イクチオルニス
いくちおるにす
8000万年くらい前の北アメリカに生息していた海鳥。
くちばしに歯があること以外はカモメやアジサシにそっくりで、海辺で大きな群れを作って生活し、海上を巧みに飛び回りながら小魚をつまんでいた模様。骨格が魚を食べるアジサシに似ていることから「イクチオ(魚)+オルニス(鳥)」と名付けられた。
まさに恐竜時代のカモメとでも言うべき鳥だが、白亜紀の終わりと共に絶滅したグループなので現代の鳥には繋がらない(系統的には親戚)。
名前はIchthyornisと書き、ギリシア語で「魚のような鳥」。魚っぽくないので「魚を食べる鳥」という訳し方もある。
本体は20センチ程とハトぐらいの大きさ。翼は左右合計で1メートルくらいある。
飛ぶための筋肉の土台となる胸骨がよく発達していることから飛行能力にはかなり秀でており、一説には現代のカモメより優れていたとも言われている。捕食者にはお手軽サイズで武器もないイクチオルニスにとって、飛行能力はまさに生命線だったことは想像に難くない。
※人間で言えば上半身の前半分が胸の骨で占められているくらいの比率になる。飛ぶのはそのくらい重労働。
このイクチオルニスやヘスペロルニスのようにくちばしに歯がある鳥は白亜紀には普通にいたが、新生代以降の鳥はオステオドントルニスのようなわずかな例外を除いて歯のないくちばしになっていた(逆に歯がない白亜紀の鳥は孔子鳥が有名)。
- 内陸部に海鳥
白亜紀中~末期頃は海面がかなり高く、北アメリカを真ん中辺りから縦断する浅海(白亜紀海路)があった。そうした場所で暮らしていたので、現在内陸にあるアメリカ中央部でよく見つかるのだ。
- 隣人たちと名付け親
白亜紀海路にはプテラノドンやヘスペロルニス、エラスモサウルスにティロサウルスといった連中も暮らしていたが、彼らを命名したのは「オスニエル・チャールズ・マーシュ」という人。名前だけ聞くとピンと来ないだろうが、アロサウルス、アパトサウルス(ブロントサウルス)、ステゴサウルス、ケラトサウルス、トリケラトプスなどを名付けた高名な学者である。
なおエラスモサウルスは彼と同時期に活躍した「エドワード・ドリンカー・コープ」が命名。エラスモサウルスには元々親友だった彼らの関係を決定的に悪化させたエピソードがあるが、それはまた別のお話。
- 翼開長
翼開長1mというのはカラスくらいの長さ。カモメは45センチで1.2メートルくらい。
イクチオルニスは本体が20センチの小鳥サイズなので、体に比べてかなり翼が長かったことになる。