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ホッキョククジラ

ほっきょくくじら

ヒゲクジラ亜目セミクジラ科ホッキョククジラ属に属するクジラ。他のクジラが採餌や繁殖のために移動を行うのと異なり、一生を肥沃な北極海で過ごす。近縁種にセミクジラ属がある。
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概要

体格はがっしりしていて暗色の体色をしている。通常は13~17m前後だが、最大では全長20~21mまたはそれ以上に達し、雌は雄よりも大きくなる。肉の脂肪層は他のいかなる動物よりも厚く、平均43-50cmに及ぶ。背びれをもたず、強く湾曲した下顎と細い上顎をもつ。髭板の長さは3mを超え、これはヒゲクジラの中でも最も長い。この髭板は水中の小さな獲物を濾し取るために用いられる。頭がとても大きく、なんと全体長の1/4~1/2もあり、近縁種のセミクジラのプロポーションをより尖らせたものになっている。つまり、リアル2頭身が成り立つこともあるのだ(ある意味では、魚に最も近い進化を遂げたと言えるのかもしれない)。胸ビレはセミクジラよりも小さくより流線型になっている。成獣の目の周りは白くなっており、パンダそっくりである。イッカクに似る尾びれ裏の白い模様は個体ごとに差があり、全くない個体も多い。

このクジラは非常に骨太な頭蓋骨をもち、呼吸する際にこれを使って厚い氷を下からぶち破って砕き穴を開けている。このため、ベルーガなど他の哺乳類から重宝されており、とくにベルーガは遊びの意味も含めてよく一緒に行動している。なおイヌイットによると、彼らはこの方法で60cmの氷の下から浮上することが出来るらしい。また、水中の餌を空気中の匂いから追跡することができるとも言われている。これはイヌイットの伝説だと思われていたが、近年、科学的に判明した。また、鳥の動きを観察しているのかもしれないという意見も。

さらに近年、餌の少ない極海に適応するためか、骨や体の成長を一時的にストップさせて、その分の栄養をヒゲの成長につぎ込む、一時的ではあるが脂肪が体重の半分を占める時期がある、など離れ業を持っていることも判明している。

セミクジラと違いコブ(ケロシティ)が存在せず、頭身も短いのは捕食者が(温暖化以前は)生息地にそんなにこなかったため、武器も素早さも必要なかったのだ。というか、対捕食者のための極地付近の分布に適応したのだ。それがいま、温暖化の影響でシャチがより北方へ進出し、ホッキョククジラ・ベルーガ・イッカクの、シャチへの免疫を持たない種類を脅かし始めている。

分布と生態

ホッキョククジラはヒゲクジラの中で唯一、生涯を北極海およびその周辺で過ごす種であり、ベーリング海南西部で冬季を過ごしている様子がアラスカ沖で見かけられる。ホッキョククジラは春になると流氷の開口部を追って北へ移動し、オキアミや動物プランクトンを餌としながらチュクチ海やボーフォート海へ向かう。泳ぐのが遅く、たいていは単独または最大6頭程度の小さな群で移動を行う。

セミクジラ同様、社会性で攻撃的ではなく、脅威を感じたときには氷の下に逃げこむ。一度の潜水で40分ほど海面下に潜っていられるものの、深くまで潜水を行うとは考えられていない。彼らの天敵は人間とシャチのみである。

普段は北極から離れることはないが、1966年に幼獣が大阪湾に迷い込んだ事もある(おそらくオホーツク海個体群出身)。何とちょうどピッタリ50年後の2015年、一体が知床で確認され、国内初の生存記録となった。それ以前から、化石は北海道で出土しており、流氷の到達範囲には出現する事が知られていたので、「いつか知床にも現れるんじゃね?」と予想していた人もいたとか。また、近年では知床と同じ程度の緯度のアメリカやカナダ、イギリスにアイルランド、ベルギーにオランダ、フランスにも出現しており、16~17世紀に北米大陸(セントローレンス川)の捕鯨記録でセミクジラだと思われていたものが実はホッキョククジラと判明するなど、世界レベルでも意外なほど南に下ってくる事があると判明した(16~17世紀は今よりも寒かったが、これが関係していたのかは不明)。

セミクジラ同様に沿岸や浅瀬を好み、流氷の上から足の下を泳ぐホッキョククジラやキスのできる距離で眠るホッキョククジラ、海岸から数mのところに泳ぐホッキョククジラなどを観察することも可能。

繁殖と寿命

カナリアに似た美しい声色で鳴き、高度な発声能力と歌をもつ。これらを移動(とくに数十km単位で流氷の情報を共有したりなど)・採餌および集団行動の際のコミュニケーションのために水中音を使用している。長く繰り返される音声を発することもあり、これは求愛の歌であると考えられている。

