概要
経営不振により残念ながら倒産してしまった株式会社コンパイルの遺産。現在はセガより発売されている人気落ちものパズルゲーム『ぷよぷよ』シリーズに登場するキャラクターの出典であり、現在でもコアなファンが多数存在する。
初期作品は一人称視点ダンジョン探索型のRPG。後の三人称視点やフィールドも導入された。当時のRPGとしては斬新な要素がいくつも導入されており、後のゲームにも多くの影響を与えたと言ってよいだろう。具体的には
- マジカルボイス(呪文を唱える時やダメージを喰らった時などにしゃべる)
- ファジーパラメータ(HPやMPが数値化されておらず、アルルの表情や声で判別する)
- 自動マッピング(既に歩いた場所が自動でマッピングされる)
などである。特に体力(HP)や魔導力(MP)等の消費状況が数値ではなくキャラの表情やしぐさで表現されるシステムは特異である。
登場人物(メイン)
基本的に魔導師の少女「アルル・ナジャ」が主人公として制作されている。作品によってはルルーやシェゾ・ウィグィィ等、アルル・ナジャ以外のキャラクターが主人公になる場合がある。
それ以外のキャラについてはぷよぷよ・魔導物語・フィーバーキャラクター一覧参照
魔導物語の歴史
最初の魔導物語
原点となる作品はMSXの「ディスクステーション」に収録された『魔導物語』である。その後、このエピソードを2話として前後にエピソードを足して3本収録で製品化した『魔導物語1-2-3』がリリースされた。主人公はアルルであったが、MSX版当初は名前は存在せず、開発者らには「らっこ」「A子」などと呼ばれていた。
エピソード1(魔導物語Ⅰ)はアルルの幼稚園時代を扱い、1人だけ認定試験に合格したアルルが魔導幼稚園の卒園試験の塔に挑むというものである。エピソード2(魔導物語Ⅱ)とエピソード3(魔導物語Ⅲ)は16歳になったアルルが魔導学校に入学するべく旅する途中、旅路で遭遇した事件を扱っている。
なお、上述のようにエピソード1・3は製品化の際に加えられたため、実際にはエピソード2が元祖である。ただし当初から副題は『EPISODE II CARBUNCLE』となっており、複数エピソードになる構想自体は存在していたようで、後に『スターウォーズ』(一作目がエピソード4)を意識したものと語られている。
魔導物語の展開とキャラ設定の広がり
その後、本作のキャラを使った落ち物パズルゲーム『ぷよぷよ』が大ヒットし、ぷよぷよシリーズの展開と平行して魔導物語の続編も作られていく。パズルがメインのぷよぷよに対して、キャラとそのドラマを描くのが容易なRPGという媒体の利点を生かして、後のぷよぷよにおける設定の多くも魔導物語の中で描かれていった。
『魔導物語 A・R・S』では若き日のアルル(A)・ルルー(R)・シェゾ(S)それぞれを主人公にした3本のエピソードを収録し、『1-2-3』で登場するより前の各キャラクターの過去が描かれている。アルルとカーバンクルの出会い、ルルーがサタンに恋するようになった経緯、シェゾが闇の魔導師となった事情がそれぞれ明らかにされている。
『魔導物語 道草異聞』では、既にぷよぷよの設定上で登場していた「オワニモ」の呪文の原点を魔導物語側から描き、4つのぷよぷよが揃うと消滅する原因が補完された。
『魔導物語~はちゃめちゃ期末試験~(通称はめきん)』はシェゾやルルーがアルルの味方として活躍し、キャラ設定と交流関係が広がった。
『魔導物語~魔導師の塔~』はシェゾを主役としてその活躍を描く一方、ウィッチが重要キャラとして登場し、祖母の存在や修行の様子などが描写された。
展開した媒体
初出はMSX2で、まずエピソード2に当たるプロトタイプがディスクステーションで出た後、1-2-3の製品版が発売。MSX版でのグラフィックはデフォルメ調であり、後のぷよぷよシリーズのイメージに近い。
その後、頭身の高いリアル調のグラフィックに変更して内容もややバイオレンスなものにリメイクしたPC98版1-2-3が発売された(敵がグロかったり、いわゆる「生首シェゾ」や「リアルなすけとうだら」等と言われるのはこちらである)。
しかし、ぷよぷよが出て人気を博した後にPC98で発売された続編のARSでは、MSX同様のデフォルメ調グラフィックに戻されている。
1-2-3とAは後にゲームギアに移植された(ただしぷよぷよの人気の影響を受けて大幅にアレンジされ、3とAはストーリー自体もほぼ別物)。
