概要
学名「Nephila pilipes」。大型の造網性蜘蛛で、オオジョロウグモ属 (Nephila) の代表種。かつては近縁種であるジョロウグモなどもこの属だったが現在はそちらはジョロウグモ属 (Triconephila) に分けられている。ちなみに Nephila というのは編むのが好きという意味である。
日本(南西諸島)含めて東アジアから東南アジア、オセアニアまで分布する。
近縁種と同様、メス巨大オス矮小の性的二形で知られる。メスは脚を除くと体長は5cmまで、脚を含めると10cmを優に超える。これは日本に生息する蜘蛛では最大であり、世界で見ても造網性の蜘蛛としては最大級である。
対して、オスは脚を含めても全長2.5cmにも満たない。
体色も雌雄で異なり、メスの場合は派手な黄色と黒のコントラストで、特に胴の背面は特徴的な縦筋模様となっているが、オスは全体的にやや地味な茶色となっている。
生態
この蜘蛛の巣は金色に輝く糸でできている。光に晒されると黄金の輝きが飛行昆虫を誘き寄せ、光が少ないと背景に溶け込む。
最初は1m以上にもなる巨大な枠となる巣を作り、その間にいくつもの粘着性の網を設置する。この網は、小型の生物を食べる場合は伸縮性で暴れる動きを軟化させ振り解きにくく、大型の生物を食べる場合は頑強で力ずくに引き千切れない。基本的に昆虫を食べるがこの網の強固さから時に鳥やコウモリといった脊椎動物まで捕えられるのでこれも捕食したりする。
生まれたばかりの幼体などは上記のような立派な巣ではなく仲間と共同で一つの巣とする。
ちなみに時間が経つと網の粘着性は落ちるので駄目になった網は取り除いて(基本的にその網を食べ)新しく編み直す。枠組みの方は頑丈なので基本的に取り替える必要はない。また、捕まえた獲物を糸で包んで貯蔵することもある。獲物が少ない時期になると食べる他、この貯蔵餌そのものを囮により獲物を誘い込むこともあるらしい。
また、造網性の蜘蛛でありながら地上戦においても高い戦闘力をもつ。流石に網の上には到底及ばないものの、ひとたび他の虫と同じケースに入れられれば、その長い脚を巧みに操り捕食してしまう。
天敵はあまり知られないが、網を避けた鳥がこの蜘蛛を捕食するケースはある。また、この蜘蛛の巣にはイソウロウグモが侵入して居座り、餌を横取りすることが多々ある。オオジョロウグモは実は好き嫌いをするので小さすぎる虫だとかは食べなかったりするが、これはイソウロウグモにとっては好都合ではなかろうか。
繁殖など
メスは成熟してからも、受精卵の数が一定に達するまでは性器以外を脱皮して成長し続ける(多くの蜘蛛は成熟すると脱皮しなくなり成長しない)。この蜘蛛の先祖はオスがメスと交接した際に栓で他のオスの精子を拒み自分の精子だけをメスに受精させようとしてたが、進化の末に巨大化したメスは栓をされても他のオスによる受精を阻止されなくなっている。また巨大なメスの体は卵をより多く産める。
それでも最初にメスと交接するオスがより多くを受精させられる。よってメスの所に先に辿り着く方が有利となる。大きなオスは愚鈍だが小さいオスは身軽でメスのいる場所まで素早く辿り着ける。結果的に小さいオスが先に多くの卵を受精させ、大きいオスは子孫をあまり残せない。
以上の事がメス巨大オス矮小の進化の理由とされる。ちなみに脱皮直後はメスが1番交接を受け入れるタイミングなのでオスにとって一番のチャンスでもある。メスが襲うと思ったらオスは逃げるので交接の際の共食いは実はかなり稀。これも小さく素早いオスが有利な理由かもしれない。
卵は糸で包まれ卵嚢を形成し、母蜘蛛はこれを捕食されないように葉や土などで覆って隠して守る。
人間との関わり
大人しい蜘蛛であり人間を噛むことは基本あり得ない。また万が一どうにかしてこの蜘蛛に噛まれることができても多少痛いくらいで深刻な症状が発生するなどは一切ない。大きい体からこの蜘蛛を恐れる人もいるが、この蜘蛛を危険と言うことは風評被害甚だしい誇張表現と言える。
基本的に人間にとっては益も害もない。場合によっては巣が位置的にガーデニングの邪魔になることはあるかもしれない。この巣が植物を食害する昆虫を捕らえて逆にあった方がいいケースもある。この蜘蛛の糸の金色に輝く美しさから衣類を作ろうとする動きもあったらしいが、この蜘蛛の巣が大量に必要になるので商業用にはできてない。糸の強度から医療用に利用する研究もある。また、食用利用も見られる。
関連タグ
イソウロウグモ:他の蜘蛛の巣に勝手に入ってくる。小さく銀色のボディで、過去にはイソウロウグモがジョロウグモのオスだと思われてたことさえある。
ルブロンオオツチグモ:最大の(とされる)蜘蛛。タランチュラの一種で徘徊性。ゴライアス。
チョウチンアンコウ:メス巨大オス矮小の極端な例でサイズ差が生物界でも最大レベル。
ミツマタヤリウオ:同じくメス巨大オス矮小の極端な例。