「ええ、順調ですよ。船の時間に間に合って良かった。」
「私あってのこの施設…。ジュラシック・ワールドだ…。」
概要
演:B・D・ウォン
吹:中村大樹(1作目)、近藤浩徳(『ジュラシック・ワールド』以降)、堀内賢雄(2017年の日本テレビ版『ジュラシック・ワールド』)
インジェン社に勤務する中国系アメリカ人の遺伝子学者。『ジュラシック・パーク』における恐竜のクローン再生の最大の功労者であると同時に、コンピュータにも強く、パークの管理システムにも精通している。
映画では中盤の時点で船で本土に帰ってしまうため出番は少なかったが、原作シリーズではアラン・グラント、イアン・マルコムに次ぐレギュラーキャラである。
原作小説版・映画版共に笑顔の好人物だが、『ジュラシック・ワールド』においてマッドサイエンティストと化した。
ある意味、原作で守銭奴クソジジイだったハモンドが映画版で好人物として描かれたのとは対照的である。
原作版
ジョン・ハモンドの熱弁に乗せられてクローン研究に参加したが、その目標が実現した現在、ハモンドからはもはや利用価値はないと思われている。恐竜に改良を加えるたびソフトウェアのようにヴァージョンをナンバリングするが、そのやり方にグラントは違和感を覚えた。
アーノルドの見落とした点にも気づいてシステム復旧に尽力するが、最後は古生物学者エリー・サトラーを助ける為、自ら犠牲となりヴェロキラプトルに腸を引きずり出されるなどして惨殺される。
映画版
1作目ではジョン・ハモンドに雇われた好青年として登場しアラン・グラントやイアン・マルコムに誕生した恐竜の生態などを説明する。
その後は原作と違い船で島を後にするが、敵対企業バイオシン社に買収されたデニス・ネドリーの起こした事件によりパーク計画は破断する。
『ジュラシック・ワールド』ではインジェン社を買収したマスラニ・グローバルに雇われ様々な古生物を作り出す権威となり、ジュラシック・ワールドでは研究主任にまで昇格した。
だが、1作目でのパーク崩壊の際に相当な挫折と苦労を味わったことから、自身の技能を生かすためなら倫理観などお構いなしのマッドサイエンティストと化してしまい、インジェン社のセキュリティ部門幹部ヴィック・ホスキンスと結託し軍事目的のハイブリッド恐竜の製作を行うようになった。そして上層部から展示用のハイブリッド種の製作を命じられてインドミナス・レックスを誕生させ、惨劇を引き起こす元凶となった。
終盤、研究成果である多数のDNAサンプルとデータを持ち出し、ホスキンスの部下の手引きを受けて一足早くヘリで島から脱出した。
『ジュラシック・ワールド/炎の王国』では、騒動の元凶として指名手配されたうえ遺伝学者としての免許も剥奪されたが、ロックウッド財団の実質的運営者イーライ・ミルズの協力を得て、第2のハイブリッド種インドラプトルを製作した。
しかし彼にとって制御不可能なインドラプトルは不完全な試作品であり、高度な協調性を持つヴェロキラプトル「ブルー」の遺伝子を組み込み、彼女を母親として育てさせる事で人間が制御可能な動物兵器としての完成品を作ろうとしていた。
しかし恐竜を金儲けの為の資産としか見ていないミルズはウーの考えを理解できず、挙句にオークションで客が提示した大金に目が眩み、非売品のインドラプトルまで売り飛ばすというとんでもない暴挙に出た。
倫理観を捨てていたウーもこれには焦り、インドラプトルの危険性を説明して止めようとしたが聞き入れられず、「どうなっても知らんぞ」と彼を完全に見放す。
その後、前作と同じくDNAサンプルを持って屋敷から逃走を図りブルーからも採血しようとするが、ジア・ロドリゲスからブルーの手術の際にティラノサウルスの血液を輸血したため遺伝子が混ざり、ハイブリッド製作に使える純粋なDNAはもう取れない事を明かされて驚愕。その隙を突かれてフランクリン・ウェブに恐竜捕獲用の麻酔薬を打たれて昏倒し、部下に引きずられてフェードアウトした。
最終作『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』ではバイオシン社に雇われているが、彼自身が望んだのではなく無理矢理協力させられている。