それ以外の機種ではエピソード1を元にした作品が多く移植され、1のみメガドライブおよびPCエンジンにも移植されている。スーパーファミコンでも、1の内容を元に『魔導物語 はなまる大幼稚園児』が出ているが、卒園試験以前の前日談をメインに大きくリメイクされたものの、他機種ではメインであるはずの肝心のラストの卒園試験はすぐに終わってしまう。
道草異聞はPC98版ディスクステーション、はめきんや魔導師の塔はWindows版ディスクステーションにて収録された作品である。
セガサターンからも『魔導物語(通称SS魔導)』が発売されている。HPやMPが数値化された初心者に優しい作りのRPGだったため、新しいファン層を獲得することができた。世界観は当初は真・魔導物語によるものだったと推測されるが、ゲームの製品化前に一度没になってストーリーが全面的に作り直されているため、元々の設定に準拠したものは後に小説版としてリリースされている。
また、韓国ディスクステーション限定で『魔導物語 エリーシオンの秘密(直訳)』というものもあり、当初は日本でもリリース予定だったがコンパイル倒産により幻となっている。
ケータイアプリとしても、G-modeから独自の『魔導物語』がリリースされていたが、半年で配信を終了している。こちらはアルルがとある目的で謎のダンジョンに潜るというものだった。後に、セガからゲームギア版1-2-3の移植版が配信されている。
シリーズの時系列
当初、魔導物語とぷよぷよの最初の企画・製作者である猫庭王米光こと米光一成氏の構想では、初作として発表されたEPISODE IIを皮切りに、それこそスターウォーズのような9部作構成を予定していたらしい。そのため、1-2-3の後は4-5-6、7-8-9と続いていくことを想定していたようで、さらに時系列の円環構造で主要キャラクターのうち何名かが同一人物だったり親子だったりという関係が明かされる予定だったようだ。さらに「EPISODE 0」は胎児のアルルが産道から生まれてくる話も考えてあったとか。
ところが、米光氏はPC98『魔導物語1-2-3』と元祖『ぷよぷよ』を最後に残念ながらコンパイルを退社。そのため上記の設定はあくまでも初期設定であり、現在知られる魔導シリーズの世界観とはズレが生じている。
その後、米光氏の残した設定資料などを元に魔導物語新作を引き継いだうゑみぞ氏が、新たな魔導である『魔導物語A・R・S』の脚本を手がけることになり、さらにぷよぷよシリーズのヒットに伴って魔導関連のゲームが次々と制作されることになったため、コンパイルの他のスタッフが独自の設定を盛り込んでいくようになっていった。
そのため、同一作品のリメイクなども含め、それぞれの作品によって人物同士の関係や設定などが曖昧になっていたりやや違っているようなところもある。
例えばアルルとルルーの年齢設定を基準に、魔導物語の1-2-3、A・R、はめきんを単純に時系列順に並べると
「A(アルル4歳)→1(アルル6歳)→R(ルルー16歳)→2(アルル16歳)→3(アルル16歳&ルルー18歳)→はめきん(アルル&ルルーが魔導学校入学後)」
となるが、厳密には作品間で設定が微妙に矛盾した部分があったり、リメイクが複数ある作品はそれぞれの機種で内容や細かい設定が異なっていたり(特に魔導1では差が大きい)と、ややパラレルを内包気味な状態である。それ以外の魔導物語や、それぞれの詳しい年代なども曖昧になっている(例えば魔導Sのシェゾは14歳だが、魔導2のシェゾは年齢不詳など)。
派生作であるぷよぷよシリーズの方は、初代は明らかにセリフ回しが1-2-3の後日談のようになっていてアルルも16歳と紹介されているものの、その時期については「魔導学校を目指して旅をしている」「魔導学校に通っている」など資料によって曖昧ではっきりしていない。
一時期はこの混沌とした魔導物語の年表を統合しようとして、各作品の年代を正確に定めて壮大な背景設定を適用しようとしたSS魔導の製作が開始されたものの、最終的に発売されたゲームではシナリオが縮小・変更されたため、その統合設定は正式な設定になることはなく、商業二次の小説真・魔導物語のオリジナル設定ということに落ち着いている。この設定の年表では、魔導Sはアルル誕生より150年前の出来事、ぷよぷよは約1000年後の出来事として想定されている(いわゆる「真魔導設定」、シリーズ本編では非公式扱い)。
派生作品
