誘導分岐
- イタリア生まれの探検家。クリストファー・コロンブスのこと。南北アメリカ大陸(の属島)に到達したことで有名。本記事はこれについて説明する。
- 妖怪ウォッチに登場する妖怪。→コロンブス(妖怪ウォッチ)
- 「ギャグマンガ日和」の登場人物。
- タイムボカン24の登場人物。こちらを発見した人物と言われているが……。真歴史の詳細は作品タグを参照。
- 「機動戦士ガンダム」シリーズに登場する補給艦。→コロンブス(ガンダム)
- 1.を題材にした映画の名前。詳細
- 『ラヴヘブン』の登場人物。→コロンブス(ラヴヘブン) 本記事で解説しているコロンブスがモデルのキャラクター。異世界の危機を救うため、主人公により召喚された。
- Fate/Grandorderの登場人物。クリストファー・コロンブス(Fate)を参照の事。
- 漫画ONEPIECEに登場する海賊。→コロンブス(ONEPIECE)
- Mrs.GREENAPPLEが2024年に発表した楽曲。→コロンブス(Mrs.GREENAPPLE)
歴史上の人物であるコロンブス
ジェノヴァ(イタリア)生まれの探検家。(1451年頃~1506年5月20日)
イタリア語ではクリストーフォロ・コロンボ(Cristoforo Colombo)、スペイン語ではクリストーバル・コロン(Cristóbal Colón)、ポルトガル語ではクリストヴァン・コロンボ(Cristóvão Colombo)という。日本語媒体では英語表記に基づくクリストファー・コロンブス(Christopher Columbus)と呼ばれる事が多い。
当時ヨーロッパではインド産の香辛料の需要が高かったが、地中海からインドへ抜ける航路はオスマン帝国に牛耳られていたため、代替の航路開拓が進められていた。
そんな中、コロンブスは大地球体説を信じて「西へ行けばインドへ到達できるはず」と考え、スペイン王室の援助を受けて出発。存在が認識されていなかった南北アメリカ大陸に到達し、西にも人の住む大地があることを西洋側に証明した。
ただし、コロンブスは死ぬまで自分が到達した場所をインドだと思っていた。
マルコ・ポーロ著『東方見聞録』が愛読書で、彼による書き込みが残された1485年版刊本がスペインのセビリア大聖堂のコロンブス図書館(Biblioteca Colombina)に保管されている。
「コロンブスがアメリカを発見した」という「功績」については、あくまでもヨーロッパ人の視点であり(言うまでも無く実際の発見者は先住民の祖先である)、またバイキングのレイフ・エリクソンが中世にニューファンドランド島(カナダ)に入植していたことが知られる現代では正確さに欠ける。14世紀の僧侶による「大西洋の向こうにある大陸」について記された写本が2021年に発見されている(エコノミスト誌記事)。
より公平な立場からは「旧世界と新世界の出会い」と表現される。
コロンブスは自身が現地住民への虐殺、略奪に手を染めるだけでなく、エルナン・コルテスやフランシスコ・ピサロら悪名高い征服者達を呼び込む先駆けとなり、原住民が築いていたアステカ文明やマヤ文明を滅ぼす発端となった。
領土の統治の拙さからスペイン王室から次第に冷遇され、1506年5月20日バリャドリッド(スペイン)で死去。
セビリア大聖堂に葬られており、遺体の入った棺は四人の王の彫像が担ぐ形になっている。
カリブ海のドミニカ共和国の首都サントドミンゴにも墓がある。コロンブスの遺言にしたがい、市内のサンタ・マリア・ラ・メノル大聖堂に遺骨が納められたが、1992年に「アメリカ大陸発見」500年記念に建造された「コロンブス記念灯台」の中央部に移動されている。この施設は「コロンブスの墓」を意味する「エル・ファロ・ア・コロン(El Faro a Colon)」とも呼ばれる。「コロンブス記念灯台」建設の際には莫大な建築費と、コロンブス自身の歴史的評価のために反対運動が起っている(TBS世界遺産 第99回1998年04月12日 サント・ドミンゴの植民都市(ドミニカ共和国))。
歴史的評価
金銀の鉱山で強制労働させられた先住民の3分の1は半年ごとに亡くなっていった。
入植者が持ち込んだ疫病もあり、部族の一つアラワク族の人口は30年から60年以内に数百人にまで減少している。
コロンブス到来から一世紀以内に南北アメリカ大陸の先住民の人口の9割が失われたと見られており、先住民たちのあいだでは虐殺の主要人物とみられている。
先住民の子孫だけでなく一部の歴史学者達からも否定的な評価を下されており、アメリカ合衆国の10月12日を「コロンブス・デー」(コロンブスが北米大陸に到達したとされる日に由来する)とする事に抗議の意を示したり、2020年夏にコロンブスの銅像が引き摺り回されたり、撤去された事は記憶に新しい。(落書きなどの銅像への損壊はこれ以前から度々見られていた。)
