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※近絶滅種とは、すなわち「絶滅寸前」ということである。
概要
セミクジラ属は、温和で人懐っこい性質から「地球上で最も優しい生物」と称される場合がある。人懐っこさの点では、コククジラやザトウクジラやミンククジラに比肩するかそれ以上ともされている。
- 流石にコククジラ程のスキンシップができるかどうかは不明ではある。
- 他の種類の生物をシャチやサメから守るザトウクジラも「海のヒーロー」と呼ばれている。
- 全世界で一億回以上再生された動画
遺伝子分類学の研究では、セミクジラはタイセイヨウセミクジラよりもミナミセミクジラとより近縁である事が分かっている。
3種の形態上での差異はほとんど無いが、頭部の形状、頭部隆起物(ケロシティ)の位置や量、付着生物の種類、体長および体色、ひげ板、頭骨や胸鰭の形状などに若干の違いが見られる。
また、白鯨や背中側に白い模様を持つ個体は南半球だけに確認されていて、しかもかなり普遍的に発生する。
名称
まず和名であるが、断じて「蝉鯨」ではない。
英名の「Right Whale」は、「真の鯨」「良い鯨」「捕鯨に都合の良い鯨」を意味するが、この名称には以下の背景がある。
- 好奇心旺盛で人懐っこい性格である
- 泳ぎが遅い
- 海岸近くに現れる
- 脂肪が多いために死ぬと海面に浮かぶ
環境意識の高まった近年では逆に、「アンブレラ種」や「象徴種」としての本種の秘める可能性から、「保護をするのに適した鯨」という意味を込めて「Right Whale」と呼ばれる事がある。
- 「アンブレラ種」や「象徴種」とは、その生物種を保護する事によって、生態系全体や他の種類の生物の保護にも繋がる生物種という意味である。
ラテン語での学名「Eubalaena」は「真の鯨」「良い鯨」といった意味がある。種小名は、「japonica(セミクジラ)」は「日本列島の~」、「glacialis(タイセイヨウセミクジラ)」は「北の~」や「氷の海の~」、「australis」は「南の~」や「オーストラリア / オセアニアの~」、という意味に各々なる。
日本の古式捕鯨でも「本魚」ともよばれていた。また、全国でもきわめて珍しい苗字の一つである「勢見月」は、「セミクジラを突く(殺す)」という意味になっている。
形態
(海岸からも観察できる事がよくわかる動画。00:37でも奥でジャンプしている。)
同様に沿岸性であるコククジラやザトウクジラ、ニタリクジラ等よりもかなり大型である。背びれも腹部の畝も無い。また、各部位の形状に個体差または性差や年齢差がある。なお、ボディや尾びれの形・光沢はクジラ類でも特に美しい部類の一種と言われる事もある。
セミクジラが(記録上では)一番大きく、ミナミセミクジラが(記録上では)一番小さいため、平均的に1m前後の差がある。
- 生物の大きさは環境のヘルシー度と餌の供給量に比例しており、たとえばシロナガスクジラは最大の種類と最小種では最大体長に7~8m近い差がある。
- シロナガスクジラやマッコウクジラ、ゾウなどがそうであった様に、セミクジラも人間の影響がない時代よりは小型化した可能性がある。ネアンデルタール人の誕生以来、人間による影響からか象や鯨類など大型生物は押し並べて小型化したと言われている。
(2023年に23年ぶりに東京湾で確認された際の動画)
顔面のコブ状の物体「ケロシティ」は陸棲時の眉毛や髭などの名残とも言われ、人間に最も近い顔をしたクジラとも言えなくもない。また、下顎には今も毛が生えている。「ケロシティ」は物質的には人間の爪とほぼ同じであり、これらを中心にまとわりつくセミクジラにしか付着しない特有の寄生生物もいる。
なお、これらの生物に付着されていても特に目立った痛みや痒みは無いらしく、シャチやサメに対する護身用の武器にしているという説がある。
ケロシティの形状は人間の指紋同様に各個体に特有であり、個体識別に重用されている。「顔」で顕著な識別ができるという意味では、人間含め数少ない存在でもある。個体によっては「ガンダルフ」や「ジェダイ」などの名前が付けられている。
