ゆるゆるなキャラクター。
概要
イラストレーターのみうらじゅんが命名したもので、狭義には地方自治体などが保有する着ぐるみ状のマスコットキャラクターを指す。
彼によると
が「ゆるキャラ三か条」であるという。
早い話が「ドラえもん」や「キティちゃん」のようにそれ自体でビジネスを行うわけではなく、そもそも局地的な活動しか想定されていないキャラクターということである。
ちなみに「着ぐるみ」がキーワードとなっているのは、地方の祭りではパレードに謎の着ぐるみが登場して愛嬌を振りまくのが風物詩でありお約束となっていたためである。
「プロの手が入っていない素人感・手作り感」といったニュアンスが含まれる場合もある。ただし、あくまで公式キャラクターであるべきとされ、全くの同人的なキャラクターは狭義の「ゆるキャラ」には含まれない。
この点については「組織の大きさに対してデザインや設定がチープ」「お世辞にも可愛いとは言えない」といった批判的な用いられ方をすることもある。
ちなみに濫用を防ぐという目的で、「ゆるキャラ」という言葉は商標登録されている。
そのため「ご当地キャラ」などと言い換えられる場合があるが、「ご当地キャラ」には「ご当地萌えキャラ」「ご当地ヒーロー」「ご当地アイドル」なども含まれる一方、交通機関のキャラクターなど比較的広域で活動するものは含まれなくなるため、完全に同じ意味にはならない点には留意が必要である。
また、それらとの接点が生じるにつれ、従来「癒し系」などと呼ばれていたキャラ付けにまで「ゆるキャラ」の語が充てられるといった事例も確認されるようになっており、その定義は一貫して拡大する傾向にある。
ゆるキャラ栄枯盛衰
「ゆるキャラ」は2007年の「ひこにゃん」あたりから全国区のブームとなり、2011年の「くまモン」で最高潮に達した。
これらの影響力に触発された各種団体はこぞって「ゆるキャラ」を求めるようになり、「ゆるキャラ」同士を競わせる「ゆるキャラグランプリ」というイベントも開催されるようになった。
これによって「ゆるキャラ」がキャラクタービジネスになると共に、祭りなどがそれらを売り出す舞台として利用されるようになるという本末転倒も起こり始めた。
各地の「ゆるキャラ」が修羅の如く人気を競い合い奪い合う光景は、「ゆるキャラ戦国時代」とも呼ばれた。
このことは「ゆるキャラ」の粗製濫造を促した一方、差別化のためにプロに発注する団体、過激なアピールで注目を惹こうとする団体、出オチ的な珍奇なデザインに走る団体なども現れ、いよいよモラルハザードの様相を呈し始める。
もちろんそれらに対する批判も沸き起こるが、それすらも不戦勝狙いの盤外戦術という色合いを帯び、「ゆるキャラの定義」を巡る論争から生産的な結論が導き出されることはなかった。
都道府県と市区町村とさらに局地的な第三セクターなどが別々の「ゆるキャラ」を投入して競合するということも日常茶飯事で、不毛を通り越して税金の無駄遣いですらあった。
それでなくとも、キャラクタービジネスには莫大な費用がかかる。詳しくは「ご当地萌えキャラ」での解説に譲るが、「グランプリ」に出場するレベルであれば尚更で、その金額は平均で年間2000万円に上るとも言われる。
「ゆるキャラ」に限らず、これをカバーできるほどの収益を上げられるキャラクターはそう多くない。まして素人が本業の片手間に行うなら、結果は推して知るべしである。「ゆるキャラ」は本質的に、ゆるくなければ生きられないキャラクターだったのである。
成功したら成功したで、今度は主導権や収益の分配を巡る内ゲバが始まることもあった。「ひこにゃん」もそれで大きく株を下げているほか、プロに発注したがためにキャラクター同士の関係性で揉めることとなった「しんじょう君」と「ちぃたん☆」のような事例も発生している。
こうした不祥事は知名度に比例して大きく報道され、最早宣伝をしているのか風評被害をもたらしているのかわからないという状態にまで至った。
極めつけが「ゆるキャラグランプリ」の不正問題である。
当初から小規模なトラブルはあったものの、それらは絶対に優勝しなさそうなキャラクターに組織票を入れてみるといった、ネットの人気投票でもたまに出る愉快犯がほとんどであった。
しかし、「グランプリ」が一種の権威と化し、不正が自治体レベルで行われるようになると話が変わってくる。組織の強さがキャラクターの強さになったことで一般の参加者が置いてけぼりになったばかりか、不正が発覚するか否かで優勝者が変わる年さえあって一層白けたムードが漂った。逆説的に権威は失墜し、収益にも繋がらなくなっていった。
