「ガメラは少年のために。少年はガメラのために。」
概要
2006年4月29日に公開された、松竹配給、角川ヘラルド映画製作の特撮映画。
現時点おけるガメラ映画作品としては最新作である。
作品タイトルは公式で表記揺れがあり、公開当時は「小さき勇者たち」がメインタイトルとして大きく表示され「GAMERA」が副題として小さく添えられた「小さき勇者たち GAMERA」
後のDVD等の他媒体での展開では改めて「ガメラ」の一作品である事が強調され「小さき勇者たち」を副題として小さく添えた「小さき勇者たち〜ガメラ〜」と表記されている。
- 北米版のタイトルは「GAMERA THE BRAVE」となっている。
本作のコンセプトは『ガメラ大怪獣空中決戦』の最初期のプロット案を提出した小中千昭と和哉の兄弟が出した原案「小中ガメラ」を再利用している。この構想は後に『デジモンテイマーズ』と『ウルトラマンティガ』にも影響を与えた。
制作までの流れ
徳間書店の徳間康快が1990年代に東宝に対して『ゴジラvsガメラ』を打診したが、徳間康快が2000年金に死去したことと徳間書店の経営破綻、また『ガメラ3』の影響で『ガメラ4』が打ち切りになったことで有耶無耶になった。
2002年にKADOKAWAが大映を受け継ぎ、再度東宝に『ゴジラvsガメラ』の企画を打診をし、「大魔神」のリメイクと共に発表したが、やはり実現しなかった (参照)。
そして、大映の倒産後はガメラシリーズは常にゴジラシリーズとの競合を避けてきたため、本作も、本作の関係者も携わった『ファイナルウォーズ』によってゴジラシリーズが中断されたことで制作された。
そのためなのか、本作のメインの敵のジーダスは意図的に東宝怪獣を意識してデザインされ、ゴジラ・エメゴジ・制作中止になったエメゴジの続編、ジラース、バラン、ゴロザウルスなどとの類似点が実際に製作者へのインタビューなどで言及されている。
- 『ガメラ3D』が途中の企画として存在したなどガメラシリーズの影響を受けているモンスターバースシリーズに登場したMUTOと、ジーダスの初期案はかなり似ていたともされている。
登場怪獣
作風
「ガメラを主役にした怪獣映画」というよりはガメラを知らない人向けに作った「少年とガメラの交流を描いたジュブナイル映画」の側面が強く、当時のポスターのデザインなどにもその傾向が表われている。
しかし怪獣映画としても抜かりはなく、敵怪獣による容赦のない捕食シーンなどの過激な描写もあり、その二面性を両立できているかは賛否が分かれている。
当てられた制作予算は10億以上と歴代と比べて破格だったとされるが、実際はかなりの金額が自治体や企業などとの様々なタイアップや宣伝費や飼育費などのために消えていったとも言われ(実際、実物大のトトを運搬した地方宣伝は北海道から熊本まで行われた)、実際の純粋な製作費はそれほどでもなかったのかもしれない。それでありながら最終的な興行収入はわずか4億ほどだったとのことで、結果だけで言えば本作は失敗に終わったものと見られている。
何より前3作の時のようなハードでリアルな雰囲気を好み、それを期待していた層は本作の作風に対して強い落胆を感じたともされている。
当時はかつてない怪獣映画の氷河期であり、また当時の子供たちへのガメラの知名度、上記の通りの製作事情、母親達や女児が入りやすいファミリー路線などを狙った結果のタイアップや作風である。つまり、歴代の例に洩れず製作には多大な試練と苦労があった。
- 大映の倒産後は、ガメラシリーズは常にゴジラシリーズとの競合を避けてきたとされており、ガメラシリーズはこれまでもゴジラシリーズの人気が落ちた「怪獣映画の冬の時代」に公開せざるを得ず、余計に売上が落ちたとされる。
また、本作の失敗で様々な作品に影響が出た。下の関連作品を参照。
生きた亀を撮影に使ったのは『大海魔ダコラ』と『大群獣ネズラ』へのリベンジとも取れる。ジーダスの初期案もイカ型の怪獣であり、ジーダスの別名も「海魔獣」であるなどの影響が見られる。
- 『ネズラ1964』と『ヤツアシ』でリメイクが実現した。
作風のスタンス
この作品では金子版という呪縛からのガメラの解放が意図されており、「ガメラ=子供の味方」というスタンスが再び強調された。ただし、手のひら大の子亀から急速に怪獣化して子供たちの協力により状況を打破する(しかも体長20m前後)というのは金子版の最初期に練られた構想でもあった。
