タイトルは『Ⅱ』だが、1989年に『魔導物語 EPISODEⅡ CARBUNCLE』としてDiscStationで初めて世に出た魔導物語はこの作品である。
後の製品版『魔導物語1-2-3』にて、後付で「Ⅰ」「Ⅲ」が追加された。
詳細は各作品の節で後述。
ストーリー
この作品は複数の機種で販売・製作されているが、道筋はどの作品でも共通である。
遥か遠くにある魔導学校「古代魔導スクール」を目指す旅(※入学試験も兼ねて、乗り物は一切使えず自分の魔導力のみで申請室へ辿り着く旅)をしている魔導師の卵アルル・ナジャ(※当初は名無し)は、旅を始めて3日後、いきなり目の前に現れた銀髪の魔導師のおにいさんシェゾ・ウィグィィ(※こちらも当初は名無し)に突然眠らされてしまう。
目を覚ますと、そこは薄暗い地下牢。
見張りの魔物(初期作品は魔導師ラルバを意識したのかサイクロプスとリザードマン、GG版ではダークドラゴン)がいたが、色気で見張りの魔物をだまして牢屋のカギを奪い、脱出を試みる。
ちなみにGG版では捕まった際魔導力を奪われて魔法が思い出せなくなったなどの記述がある。
なお、シェゾが変態っぽいという記述は本作が由来で、既に元祖DiscStation版の取説に掲載されたプロローグストーリーにて「かっこいいけど、どこかおかしい。変態の目だ。」「ああああ、やっぱり、変態お兄さんだ!」というアルルが心の中で思っただけの感想があったものの、ゲーム内の台詞にはまだ無かった(このストーリーは後のMSX2製品版、PC-98版の取説にも再掲されている)。その後のPC-98版では実際にゲーム内で「あああああああ! へんたいだわ この人っ!」という台詞があるが、シェゾはこれに対し無反応だったのでやはり心の中の台詞の可能性がある。ちなみにMSX2・PC-98版の頃のシェゾは「お前の力が欲しいだけだ」ときちんと台詞を言えており、当時は言葉ではなく雰囲気が変態扱いだった模様。その後、有名な「お前が欲しい」の言い間違いネタはぷよぷよから始まっている。
地下牢を脱出する途中、鳥の魔物商人ミイル・ホォルツオ・ベンジャミンにナンパされ、アルルはいきなり塩をふりかけて食べようとするが、焦ったミイルは伝説の杖ウラノス・スタッフ(GG版はウラノスのつえ)の話を切り出し、ライラ遺跡に眠るルベルクラク(DiscStation版のみ宝石の名称は宝石を額につけたカーバンクルとなっている)と交換しないかと交渉を持ちかけられる。
アルルはミイルの要求をのみ(ただしナンパの件については顔面に蹴りを入れて断っている)、地下牢を脱出しようとするが、出口で彼女を捕えた魔導師のおにいさんシェゾ・ウィグィィと対峙することとなる。
※なお、シェゾとの戦闘シーンや結末は、作品によってかなり戦い方・戦った後が変わる。
- DiscStation版の初代魔導物語Ⅱでは倒されるとじゅうじゅうと音を立てて蒸発。
- MSX2の製品版魔導物語1-2-3では倒されても単なるばたんきゅーで終了。生死は不明だが、後の出番はやはり無い。
- PC-98版ではダメージを受けると頸動脈から血を流し、首が切断され、やっと終わったと思いきや最後は首だけで襲ってくる。非常にグロい。さらにシェゾ戦の後、脱出しようとしたアルルに肉塊のようなグロい実験体が襲いかかる。要するに3連戦である。
- GG版は単なるばたんきゅーなのだが、ぷよぷよシリーズでの人気の影響なのかしっかり生きており、その後もライラ遺跡までしつこく何度も追いかけて終盤まで再挑戦してくる。
ライラ遺跡にたどり着き、ルベルクラクを追い求め幾重もの罠を越えて最深部までたどり着くと、そこには何やら怪しげな男性が…。
怪しげな男性は突然アルルを妃にしようと言い始め、誓いの口づけを交わそうと迫ってくる。誤解を解くためアルルが「ルベルクラクを取りに来た」ことを伝えると、男性は「何ぃっ!?そんな事をしたらカーバンクルちゃんが!」と怒り出し、突然角と翼を生やした魔族へと姿を変えて攻撃を仕掛けてくる。
(※ただし元祖DS版のみ展開が少し違い、カーバンクル(宝石)を探しに来たアルルに対して、カーバンクルちゃん(生き物)を渡さないため戦う。)
なんとか彼を倒したアルルは、部屋の隅で怯えているルベルクラクを額に宿した謎の生き物を発見する。アルルは「大丈夫、宝石を取ったりしないよ」と生き物をなだめて安心させ、そのまま一緒に連れて迷宮を脱出した。残念ながらウラノス・スタッフを手に入れることはできなくなったが、彼女は新たな小さい仲間を得て再び魔導学校へ旅立つのだった。
魔導物語 EPISODEⅡ CARBUNCLE
