52歳の公務員→悪役美少女!?
概要
2019年11月20日に上山道郎によってpixiv及びTwitter(現X)へとアップされた漫画作品。そして、この作品を第1作として作数を重ねた一連のシリーズ作。
作者の上山はコロコロやヤンキンにおいて、『機獣新世紀ZOIDS』や『ツマヌダ格闘街』等の発表で知られる少年並びに青年向けのベテラン漫画家である。
後に彼が連載枠を持つ月刊ヤングキングアワーズGHより商用化の運びとなり、同誌2020年5月号からリブート連載を開始した。既刊は7巻。
現実世界の人間が乙女ゲーの世界、それも悪役令嬢に転生するいわゆる悪役令嬢もの。
しかし、一般的な悪役令嬢もので転生するのは乙女ゲーをプレイするオタクの女性なのだが、本作は50代のおじさんが娘のプレイしているゲームの世界に転生するのが大きな特徴となっている。
それに加えて一般的な悪役令嬢ものにおいて、主人公の目的が「後に起こる自身の破滅の回避」が多い中、当作の主人公である憲三郎は積極的に悪役令嬢の役割を全うしようとするのだが、要所で他の登場人物に対して親目線で接したり、おじさんあるあるネタを披露した結果、それらすべてが好意的に解釈され周りの人々に慕われる展開が見所として挙げられる。
また、一般的な転生ものと異なり、現実世界に残された憲三郎の家族の様子も描いていることも特色である。随所に、オタク一家である屯田林家の家族の絆が見られ、妻や娘が憲三郎を元の世界に戻そうと努め、現実世界から異世界への介入もある展開となっている。
さらに、(現時点では)心底から性根が腐った悪人が登場しないことや、ごく一部の意地悪な人物に対しても安易なざまぁ展開にならず、憲三郎の人間力で丸く収める展開も、本作をストレスなく楽しめる要因として好評を得ている。
商業連載が始まる前にからネット上で話題になり、単行本1巻が発売される前に『次マン2020コミック部門4位』に至り、その1巻も予約段階で完売、すぐに重版が決まる程の話題作になっている。
連載開始までの経緯
上述したように、上山道郎と言えば長年において少年及び、青年漫画を主な活動のフィールドとしてきたベテラン漫画家である。
そんな彼が何故、通常においては女性向けジャンルであるとされる、悪役令嬢ものの漫画を描く流れになったか、その経緯は単行本1巻の後書きに書かれている。
それによると、近年連載していた作品が立て続けに打ち切りになり、若者の間で流行しているジャンルを研究しようと異世界ものに手を出したところ、悪役令嬢ものに大いにハマってしまう。
そこで「自分が読みたい悪役令嬢もの」を漫画にしてTwitterとpixivにアップロードしたところ、これが大いにバズった。
上掲のpixiv版第1話にも「ぼくの読みたい悪役令嬢マンガを描きました」と記している。
単行本1巻によればpixivのブックマークは3万超、Twitterのいいねは16万を獲得した。
その後、あれよあれよと言う間に商業連載が決定。さらには単行本発行、アニメ化も果たしたのであった。
テレビアニメ
2024年1月4日、TVアニメ化決定が報じられ、2024年8月1日にアニメ版公式サイトが開設された。制作は亜細亜堂(製作委員会にも参加)。2025年1月から放送開始。
尚、上山のオリジナル作品では初のアニメ化となる。
毎日放送(製作委員会に参加。放映幹事局)をはじめとするTBS系列局(スーパーアニメイズムTURBO枠)、AT-X(通常放映枠。リピート放送枠設定あり)、BS日テレ(アニメにむちゅ~枠)にて放送されている。
尚、最速放送枠はTBS系列地上波。9時間遅れでAT-Xでの放送が行われ、BS日テレの放送は4日遅れとなっている。
各種動画配信サイトでも配信が行われる。
製作は「悪役令嬢転生おじさん製作委員会」による。参加社は上述2社(毎日放送、亜細亜堂)に加えて少年画報社(連載雑誌刊行元)、マーベラス、日活、フリュー、アクアアリス。
アニメでは、憲三郎の市役所での日常などのオリジナルパートも挿入。漫画版で日菜子から言及されるに留まっていた『機械獣士ワイバーン』のイラストも登場した。これは、シリーズ構成を担当する脚本家の入江信吾の提案に上山がディティールを加えたもので、上山は「完全に正式なエピソードと思ってもらって間違いありません」としている。
