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セミクジラ

せみくじら

ヒゲクジラ亜目セミクジラ科セミクジラ属に属するクジラの1種。温帯から亜寒帯の沿岸に生息する。日本哺乳類学会では絶滅危惧種に登録されている。近縁種に、同じセミクジラ属のタイセイヨウセミクジラとミナミセミクジラ、ホッキョククジラ属のホッキョククジラがいる。
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概要

名称

泳ぎが遅く沿岸性であるうえ、脂肪が多いために死ぬと海面に浮かぶ、更には好奇心旺盛で人懐っこいことから捕鯨に「都合がよい鯨」という皮肉を込めて、英名では『Right Whale』と表記する。近年ではこれを逆利用して、アンブレラ種としての本種の秘める可能性から、「保護をするのに適した鯨」という意味を込める事がある。和名では背中の曲線の美しさに由来して『背美鯨』または『勢美鯨』や『背乾鯨』(セクジラ)と表記する。

  • アンブレラ(傘)種とは、その生物種を保護することによって、生態系全体や他の種類の生物の保護にも繋がる生物のことである。

ラテン語での学名 Eubalaena の意は「真の鯨」、「本当の鯨」、「良い鯨」といった意味があり、「クジラの中のクジラ」や「鯨の王」、「偉大な鯨」、「真鲸(中国語)」または「露脊鲸」、「鯨神」、「本魚(日本の古式捕鯨)」などの呼称もある。

ちなみに、北大西洋種の学名は「北の (海の) ~」や「氷の海の~」、南半球種のは「南の (海の) ~」「オーストラリア (=オセアニアの~)」、北太平洋のそれは「日本の(海の)~」という意味に各々なる。

形態

同様に沿岸性であるコククジラザトウクジラニタリクジラ等よりもかなり大型であり、体長13m~18m、体重約60~80tまたはそれ以上になる。頭部が大きく全長の4分の1ほどを占める。口は大きく湾曲し、最大2mを超す長大なクジラヒゲが生えている。腹部には、多くのヒゲクジラ類に存在する畝(腹を前後に走る皮膚の高まった線。シロナガスクジラナガスクジラなどでは多く、ザトウクジラでは少ない)は見られず、背びれも無い。世界で最も精巣が大きい動物で、片側約500kg、合わせて約1トンもある。尾びれの形状に個体差または性差や年齢差がある。

本種(ジャポニカ)は、3種存在するセミクジラ類の中でも最大の種類とされ、ロシアで 19.8m に達する個体が記録されている他に、20.7mで135tという記録や21.3mの記録も少なくとも二つあるが、正確性は不明。ミナミセミクジラが(記録上では)一番小さく、平均的に1m前後の差がある。

  • 生物の大きさは環境のヘルシー度と餌の供給量に比例しており、たとえばシロナガスクジラは最大の種類と最小種では最大体長に7~8m近い差がある(北太平洋と北大西洋のシロナガスは南半球の最大種よりも6~8m近く小さい)。
  • シロナガスクジラやマッコウクジラ、ゾウなどがそうであった様に、セミクジラも人間の影響がない時代よりは小型化した可能性がある。
  • ネアンデルタール人の誕生以来、人間による影響からかや鯨類など大型生物は押し並べて小型化したと言われている。

頭骨の形状、寄生生物の種類と量にもセミクジラ科同士で違いが見られるが、特に付着生物の位地と身体の色は違いが激しく、白鯨は南半球だけに確認されていて、しかもかなり普遍的に発生する。

分類上は他の2種と近縁だが、遺伝子分類学の研究では、タイセイヨウセミクジラよりミナミセミクジラとより近縁である事が分かっている。3種の形態上での差異はほとんど無いが、頭部隆起物(ケロシティ)の位置や量、付着生物の種類、体長および体色、ひげ板、頭骨や胸鰭の形状などに差が見られる。

顔面のケロシティは陸棲時の眉毛やヒゲなどの名残とも言われ、人間に最も近い顔をしたクジラとも言えなくもない。実際に下顎には毛が生えている。ケロシティは性質上は人間の爪とほぼ同じであり、セミクジラにしか付着しない特有の寄生生物もいる。
  • なお、これらの生物に付着されていても特に目立った痛みや痒み等は無いらしく、むしろ積極的に頭に載せて敵への護身用武器にしたり、面倒くさくなったらジャンプしたり岩などに頭を擦りつけて落としたりなど、ある程度自由に搭載が可能らしい。ケロシティの形状は人間の指紋同様に各個体に特有であり、個体識別に重用されている。「顔」で顕著な識別ができるという意味では、人間含め数少ない存在でもある。セミクジラの減少は、付着する生物の減少にも繋がりかねない可能性が指摘されてもいる。一見、人間からしたら面倒くさそうなので寄生生物の減少は良さげにも聞こえるが、それはあくまで体内などに寄生したり宿主を侵食する生物の場合であり、こぶの上に搭載する生物の減少は、護身用の手段の減少とも言えるのでまずいことかもしれないのだ。

セミクジラとホッキョククジラの特徴的な口の形は、その用途と見た目から、フラミンゴとの収れん進化の可能性が指摘されている。

なお、ボディや尾びれの形・光沢は個人的な偏見が入っているかもしれないが、クジラ類でも特に美しいものの一つでもある。

生態

生息数の少なさが起因し、分布など殆どの生態情報が解明されていない。 他のセミクジラ科と照らし合わせると、本来は沿岸性が強く、平均的な遊泳速度は遅いが活発的で、音には敏感だが とても人懐っこく遊び好きであると思われる。

