ジュラシック・パークIII
じゅらしっくぱーくすりー
未だ見たことのない世界があった…
2001年に公開された映画で、『ジュラシックパーク』シリーズ第3作。
今作以降マイケル・クライトンの原作に相当する作品がない完全オリジナルストーリーとなっている。一応、原作小説第1作で描かれた翼竜を飼育する鳥籠が登場するなど部分的に再現された場面は多々ある。
新たに今作の目玉として、史上最大の肉食恐竜スピノサウルスが登場。これに伴い、タイトルロゴのシルエットもスピノサウルスのものに変更されている。
第22回ゴールデンラズベリー賞にて「最低リメイク及び続編賞」にノミネートされた。余談だが、ラジー賞にノミネートされたのは前作に引き続きシリーズ2度目である。
8年前のジュラシック・パーク事件の生存者アラン・グラント博士は、研究資金を得るため実業家・カービー夫妻によるイスラ・ソルナの恐竜飛行見学のガイドを引き受ける。
しかし島の上空を飛ぶだけという約束は破られ、飛行機は島に上陸。カービー夫妻の真の目的はイスラ・ソルナで行方不明になった息子・エリックを捜すことだったのだ。
そして島に降り立った一行の前に、見たこともない肉食恐竜が現れる。それはあのT-REXをも凌ぐ巨体を持つ捕食者、スピノサウルスだった。
古生物学者で、8年前のパークの事件の当事者。
第1作のような子供嫌いの面は失せているが、機械音痴は今でも変わらない。
発掘資金に困っていたところ、それをエサに観光ガイドを依頼してきたカービー夫妻にまんまと騙され、再び恐竜とのサバイバルに巻き込まれることとなる。
第1作と吹き替えが異なるのは、グラント役を担当した富山敬が本作発表前に他界したため。
演:ウィリアム・H・メイシー(吹:納谷六朗)
実業家でカービー・エンタープライズの社長。というのは嘘で、実際にはしがないタイル塗装業者。アマンダとも実は離婚している。
頼りない中年オヤジだが、恐竜から身体を張って家族を守るなど、次第に父親としての信頼と家族の絆を取り戻して行く。
エリックの母でポールの元妻。ヒステリックな性格。
当初は息子を心配する余り島で何度も大声を出し、グラントたちをヒヤヒヤさせるが、恐竜の脅威に晒されてからは徐々に用心深くなっていった。終盤ではラプトルを相手に度胸を見せる。
演:アレッサンドロ・ニヴォラ(吹:内田夕夜)
グラントの助手。パラグライダーが得意。
グラントを尊敬しており、頼りにもされている。
彼の向かう場所ならどこまでも付いていくカルガモのような青年なのだが・・・
演:トレヴァー・モーガン(吹:北尾亘)
カービー夫妻の息子。イスラ・ソルナ付近でパラセール中に遭難してしまい、以後グラント達が探しに来るまで(おそらく聞きかじり読みかじりの知識だけで)2ヶ月も単独でサバイバル生活を生き延びてのけたタフすぎる少年。
『インジェン社が遺棄したトレーラーを拠点に遺されていた食糧で食い繋ぎながら生活』『外に出る際には採取した植物の枝や葉を体に巻き付けて擬態』『(島に来るまでは聞いた事など無かった筈の)コンピーらの鳴き声を憶え、近くに来ればトレーラーの出入り口を封鎖』『「若い個体ならこれで寄って来なくなる」とT-Rexの尿を採取して保存(採取方法は「聞かないで」との事)』と、ポールとアマンダら両親のダメダメ振りとはうって変わってのそのたくましい生存戦略っぷりにはグラントも(恐らくとっくに死亡していると思っていたのであろう事もあって)舌を巻いて感心していた。
イアン・マルコムに対する評価でグラントとは気が合う。
最終的には両親と再会し無事に島から生還する。
演:マイケル・ジェッター(吹:佐々木敏)
カービー夫妻に雇われた飛行機の操縦士。温厚な性格。ポールに「戦争のプロだなんて嘘だろう」と言われたが、本人はそんな事は一言も言ってないらしく、正体は旅行代理店の経営者。