ちなみに第2話では数少ない現実世界(妻沼田市)での憲三郎の様子が描かれたためか、上山の過去作(ZOIDS、ツマヌダ格闘街、エイジ'87など)に関する小ネタが多く含まれていた。特に次回予告における憲三郎のセリフは、上山曰く「予告編で喋ってる人名を全部分かるのは限界上山漫画オタクだけ」とポストするほどネタが詰まっていた。
他にも、原作では分かり辛かったセリフ・設定の補足や、原作に取り入れられた小ネタの増量も行われている(逆に割愛された描写もある)。
小ネタの例を挙げると、第4話にて美津子が語った履修済み異世界もの作品には、原作準拠のはてしない物がたピー、王家の紋ピー、魔神英雄伝ワタピー、ラムネ&4ピーの他に、レイアーピー、ふしぎ遊ピー、十二国ピー、ダンバイピー、幻夢戦記レピー、ナルニア国物がたピーが加わっていた。
作品名が『悪役令嬢転生おじさん』だからか、起用された声優には井上和彦、大塚芳忠、大塚明夫等々、数々の洋画で主役を務めた大御所声優達が名を連ねており、本作に対する期待と熱量が察せられる。
実際に、視聴者からは「スタッフの熱意と原作への愛情を感じる」と高い評価を得ており、本作が「今期(2025年1月期)アニメのダークホース」とも呼ばれている。
海外のアニメファンの間でも、事前ではほぼノーマークだったものの、放送されるや大絶賛を受けているとのこと。第3話の親父ギャグが飛び交うシーンでは、日本語のダジャレを見事に英語ダジャレに改訳した翻訳者に称賛が集まったという。ちなみに『マツケンサンバⅡ』は、『銀魂』や『フォートナイト』などで知った"海外ニキネキ"もいたらしい。
エンドカードは、毎回異なった漫画家による描き下ろしのイラストが表示される。
次回予告は、次回の映像とタイトルが流れるが、各キャストによるナレーションは(一応今回の内容に関連するが)ストーリーの本筋とはかけ離れたフリーダムなものになっている。
主題歌
松平健による同名曲のアレンジカバー。オリジナルとは異なりデュエット曲となっている。
本作の担当プロデューサー曰く、エンディングは各回ごとに昭和・平成のヒット曲をカバーする案もあったが、「善人しかいない世界の『悪役令嬢転生おじさん』は老若男女が楽しめる作品と感じた」「そんなアニメの締めとして、同じく老若男女に愛される『マツケンサンバⅡ』が流れれば、もっと楽しくハッピーになれる」との理由で、「視聴者が笑えて楽しく心が温かくなる作品にしたい」という思いから、半ば強引に選曲したとのこと。
『マツケンサンバⅡ』の採用は事前の情報がなく、第1話のエンディングにて視聴者へのサプライズとなった。ド派手な衣装に身を包んだ憲三郎とグレイス、さらにオールキャスト登場のアゲアゲな映像も相まって、視聴者に大いに歓迎された模様。第1話放送直後にYouTubeで公開されたノンクレジット版エンディング映像は、8日間で100万回再生を突破した。
『マツケンサンバⅡ』の話題に隠れがちだが、『Choose!!!』も歌詞と曲調が本作の世界観をよく表しているとして好評を得ている。オープニング映像は、憲三郎・現実世界を中心としたモノクロの前半と、グレイス・異世界を中心としたカラフルな後半に分けられており、文字フォントも前後半で異なるという芸の細かさである。タイトルは計3回表示され、前半ではモニタに映るドット文字および筆文字(田中裕太a.k.a.タナカリオン書)、後半の最後に正式なタイトルロゴが出る。
あらすじ
52歳の真面目な公務員、屯田林憲三郎は交通事故で死んだ。
……はずだったが
目を覚ますとなんと彼は娘がハマっている乙女ゲーム「マジカル学園ラブ&ビースト」の世界に転生していた!!
転生した人物はゲームの主人公、アンナ・ドールの恋路を邪魔する悪役令嬢、グレイス・オーヴェルヌ。
そこで本来のグレイス同様、悪役令嬢として立ち振る舞おうとするグレイス=憲三郎。
だが、自身の経験値からアンナを包み込むような親目線発言と庶民的な言動を優雅なものに自動変換する能力【優雅変換(エレガントチート)】が相まって自身の評価が爆上がり!
