概要
1998年公開のローランド・エメリッヒが監督した『ゴジラ』、通称「エメゴジ」は、本来は三部作のシリーズとなる予定だった。この企画が通っていれば、第2作目の時点で「わずか2歳ぐらいなのに巨大化済みで放射火炎を体得し、米軍の奇襲と総攻撃も生き延びる」ゴジラ2世、とその子供達が拝めるはずだった。
公開当時は現在と異なり、例えばインターネットが未発達で劇場に客を呼びやすいが、中国などの市場規模が小さかった。しかし、それにもかかわらず本作品も(世間に流布される声とは異なり)興行的には十分に成功していた。しかし、コアなゴジラファンをはじめとするファンからの拒絶反応が強かっただけでなく、玩具の売り上げが振るわなかったことが決定打となり、続編の企画がお流れになってしまった。その後、版権がトライスター社から東宝に戻ったことで、いわゆるお蔵入りになってしまった。
しかし、前作を酷評する声も少なくないものの、この続編のプロットには有名な脚本家達も協力しており、前作を嫌う層でも評価している。
また、実はローランド・エメリッヒ自身も続編の映画化にやる気があったと判明しており、1998年の作品についても本人は「やる気がなかった」と語っている一方で「映画の製作が本格的に始まってからは情熱を持って仕事に取り組んでいた」ともされている。
そして、『ゴジラ・ザ・シリーズ』が当時の設定の一部を引き継いだ。
怪獣
ゴジラ
前作で生き残った卵から孵ったゴジラ。
『ゴジラ・ザ・シリーズ』のゴジラのIFの姿とも言える存在で、『ゴジラ・ザ・シリーズ』同様ニック・タトプロスを親と認識している。
予定されていた三部作では、「ゴジラは進化する」をテーマに描いていたため、第二作の段階で親をはるかに超える存在となっており、放射熱線に該当する能力も獲得している。この放射火炎は、武器としてだけでなく、子供たちのために餌の魚を追い込む目的でも使用されており、プロット上で初めて放射火炎を使用したのもそのためだった。
本作では親同様単為生殖を行う。産卵回数は生涯に一度。
環境収容力に従って子供を産める数が左右されるため、環境を圧迫しない。4〜5頭の子供を産むが、人間の攻撃を受け、後述のRunt以外の子供達(数十メートル級)は全滅してしまう。
ゴジラ族は怪獣化していく昆虫たちを捕食する存在であり、怪獣昆虫たちを抑え、ゴジラ族こそ「新たなる世界生態系の頂点種」として調和を保つ存在であることが示唆されている。
Runt
二代目ゴジラの産んだ卵から孵った子ゴジラ。他の子供とは異なり発育不全児。
兄弟たちがいたが、人間の攻撃により全滅してしまいRuntだけが生き残った。
プロットではゴジラの尻尾につかまって移動する様子も描かれていた。
クイーン・ビッチ
シロアリをモチーフとした怪獣。該当記事を参照。
巨大化した生物群
クイーンビッチの他にも巨大化した昆虫が人類の脅威として描かれている。
また、無害だが体長100m程に巨大化したシロナガスクジラも言及されている。
余談
- クイーン・ビッチが東宝怪獣をモチーフとしていないのは、ヤン・デ・ボンが起用されていた時期に東宝とトライスター側との意見の非一致(東宝怪獣の使用料や、着ぐるみやミニチュアの制作費など)があったからだとされており、このことはエメリッヒチームにも多大な影響を与えた。ヤン・デ・ボン版の登場怪獣として東宝がオファーしていたのは、後の「モンスターバースシリーズ」にも登場することになるモスラ・ラドン・キングギドラであったらしい。
- ディーン・デヴリンも本作(『GODZILLA 2』)にモスラとラドンを登場させたかったと発言している(参照)。その代わり、クイーン・ビッチにはモスラを意識した描写が取り入れらえている。
- 『GODZILLA 2』の設定を受け継いだ『ゴジラ・ザ・シリーズ』でも、かなりの数の東宝怪獣の登場が予定されていたのにことごとくダメになったことにも影響していたのかは不明。
- エメリッヒ版の続編の制作が決定したと一時期は報道されていたのだが、その時に「二本首のギドラ」が出るという発表があったとの噂があった。
- ドリトスとのコラボCMが流れていたため、続編の制作が正式に決定したと勘違いした人もいた(参照)。
- 本プロットと『小さき勇者たち~GAMERA~』には、ラストにて「市民が主役怪獣を政治家や軍隊から守るために立ちはだかる」というラストシーンが共通している。