概要
ヨーロッパの白人到達前からアメリカ大陸にいた民族の総称。一口にインディアンといっても、宗教も言語も文化も様々な民族がいる。イギリス人やフランス人をひっくるめて「ヨーロッパ人」と呼んだり、日本人や中国人をひっくるめて「アジア人」と呼ぶ感覚に近い。
インディアン (Indian)本来の意味は英語でインド人のこと。
ただし、コロンブスが南北アメリカ大陸をインドと誤認したことから、アメリカ大陸の先住民族(原住民族)を指す言葉にもなっている(ただし、アメリカ大陸とユーラシア大陸に跨って居住するエスキモーとアレウト人はインディアンと呼ばれることはない)。インディアンは北米での呼び名であり中南米ではインディオと呼ぶが、英語読みとスペイン・ポルトガル語読みの違いで、北米と中南米の先住民に隔たりがある訳ではない。
歴史
ヨーロッパ人到来以前のインディアンたちに同じ民族という認識は無く、部族によって言葉も習慣も全く異なり、部族間の戦争も多く発生している。
ただ、人口密度が非常に低かったので土地を奪い合う必要がさほどなく、馬などの移動手段がなかった為、戦争は狭い範囲に限られ、石器しか無かったので互いの被害も少なかった。
ヨーロッパ人たちが銃や馬、近代的な戦術を持ち込むと、インディアン同士の抗争も激しいものとなった。
ヨーロッパ人が到来した時、これに敵対するインディアンもいたが、基本的にはこの新しい住人たちを歓迎した。ヨーロッパ人もまた、当初はアメリカ大陸のインディアンたちと友好関係を結び、互いに助け合った。
しかし、大量に入植者がやってくると、インディアンとの間に軋轢が生まれ、抗争が勃発した。
戦いは近代的な武器や戦術を有していた入植者側の有利に進んだ。
また、入植者たちは、指導者の指揮で集団的に戦うことに慣れていたが、インディアンの価値観は徹底した個人主義であり、族長といえど部族民に戦いを強制できず、参加は個人の意志に任せられ、戦闘集団としてのまとまりを欠いた。
入植者たちの間の戦闘でも、敵対関係にある部族がそれぞれの味方について争うこともあった。
入植者の横暴に耐えかねたインディアンが反乱を起こした場合も、敵対する部族が邪魔したり鎮圧したりする事があった。
後に成立したアメリカ合衆国との戦争でも多数のインディアンが殺され、わずかに残ったインディアンは居留地に押し込められた。
他民族との混血が繰り返され、民族的独自性の多くを失った。
近代になって「インディアン」全体の人権を守るための活動が活発になるまで、彼らは一枚岩になることはなかった。
(ある意味で「インディアン」「ネイティブ・アメリカン」は喩えるなら「日本人/日系」「韓国人/韓国系」「中国人/中国系」のような民族名というより、それらを総称して「東アジア系」と呼ぶのに近い)
公民権運動以降のアメリカ合衆国では侮蔑的呼称とされ、「アメリカ合衆国の先住民」の意で「ネイティブ・アメリカンズ」に言い換えられているが、これにはエスキモー(イヌイット民族とユピク民族の総称)やアレウト人、太平洋島嶼のアメリカ領先住民なども含まれる。
そのため、1974年に結成されたインディアンの人権団体『国際インディアン条約会議』は当初から「ネイティブ・アメリカンズ」こそが侮蔑的呼称であると見なし、1977年の国連会議で「アメリカインディアン」が自分たちの種族名であると宣言した。「インディアン」と言う呼称に抵抗のある人たちからも「ネイティブ・アメリカンズ」以外の呼称の制定を望む声が上がっている。
逆にインディアンの中にも移民である「○○アメリカンズ(○○系アメリカ人)」と区別する為に「インディアン」という呼称を積極的に使う人々も居る。
このように、インディアンの名称は非常にデリケートな問題となっている。
日本国内では1990年代まで普通に「インディアン」という言葉が使われ、幼稚園や保育園でも歌やお遊戯の時間に教員・保育士の手引きで児童達がインディアンの物真似をする光景が見られた。
カナダでは「ネイティブ・カナディアンズ」を経て「ファースト・ネーションズ」が定着した。
社会・文化
狩猟・採取、漁業、農業(トウモロコシやタバコ、カボチャなどの栽培)が行われていた。元から家畜として犬を飼育をしていたが、それ以外は入植者から入手したものである。
信仰は多様だが、シャーマンを通じて自然の精霊や祖霊を崇めることに共通点がある。
政治体制は旧大陸とは異なる点が多く、「『酋長』は政治的リーダーではなく、部族内への強制権を持たない」「土地の所有権の概念が異なる」などの特徴を有する。
