、アジア側の沿岸を回遊する西の系統(最新の推定で150頭弱)と、北米側の沿岸を回遊する東の系統(2万頭弱)とに分かれる。西の系統は、夏はオホーツク海で過ごし、冬に中国広東地方の沖で繁殖する。春と秋の回遊時には、朝鮮近海からロシアと日本の沿岸を通過する。東の系統はカリフォルニア州とメキシコの沿岸を繁殖場とする。カナダ沿岸には少数の定住個体群がいるが、昔は少なくとも中国沿岸にもいたし、もしかしたら日本沿岸や大西洋などほかにもいたかもしれない。



ホエールウォッチングの人々がボートで訪れると、積極的に寄ってきて体をさわらせてくれる。人懐っこいクジラは多けれど、自ら触りに来るのは他にはたとえばセミクジラマッコウクジラなど決して多くない。しかも、大人も積極的に触れ合いにくるのは更に珍しい。そもそも、ホエールウォッチングという業界自体がこの種を対象に、一人の漁師が始めたことがきっかけに世界に広まった。「ホエール・タッチング」が法律で許可されているのは、世界でもメキシコの世界遺産「エル・ビスカイノのクジラ保護区」だけである。世界のコククジラの半分がここで生まれる。
  • 鯨類学者の間でもあまり知られていないが、コルテス海にも繁殖場が少なくとも2ヵ所(ソノラとシナロア)、おそらく1950~80または90年代まで存在したが現在は不明。

また前述の通り沿岸棲であり、時には河川や水路に入り込んでしまう。この場合、海水には存在しない細菌などにより感染症を引き起こしたり衰弱して死んでしまうこともある。ただし、シャチをやりすごすために自ら?浜辺に乗り上げて自力で海中に戻るという離れ業もやってのける。
  • 日本にも伝わる、「鯨が川をさかのぼった」という昔話も、コククジラのほかセミクジラやザトウクジラ、その他多くの種類で実際に事例があるため、案外事実に基づいた話なのかもしれない。
その食性も、他のヒゲクジラがプランクトンを捕食するのに対し、コククジラは海底の泥や砂をヒゲでこしとることによってカニなどのベントス(底生動物)を捕食する。そのため、クジラヒゲは短く硬いものとなっている。

かつては北大西洋にも分布していたが、捕鯨の影響で18世紀に絶滅した。近年の研究では、かつて何度もあった温暖化の時期に合わせて数回に渡って太平洋から大西洋に移住したものと考えられており、現在始まっている再定着もその流れなのかもしれない(故に「地球温暖化の勝者」と言われることもある)。

北太平洋でも同じく捕鯨、東側ではアメリカとカナダ、西側ではほぼ日本の影響で絶滅の危機にさらされた((おそらく)北朝鮮・韓国・中国でも、東朝鮮湾や蔚山や大亜湾など近代の商業捕鯨の基地の数々は日本が設立運営)が、東の系統は第二次世界大戦後の積極的な保護活動によってなんとか回復してきた(しかし未だ人間活動の影響を受けている)。しかし西の系統はほぼ絶滅寸前で、東アジア(日本を含む)の沿岸の開発の影響を受けるのだが、更に現在樺太島北部で行われているロシアの油田開発(サハリン2)によって絶滅の危機が迫っている。

かつては、現在の5倍から10倍以上の数がいたのではないかと思われている。東側の個体群は、90年代に2万頭を超えたが、環境収容力が人間の影響がなかった時代と比べると大幅に低下しているので、かなりの数が餓死して、現在は2万頭弱程度で安定している。

バンクーバー島の辺りには定住個体群が存在するが、かつては中国の沿岸にも年中棲息していた。同様の群れは、韓国や日本にも存在したと考えられている。たとえば、日本では春から夏の東北や北海道では風物詩の一つに数えられるほど良く見れたとされる。また、日本で最初に捕鯨が始まったのは伊勢・三河地方だが、コククジラはおそらく最初に標的とされた種類であるだろう(他にはセミクジラザトウクジラなどが考えられる)。

東京湾や瀬戸内海でも多く見られた。沖縄に回遊していたのかは、現段階では不明。未確認の目撃が宮古島でもある。ベトナムや台湾でも近年の調査で、過去の分布が発見されている。

再定着



(東京湾のコククジラ)

北米個体群は、海生哺乳類の回復が成功した珍しい例であり、大型哺乳類全体でも指折りの成功事例とされる。が、大西洋では絶滅し、アジア系は130~150頭前後と絶滅の危機に曝されている。

近年、北米系の回復と温暖化により、大西洋やアジアに再定着が始まっている。
これまで、北米系とアジア系は別の存在であり、形態的にも違いがあるとされてきたが、近年、アジア系で判明している唯一の通常分布域であるサハリンから、実は北米系の分布に回遊する個体の存在が判明した。

ちなみに、コククジラがかつて大西洋に存在した理由も、何回か押し寄せた温暖化による太平洋からの移住が原因である。日本では、2015年まではめったに確認されてこなかったが、2015年以降は急激に増加した(といっても年平均で2~3頭だが)。ただし、伊豆諸島などこれまで確認されてこなかった海域での確認がある。日本海では、比較的近年まで回遊ルートが存在しなかったとされてきたが、いくつかの事例の確認と2014-2015年に2年連続で同一個体が新潟県沿岸に回遊し滞在した(2014年はおそらく2頭)。日本海での生存記録はこれが初めてであり、コククジラが2年連続で、しかも同じ個体が見られたことも日本海では初めてであった。駿河湾・相模湾~伊豆諸島にも同一個体+α が2015年以降毎年回遊してきている。

韓国では天然記念物に指定されているが、1977年代以降は確認されていない。ただし、2015年に撮影されたと思われる動画が発見され(参照)、2011年に中国軍の調査で沖縄の北方で、2時間で最大11頭を確認したという記録があり、ロシア沿岸の日本海や間宮海峡でも80年代にかなりの頭数が記録されている。

マカ族の生存捕鯨が、アジアや大西洋への再定着を阻害しているだろうという意見もある。

大西洋では、2010年にいきなりイスラエルバルセロナ沖に現れたので誰もが仰天し、エイプリルフールネタだと思ったほどの出来事であった。またその後に南半球(ナミビア)で初めて確認され、これまた生物史の常識を覆す仰天な事件であった。

そのほか



ミンククジラ同様、水族館での飼育事例が存在する珍しいヒゲクジラで、過去2度の保護と放流が行われた。「Gigi」と「J.J.」という個体である。とくに「J.J.」は、野生に返す時には体長9.43mに達しており、人類が飼育したことのある最大の生物である(沖縄の美ら海水族館のジンベイザメですら及ばない)。自力で食事をする訓練を行うまでは、ミルクや餌を手渡しで食べていた(動画の01:52など)。

上記の影響からか、水族館を作成するゲームなどでは、飼育可能生物にコククジラが含まれる場合がある。

外部リンク


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ヒゲクジラ
アキシマクジラ東京都昭島市で発見された近縁種。

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