CV:屋良有作
概要
吉原自警団"百華"の初代頭領であり、現頭領である月詠の師匠。
元御庭番衆で、歴代最強と謳われた服部全蔵の父に並ぶ実力を持ち、『蜘蛛手の地雷亜』の異名で恐れられた凄腕の忍であったが、そのあまりにも危険な性質から将軍を手にかけようとし、御庭番を追放された過去を持つ。
本編から4年前に吉原で起こった大火事の中で、月詠を庇って死んだと思われていたが、自身のある目的から死を偽装し、自らを孤独に追いやって護るべきもののために戦う弟子の月詠を見守ってきた。
しかし、銀時たちとの出会いによって彼女が変わりつつことに気づき、裏社会を牛耳ってその頂点に立ち、吉原を支配していた鳳仙の亡き後の町に麻薬をばら撒き、その調査に麻薬の輸送現場に訪れた月詠と銀時の前に再び姿を現す。
輸送現場での戦いでは銀時を圧倒して致命傷を負わせ、傷を負った月詠を攫って彼女の目の前で吉原に張り巡らせた自身の蜘蛛糸に火を放ち、町を火の海にして彼女の心の拠り所になりつつあった銀時や仲間たちを葬る計画をたてたが、全蔵に助けられ一命を取り留めていた銀時が自身の元に駆けつけ、激怒した彼と壮絶な一騎打ちを演じた末に敗れ、計画は阻止された。
人物・能力
目に見えないほど細いワイヤーを蜘蛛糸のように張り巡らせて自在に操り、いかなる場所もまるで自分の巣のように張った糸を辿って縦横無尽に闊歩して敵を蹂躙し、偸盗術や暗殺術では御庭番でも彼の右に出るものはいなかったという。この戦術を駆使して、麻薬の輸送現場における初戦では銀時を圧倒し、彼に致命傷を負わせた。
更に変装をしやすくするため、わざと自分の鼻を削いだり皮膚を焼くなどしたことから、その素顔は非常に不気味なものとなっている。
かつて御庭番として将軍家に仕えていた頃は、病的なまでに将軍に対して忠誠を尽くす忍としては極めて異質な存在であり、将軍のためならばどんな危険な任務や汚れ仕事も請け負い、天人が江戸に襲来した際には弱腰の幕府を見かねて戦おうとした御庭番の主戦派を、将軍の命によって一人で一族郎党に及ぶまで皆殺しにして殲滅するなど、その忠誠心は常軌を逸していた。
しかし、この忠誠心は酷く歪んだものであり、彼がここまで将軍に尽くしていたのは、それが真の獲物である将軍を仕留めるための仕込みであったため。
彼は標的にした獲物をより狩り概のあるものとするため、時に忠実な家来として尽くし、時に師や親のように愛情を注ぐ、そうして“餌”を与え続け、最も肥え太り豊潤になった獲物を狩ることに至上の快感を得るという歪んだ性質の持ち主である。
また、孤独に耐えられず心に拠り所を求める者を弱い者だと考えており、自分の存在を含む全てを捨てて孤独に身を置き、ただ己が信じ護るべきものに尽くす、文字通り“私(自分)”を滅して“公(護るべきもの)”に奉ずること(滅私奉公)を信条としている。
弟子の月詠にもこれを伝えており、彼女に自身の顔に傷をつけさせ、女を捨てるように諭したのは彼で、日輪と吉原を護るために自分と同じく頼るものを捨てさせ、自分の全てを弟子の彼女に注ぎ込んで育て上げた。彼女を自身の「芸術品」と称している。
ネタバレ
本名は鳶田段蔵。元ネタは加藤段蔵と彼の異名『鳶加藤』、児雷也から。
鳶田家は伊賀の郷士でその中でも有数の大家であり、ここに生まれた彼は幼少時代から忍術を学び、周囲から「神童」と称されるほどの才覚の持ち主で、将来を有望視された嫡男だった。
しかしそれを快く思わなかった鳶田家と敵対する郷士が鳶田家を急襲し、段蔵と彼の妹を残して一族郎党を皆殺しにされてしまった。その後に妹を人質にとられ、彼は仇である郷士のためにその忍としての腕をふるわされることとなる。
上述した彼の歪んだ忠誠心が生まれたのはこの頃であり、一族を根絶やしにした仇に仕え、憎しみ哀しみ恥辱の念から逃れるために、己の存在を忘れ機械的に任務をこなしていた。
しかしそんな彼を見ていられなくなった彼の妹は、兄に自分の人生を生きて欲しい想いから、自ら命を絶ってしまう。
そうして妹と一族の仇への憎悪の念と、妹を護れなかった自責の念に苦しめられ続けた彼は、大切なものを失う恐怖に苛まれるようになり、この怖れから自分を殺し自らを孤独に追いやる信条に繋がっていたのである。
故に彼は自分とは違い、重荷を背負う苦しみも背負われる苦しみも受け止めようとする月詠に惹かれ、同時に仲間と居場所が出来た彼女が自分の元から離れていくのを怖れたために、今回の凶行に及んだことを全てが終わった後に語っている。彼の妹は月詠と瓜二つであり、全てが終わった後に月明かりが照らす中で、地に倒れ伏し月詠への本当の想いを語った段蔵は、自身の肩を担いだ彼女に亡き妹の姿を重ねその目を閉じた。
関連項目
般若(るろうに剣心)……隠密御庭番衆にいたという設定や、いかなる顔にも変装できるようあえて自分の顔を醜くしたなど共通項が多い。
うちはサスケ(NARUTO)……同じく忍者キャラで、一族を皆殺しにされた点や、全ての絆を断ち切り孤独に身を置くことこそが強さと考える点が似通っている。しかし彼もまた、逆に絆を繋ぐことを重んじる親友に敗れることとなる。