セミクジラの減少は、付着する生物の減少にも繋がりかねない可能性が指摘されてもいる。一見、人間からしたら面倒くさそうなので寄生生物の減少は良さげにも聞こえるが、それはあくまで体内などに寄生したり宿主を侵食する生物の場合であり、こぶの上に搭載する生物の減少は、護身用の手段の減少とも言えるのでまずいことかもしれないのだ。
繁殖事情
世界で最も精巣が大きい動物で、片側500kg(計1トン)もある。陰茎の長さも4mになり、一度に放出する精子も5リットル弱になるとされる。
世界一の精巣の理由は、稀有な繁殖形態にある。極めて珍しい規律立った乱交型であり、一頭の雌と複数の雄が順番に交配する。
これは、暴力的な争いを行わず、より多くの精子で他の雄の精子を洗い流す事が目的とされる、いわば精子の量での争いである。また、交尾の際に雄が他の雄の交尾をサポートする場合もあるとされる。
そのため、おそらくはあたりの海面が若干白濁することもある。似たようなケースに、コククジラのいわゆる3P型もある。
生態
(口に絡まったプラスチックを取ってほしいと人間に助けを求めて、人間が手を伸ばしやすいように体勢を調整する場面、実際にニュースで広く報道された)
北太平洋のセミクジラはあまりにも数が少なすぎるため、ほとんどの生息状況が判明していない。 台湾やベトナムやフィリピンやマリアナ諸島など、100年~200年以上も記録がない地域もあるとされる。
他のセミクジラ属やホッキョククジラと照らし合わせると、本来は沿岸性が強く、平均的な遊泳速度は遅いが活発的で、音には敏感だが、とても人懐っこく遊び好きであると思われる。ホエールウォッチングでも特に人気の種類の一種である。
非常に穏やかで親切的な性質を持ち、例えば水中で自ら積極的に人間を背中に乗せる、人間が怪我をしないように自ら避けてくれたり、人間側からのハラスメントを退ける用途で威嚇行動を見せても大事にならないように加減してくれる事もある。
孤児か迷子の子供を、全く関係のない母鯨が交代制で育てることもある(子鯨をもう一頭育てるということは、自然界では自分と自分の子供の両方の命を危険に晒す行為である)。
また、ザトウクジラの子供の面倒を見ていたと思わしい観察事例もある。
(カヤックごと人間を背中に乗せる場面)
自分の生まれた湾や海岸、半島や海峡等に定期的に帰ってくるという習性も持つ。捕鯨や人間活動によって、行動様態にどのような影響を及ぼしてきたかは未知数であるが、他の鯨類にも見られるように人間や船舶を避けるようになったり、本来の生息圏を放棄したり沖合性に移行する傾向が見られると思われる。これらの特徴は、他の鯨種よりも敏感だと言われていた。
- 捕鯨時代は、セミクジラに限らず、たとえばコククジラやキタトックリクジラなど、人懐っこさが仇となって激減したクジラやイルカが多かった。似たような事例は、ステラーカイギュウやドードー、アホウドリ、ウバザメやジンベエザメ、マンタ、コイ、ウナギなど、他の種類の生物でも多数存在する。
なお、本来は人間の手の届く距離にまで海岸に近づいたり港や運河や河口などにも良く入り込み、特に南半球では海水浴場に良く遊びに来るため、法律で許される範囲内なら一緒に泳ぐ事も可能になりつつある(しかし、鯨への影響を考慮して反対も多い)。しかし、友好的ではあるものの、親しき仲にも礼儀ありである。
(このように許可なく触ったり背中に乗るなどの行為は様々な事故の元となるので厳禁である。現地の法律や条例によっては罰金刑が制定されていることもある。)
他のヒゲクジラ類やイルカ類、アザラシ類、ウバザメ等の他の生物とも行動を共にしており、ザトウクジラとは交尾をする事もある。しかし、セミクジラが疲れていたり眠い場合にイルカが遊びに来ると煩わしいのか避けようとすることもある。
なお、ホホジロザメなどは自分よりも大きなセミクジラが近づくと逃げるという観察例もある。
