ザトウクジラ
ざとうくじら
クジラ目ヒゲクジラ亜目ナガスクジラ科のクジラの一種。漢字では『座頭鯨』と表記する。体長は11〜16m、体重は30t。稀に(南半球で最高に恵まれた状態では)20m/60t以上という巨体に成長するものもいる中型または大型のクジラである。戦艦のような流線形のフォルムと、体長の実に1/3に匹敵する大きな胸鰭、ナガスクジラ科独特の腹の縦縞にしゃくれた下あご、上あごの根元に位置する小さな目や、あごの周囲に発生するフジツボのような突起など、ほかのクジラとは違った様々な特徴を持つ。5〜10頭ほどの群れを形成して生活している。
『ブリーチング』と呼ばれる「仰向けになりながら海上から飛び上がる」シンクロナイズドスイミングのようなダイナミックで繊細な動きが特徴。ザトウクジラの代名詞というべき動きだが、何故ブリーチングをするかについては不明な点が多い。現状では求愛や威嚇、単に遊んでいるだけなど様々な見解が出ている。このほかにも、ペックスラップ(胸鰭で水面を打つ)、テールスラップ(尾鰭で水面を打つ)、ヘッドスラップ(頭で水面を打つ)、ペダングルスラップ(尾鰭の横飛び上げ)、スパイホップ(水中から頭を出し水上の状況を観る)など様々な行動をする。
主食はオキアミなどのプランクトンや、サバ・ニシン・カラフトシシャモといった小型・中型の回遊魚などである。そして捕食の際に、「バブルネットフィーディング」という手法で獲物を一網打尽にして捕食する習性がある。バブルネットフィーディングは、魚の群れの下に潜り込んで口から泡を吹き、その泡で壁を形成して魚の群れを海面まで包囲し、あとはクジラたちがその群れに向かって突撃して一網打尽に捕食するという、緻密な連係プレーを用いながらのダイナミックな食事法である。
近年、「トラップ・フィーディング」という方法を取得した。
水面で大口を開けたまま直立し、獲物が口に入ってくるのをジッと待つ採餌法である。
周囲のクジラの仲間たちが獲物となる魚の群れを中心に追いやると
魚たちは動かないクジラの口を避難所と勘違いして次々に逃げ込むという。
そしてブリーチング、バブルネットフィーディングと並んでザトウクジラの特徴的な行動とされるのが『歌』である。一時期、「癒しブーム」で流行した「クジラの歌」があるが、その歌を歌っていたクジラこそザトウクジラである。ほかのクジラも鳴き声を用いたコミュニケーションをとるが、現在のところ歌を歌うことが確認されているのはザトウクジラおよびセミクジラの2種だけである。一曲当たり数分から30分近で、それを繰り返し歌い続ける。長いものになると20時間近くも歌っているという。一定の音階や規則性があり、人間の歌う歌と後世は非常に似ている。また棲む地域によって歌の構成が違っており、別の地域のザトウクジラ同士では歌を理解できないという。その伝達距離は、なんと地球の裏側というから凄いものである···!(ちなみにシロナガスクジラでは、千km単位先の相手と会話できるレベルである)。
- 近年の研究の結果、鯨類の使い分ける言語数は人間よりも多いことが判明し、記憶力など知能の部分的な分野では人間を上回っている可能性が出てきた。
(イタチザメから著名な鯨類学者のナン・ハウザー氏を守ろうとしているのではないかと推測される行動(参照)(解説動画))
また近年ザトウクジラには、他の生き物の危機を救うという驚くべき習性が確認された(以前から他の鯨類や動物にも利他精神は知られてきた)。ザトウクジラやコククジラは毎年アリューシャン列島へ渡りを行うが、この近海で天敵のシャチに襲われることがよくある。あるザトウクジラの群れは母親とはぐれシャチの群れに襲われていたコククジラの子供を、種類も違うのにシャチの攻撃から庇い助けたのだ。また南極では、クジラでもないアザラシがシャチに襲われていたところを、仰向けになりアザラシを自らの腹に乗せて、シャチから守った行動が確認されている。彼らにも深い博愛精神があるようだ。
- なお、利他や博愛精神の有無では、ザトウクジラは鯨類では決して特別な部類ではなく、むしろ全ての鯨類に博愛精神がある可能性も示唆されてきている。なお、博愛や利他は昆虫や鳥類、魚類も持っていることが明らかになりつつある。
シロナガスクジラやナガスクジラ、セミクジラなどとの間の異種姦も行い、とくにナガスクジラ系統とはハイブリッドを産む事があるまた、(Toufouという名のシロナガスクジラとのハイブリッド。