金子版は世間からの評価の高さとは裏腹に、製作陣側では非常に賛否両論が多く、湯浅憲明が「あれはガメラ映画じゃない」と言うほど湯浅や高橋二三などの昭和の関係者を不快にさせた。
- 金子・伊藤和典・樋口真嗣の全員がゴジラシリーズが好きな一方で昭和ガメラを強く嫌っており、本当はゴジラが作りたかったこともあり、昭和ガメラの愛すべき要素を全否定しようとしており、『大怪獣空中決戦』の時点で金子がクビまたは企画中止になる直前までいき、『ガメラ4』が打ち切りになったとされている。
- 平成3部作のガメラが「ロボットではない生き物」「人間を認識するヒーロー」としていられたのは、関係者からの反対による影響のおかげだったとされる。それまでの金子たちの案では、『ガメラ3』のガメラよりも恐ろしい存在だったともされている。
- 金子自身も自身への批判を把握した上で昭和ガメラと『小さき勇者たち』を嫌いだと表明して批判している。
- 『ガメラ3』の影響で、ガメラに恐怖を感じて子供が泣き出してして映画館を去る、ガメラは地球のためなら人間を平気で犠牲にするという誤解が広まるなどの様々な悪影響が出たとされている。
- 平成3部作自身のスタッフの間でも否定的な声が存在し、金子たちはこれらのスタッフを「隠れガメラ」と呼んで厄介に思っていたとされている。
また、金子版に携わっていた上層陣からは前シリーズとはまったく異なる方向性でいかないと協力を断るという姿勢があったのも事実であるようである。この方向性は東宝の『平成モスラシリーズ』の成功と『ゴジラ FINALWARS』の失敗の両方が関係していると同書籍にて記載されている。
- 平成モスラ三部作にも『ファイナルウォーズ』にも本作と共通した関係者が関わっている。
ちなみにこれは昭和ガメラの『大怪獣ガメラ』と『宇宙怪獣ガメラ』、つまり大映と徳間大映のそれぞれの第一作目にも共通することである。
関連作品
- ガメラ大怪獣空中決戦・デジモンテイマーズ・ウルトラマンティガ』→「小中ガメラ」に由来する姉妹作品。ウルトラマンシリーズとガメラシリーズは互いに強く関係している。
- 『GAMERA-Rebirth-』も本作と「小中ガメラ」等の影響を強く受けている。
- 50周年記念映像の『GAMERA』でも、2015年版のガメラにも本作のガメラの影響が見られ、登場した正体不明の敵怪獣にもジーダスの初期案の影響が見られる。
- 牙滅羅・カートゥーンネットワークのガメラのアニメ・三池崇史の大魔神作品→本作の影響で制作中止になった。
- 大魔神カノン・妖怪大戦争ガーディアンズ→三池の企画の中止の余波で誕生した。小説『平安百鬼譚』にはガメラが登場している。
- ラブ&ピース』→ガメラシリーズの関係者が参加しており、本作の影響も受けている。
- 仮面ライダーシリーズ→本作の関係者が関わっており、平成ライダー以降は平成ガメラ三部作の影響を強く受けてきた。作中に『仮面ライダー龍騎』のフィギュアが登場するほか、監督の田崎竜太は今作が縁で翌年公開の『仮面ライダーTHENEXT』の監督に抜擢された。
- ケロロ軍曹→タイアップをしている。
- 子狐ヘレン・Rex恐竜物語→本作に影響を与え、配給でも関与している。
- 『GAMERA-Rebirth-』の監督の瀬下寛之も『Rex恐竜物語』に参加していた。
- 子鹿物語・スタートレック・平成モスラ・E.T.・ベイブ→本作に影響を与えた作品の例。
- トトは制作段階のコードネームが「バンビ」だった。
あらすじ
1973年、三重県志摩。アヴァンガメラとオリジナルギャオスの群れの最後の戦いが繰り広げられていた。
数で押されていたガメラはギャオスの群れを巻き込んで自爆し、相打ちとなった。それを見た人々はガメラが人間を守ってくれたと喜ぶ。その中には少年時代の相沢孝介がいた。
それから33年後、大人になった孝介の子供、透は交通事故で母を失ってから初めての夏休みを迎えていた。
ある日、沖の緋島に謎の光を目撃した透は謎の赤い石と卵を発見。卵の中から孵化した子ガメを母が自分に付けたあだ名にちなんで「トト」と名付ける。
しかし、トトは異常な成長力をもち、空中を舞った。透の隣に住む幼馴染の西尾麻衣はトトをガメラではないかと疑うが、透はそれを否定する。しかし1m近くに成長したトトは透の前から姿を消してしまった。
そのころ、日本の海域では不審な船舶沈没事故が相次いでいた。
キャスト
スタッフ
主題歌
ETERNAL LOVE | mink |
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