魔導物語 EPISODEⅡ CARBUNCLEとして、MSX2版「DS SPECIALクリスマス号」に付属されてきた魔導物語のシリーズ最初の作品にあたるもの。(当初、EPISODEⅠは存在しない)
『元祖魔導』『DS魔導』『原作魔導』などとも呼ばれる。
なお、この時点ではサタンとカーバンクル以外のキャラクターの名前は出ておらず、銀髪の魔導師(シェゾ・ウィグィィ)はもちろん、主人公であるはずのアルル・ナジャすら物語に名前を出していない。
シェゾはゲーム中で「魔導師のおにいさん」と呼ばれており、主人公のアルルは当時スタッフ内で「らっこ」「A子」などと呼ばれていたようだ。ただしシェゾの古代魔導「アレイアード」「アレイアードスペシャル」はこの頃から使っていた。
当時女の子が主人公のRPGというのは珍しかったため、敢えて女の子に、そしてボク少女にしてみたとのこと。
ちなみにこの作品の時点では、後の魔導の特徴のひとつとなるオートマッピングが存在しない。ダンジョン自体は狭いのだが。
初作のためかグラフィックが独特で、特にシェゾは一部でギリシャ彫刻のようなどと呼ばれたりしている(後述の製品版1-2-3では大幅に描き直された)。
※しかし、サブタイトルが既にEPISODE「Ⅱ」だったり、ルルーらしき人物が書いたと思われる手紙が落ちているなど、この時点で続編は出す気満々だった模様。
ちなみに魔導物語が『Ⅱ』から始まったのは『スターウォーズ』が「エピソードIV(第二章)」から始まった事のパロディだと、後に原作者である米光一成氏が明かしている。
※なお、カーバンクルは額の宝石ルベルクラクの名称が当時なく、宝石そのものがカーバンクルと呼ばれていた。
MSX2版 魔導物語1-2-3
DiscStation版が好評だったのか、その半年後に、原作の前後エピソードとして「Ⅱの10年前、6歳の頃の主人公(後のアルル・ナジャ)が卒園試験に挑む魔導物語Ⅰ」「Ⅱから3日後、ルルーと出会う魔導物語Ⅲ」を追加した「魔導物語1-2-3」を販売開始する。
基本的にⅡのシナリオは原作のDS魔導とほぼ同じだが、マップ、グラフィック、各種メッセージ、登場アイテム、登場魔物など細部で色々変更されている。
この作品でようやく魔導師のお兄さんに「シェゾ」という個人名が付き、裏設定としてフルネームが「シェゾ・ウィグイイ(ただし大文字)」、名前の意味が「神を汚す華やかなる者」という設定が生まれた。
だが、主人公であるはずのアルル・ナジャはまだ名無しのままであった。
この作品の魔導物語Ⅱにてシェゾが闇の剣(※ただし当時はつるぎ読み)を使い始める。命中率100%のアレイアード系最強古代魔導「アレイアード・ロン」はこの作品のみ使用。
また、この作品を含む一部作品でリュンクスという魔物が初登場し、一部ファンの中ではシェゾの部下としてともに描かれることが多い(もっとも、本作やPC98版時点でのリュンクスの姿は単なる四足歩行の獣であり、よく知られる可愛い方のリュンクスは後述のGG版のデザインである)。
こちらのシェゾの結末は単なる「ばたんきゅ~」で終わっている。
また、ライラの遺跡ではよよよから「美女と野獣が6階へ行けない!サタン様に会いたい!と怒鳴っていた」という話も聞くことができ、「サタンさまを愛したものは決して幸せになれないんだよ」という意味深な台詞を残している。
2008年にはD4エンタープライズから上記DiscStation版と共にWindowsへの復刻移植版が限定発売されたが、現在は入手困難。
その後、2015年に同じくD4Eより、MSX版に加えて下記のPC-98版や魔導物語ARSもセットで『魔導物語 きゅ~きょく大全 1-2-3&A・R・S』として一挙復刻された。こちらも期間限定生産なのでお早めに。
PC-98版 魔導物語1-2-3
1991年に発売。通称【グロ魔導】。MSX2版「1-2-3」のリメイク作品。
なぜこのような呼び名がついているのかと言うと、
「キャラがリアル頭身の画風に変化し、ほかの作品よりもグロい(例:リアルな魚にそのまま足を生やしたようなすけとうだら等)」
「鼻や目から血が出る特殊な仕様がグロい」
「グラフィックだけでなく、文章の方も死や苦痛をリアルに描写する表現がありグロい」
「シェゾに攻撃を与え続けると首から流血し、首が取れて首だけで襲いかかってきてグロい」
「ばたんきゅ~ではなく死亡という表現がグロい」
「シェゾを倒した後に登場する実験体が生々しくてグロい」
等のグロい表現が多く含まれているからである。
とはいっても、他のシリーズにはない表現や会話があり、ファン必見の作品であるのには間違いない。
このようなリアル表現になってしまったのは、当時MSXしか所持していなかった原作者の米光一成氏が、
「PC98版なんて持ってる人はすっごいアダルトにちがいない!」という妄想から、