ラプトルに重傷を負わされた後、他の人間を誘き出す囮に使われる。その後、失敗したことを悟ったラプトルに殺されてしまう。
本来は拾った木の枝でヴェロキラプトルに立ち向かうシーンがあったが、尺の都合でカットされた。
演:ブルース・A・ヤング(吹:辻親八)
カービー夫妻に雇われた傭兵。飛行機の操縦も担当。スピノサウルスに衛星電話ごと捕食される。
このために腹から着メロを流しながら佇むスピノサウルスという迷シーンが誕生した。
元の脚本ではユデスキーと役回りが逆で、ヴェロキラプトルに殺される予定だった。
カービー夫妻に雇われた傭兵。戦闘のプロで、ドヤ顔で恐竜に見立てた飛行機を銃撃し吹っ飛ばしていた。
だがその腕前もスピノサウルスには通用せず、冒頭であっさりと食べられてしまう。
捕食される寸前、滑走路に飛び出してきたことでスピノサウルスを誘導してしまい、グラントたちを乗せた飛行機とスピノサウルスの接触事故の遠因になった。
第1作にも登場した古植物学者で、グラントの元恋人。国務省の男性と結婚し子供が2人いる(姓が変わっているのはこのため)。
グラントとの信頼関係は変わっておらず、ラストで夫の伝手で米国海軍を出動させグラントたちを救う。
ちなみにカービー夫妻がどんなに助けを求めても国は動かなかった。世の中コネが全てである。
原作小説第2作では「ライマン」という姓に変わっていた。
アマンダの現在の恋人で、エリックとともにイスラ・ソルナのパラセールを行い遭難する。
後にパラシュートで木に吊るされたままのミイラ化した死体がグラントたちに発見される。未公開シーンではラプトルに襲われるシーンがあったらしい。
演:ジュリオ・オスカー・メチョソ(吹:楠見尚己)
違法のパラセーリングを行う会社のオーナー。物語冒頭で船の操縦士とともに船上から突如姿を消す。プテラノドンの巣にあった人骨は恐らく彼らのものだと思われる。
前作『ロストワールド/ジュラシックパーク』の舞台となった「サイトB」に棲息する恐竜たちが登場。
今作で初登場となるスピノサウルス、ケラトサウルス、アンキロサウルス、コリトサウルスについては、前作の事件の後にインジェン社(を買収したマスラニ社)により秘密裏に誕生した恐竜とされ、インジェン社の公式リストには含まれていない。当初はカルノタウルス、ダトウサウルス、オウラノサウルス、クロノサウルス、モササウルスも登場が予定されていた。
肉食
全長13.3m、体高4.9m、体重4t。
白亜紀前期~後期に生息していた今作の看板恐竜。シリーズ史上最大の恐竜として喧伝された。
サイトBにおける頂点捕食者の一つで、誕生してからたった2年しか経っていない幼い個体でありながら、T-REXの縄張りを積極的に侵す凶暴性に加え、若いT-REXを真正面から打ち負かすほどの戦闘力を持つ。運動能力も高く、地上ではおよそ時速43kmで走行できるほか、浅い河川では泳ぐことも可能。ただし監督の言によれば知能は低いとされており、劇中でもあまりお利口でなさそうなシーンがいくつか見られる。
制作に携わったジョン・ホーナー博士によれば、前作までの主役だったT-REXに代わる目玉として、「最大の肉食恐竜」というアピールポイントを持つスピノサウルスを抜擢したとのこと。
余談だが、河川での襲撃シーンは第1作でカットされた「ティラノサウルスが河川でボートを襲う」シーンのオマージュとして採用されたものである。別の脚本では、グラントの鳴き真似に呼応して現れたヴェロキラプトルの群れに襲撃され、激しい戦闘の末に倒される……という流れだったようだ。更なる余談だがゲーム「Jurassic World Evolution 2」のカオス理論モードの本作をベースにしたシナリオではこの様子が再現されている。
全長4m、体高1.5m。
白亜紀後期の肉食恐竜。もはや常連となったシリーズの看板恐竜。