習性としては他に、水上に飛び上がって体を水面に打ちつけるブリーチング(60回連続の記録も)、尾びれで水面を打つテール・スラッピング、体を垂直にして水面から顔を出すスパイホッピングなどがある。繁殖行動は一つがいの間、あるいは数頭の雄と1-2頭の雌からなる集団内で行われる。

繁殖は3月から8月にかけて観察される。繁殖活動は10-15歳程度になった頃から行われるようになる。メスは3~4年に一度、13~14ヶ月間の妊娠期間の後に出産する。ホッキョククジラの新生児は全長4.5m、平均体重1tほどで、最初の一年で9mほどに成長する。

寿命はかつて他のクジラと同程度の60-70年ほどと考えられていたが、最近の詳細な研究により少なくとも数頭の個体は150-210年程度生きているという信頼のおける結論が得られた(ほかの鯨も、実はもっとずっと長生きすることが近年判明しており、事故で?死んだナガスクジラが140歳など、大幅に記録を更新している)。

  • 基本的に、哺乳類は体が大きいほど長生きであるが、ホッキョククジラはとくに、シャチや鮫が少ない環境に住んでおり、低緯度と高緯度の回遊を行わず、ほとんど年中食事を取れ、さらに海水温が少なく細胞分裂が遅くなっている、などの理由が考えられる。

250年以上に達する可能性もあり、これが事実ならハーマン・メルビルが『白鯨』を執筆する以前から生きている個体がまだいる事になる。その証拠に、2006年に捕獲された個体に、1890年代の銛が刺さっていた。別の報告によると、90歳の雌がなおも繁殖可能であるらしい。

その寿命の長さから、雌は更年期障害に陥ると考えられている。しかし、長寿の秘訣の一つがガン細胞に対する抵抗力の強さだという調査結果が出ており、人間の医療に活かせないかと期待されている。

2016年、二つの驚異的な事実が判明した。
一つ目は、ホッキョククジラは独り立ちした直後はひげ板が短く、北極圏での食事に向いていない。それを克服するために、なんと骨の成分をひげ板の成長に還元させ、一時的に身体の成長をストップさせるという前代未聞の戦略を取っているということ。

二つ目は、脊椎動物の長寿の記録を、同じくグリーンランド沖に棲むニシオンデンザメが塗り替え、なんと平均寿命が400歳最大で512歳前後大人の階段を登るのは150歳程度になってからというトンデモナイ話になっている。
これらの生物は、「野生で」この寿命を体現できているのだから凄まじい。

人間との関わり

ホッキョククジラは近縁種のセミクジラと同様に、泳ぎが遅くて死亡した後も水面に浮いているという捕獲に適した特性から、アラスカなどの先住民は古くからその捕獲を行ってきた。欧米による商業捕鯨が行われる以前には、北極地方には推定5万頭以上のホッキョククジラが存在した。商業捕鯨は1611年にスヴァールバル諸島やグリーンランド付近で開始され、各海域の資源を枯渇させると新たな海域に移動した。北太平洋では商業捕鯨は19世紀半ばに開始され、その後20年間で個体数の6割以上が捕獲される結果となった。

個体数減少の最大の原因であった商業捕鯨は現在は中断しているが、アラスカやカナダでも先住民に原住民生存捕鯨の許可枠が与えられている。この捕獲(年に25〜40頭程度)は、個体数回復の妨げになるものではないと見られ、アラスカ沖における個体数は、商業捕鯨停止後は増加傾向にある。

  • ちなみに、詳細は省くが、ホッキョククジラは日本の捕鯨プロパガンダなどにもよく使われてきて、美味しんぼを始めとする創作品による印象操作も行われてきたのは有名な話。

ほとんど絶滅していたとされていたスヴァールバル諸島の個体群が、実は捕鯨船が到達できない流氷の奥地に実は秘密の住処があることが判明し、思ったよりも数が多いことが判明。また、おそらくほかの個体群からの流入があったからなのか急速に確認数が増えている。

おそらく、世界で最も隔離されているのはオホーツク海の個体群で亜種の可能性も。「忘れられたクジラ」と呼ばれ、つい最近までは動向がほとんど不明だった。が、2000年代後半か2010年代に急に「たまたま」再発見され、今では世界で最も陸から観察しやすい個体群となりつつある。その分布から「トロピカル」と冗談で言われ(新緑の木々の脇を泳ぐホッキョククジラが見れる場所もそうそうないのではないだろうか)、極寒でない環境に適応した生態も見られる。また、陸から10m前後の距離でシャチと壮絶な戦いを繰り広げることもある(参照①)()。

近年は、温暖化と氷の減少により、シャチがこれまで到達できなかった北極圏の細部にも進出していて、免疫の少ないホッッキョククジラ、ベルーガ、イッカクが襲われ始めている。

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