概要
鰓脚綱無甲目・ホウネンエビ科ホウネンエビ属に分類される甲殻類。学名 Branchinella kugenumaensis。
同じ甲殻類ではあるが、名前に反してエビ(軟甲綱十脚目)ではなく、カブトエビやカイエビ、ミジンコなどと同じ鰓脚類に属す。またアルテミアもこの仲間である。
名前の由来
古来コイツが発生した年の田んぼは豊作で米我欲取れるという言い伝えがあり、それ故に「豊年海老/豊年蝦」「豊年虫」とも呼ばれる。地方によっては「おばけエビ」「苗きんぎょ」、「タキンギョ」とも呼ばれる。
特徴
体長は1.5~4cmほどで平均2cm。基本の構造は他の無甲類と大差ない。
細長くて柔らかい体は半透明で、食べたものにより中央(腸)が緑色~褐色を帯びる。
頭部から複眼と第1触角が突き出す。オスの場合、第2触角がメスを掴むための大きなフック状の把握器に発達し、エビというよりもアノマロカリスじみた姿となっている。
胸部に沿って11対の鰭のような脚(鰓脚)が並び、メスの場合は胸部末端から卵を保護するための育房が伸びる。腹部は細長く、末端には2本のオレンジ色の突起が伸びる。
生態
河川敷や海岸などの水溜まりにも生息するが、水の綺麗な水田に大量に発生する様子の方が印象的。
このことから、カブトエビ・カイエビと共に、「田んぼの三大エビ」、「三大エビじゃないエビ」などと呼ばれている。
背泳ぎで常に腹面を天に向け、鰓脚を小刻みに動かして水田を泳ぎ回る。水田の有機物や植物プランクトンを食すので、基本的に稲に害を及ぼす事はない。動きは素早く、捕らえるのは非常に困難。
走光性があり、夜間、水田に懐中電灯などで光を当てると集まってくる。
寿命は精々1ヶ月程。生息場所が干上がるまでの短い期間に成長、産卵し、産み落とされた卵は耐久卵(休眠卵)であり、次にその場所に水が溜まるまで何年も耐え続ける。そのため魚屋ではエサとしてコイツやアルテミアの卵が売られていたりする。
近縁種
キタホウネンエビ
北海道石狩海岸砂丘の海岸林と青森県下北半島のむつ市と東通村の融雪プールに生息する。
チョウカイキタホウネンエビ
山形県鳥海の融雪プールに生息する。
シレトコホウネンエビ
北海道知床半島知床五湖周辺の沼に生息する。
ナナイキタホウネンエビ
ロシア、ナナイの融雪プールに生息する
Branchinecta gigas
北アメリカに生息し、10cmに成長する別科の大型無甲類。水中の他の小動物を捕食する肉食性。
アルテミア科。世界中の塩水湖に生息。オスの把握器が羽のように広がる。
レピドカリス
古生代・デボン紀に生息していた原始的なホウネンエビの仲間。レピドカリス目レピドカリス科。
大きさ3m程で、形やサイズは現在のホウネンエビとよく似ているが、直接の祖先ではなく、より古い仲間から枝分かれした親戚にあたると考えられている。
ちなみに名前の意味は「うろこを持つ海老」。