結局、「ゆるキャラグランプリ」は「イベントとして一定の役割を終えた」として2020年を最後に終了した。折しもコロナ禍で暢気に着ぐるみなど持ち出せる情勢ではなくなっており、ここに「ゆるキャラ」ブームは終焉を迎えた。
着ぐるみ界には、昔から「中の人などいない」という鉄則があった。
キャラクターはキャラクターとして愛でるべきであり、人間界のしがらみを持ち込んではいけないといった意味である。
ブームになって以降の「ゆるキャラ」はこれに真っ向から反しており、悪い意味で人間的な、ドロドロとした生々しさを隠しきれなかった。そして最終的に、「所属組織の不正」というしがらみそのもので致命傷を受けた。
なんと言うか、人間は愚かである。
夢の跡
イメージが著しく悪化したとは言え、「ゆるキャラ」という概念が消滅したわけではなく、全盛期から継続して活動しているキャラクターも未だ多い。
しかしながら、キャラクタービジネスとしては需要も供給も激減しており、その活動範囲は縮小の一途を辿っている。このまま局地的なマスコットキャラという、本来の立ち位置に帰ってゆくことだろう。
コロナ禍を経て着ぐるみすら処分してしまったという話までちらほら聞こえてきており、地元民が自治体の広報でしか目にしない、存在は知っていても自分からはまず話題に出さない、そんな「ゆるキャラ」も増えるものと思われる。
他地域へ宣伝は、既成の版権キャラとのコラボレーションで行うことが主流となった。特に2016年の『君の名は。』以降は「聖地巡礼」という行為も一般化し、ローリスク・ハイリターンに集客を見込めるようになった。
権利者側もロケハンコストの低減などで一定のメリットが見込める事から、製作段階から綿密な擦り合わせを行う作品も珍しくなくなってきている。
あるいは「キティちゃん」などの老舗も、長年のノウハウを活かして比較的低コストにローカライズを行ってくれると言われる。やはり餅は餅屋である。
どうせ人間の影がちらつくならと、有名人を直接「観光大使」や「宣伝大使」に任命するというパターンも増えてきた。「ゆるキャラ」ブーム以前から存在していた手法ではあるが、近年では有名人側の理解も進み、割と気さくにダイレクトマーケティングを行ってくれる。
そもそも「ゆるキャラ」は「中の人」による個体差が出ないよう、喋らないか喋っても定型文を録音しておく事がほとんどであったので、こうした手法が一般化してくると見た目以外は下位互換でしかなくなってしまう。
現在でもオリジナルキャラクターを作ろうとする動きは無くはない。しかし、その多くは人型となっており、さらに大半を少女をモチーフとしたものが占めている。
その理由についても「ご当地萌えキャラ」の項目を参照のこと。
各地域別キャラクター
北海道
ゆきだるマン(札幌市)
東北
青森
秋田
岩手
宮城
山形
福島
関東
茨城
栃木
埼玉
いがまんちゃん(羽生市)
千葉
群馬
東京
ハーモニー君【東京都調布市・仙川商店街】
きゅんた【小田急バス】
神奈川
※えびなさんは5位落選キャラだが、あまりの見た目のインパクトで一時ネットで話題になった。
甲信越
山梨
長野
新潟
北陸(新潟以外)
富山
石川
福井
東海
静岡
岐阜
愛知
三重
関西
滋賀
大阪
いしきりん【大阪府東大阪市】
サカエル&みそさかい(サカエル・みそさかい)【大阪府堺市】
サカイタケルくん【大阪府堺市】
ハニワこうてい【大阪府八尾市】
泉南熊寺郎【大阪府泉南市】
イヌナキン【大阪府泉佐野市】
京都
奈良
せんとくん【奈良県】
和歌山
兵庫
中国
鳥取
島根
岡山
広島
山口
四国
徳島
すだちくん【徳島県】
トクシィ【徳島県徳島市】
うだつまる【徳島県美馬市】
ふじっこちゃん【徳島県石井町】
あわみちゃん【徳島県阿波市】
香川
うどん脳【香川県高松市】
ことちゃん【※ことでんグループ所属。企業枠】
愛媛
みきゃん【愛媛県】
バリィさん【愛媛県今治市】
高知
しんじょうくん【高知県須崎市】
九州
福岡
大分
佐賀
長崎
熊本
宮崎
鹿児島
イーサキング【鹿児島県伊佐市】
沖縄
海外
中国
フィンランド
韓国
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マスコット マスコットキャラクター 癒しキャラ ご当地キャラ
ラブコフ:『仮面ライダーリバイス』に登場する悪魔で、見た目が可愛いゆるキャラである。
ラッピー(ラヴィット!):テレビ局の一番組所属のマスコットという、やや異なる意味で局地的な存在。狭義の「ゆるキャラ」ではないものの、他の「ゆるキャラ」を集めた企画を行うなど活動はそれらに準じている。なにより、2020年代に入ってからそうしたことを始めた点は特筆される。