さらに意図せずゲーム攻略対象のイケメンたちとフラグが立ちまくりで!?
異世界で生き抜くための武器は剣!?魔法!?
いいえ、社会で培ったおじさんスキルです!!
おじさん×異世界転生×悪役令嬢でお届けするほのぼのコメディ!
(アニメ版公式情報より引用、一部改)
登場人物
現実世界
主要人物は屯田林家のみ。
乙女ゲー世界
マジカル学園ラブ&ビーストを参照。
用語
マジカル学園ラブ&ビースト
憲三郎が転生した先となる乙女ゲー。
略称は公式では『ラブビー』だが、『マジビー』派も根強いらしい。
(実は上山曰く「連載開始からしばらくは決まっていなかった」とのことで、実際原作序盤では略称が統一されていなかったが、アニメ版にて「どちらの呼び方もよく使われるので、日菜子自身もたまに混同する」と理由付けられた)
細かな設定は不明だがよくある魔法世界の学園もののようだ。
機械獣士ワイバーン
作中作。須黒野エイジ原作の漫画、及びアニメ作品。
日菜子、憲三郎ともアニメ版をよく視聴していたことから、日菜子がこの作品に登場する恐竜型キャラである「オリオン」をグレイス=憲三郎のビーストの名前に付けている。
初出はその須黒野エイジを主人公とする上山道郎の漫画「エイジ'87」。
モデルはどう考えても機獣新世紀ZOIDS。オリオンのモチーフは勿論ジークであるし、先述の憲三郎の市役所での日常を描いたシーンで登場していたポスターにはオリオンの他に主人公の少年バーニン(バンがモチーフ)と、ヒロインの少女フィーニス(フィーネがモチーフ)が描かれている。ちなみにフィーニスはアニメ版の金髪ではなく漫画版を意識したような緑髪になっている。
関連動画
『Renta!』によるCM
TVアニメ版予告動画
TVアニメ『悪役令嬢転生おじさん』ティザーPV|2025年1月より全国同時放送
TVアニメ『悪役令嬢転生おじさん』第1弾PV|2025年1月全国同時放送
TVアニメ『悪役令嬢転生おじさん』番宣CM|2025年1月9日(木)全国同時放送!
TVアニメ『悪役令嬢転生おじさん』OP映像|サイダーガール「Choose!!!」
シリーズ一覧
関連タグ
グレイス憲三郎:本作品(Web版)の通称、あるいは本作本編のグレイスを指す通称(ある意味では表記揺れ)。ただし憲三郎とグレイスの両名を示すコンビタグでもある。
ツマヌダ格闘街:作者が2016年8月まで連載していた漫画。現実世界の憲三郎の職場が「妻沼田市役所」であったり、入院している病院が「妻沼田総合病院」になっている小ネタがある。これらのつながりもあり、アニメ版第2話にて八重樫ミツルとドラエさんがカメオ出演を果たした。
殆ど死んでいる:『異世界おじさん』の原作者。アニメ版第1話のエンドカードを担当(パロディ元は『仮面ライダークウガ』EPISODE1「復活」における変身シーン、衣装のカラーリングはマイティフォームと思われる。余談だが『悪役令嬢転生おじさん』の作者である上山道郎は児童誌において『仮面ライダークウガ』の読み切り漫画を描いた縁もあり、奇しくもアニメ版放送開始となった2025年1月は30日に『仮面ライダークウガ』25周年を迎えようとしていた)。
太陽戦隊サンバルカン:アニメ版第4話にて屯田林家が名乗りポーズのパロディを行なっている。
ねこに転生したおじさん:トラックに撥ねられて死んで転生したつながり(厳密には憲三郎は危篤状態だが死んではいない)で、転生前の風貌も似ている。作者のやじまは、アニメ版第7話のエンドカードを担当した。
おじ転生:正式名称は『おじ転生~悪役令嬢の加齢なる生活~』で、本作とは真逆に異世界で悪女として処刑された主人公が、現代の日本に「長年の不摂生で、肥満でハゲて孤独死した50代のおじさん」として転生する作品。
半熟英雄(はんじゅくひーろー):家庭用ゲーム機では初めてのリアルタイムストラテジーかつタマゴからエッグモンスターと呼ばれるものを呼んで戦わせる。ギャグありパロディあり切り札あり(笑)、演劇舞台上で物語が語られ進行する。
乙女ゲー内で悪役令嬢演じるの父を身内が操るゲームで同時進行系とはこれ如何に……。