本作における遺伝子操作で生み出した、白亜紀の絶滅種のDNAを組み込んだハイブリッドイナゴの開発にも関わっていたが、前二作とは比較にならない規模で死者が出る上に、イナゴを使って世界をコントロールしようと画策するCEOのルイス・ドジスンは「ある程度コントロールできないのは想定内(要約)」と楽観視しする有様だった。
当然そんな考えが通用しない事をこれまでの経験から嫌という程、理解していたウー博士は自分の行いを激しく後悔すると同時に、密かにハイブリッドイナゴを絶滅させる為、ある存在の遺伝子を求める。
今作では、以前のシリーズとは違って自分の所業を深く反省して改心している(何らかの形で制裁を受けると思っていたファンからはかなり驚かれた)。改心した理由としては前々作のホスキンスや前作のミルズ等のような卑劣漢の所業やその末路を目の当たりにしてきた事、恐竜が闊歩している状態が当たり前のようになってしまった現在の様子や、その責任を問われた事で精神的に疲れてしまったからではないかと思われる。
改心したのはなによりだが、今までのマッドサイエンティストぶりを踏まえると何の制裁も受けなかった事に不満を抱くファンもいるようである。
奇行一覧
- 第一作の時点で「恐竜に最も遺伝子レベルで近い現生生物はワニか鳥類」という事が判っているにも拘らず、欠けている恐竜の遺伝子を補完するのに「条件によって性転換する事が有るという特徴を持つ近縁種が居るカエル」の遺伝子を使用した。(ただし、作成に関わった事実こそあれどその方針を提案した人物が彼とは明言されていない)
- 結果、メス個体しか存在しない筈の人工恐竜達の一部がオス化し、自然繁殖することとなった。
- 実験動物として広く使用され、発生や遺伝子の解析もよく行われているカエルの遺伝子を利用することで安価ながら確実に遺伝子を補完する狙いがあったのかも知れない。
- インドミナス・レックスにアマガエルやコウイカの遺伝子を組込む。この結果、インドミナス・レックスは赤外線探知に逃れることが可能な体温調整能力とカメレオンのような擬態能力を獲得する。
- この性質は後にインドミナス・レックスに利用され、関係者に多数の死傷者を出す要因となった。
- これはインドミナス・レックスを生み出した裏の目的が「将来的な兵器利用」であったためである。またアマガエルの遺伝子は熱帯に適応できるよう、コウイカは非常に早い成長速度に耐えられる生理機能を獲得させるためであったとされている。
これらは全て合理的かつ作成理由も明確で実用に即したものであり、「巧くいかなかった場合の安全策が何もない」「予想外の異常事態が起きたにも拘らず、表面上は平然としているように見える」点を除いては、必ずしも悪行や狂気の愚行というわけではない。
問題は、いずれも作成後に起こり得る異常事態やエラーケースを想定していなかった(≒100%うまくいく想定しか考えてなかった)ということであり(例:ウー博士が行った遺伝子操作で副次的に戦闘に有用な能力を獲得していた生物が、結果的に、人間のコントロールを離れて暴走)、奇行と揶揄される理由にもなっている。
事実、ジュラシック・ワールド劇中では起こった事件についての追求を受けた際、
「未知の新生物の遺伝子を説明しろと言われても困る」「こんなことになるとは想定も…。」と発言する始末であった。
関連リンク/関連人物
ジュラシック・パーク ジュラシック・ワールド ジュラシック・ワールド/炎の王国 ジュラシック・ワールド/新たなる支配者
闇落ち…ウー博士の場合、むしろ「ドジ堕ち」「馬鹿堕ち」かも知れないが。
Dr.クロン…同じくマッドサイエンティスト。異なる生物を掛け合わせたキメラ生物を生み出し、学会を追放された後も生体兵器となる改造生命体を作り続けていたという共通点がある。
高遠遙一…同じく指名手配の天才犯罪者。共に敵対する主人公がブラック企業の社員という点も共通している。
真木清人…同じく天才科学者。相当な苦労を味わい人間性が壊れた点、最初は主人公の味方だったが後に裏切る等の共通点がある。ただしウーはキメラ恐竜を生み出したのに対し彼はキメラ恐竜型の怪人に変貌した等の相違点もある。