現在、一部のインディアンは先住民族としての権利を手にし、居留地で自治を行って伝統と民族の継承を図っている。北アメリカ・ニューヨーク州北部のオンタリオ湖南岸とカナダにまたがって保留地を領有する6つのインディアン部族(タスカローラ族、モホーク族、カユーガ族、オナイダ族、オノンダーガ族、セネカ族)は、部族国家集団イロコイ連邦を結成した。
鳥の羽飾り(ウォーボンネット)をつけて馬に乗って草原を走るというイメージは、アメリカ西部のラコタ族のものだが、西部劇の影響で、他の部族にも鳥の羽飾りが広まっている。
起源
彼らの先祖の少なくとも一部は、最終氷期の後期(25000年~14000年前)にアジア大陸から、海面が100m程低下して地峡だったベーリング海峡を渡ってアラスカに到達した。インディアンの民族的多様性は、アジアから何度もモンゴロイドが渡ってきたことに由来するとも考えられている。
言語的には350ほどの言語がある(死語を含めると1000以上)が、ルーツを共にする言語をまとめると10数個の語族からなり、語族間の違いは、移住した年代の違いと考えることができる。アジアの言語との関連は長らく不明だったが、2008年にインディアン諸語のひとつナ・デネ語族と北アジアで話されているエニセイ語族が類縁関係にあることがわかった。
Pixiv百科事典に記事のあるインディアンの部族
インディアンをモチーフとしたキャラクター
特撮
- ジェロニモン(ウルトラマン)
- サソリジェロニモ/サソリジェロニモJr.(仮面ライダーX)
- ガルドストーム(仮面ライダー龍騎)
- トーテムポールモンガー(太陽戦隊サンバルカン)
- キングインデアン(キカイダー01)
- バトルホーク/ビッグホーク/クインホーク(バトルホーク)
漫画
- ザイルA(鉄腕アトム)
- 005/ジェロニモ・ジュニア(サイボーグ009)
- ジェロニモ(キン肉マン)
- ウパ/ボラ(ドラゴンボール)
- 呪いのデーボ/ザ・フール/サンドマン/イン・ア・サイレント・ウェイ(ジョジョの奇妙な冒険)
- ハオ/リリララ/パッチ族(シャーマンキング)
ゲーム
- サンダー・ホーク(ストリートファイターシリーズ)
- ホワイト・バッファロー(豪血寺一族)
- ウルフ・ホークフィールド(バーチャファイターシリーズ)
- ジュリア・チャン(鉄拳)
- 夕能(天外魔境 第四の黙示録)
- ガルーダ(パワーストーン)※ビッグファイトにも同名のインディアンモチーフのキャラクターが登場するが無関係。
- ウィロー(キャロライン・フロイド)(バイオハザードオペレーションラクーンシティ)
- バルカン・レイブン(MGS)
- レッドマン(ソウルハッカーズ)
- ドスマッカォ(モンスターハンタークロス)
- レッドXIII(ファイナルファンタジー7)
- トマホークマン(ロックマン6)
- ウィングカービィ(星のカービィシリーズ)
アニメ
文学
(元々の小説での彼の名前がこれであり、アニメ等だと(インジャン・ジョー)名義になる)
キャラクターのモチーフとしての扱い
ウォーボンネットやトーテムポール、カチーナをモチーフにしたデザインが多い。
インディアンが出てくる作品
⋯あくまでネイティブアメリカン限定とし、インディアンの名前が付いた別の作品は含めない。
漫画
映画
⋯西部劇ではインディアンが出てくる作品が多い。
関連イラスト
現実のインディアンより、インディアン的なイメージをモチーフにしたものが多い。
関連タグ
民族衣装 オートバイ ドリームキャッチャー タバコ モヒカン 北西海岸インディアン トーテムポール 西部劇
- クリーブランド・インディアンス…「インディアンス」のチーム名と共に球団ロゴ等に「ワフー酋長」を使用していたが、『人種差別的だ』としてその意匠廃絶を求める激しい抗議が半世紀近く行われ、2018年にキャラクター使用を停止、チーム名も2022年より『ガーディアンズ』に改めた。
- ワシントン・レッドスキンズ…
こちらはNFL(アメリカンフットボール)のチーム。インディアンズと同じく「赤い顔の先住民」をロゴとして使用し、先住民を侮蔑する意味を持つ「赤い肌」をチーム名としていたが、大口スポンサーからの「改名しないならスポンサー契約を打ち切る」という姿勢には逆らえず、2020年にチーム名を廃止、2022年から『コマンダーズ』に改めた。
- シカゴ・ブラックホークス…アイスホッケー・NHLのチーム。チーム名やチームロゴは先住民の族長に由来。上記2球団と違い抗議活動を「球団の尊厳を踏みにじる言い掛かり」と見なして改名しない意思を示している。
- アトランタ・ブレーブス(MLB)
- カンザスシティ・チーフス(NFL)
何れもチーム名がインディアンに関連している。