概要
メダマグモ(目玉蜘蛛)とは、メダマグモ科(学名:Deinopidae)に分類される蜘蛛のこと。狭義では名前の通り、メダマグモ属(Deinopis)など大きな目が特徴的な種類を指す。
正面が大きな目玉の怖い顔を彷彿とさせ、英語でも「ogre-faced spider」、つまり鬼のような形相の蜘蛛とされている。一応より広くは「net-casting spider」、網を投げ掛ける蜘蛛としても知られており、こちらは怖いとかそういう人間の主観ではなくこの蜘蛛の生態に基づいた呼び方と言える。
対して同科別属であるアミナゲグモ属(Menneus)は目がそこまで大きくならず、「humped-back spider」と呼ばれ、その名の通り瘤背のような見た目をしている。
赤道から南半球にかけて生息し、中央~南アメリカ、アフリカ、インド、東南アジア(ミャンマー、マレー半島、スラウェシ島)、オセアニアに分布する。68種が知られている。
形態
体は脚を含め全体的に細長く、木の枝のような地味な茶色の体色が多い。
4対の目のうち1対が特に大きく、アミナゲグモ属以外ではこれが異様に発達しており、正面顔の大部分を埋めている。他の目は小さく、後頭部・鼻孔に見える所・頭部左右の突起にそれぞれ1対配置される。
この顔つきは一見ハエトリグモに似ているが、ハエトリグモと違い、前方中央(前中眼)ではなく、後方中央の目(後中眼)が大きくなっている(この点はコモリグモと同じ)。
それぞれの正面を顔文字で表現するなら、
- ハエトリグモは(°〇〇°)
- アミナゲグモ属は(∘..∘)
- メダマグモ属などは(〇..〇)
の様な顔をしている。
生態
見た目に劣らず捕食方法も独特である。木の枝などから逆さまにぶら下がり、編んだ網を前脚2対で構え、地面より少し上の位置に待機し、獲物が通りかかると突然それを被せて動きを絡めて封じ牙で仕留める。この長方形の網は、通常の蜘蛛が使う糸疣という突起が出す糸ではなく、篩板という器官を使った極細の糸の束で出来ており、粘液はなく、綿のようにフワフワした見た目をしている。
殆どの蜘蛛は目が悪く、振動を脚で感じることで獲物を感知する。例外として徘徊性のハエトリグモやコモリグモは目が発達しており、このメダマグモも視力で獲物を見つける為に発達した目を持つ。だがその事情は前述の種とは異なり、1箇所でほぼ動くことなく獲物を待ち伏せするにもかかわらず目を発達させた。
ちなみにこの発達した目は夜間にのみ使う。暗闇の中で光を感知することに関してはフクロウより優れているとされるが、日が昇り明るくなるとその組織は破壊される。暗くなると目の中で再び光を感知する組織が形成され、視力が復活する。
休む時はコガネグモなどのように、脚を2本ずつ束ねて4本脚に見える。
なお、前述した捕食方法がよく知られる一方、それ以外の生態、特に繁殖行動に関しては未だに不明点が多い。ほとんどの蜘蛛と同様母が糸で卵嚢を作るが、茶色の丸い球体で、表皮が硬くて目立つ隙もない。これは周りの環境に溶け込むカモフラージュ効果があり、硬い表皮は寄生蜂などの捕食者による侵入を防ぐのに役立つと考えられる。孵化した幼体はその中から小さな穴を食い破っては次々と卵嚢から脱出する。
天敵として幼虫が蜘蛛の卵に寄生するカマキリモドキが知られ、メダマグモの一部の卵嚢からその蛹が発見される。これはカマキリモドキの幼虫が卵嚢を外から穴を開けて侵入し、中の卵を食べて育ち、最後に空っぽの卵嚢を蛹の隠れ家にしたと考えられる。しかし前述した対策が寄生蜂に効いているらしく、その侵入例は見当たらない。
フィクション・創作関連
ポケモンSVにてこのメダマグモをモチーフにしたであろうポケモンのワナイダーの登場で少し知られるようになった。序盤虫らしく貧弱なステータスだが、搦手で補い、専用技のスレッドトラップを持つ。元ネタのメダマグモと違い糸は脚から出るがそれ以外は結構忠実に再現されていると言える。