非常に穏やかで親切的な性質を持ち、例えば水中で自ら積極的に人間を背中に乗せる、人間が怪我をしないように自ら避けてくれたり、人間側からのハラスメントを退ける用途で威嚇行動を見せても大事にならないように加減してくれる事も(「世界で最も優しい生物」と称される場合がある)。 孤児を、全く関係のない母鯨が交代制で育てることもある(子鯨をもう一頭育てるということは、自分と自分の子供の両方の命を危険に晒す行為である)。自分の生まれた湾や海岸、半島や海峡などに定期的に帰ってくるという習性も持つ。捕鯨や人間活動によって、行動様態にどのような影響を及ぼしてきたかは未知数であるが、他の鯨類にも見られるように人間や船舶を避けるようになったり、本来の生息圏を放棄したり沖合性に移行する傾向が見られると思われる。これらの特徴は、他の鯨種よりも敏感だと言われていた。



(このように許可なく触ったり背中に乗るなどの行為は罰金と様々な事故の元となるので厳禁である)

なお、極めて健康な棲息状態では冗談抜きで手の届く距離にまで海岸に近づいたり港などにも良く入り込み、特に南半球では海水浴場に良く遊びに来るため、法律で許される範囲内なら一緒に遊ぶことも可能になりつつある。ザトウクジライワシクジラコククジラナガスクジラミンククジラやイルカ類、アザラシ類、ウバザメなど他の鯨類・動物群とも良く採餌や遊び、回遊などの行動を共にしたりするが、セミクジラが疲れていたり眠い場合にイルカが遊びに来ると煩わしいのか避けようとすることもある。なお、ホオジロザメなどはセミクジラが近づくと逃げるという観察例もある。

世界一の精巣の理由は、稀有な繁殖形態にある。繁殖は、極めて 珍しい規律立った乱交型である。一頭の雌と複数の雄が順番に交配する。これは、暴力的な争いを行わず、より多くの精子で他の雄の精子を洗い流す事が目的とされる、いわば精子の量での争いである。そのため、おそらくはあたりの海面が若干白濁してもおかしくない。似たようなケースに、コククジラのいわゆる3P型もある。

セミクジラに限らず鯨類の尾の一撃は生物界最強の攻撃力を有し、例えばセミクジラなら、未成熟の個体(10m程度)がシャチ(8-9m以上?)の成熟雄を一撃で撃退・空中高く(10m近く)跳ね上げたケースがあり、測定に成功したパワーは換算すると大型ダンプを軽く跳ね飛ばす威力があったという。

また、マッコウクジラのごとく、天敵に対して「マーガレット・フォーメーション」という円陣を組んで対抗する光景も見られることがある。

  • 魚食性のシャチは他のクジラ・イルカ類やアザラシ等とも仲が良く、一緒に遊んだり助け合う光景も目撃されている (肉食性のシャチも決して常に最強という訳ではなく、より小さなゴンドウクジラ類やハナゴンドウなどに餌の取り合いの為に追い払われ退散することもある)。

最近では、地球温暖化による北極海の氷山の減少で、タイヘイヨウセミクジラがホッキョククジラの生息圏に進出しつつあり、そのハイブリッドの存在も確認されており、更には北極海経由でタイセイヨウセミクジラの生息圏にも進出する可能性も指摘されているが、クジラ目自体が元々異種間交配で様々な種類を輩出して発展している種であり、更にはタイセイヨウセミクジラ自体が200年以内に絶滅する恐れがあるほど減少している為、タイヘイヨウセミクジラがその救世主になる可能性もある。

余談

数々の神話・伝説やトールキンの神話体系などにも重要な存在として登場し、水木しげる藤子不二夫らが特に好む種類でもあるなど、古今東西において文学や芸術などの対象にもなってきた。人間にとって「ザ・クジラ」的な扱いを受ける場合も多く、V字型またはハート型の噴気、丸々とした黒一色の身体など、一般的な「クジラ」のイメージは本種由来である部分が多いのも納得がいく。

なお、『T・Pぼん』にて登場した雌「レビヤタン」(ヘブライ語で「クジラを意味する」)はセミクジラとされていたが、見た目だと完全にホッキョククジラ寄りである(ハイブリッドかもしれないが)。イギリス沖の話だが、近年はホッキョククジラが実際に現れ始めているし、大西洋の反対側などでは一緒にいることもあるが。他のセミクジラが45フィート(13.716m)に対してレビヤタンは80フィート(24.384m)あったとしている。ホッキョクの方がセミよりも大きくなるという印象は確かにあるし、24mという記録も残されているが、実際にセミ(とくに北太平洋)とホッキョクのどっちの最大個体がより巨大になったのかは不明。もし藤子氏がこれらのサイズを意図的に設定したのなら、氏のリサーチがかなり優れていたのだろうと言える。

関連タグ

クジラ ホッキョククジラ
大海獣 - 水木しげる氏得意のセミクジラ顔
鯨神 - 日本版白鯨的なプロット。また、大映が存続していた時代に、おそらく似たまたは同一の鯨がガメラの仲間の一員として地球を防衛する、というストーリーが構想されたこともあった。

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