今作では大きくデザインが変更され、前2作どころか続編とも異なる形態の個体が登場する。舞台は同じイスラ・ソルナのはずだが、前作の個体群となぜこれほどの差異が生じているのかは不明。知能が更にパワーアップしており、いわゆる生き餌を使って人間を罠に嵌めようとする場面が見られる。
今作ではグラント博士の悪夢の中で序盤から顔見せ。その後、イスラ・ソルナに生息していた個体群が本格的に登場する。問答無用で襲ってきた前作までと違い、今回はビリーに卵を盗まれたことに怒り、どこまでもしつこく追跡してくる。ラストで卵を取り返した後、グラントのラプトルの鳴き声の真似に混乱して立ち去っていった。
草原で疾走するシーンが印象的だが、裏設定では走行速度は時速65km~72kmとされており、意外にも第1作のラプトルたち(最高時速100km)よりも遅い。
なお、ディノトラッカーによるとこのソルナ島の個体は本土に上陸したらしく生存が確認された。
全長11.3m、体高4.4m。
白亜紀後期の肉食恐竜で、シリーズの常連恐竜。成長途中の若オスで、前作のオスと比べると小柄かつやや体色が薄い。前作のジュニアと同じ個体だと推測するファンもいるが、実際のところは別個体らしい。
密林で遭遇したグラント一行を追いかけた先でスピノサウルスと鉢合わせし、格闘の末に頸椎をへし折られて死亡。有り体に言えば、目玉恐竜の噛ませ犬としての登場だった。その後、この個体のものと思われる排泄物が意外な形で登場する。
全長9.3m、体高3.7m。
ジュラ紀中期~後期の肉食恐竜で、シリーズ初登場。グラントたちの前に現れるが、スピノサウルスの糞にビビって結局何もせずに立ち去る。何がしたかったんだ…。
今作のケラトサウルスのモデルCGはT-REXのCGを流用して造られており、劇中でもパッと見では種別が少々わかりにくい。
コリトサウルス同様、後に移送先のイスラ・ヌブラルで絶滅してしまったとされる。
白亜紀前期の肉食恐竜。ビリーの台詞にのみ登場。設定上は第1作からジュラシック・パークで飼育されている恐竜。もともと本作でメインとなる恐竜はこのバリオニクスの予定だったらしい。
白亜紀前期の肉食恐竜。バリオニクスと同様、ビリーの台詞にのみ登場。
草食
全長10.7m、体高4.6m。
白亜紀後期の草食恐竜で、シリーズ皆勤賞。今作の個体はスピノサウルスにも引けを取らない体格を誇るが、序盤に飛行機から眺める景色にチラッと登場するのみ。
全長15.5m、体高15.8m、体重50t。
ジュラ紀後期の草食恐竜。前作ではリストラされたが、今作にて復活。
ビリーを失ったと思い意気消沈する一行の前に姿を現し、その雄大な姿で希望を与える。
第1作および第5作の個体と体色が異なるのは、性別が異なるためとされている。
全長12.2m、体高5.8m。
ジュラ紀後期の草食恐竜。全長、体高ともに上記のT-REXを上回る驚異の図体で登場。前述した飛行機のシーン、川岸でブラキオサウルスと出会うシーンに群れと親子が映っている。
なお、名前だけならばシリーズ皆勤の恐竜である。
全長7.1m、全高4m。
白亜紀後期の草食恐竜で、シリーズ皆勤賞。草原でのんびり暮らしていたが、グラントたちのせいでヴェロキラプトルの群れから逃げ惑う羽目に。
後の川岸のシーンでも遠方で草を食んでいるのが確認できるほか、序盤で若いT-REXが貪っていた死骸もパラサウロロフスのものとされている。
全長7.1m、全高4m。愛称はコリー。
白亜紀後期の草食恐竜で、シリーズ初登場。パラサウロロフスの群れの中に何頭も混じっており、同じような目に遭った。
実は第1作の時点でインジェン・リストの15種に含まれていた。第5作の裏設定において移送先のヌブラル島で絶滅したとされており、今作がシリーズにおける遺作になる可能性がある。
全長8.5m、全高2.7m。愛称はアンキー。
