解説
退化とは、使用しない器官が世代交代を経て縮小、または消失する現象を指す。
概要にある通り、進化の対義語であると認識されがちな用語だが、生物学用語においてはそうではない。退化とは環境に適応する過程(=進化)で使わない無駄な部分を削って行くことであり、進化の一形態として位置付けられている。進化は必ずしも高度化や複雑化を伴わないのである。
生物は使用しない部位でも絶えずエネルギーを消費し続けており、これはリソースが有限である以上足かせになりかねない部位である。また何らかの原因で化膿、壊死などを起こせば生体そのものが危機に陥るケースすらある。
そのため、余計な器官がより発達している個体が淘汰されることで種全体としては該当の器官が縮小、あるいは消滅していき、他のより重要な部位へリソースを割いたりより発達させたりする方向へ変化するのは立派な進化であると言える。
上記にもあるように、われわれ人間においても尻尾や耳動筋、足の小指の骨といった地面で周囲の環境を整えながら直立二足歩行するといった形質には、さほど重要でない器官が退化しており、これによって複雑な動作を可能にする手や最重要の部位である脳へ回す酸素やエネルギーをより多く確保していると言える。
もっとも、環境が変化した場合は「退化させた部位が再度必要になってしまったため、適応できずに絶滅する」といったケースもあるが。
一方、俗な用法では進化の対義語と見なされ、劣化と同様に「能力が落ちる・質が悪くなる」という意味に使われることが多い。
これは専門用語としての意味からは外れるが、専門的な文脈と俗な文脈で言葉の意味が変わってくるのはよくあることなので、一概に誤用とも断じ難い。
創作作品において
RPG特に『デジタルモンスター』などのモンスター育成ゲームの普及で取り分け『現在の世代より前の世代の姿に戻る』(例:ウォーグレイモン⇨アグモンなど)即ち単純に『進化前の姿に戻る』という意味で使われる事が多い。故に退化したからといって能力が落ちる訳ではなく、むしろ退化した方がいいんじゃないかと言われるモンスターもチラホラいたりする。
そもそも、わざわざ『退化』というシステムを有しているゲームにおいては、ゲームシステム上必要な要素であることも多く、例えば進化と退化を繰り返すことによって効率的に上昇させられるステータスが存在したり、共通の形態を経由することで本来は習得できない技を別の進化系統から引き継ぐなどのメリットがあることが多い。
また、複数の「進化先」を使い分けるためのシステムとして採用されることもあり、例えばポケモンのイーブイは8種もの進化先があることから、本来はシステム上退化などないゲームでありながらメディアミックスやファンアートでは『イーブイへ退化することで複数の進化先を使い分ける』といった特徴を持たされることがある。
またデジモンのアニメシリーズにおいては、変身ヒーローで言う「変身解除」に近い、戦闘モードの解除を指す語として扱われる事も多い。
Pixivでは
絵師進化録に参加し、過去と現在の自分の絵を振り返ってみた絵師が、自虐的な意味でもつけている模様。
進化つながりから、ポケモン関連の絵も無いわけではない。しかし、肝心のゲーム本編では2017年現在退化システムは実装されておらず、(アニメや漫画などの他媒体によっては退化が描写される事も。)どちらかといえば退化と進化両方のシステムがゲームに取り入れられ、アニメ作品でも頻繁に描写されているデジモンを思い浮かべる人の方が多いのかもしれない。