ぷよぷよ以外にも魔導物語の派生作品は数多く存在する。特にディスクステーションに掲載されたゲームが多く、やはりアルル・ルルー・シェゾ・ウィグィィが題材のものが多い。コメットサマナーというウィッチが主役のアクションゲームは、PCゲームにしておくのが勿体無い程やり込める良作。
また、魔導物語により近いものとしてローグライクゲームの『わくわくぷよぷよダンジョン』がある。ダンジョンRPGでアルル・ナジャ・ルルー・シェゾ・ウィグィィの3名のうちいずれかでプレイする。媒体としてはセガサターン・プレイステーションで発売されている。
他にもゲームボーイカラーで『アルルの冒険 まほうのジュエル』というRPGもリリースされている。
また、何故か『ぷよぷよDA!』(アーケード・ドリームキャスト)等のダンスゲームも派生形として存在する。
そのほかの作品タイトルについては魔導物語・ぷよぷよ・フィーバー他シリーズ一覧を参照。
書籍
魔導物語はライトノベルとしても出版されている。シリーズで分けると角川魔導(スニーカー文庫)と真魔導(ファミ通文庫)が存在するが、それぞれの内容は個別のもので商業二次作品である。これらの設定の派閥のゲームも存在するが、ぷよぷよや魔導物語シリーズのゲーム本編の設定には概ね関係していない。公式のゲームの方も同時系列で全く違うストーリーが展開されているものもある。
どちらの作品も、実際に発売されたゲームを元に書かれているもの、オリジナル要素のある作品、両方が存在する。なお、ゲーム版シナリオを直接再現したものとしては、角川ではわくわくぷよぷよダンジョンが、ファミ通ではSS魔導物語が、(どちらもややオリジナル要素が加わっているものの)書籍化されている。
オリジナル要素が含まれる魔導はどちらも通常のゲームや互いの作品には存在しない設定やキャラクターが存在する。共通して言える事は、どちらの作品もオリジナルキャラが大変濃い。
その他、上記とは別にぷよぷよSUNの小説版も存在するが、こちらも本編とはやや離れた独自設定となっている。
コンパイル倒産後
『魔導物語』自体の権利はコンパイル倒産以降、アイキを経て、現在はレトロゲームを主に扱うD4エンタープライズが版権を管理し、そしてシリーズ新作などを作れる営業権をコンパイルハートが所持している。
ただし一方で『ぷよぷよ』シリーズ及びそれに一度でも登場したキャラの権利はセガが持っており、作品タイトル自体とキャラの版権管理がそれぞれバラバラになってしまったため、両社同士の協力無しには旧作の移植やリメイク、旧魔導キャラを使った新作などは実現不可能というややこしい事態になっている。
(わずかに旧作が移植された例はあるが、この場合はD4Eとセガの社名を併記する形となっている)
このように『魔導物語』と『ぷよぷよ』の権利元が別会社に分かれてしまったため、「ぷよぷよシリーズに登場済み」に属するアルルなどの旧魔導キャラを一切使わずに新キャラクターで制作された作品もいくつか存在している。
「魔導物語の1000年後」とされたアイキの『ポチッとにゃ~』、心機一転で連載開始されたコンパイルステーションのウェブコミック版『魔導物語~マノと不思議の帽子~(webコミ魔導)』、コンパイルハートが新生魔導として制作した『聖魔導物語』等が該当する。
2014年10月3日にプロジェクトEGGのパッケージ企画として『魔導物語きゅ~きょく大全1-2-3&A・R・S』がリリースされる事が発表され、2015年3月31日より販売開始された(2016年9月までの期間限定生産)。
その第2弾として2016年5月20日には『魔導物語 きゅ~きょく大全 通 -MD&DS-』が限定発売。こちらはメガドライブ版『魔導物語I』と、ディスクステーションに収録されていたPC-9801版『魔導物語 道草異聞』、『らっきょ喰うカーバンクル ディスクステーションBookタイプ 1号収録版』、『らっきょ喰うカーバンクル ディスクステーション98 20号収録版』、『大魔導戦略物語』、『大魔導戦略物語'95』、『魔導四五六』、『いもほり』をWindows対応にして同時復刻収録。
そして度重なる復刻を経てぷよぷよキャラも登場予定の『魔導物語4(仮)』が発表され、2024年7月10日に正式タイトルが『魔導物語フィアと不思議な学校』に決定。
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アルル・ナジャ ルルー シェゾ・ウィグィィ サタン ウィッチ