概要
昆虫の背中に生える薄く平たい羽のこと。フィクションでは妖精や虫をモチーフとしたキャラクターに付けられることが多い。
昆虫の翅
節足動物のうち昆虫に特有の体表器官。具体的にはイシノミやシミ以外の昆虫(有翅類、変態を行う昆虫)が祖先的にこれを有し、2対をそれぞれ中胸と後胸の両背面に配置される(ムカシアミバネムシという古生代の原始的な有翅類だけ前胸にも短い翅のような器官を持つ)。
薄く平たい構造で、原則として枝分かれた「脈」とその間に広がる「膜」によって構成される。膜は通常透明であるが、蝶や蛾のように毛(鱗粉)や模様を持つものも多い。
鳥やコウモリなど脊椎動物の翼と異なる外骨格構造で、中に筋肉はなく、一部の例外(甲虫とハサミムシの後翅)を除いて途中に折り曲げる関節も存在しない。薄く平たい見た目も相まって、爪や毛のように生きている細胞を持たない構造と思われやすいが、脈には血が流れ、神経と感覚毛があり、外界からの刺激も感じ取れる。
基本的には動力飛行用の器官であり、胸の筋肉(飛翔筋)で付け根の関節を動かして羽ばたく。カゲロウやトンボは飛翔筋が直接に翅の付け根に繋いで動かすが、他の有翅類は飛翔筋が胸部背面の外骨格に繋いで、それを上下に動かして左右の翅の関節を間接的に連動させる。そのため、飛行中のほとんどの昆虫は翅の間の外骨格が常に上下に震えている。
種類によっては装甲(甲虫の前翅など)になったり退化的(ナナフシなど)になったりなど、飛ぶのに使わないように変化した翅もある。
原則として羽化後の成虫のみ機能的な翅を有し、カゲロウだけ例外的に「亜成虫」という段階から翅で飛べるようになる。幼虫では翅が短い「翅芽」(しが)から徐々に成長し(不完全変態/外翅類)、もしくは蛹になるまで全く見当たらない(完全変態/内翅類)。
脊椎動物の翼のように脚そのものから変化した構造ではなく、知られる節足動物のどの器官にも似ていないため、生物学の中でも由来がかなり謎の器官である。背中の外骨格の縁辺部由来・昆虫が起源する甲殻類の脚の付け根の鰓由来・前述の両器官が融合して由来などと、未だに諸説紛々で熱い議論が続いている。
「羽」と「翅」と「羽根」の違い
「羽」は、昆虫や鳥など動物全般の(主に)空を飛ぶ用の器官に用いられる。
「翅」は、昆虫や虫関連の創作に見られるような、前述した薄く平たい羽を表す。
「羽根」は、鳥などの羽(翼)から抜けた羽毛や、昆虫の体から抜けた翅単体を指す語である。
翅のあるキャラクター一覧
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