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概要編集

1964年、映画会社の大映が当時人気を博していた東宝ゴジラに対抗すべく製作していた特撮映画。


最初の企画は『大海魔ダコラ』というタコの怪獣であり、こちらもゴジラの制作史と似ている。


当時、瀬戸内海の島と沿岸部による、『ネズミの大量発生』。および、それによる『農作物や海産物の被害』、俗に言われる『ねずみ騒動」が世間をにぎわせていた。

ここから、特撮監督・築地米三郎氏が企画を立案。


さらに、1963年のアルフレッド・ヒッチコック監督の映画『鳥』の大ヒットが決め手となり、『等身大に巨大化したネズミが、群れを成して人間を襲う』という内容に決定。

公開されたら、「大映怪獣映画第一弾」となるはずだった。


当初はゴジラ同様着ぐるみによる撮影を予定。ミニチュアも作成され、テスト撮影も行われた。

着ぐるみは、のちにガメラを造ることとなる造形スタッフの八木正夫が制作依頼を断ったため、高山良策が担当する。

しかし人間が入るものでは思うような動きが撮れず、何と「生きたネズミをそのまま使う」という方向に修正された。

具体的には『作ったミニチュアセットの中に、大量の(本物の)ネズミを放ち、その様子を撮影する』という特撮方法を想定していた。

このため、当然ながら撮影用に大量の本物のネズミが必要に。ここから「撮影用のネズミを一匹50円で買い上げる」というキャンペーンも行われ、宣伝にも用いられた。

こうして、撮影用に生きたネズミが大量に集められ、飼育する事に。しかしその結果、ネズミから病原菌や寄生虫がわんさか出て、撮影所近所の住民からは苦情が殺到。更には杜撰な衛生管理がたたってネズミが大量死。果てはネズミが共食いしたり、電気が流れるミニチュアセットで感電死するネズミが続出したりとトラブルが相次ぎ、予算超過が当時の金額で600万(現在の金額では約1200万)以上になる。


さらに、撮影の一部では本物のネズミを用い、実際に電気で感電させたり、火薬で吹き飛ばしたり、意図的に溺死させたりしている


また、後処理のために大量のネズミを夢の島にてを使って焼却処分している


本作の制作に反対していた小嶋伸介は、この結果を受けて大映を退社し、ピープロに移籍した。だが自身もネズラの事が忘れられなかったのか、実写版『マグマ大使』の製作ではアニメを多用。後期に参加した船床定男監督と本編映像に関して揉めてしまい、喧嘩覚悟で直談判したら「俺に意見したのは、あんたが初めてだ。わかった!どんな注文でも言ってくれ!!」と小嶋の要望を聞き入れたという。


また、三上陸男はダニアレルギーで瀕死になり入院し、ネズミアレルギーを発症、トラウマになり、『仮面ライダー』などの後年の作品でも、ネズミの怪人だけは嫌がって関わらなかったとされる。


結果、製作無期延期。そのまま公開されずお蔵入りとなった。


一応、撮影で殺されたり死んだネズミを供養こそしたものの、「アニマルライツを完全に無視」した本作品は製作が中断されたとはいえ、ある意味では「封印作品」扱いになりかねないと言え日の目を観なかったことが大映にとっては「未来への「災い」を防いだ不幸中の幸い」かもしれない。

もっとも、昔はディズニーやゴジラ作品なども撮影のために動物を殺しているなど、現在の観点からすると非常に問題ありな撮影環境が昔にはあった。


しかし、(後のガメラシリーズの監督を務める)湯浅憲明氏によると、この時の着ぐるみのネズミの動きは決して悪いものではなかったらしく(本人曰く「人が入ったぬいぐるみのネズミがうまく動いていた」)、折しもリベンジを考えていた永田雅一の「お前ら!亀を空へ飛ばせぇ~!!」の激ラッパを機に、ここから「一体で活躍する怪獣が登場する怪獣映画」の製作を決定。


かくして、大映怪獣映画第一弾は『大怪獣ガメラ』となった。


あらすじ編集

東京の離島、笹島にある三上宇宙食糧研究所にて、超高単位カロリーの新宇宙食「S602」が開発された。このS602には恐ろしい副作用があり、無重力化では問題は無いが、重力下で食べると、身体が巨大化するのだ。

開発者の三上博士と、技師の大久保弘は、学会の発表を見送ろうとするが、同じく技師の近藤透は発表を主張。しかし、「科学者は富や名誉より真実を求めるべき」という三上の判断で、発表は見送られた。


これに不満を持つ近藤は、恋人のダンサー、南条ユミから呼び出された。彼女が踊る銀座の東京大劇場に赴き、そこでスイスの世界平和科学財団調査員・シュミットを紹介される近藤。

シュミットはS602のサンプルとデータを引き換えに、研究所設立のバックアップを申し出る。

承諾した近藤は、笹島に戻り、三上博士と大久保に処分したと偽り、ヘリで来たシュミットの使者にS602のサンプルとデータを渡す。


その頃、笹島ではネズミが大量発生していた。島民は日本政府に駆除を陳情。その様子をTVでもドキュメンタリー番組で流されるほどだった。

だが、その放送直後。島の村では住民が少女一人を残し消えてしまう。それだけでなく、養鶏場の鶏、牧場の牛、それらも全てが消えていた。

この状況に、笹島の警察が調査を開始。調査隊は人間大の巨大なネズミの群れに襲撃される。村人たちや家畜は、全てこの巨大ネズミたちの餌にされていたのだ。この大群の巨大ネズミに、笹島の村々は全て襲われ、研究所の三上博士も噛まれて重傷を負う。