白亜紀後期の草食恐竜で、シリーズ初登場の鎧竜類。ジャングルのシーンでカメオ出演している。本来は川下りのシーンでも川を移動するカットがあったが、こちらは使われなかった。
恐竜以外の古生物
翼長9.8m、体長3.1m。
スピノサウルスと並ぶ今作の目玉、白亜紀後期の翼竜。
放棄されていた「鳥籠」に生息していたオスの個体群が登場。恐らく冒頭においてボートの乗組員を襲ったのもこのプテラノドンである。
前作では脚本変更により出番をほぼ失ったため、ファンにとっては待望の登場だったが、役回りはエリックを攫い雛の餌にしようとするという恐ろしく古典的なものだった。エンディングでは、閉まりきっていなかった鳥籠の扉から脱出した個体がイスラ・ソルナから飛び立っていく。
ちなみに、今作では不可能だったと思われる「鳥の様に羽ばたいての飛行」を行っている(実際には高所から滑空する形で飛翔していたと考えられている)。また、学名の意味は「歯のない翼」にも拘らず、何故か歯が生えている。
メスの個体は14年後にて拝める。
白亜紀後期に生息していた、イスラ・ソルナ中を飛び回っている白い古代鳥類の一種。前述した飛行機のシーン、川岸でブラキオサウルスと出会うシーンにて登場。
- 衛星電話
ポールの私物で、彼の塗装会社のテーマ曲が着信音になっているが、後にその着信音が恐怖のメロディーへと変貌する…。
- 幸運のバッグ
ビリーが所有するボロボロのバッグ。彼がハンググライダーの事故に遭った際、ストラップが岩に引っかかり、命を救ったという。しかし劇中では、ビリーが盗んだラプトルの卵をこのバッグにしまったことで災厄を招く。
- ヴェロキラプトルの共鳴腔レプリカ
ビリーが3Dプリンタで作製。終盤で一行の危機を打開する。
典型的な娯楽映画へと大きく舵を切った作品であり、シリーズを通してもやや異色の感が漂う一作と評されることが多い。とはいえ、テンポよく出現する恐竜たちや障害を乗り越えていくアドベンチャー的な味わいを評価する向きもあり、そういったジャンル好きのファンには大いに刺さる内容と言える。
この映画で描かれたスピノサウルスvsティラノサウルスという時代も生息域も異なる2種の大型肉食恐竜の激突については、国内外でかなりの物議を醸したことで知られる。
世界観的には「2001年のイスラ・ソルナにおいて、スピノサウルスが若いティラノサウルスを打ち倒した」という事実がジュラシック・パークシリーズの歴史に刻まれたに過ぎないのだが、この対戦カードは現実世界において大きな話題を巻き起こしたのである。
これ以降、スピノサウルスがティラノサウルスのライバル的存在として一般に広く認知されたのは、疑いなくこの映画の影響と言えよう。
本作の特典映像では、シリーズ監修を務めるジャック・ホーナー博士が「T-REXは捕食者というより死肉を好む清掃動物」「スピノサウルスはT-REXをも襲う究極の捕食者だ」などとして、T-REXに代わってスピノサウルスを主役に据えた点について解説している。
- ジャック・ホーナー氏は当時から一貫してT-REXは完全な腐肉漁りであったとする説を唱え続けており、そういった見解が本作の展開に反映された可能性もある。
もっとも、こういった主張はスピノサウルスの生態が解明されていなかった2001年当時のものであり、(T-REXを清掃動物とする説にしてもそうだが)近年の予測と掛け離れた生態や、些か過剰に強調されたイメージも少なくない。
(世界観的にはインジェン社が遺伝子を盛ったとして言い訳ができるが)
現実世界のスピノサウルスの生態に関しては個別記事を参照されたい。
ダークスパイナー・スピノサパー:本作の影響で生まれたと言われることがある。
スーパーギャオス:排泄物からアイテムが見つかってしまう描写がある。
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