概要
膜翅目は昆虫のグループの一つ、「ハチ目」ともいう。「膜翅類」と総称され、そのうちアリ科のものはアリ(蟻)といい、残りすべての種類はハチ(蜂)と総称される。
15万以上の種が知られ、昆虫の中では鞘翅目(甲虫、約40万種)・鱗翅目(ガとチョウ、約18万種)・双翅目(ハエやカ等、12万種以上)と並んで10万種を突破した4大目の1つである。
巣を作り、子を育て、女王蜂/女王蟻を中心とする社会性を持つものが印象的であるが、必ずしもそうではなく、特にハチの中には一匹狼な自由生活や寄生生活を送るものも少なくない。
2対の翅は膜質で脈が少なく、前翅のほうが大きい。前後の翅の境目はフックのような構造で繋いで、連動して1対の翅のように羽ばたく。ただしアリやアリバチのように、翅が退化した種類もいる。
口元は頑丈な大顎が目立つが、多くの種類は舌のように特化した部分をも口の奥に兼ね備えている。
頭部と胸部の境目は明瞭で、胸部は飛翔筋を格納する箱のようにまとまる。胸部と腹部の間にくびれた細い腰(腹柄)を持つため可動域が高いものがほとんどであるが、ハバチやキバチという原始的なグループは寸胴で腰はくびれていない。
雌は腹部の先に尖った産卵管を持ち、腹柄を持つグループではそれが毒針に特化したものが多い。
完全変態で、幼虫は蛹を経ってから成虫になる。ハバチやキバチの幼虫は自由生活でイモムシ状であるが、他のグループはほとんどが白いウジムシ状で、構造はとてもシンプルで無防備。後者の場合は親が用意した巣などで守られることが多い。
学名「Hymenoptera」は一般では本グループの膜質の翅にちなみ、古代ギリシア語の「hymen」(膜質)と「pteron」(翅/翼)に由来と考えられる。ただし「Hymeno-」の部分に関してはギリシア神話における結婚の祝祭の神「ヒュメナイオス(Hymenaeus)」由来の説もあり、これは本グループの前翅と後翅が繋がくことと、社会性の種類が結婚飛行を行うことからである。
分類
完全変態昆虫の中では最も系統の起源が古く、他の完全変態昆虫の共通祖先より早期に派生したグループである。
内部の系統関係については、まずハバチやキバチが最も原始的で、その間から寄生蜂が進化した。そして寄生蜂の間から細い腰を持つものが現れ、そこから毒針を持つ狩り蜂が進化し、狩り蜂の間から更にハナバチやアリが進化したと考えられる。また、スズメバチ・ハナバチ・アリ等に見られる社会性は、それぞれ独自に獲得(収斂進化)したと考えられる。
アリの位置付けについて、かつてはスズメバチやドロバチ等の系統に近いと考えられたが、遺伝子解析により、むしろアナバチやハナバチ等の系統の方が近いことが示される。
┗┳━アリバチ等(狩り蜂)
┗┳━ツチバチ(狩り蜂)
┗┳社会性━アリ
┗┳━アナバチ等(狩り蜂)