精一杯アダルトな表現にしようとしてこうなってしまったらしい。
しかし変に突き抜けてしまい不評だったためか、
そもそも「かわいくないなら別のCRPGで十分」なためか、
続くPC-98版魔導物語ARSでは元々のデフォルメ調の絵柄や雰囲気に戻されている。
本作の翌年に初代ぷよぷよが大ブームになり、その頃に最新だった『1-2-3』はこれであったため、当時のぷよぷよ関連の書籍ではこの作品が「ぷよぷよの原作」として紹介されることが多かった。そのため「ぷよぷよの原作はリアルな絵だった」と勘違いしてしまった人も多かったらしい。
ちなみにその頃に発売された小説版角川魔導の1巻も、(当時GG版が出ていなかったため)PC98版の生首シェゾの設定を引き継いで、その状態から蘇ったことになっている(もっともこちらも設定は原作と少し違うのだが)。
なお、この作品で主人公に「アルル・ナジャ」という正式な名前がようやく付き、
(雑誌などで紹介する際に「主人公が名無しでは困る」という理由だったらしい)
シェゾの苗字も「ウィグィィ(小文字)」という設定に改められ、以降のシリーズでも生き続けている。
魔導物語Ⅱ アルル16才
ぷよぷよブームを経てゲームギアにリメイクされた作品。サブタイトルが「アルル16才」。
この作品では上記の作品たちとは違い、物語冒頭でシェゾ・ウィグィィの部下であるリュンクスに財布をとられ、追っている最中にシェゾに襲われるという導入になっている。本作のリュンクスは首に尻尾を捲いたぬいぐるみのようなデザインになっており、アルルも認めるほど可愛い。
また、シェゾが木陰からアルルを見張っていたり、出会った時の会話が「お前の全てが欲しいだけだ」と勘違いされやすいものになってたりと、原作よりも変態要素が強調されている。
なおゲーム本編では描かれないが、取扱説明書の4コマでは、シェゾの地下牢に住み着いていた1匹のリュンクスの尻尾を踏んでしまったシェゾが、長い尻尾が邪魔だとマフラーのように結んでしまったところ、リュンクスは逆にこれを気に入ってしまい、話を聞きつけた他のリュンクス達もわらわらと「シェゾ様、ボクもー!」と集まり、シェゾが片っ端から尻尾を結ぶことになったらしい。その後リュンクス達は忠実なシェゾの部下になったとか。
ちなみにアルルの色気で騙される牢屋の見張りの魔物も、原作のサイクロプス&リザードマンではなく、PC-98版で地下牢の中ボスとして登場した闇竜をデフォルメしたような、ウーロン茶好きのダークドラゴンに変わっている。しかしこちらは色気で隙を付いただけでは倒せなかったらしく、PC-98版同様にやはり脱出途中で中ボスとして立ちはだかる。そして後にライラ遺跡にまで現れる。
ゲーム本編のストーリーの流れ自体は概ね他機種と変わらないのだが、既にぷよぷよシリーズが人気だったこともあり、地下牢を脱出してライラ遺跡に来てからも何度もシェゾがしつこく追いかけてきて付き纏って再挑戦してきたり、遺跡内では(姿こそ見せないものの)ルルーが先行して潜っていてこちらもしつこくあちこちに罠やメッセージを仕掛けていたり、さらにはサタンと戦う直前にもシェゾが現れ、どちらを選ぶかと究極の選択を迫ってきたりする。2人のどちらを選んでも最終的にシェゾがサタンと戦って倒された後にアルルとサタンの戦闘になるのだが、ここでどちらもイヤだと拒否してしまうと、シェゾはアルルの「魔力」だけ、そしてサタンは「魂」だけが目的だと宣言し、利害の一致によりアルルが2人の合体攻撃で倒されてゲームオーバーになる。
この作品は後にセガから携帯アプリ(ガラケー用)として配信されており、配信当時はおそらく比較的プレイしやすい環境にあった魔導物語Ⅱである。アプリ版では残念ながらアルル以外のボイスは無いが、難易度がやや下がっており、スムーズなダンジョンスクロールや魔物図鑑も追加されている。
ただし、残念ながらスマートフォンには未対応で、2022年3月末をもって配信サイト全体のサービス終了とともに新規入手は不可能になってしまった。
現在は原作GG版がWindows用ソフト『魔導物語きゅ~きょく大全 よ~ん GG I-II-III&A』と『魔導物語 超きゅ〜きょく大全 ぷよぷよ入り』に収録され、プロジェクトEGGでの配信も開始された。
時系列について
この作品もそうだが魔導物語シリーズには人の生死や登場などが作品によってかなり異なる。
どの作品が正史なのか、どの作品がぷよぷよシリーズに登場するアルル・ナジャの身に起きた出来事なのか…それについては人それぞれである。
ただし一応、一時期DiscStationなどではMSX製品版1-2-3のものが正伝として挙げられたりもしていた。