セミクジラに限らず鯨類の尾の一撃は生物界最強の攻撃力を有し、例えばセミクジラなら、未成熟の個体(10m程度)がシャチの成熟雄(7-9m程度)を一撃で撃退して空中に10m近く跳ね上げたという観察記録があり、後で測定に成功したパワーは換算すると大型ダンプを軽く跳ね飛ばす威力があったという。
また、マッコウクジラのごとく、天敵に対して「マーガレット・フォーメーション」という円陣を組んで対抗する光景も見られたことがある。
- 魚食性のシャチは他の鯨類やアザラシ等を襲わずに一緒に遊んだりする光景も目撃されている。また、哺乳類を狙うタイプのシャチも決して無敵というわけではなく、大人の鯨に対しては群れで襲いかかっても撃退されたり、ザトウクジラには逆に襲撃されたり、より小さなヒレナガゴンドウには逆に集中的に攻撃されて退散することが判明している。
生息状況
セミクジラとタイセイヨウセミクジラは絶滅寸前とされており、20年 - 200年以内に絶滅する可能性があるとも言われている。
唯一回復が見られているミナミセミクジラも、絶滅寸前の個体群も存在し、本来の生息数に回復するには100年 - 数百年以上かかるとも言われている。
最近では、地球温暖化による北極海の氷山の減少で、ホッキョククジラと交尾する機会が増えており、雑種が増えてしまうことでセミクジラとタイセイヨウセミクジラの「種」としての絶滅が心配されている。
- もっとも、クジラ目は異種間交配でクライメンイルカ等の新たな種類を輩出しているが。
セミクジラをモチーフとしたキャラクター
数々の神話・伝説にも重要な存在として登場し、ニュージーランドの創造神話(クジラの島の少女)にも携わっているとされる事もある。また、タニファ等の神話生物や、日本の化け鯨や鯨の怨霊などのモデルになったとされる場合もある。水木しげるや藤子不二夫らが特に好む種類でもある等、古今東西において文学や芸術などの対象にもなってきた。
人間にとって「ザ・クジラ」的な扱いを受ける場合も多く、V字型またはハート型の噴気、背びれがなく丸々とした黒一色の体など、一般的な「クジラ」のステレオタイプのイメージは本種に由来する部分が多いのも納得がいく。
- 大海獣:セミクジラに近い頭部形状と畝がない腹部を持つ。水木しげるは他の作品でもセミクジラを描いてきた。
- 鯨神:日本版の『白鯨』的な作品。規格外に巨大な個体(体長30m)を描く点では『T・Pぼん』と似ているのかもしれない。水木しげるの大海獣も、この鯨神に影響を受けている部分がある。また、ガメラとの関連性も存在しており、水木しげる作品とガメラ作品は関係性を持つ。
- アルクジラ・ハルクジラ:セミクジラがモチーフの一部だと思われる。
- ウイン:トールキンの神話体系における、ウルモに仕える最大最強最古の鯨とされる神獣。上記の通り、「ガンダルフ」と名付けられた個体が存在するが、ケロシティの形状が魔法使いの杖を思わせる為の命名であり、ウインとはとくに関係がない。
- 『T・Pぼん』にて登場した雌「レビヤタン」(ヘブライ語で「クジラ」を意味する)はタイセイヨウセミクジラとされていたが、見た目だと完全にホッキョククジラ寄りである。イギリスの話だが、近年はホッキョククジラが実際に現れており、逆にタイセイヨウセミクジラはヨーロッパやアフリカ側ではほぼ絶滅しているため、ホッキョククジラの方が近年のヨーロッパでは観察事例が多いという皮肉な状況になっている。
- 『T・Pぼん』では、他のセミクジラが45フィート(13.716m)に対してレビヤタンは80フィート(24.384m)あったと表現されている。ホッキョククジラには、24m以上という記録も残されているが、これらの記録が正確なのかは不明である。
余談
- コセミクジラは全く関係がない種類とされる。
- 正面から見た時に、アングルによっては王蟲のように見える事もある。
- セミクジラとホッキョククジラの特徴的な口の形は、その用途と見た目から、フラミンゴと収斂進化の可能性が指摘されている。
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北瀬みくじ:本種が名前の由来。