かつ江さん
かつえさん
鳥取市教育委員会による鳥取城跡マスコットキャラクター公募の次点に入った作品で、平成26年7月7日より公開された。正式採用の「とりのじょう」同様、二次創作等は自由とされていた。
とは言え既に百花繚乱のゆるキャラ、それも採用作ですら無い次点であり、本来は地元の人々に確認された後は静かに忘れられてゆくはずのキャラクターであった。
ところが、そのインパクト溢れる姿から賛否両論の意見が噴出。Twitter等を通じて全国的に存在が広められてゆくこととなった。
飢えた戦国時代の女性が、カエルを手に立ち尽くしているという、字面だけでも相当破壊力のある姿をしている。「かつ江」という名前自体も「飢(かつ)える」とのダブルミーニングであり、ひたすらに困窮を訴えている。
これだけを見ると否定意見も当然と言えるが、鳥取城は鳥取の飢え殺しと呼ばれる歴史上有数の兵糧攻めに遭い、多数の庶民が巻き添えとなった過去がある。それを現代に伝えたいという作者の意図を汲んだ賛成意見も多数寄せられ、論争となったのである。
ところが、騒ぎを嗅ぎつけたネットニュースなどが面白おかしく取り上げるようになると、次第に両者の対立自体を楽しむ者や表現規制問題全般の叩き台とする者が現れるようになり、本題の飢え殺しは急速に蚊帳の外に置かれるようになってしまう。
地元でも同じ名前の少女を娘に持つ母親から苦情が届くなど、かえって鳥取城のイメージダウンが危ぶまれるようになり、事態を重く見た市教委は同年7月10日を以て公開の中止を決定(公式通知)。かつ江さんはわずか4日間の命に終わってしまった。
その直後、7月11日には地上波のとあるテレビ番組がこの論争を取り上げているが、バラエティ枠という事もあって批判ばかりを紹介するという面白おかしさの域を出ない構成であった。そうした扱いが続けられた可能性を考えると、市教委の判断も妥当であったと言えるだろう。
なお、公式通知にも示されている通り、かつ江さんは公開中止と同時に二次創作を含む全ての利用許可が撤回されている(ちなみに公募作品の権利は市教委が有しているため、一連の判断も市教委に権限がある)。著作権の性質上、直接の訴えが無い限り犯罪にはあたらないとは言え、これから二次創作を行う方は一般のゆるキャラよりも重い感覚が求められているという事に留意しながら取り組んでもらいたい。
・・・などと注意喚起されていた矢先、やらかしたプロが現れた。
黒鉄ヒロシがビッグコミックで連載する『赤兵衛』の平成26年16号~17号分にてかつ江さんを登場させたのである。本人が騒動をどこまで知っていたのかは不明だが、それに気付いた市教委が遺憾の意を表明したことで無断使用による著作権侵害事案に発展。小学館が市教委に謝罪し、以後の登場も中止させる事になったのである。
(朝日新聞デジタル2014年9月18日09時28分配信記事)
実際に市教委が動いた事で、かつ江さんの運命は決してしまったと言えるだろう。
ネットの常として、かつ江さんも萌え化される例が見られる。姿が姿だけに、たくさん食べさせて健康にしてあげたいという気持ちもあるようだ。
正式採用されたとりのじょうが公開されたのは平成26年4月9日の事。大幅に遅れた次点の公開には、最初から賛否両論で荒れる事を見越した多段階の話題作りだったのでは?という推察もできなくはない。
また、原作者は至って真面目に鳥取の歴史と向き合っているのであり、今もかつ江さんの再公開を求め続けているという。