一方で、現地のマジョリティや他の地域のイタリア系、白人主体の西方キリスト教会系コミュニティ・カトリック社会において肯定的に見られてきた歴史がある。
凄惨すぎる上記の逸話はスポイルされ、先住民の文化破壊は「偶像崇拝の撤廃」として肯定され、他のコンキスタドールともども「人身御供もやめさせたんだから良いだろ」式に擁護された。
第256代目ローマ教皇レオ13世もコロンブスをキリスト教の広がりに貢献した人物として賞賛する回勅「QUARTO ABEUNTE SAECULO」を記している。
この回勅では宗教(教会)の側からも彼の業績を記念する事を支援し、10月12日やその次の日曜日には、スペインとイタリア、南北アメリカ大陸の全てのカトリック大聖堂や修道院の礼拝所にて「至聖なる三位一体の荘厳ミサ(Solemn Mass of the Most Holy Trinity)」を執り行う事が説かれている(ただし、回勅は教皇個人の立場を示すものであり、カトリック教義本体に関わるものではない)。
こうして単なる「新世界へ到達した偉人」として祭り上げられ、一種のシンボルとして機能してきた。
イタリアの彫刻家ジュリオ・モンテヴェルデ(Giulio Monteverde)(1837~1917)の1880年の作品「少年コロンブス(Colombo Giovinetto)」では美少年化され、アメリカの古い児童文学でも挿絵でそのように描かれる等見た目の表現においても美化がなされてきた。
ただし、カトリック信徒の中でも彼に対する立場は分かれており、アッシジのフランチェスコを祖とするフランシスコ会系の団体がコロンブスの残虐行為を批判する投稿をTwitterで行っている。
コロンブスが南北アメリカから持ち帰った様々な資源はめぐりめぐって西洋以外の地域にも多大な利益を与える形となったこともあり、日本を含む西洋以外の国々でも肯定的に語られてきたが、近年になって「偉業」の実態についての認知が進み、否定的な評価は徐々に広まりつつある。
が、コロンブスへの肯定的扱いは今も生き続けており、スペインの極右政党VOXのTwitter公式アカウントが、BLM(ブラック・ライヴズ・マター)運動の流れを汲むコロンブス像の遺棄や損壊に対して反応し、コロンブスと彼の支援者であったカトリック両王(アラゴン王フェルナンド2世とカスティーリャ女王イサベル1世)を称揚するツイートを行っている。
Twitterで「Christpher Colombus Catholic」と入れて検索すれば、他にも同様な傾向を持つ複数の人々を見つけることができる。
このような先鋭的な言葉を表に出さない支持層・容認層も多いようで、リベラル派のバイデンと同じ民主党に属するニューヨーク州知事クオモに、「イタリア系アメリカ人のレガシーを象徴する」とマンハッタンのコロンブス像撤去に反対する意見を言わせる(ソース)等無視できない影響力を保っている。
特にコロンブスのアメリカ大陸到達500周年(1992年)を記念して作られた二本の映画
「コロンブス(原題Christopher Columbus: The Discovery)」と
「1492コロンブス(原題1492: Conquest of Paradise)」においては
前者が情熱と不屈の精神を持った開拓者として好意的に描いているのに対し
後者は胡散臭く強欲で夢に破れた敗北者として否定的に描いており
こうした点からもクリストファー・コロンブスに対する評価の違いがきっぱりと判る。
2020年にメキシコの首都メキシコシティでも、複数の団体によりコロンブス像を倒す事を説くデモの計画が表明され、市の当局が先んじて文化省に像を撤去を依頼した。翌年、コロンブス像は公園に移動させ、元あった場所には先住民の女性像を建てる、という否定派・反対派双方の顔を立てるような折衷案が提示されている。
2024年には、日本のロックバンド「Mrs.GREENAPPLE(通称ミセス)」が「コロンブス」というタイトルの曲を発表したことに端を発する炎上騒動が発生。
日本国内における「コロンブス」への認識が改めて疑問視された。
コロンブスに関する名称
上述の「コロンブス・デー」のほかにも、国名や地名として残る「コロンビア」もコロンブスに由来している。
カトリック系慈善団体・友愛結社として「コロンブスの騎士(Knights of Columbus)」があり、カトリック信者として初めてアメリカ合衆国大統領になったジョン・F・ケネディやジョージ・H・W・ブッシュの息子でジョージ・W・ブッシュの弟であるジェブ・ブッシュ、米国野球界のレジェンドベーブ・ルースもここに所属する「騎士」の一人である。
ドミニカ共和国には学問や科学等の分野で大きな功績を成した人に与えられる「クリストファー・コロンブス勲章」が存在している。