大久保は、この巨大化の原因がS602と考えて近藤を訪ねるも、彼は処分したと言い張った。


だが、大久保の予想通りだった。S602を運ぶシュミットの使者のヘリは墜落し、散乱したS602は、島のネズミが食べてしまったのだ。大久保は知人の高梨教授に事情を打ち明け、今後の対応を相談した。

S602で巨大化した生物は、心臓が体格に合うほど大きくはならない事が判明していた。そのため、高梨教授は巨大ネズミを解剖して確証が得られるまで他言しない方がいいと助言。

巨大ネズミは、誰言うとなく「ネズラ」と呼称され、国会で対応策が討議。毒殺による駆除が決定される。


笹島にセスナ機が、空中から毒薬および毒ガスを広域に散布する、駆除作戦が開始。しかしネズラは海を渡り、大島に上陸してしまった。さらに三原山が噴火し、ネズラたちは再び海に入り、防衛線を突破。東京に上陸してしまった。そのまま地下鉄構内を巣にして、人間を襲いまくるネズラ。


ネズラを解剖した結果、やはりS602が巨大化の原因だった。それを確信した大久保は、一部のネズラにS602を与えて更に巨大化させ、その巨大ネズラ「マンモスネズラ」を、ネズラと戦わせて自滅させようと考える

そのために、近藤が隠し持っているS602を入手しようとするが、既にシュミットに奪われ、近藤も射殺されていた。シュミットは実は、ソ連のスパイだったのだ。そのシュミットも逃走の途中にネズラに襲われ、食い殺される。

だが、近藤の恋人ユミが、S602を大久保に届けた。シュミットが奪ったのは偽物だったのだ。

大久保の計画通り、S602から作り出されたマンモスネズラとネズラは互いに争い、全滅するのだった。


…と、こう描かれ全国大映系の劇場で公開されるはずだった…。

リメイク編集

NEZURA編集

2002年10月25日に東京国際ファンタスティック映画祭で公開された特撮映画。今作を意識した作品だが、内容はほぼ別物。生きたネズミは使ってない。

ネット上ではよく「最強獣誕生ネズラ」と呼ばれるが、最強獣誕生の部分はキャッチフレーズだったりする。


ネズラ1964編集

2020年公開の映画。今作の舞台裏を映画化したもの。

出演者はガメラシリーズに出演歴のある俳優を起用。ちなみに、撮影用にネズラおよびマンモスネズラの着ぐるみが新造された他、当時のように「本物のネズミを撮影に使用」している。



余談編集


関連項目編集

大映


小さき勇者たち:後輩とも言えるガメラの作品で、生きた動物を撮影に使った点が似ている。ジーダスも最初は頭足類の怪獣がアイディアだったとされており、ジーダスの別名である「海魔獣」も『大海魔ダコラ』と類似性がある。


巨大生物の島:映画監督バート・I・ゴードンが監督したパニック洋画。公開は1976年。H・G・ウェルズのSF小説「神々の糧」(の一部)を映画化した作品で、劇中にはネズラを彷彿とさせる、人間大の巨大ネズミが多数登場する。VHSビデオテープで発売された際のタイトルは「巨大ネズミの襲撃」。

人間と絡むシーン(人間に襲い掛かり、食い殺すシーンなど)では、実物大の巨大ネズミのマペットなどが造形され、撮影に使用された。

また、ロングショットでは、本物のネズミをミニチュア上に放って撮影している。通電した電気柵に触れさせたり、ショットガンで撃ったり、水で押し流し溺死させたりと、ネズラ同様に殺害する様子も撮影、劇中に使用している。


トカゲ特撮:本物のトカゲやワニをそのまま(時として作り物の角やヒレなどをくっつけ)、ミニチュアセット内で撮影したり、合成したりして、巨大生物または恐竜・怪獣に見立てる特撮技術(現在は動物愛護の理由から、使用不可である)。ネズラは当初、ネズミを用いてこの方法を(故意か偶然かは定かではないが)真似て、撮影しようとしていた。


人喰いネズミの島:上記「巨大生物の島」に先んじた、1959年公開の映画。やはり巨大化したネズミが、集団で人間を襲うという内容。劇中に登場する巨大ネズミは、犬にネズミの着ぐるみを着せたもの。監督のレイ・ラッセルは上記のトカゲ特撮を用い、巨大トカゲが登場する映画を後年に撮影している。なお、2012年に続編が作られた。そちらはCGでネズミを描いている。


緯度0大作戦:東宝が制作した特撮映画。本作同様「巨大化したネズミ」が登場するが、着ぐるみで表現されている。


「鼠(THE RAT)」:イギリスの有名なホラー作家、ジェームズ・ハーバートのベストセラー小説。本作同様に、巨大化したネズミが多数出現し、人間社会を襲う。

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