概要
「妖怪大戦争」というタイトルの作品は複数あるが、ここでは日本の実写映画について扱う。もっとも、『ゲゲゲの鬼太郎』シリーズの「妖怪大戦争」も、大映の「妖怪大戦争シリーズ」と兄弟作品である。
いわゆる「妖怪シリーズ」の一環であり、昨今における認知度ゆえか「妖怪大戦争系」が代表的な作品として取り扱われており、他の関連作品の知名度が劣る場合が目立つ。
ガメラや大魔神や『帝都物語』シリーズの加藤保憲もゲストキャラクターとして登場している。
『大怪獣ガメラ』の大ヒットによって窮地を救われた大映が「延命」された間に発足したのが「大魔神シリーズ」と「妖怪大戦争シリーズ」である。
製作にも「ガメラシリーズ」や「大魔神シリーズ」の影響を強く受けており、本作出身のキャラクターとして一番有名な吸血妖怪ダイモンは大魔神を参考に造られ、大魔神を演じた橋本力がダイモンも演じている。そしてその大魔神は、ガメラの最初の敵として構想されていたアイディアがバルゴンと分岐して生まれたキャラクターである。
水木しげる・楳図かずおと共に「第一次妖怪ブーム」を形成し、「第一次怪獣ブーム」の後釜として大いに推進された。『悪魔くん』や『ゲゲゲの鬼太郎』が「正義の主人公」「戦闘シーン」「巨大なキャラクター」を導入する様になったのは「第一次怪獣ブーム」の影響を受けているからだとされている。
だが、大映が倒産し、それを受け継いだ徳間書店も経営破綻したため、ガメラや大魔神等と共に全体的な知名度が大きく低下した。つまり、「妖怪シリーズ」が水木しげるの作品群の兄弟シリーズであるという面も多くの人々に忘れられた。しかし、大映作品の版権をKADOKAWAが受け継いでおり、水木しげるとの繋がりは今も保たれている。
- 『ゲゲゲの鬼太郎』や『悪魔くん』や水木しげるの妖怪画に、大海獣、シバの大魔神、鎧武者、ペロリゴン、キブンゴなど、鯨神やガメラや大魔神を意識したキャラクターが見られるのも無関係ではない。マンモス・フラワーと草体も同じコンセプトから分岐している。
水木しげる・楳図かずおはもちろん、荒俣宏や京極夏彦や宮部みゆきなどの水木しげるの関係者も大いに関わっており、妖怪のデザインは水木しげる版を準拠にしていたり、漫画化や製作の総指揮やプロデュースなどを担当したり、小説版やスピンオフ作品の原作を務めたり、脇役として映画や小説に登場していたり等、特に水木しげる方面との関係性が強い。
『妖怪天国』と『さくや妖怪伝』は大映や徳間書店が温めていた本シリーズの復活計画を他の会社の資本で焼き直しした物である。『さくや妖怪伝』には監督も含めて平成ガメラの関係者などが携わっており、『妖怪天国』には水木しげると楳図かずおも脇役として出演しており、水木しげるが同名のエッセイ集を後に出版している。
楳図かずおの『蛇娘と白髪魔』もやはり湯浅憲明も含めて「ガメラシリーズ」や「大魔神シリーズ」の関係者が携わってタイアップで映画化されており、同時上映がされていたなど配給面でも協力関係にあった。その次にも楳図作品の映画化が予定されていたが、大映の経済状況をはじめとする諸事情によって実現しなかった。また、『神の左手悪魔の右手』の映画版の監督を務めたのも金子修介だった。
上記の通り、ガメラと大魔神は既に直接の登場を果たしており(参照)、『ゲゲゲの鬼太郎』シリーズへのカメオ的な言及も作中で何度もされている。今のところは、鬼太郎親子を始めとする実際の伝承が存在しないオリジナル妖怪は「直接」の登場を果たせていない。
しかし、スピンオフとも言える『虚実妖怪百物語』には(疑似的とは言え)、オリジナル妖怪である鬼太郎と丸毛も直接登場している。
鬼太郎ファミリーの中で実際の伝承が存在するメンバー(一反木綿・ぬりかべ・子泣き爺・砂かけ婆)については、本編や関連作品の作中で直接の登場があり、ファミリーのメンバーが敢えて一緒に登場する場面もある。
また、平成ガメラや『小さき勇者たち~GAMERA~』には、小道具としてダイモンなどの妖怪たちの模型やイラストが使われている。
『妖怪大戦争』(昭和)
1968年公開。監督は黒田義之。製作・配給は大映。『蛇娘と白髪魔』との併映作。
同年公開の『妖怪百物語』、翌年公開の『東海道お化け道中』と併せた大映の「妖怪三部作」の2作目に当たる。
1751年の江戸時代を舞台に、古代バビロニヤの遺跡から復活した吸血妖怪ダイモンと日本妖怪たちの大合戦がコミカルに描かれる。監督の黒田は『大魔神』3部作の特撮監督を務めた人物で、ダイモン役には同作で大魔神役だった橋本力を起用している。
キャスト
真山新八郎 - 青山良彦
千絵 - 川崎あかね
大館伊織 - 大川修
磯部兵庫 - 神田隆
川野左平次 - 木村玄
大日坊 - 内田朝雄
ダイモン - 橋本力
河童 - 黒木現 / 飛田喜佐夫(声)
油すまし - 別府敏保
青坊主 - 暁新二郎
雲外鏡 - 花村秀樹
ろくろ首 - 毛利郁子
二面女 - 行友圭子
ぬっぺっぽう - 辻勝彦
スタッフ・データ
監督 - 黒田義之
脚本 - 吉田哲郎
撮影 - 今井ひろし
音楽 - 池野成
妖怪造形 - 八木正夫・エキスプロダクションほか
製作・配給会社 - 大映
公開 - 1968年12月14日
上映時間 - 79分
製作国 - 日本
言語 - 日本語
『妖怪大戦争』(平成)
2005年公開。監督は三池崇史。角川グループ60周年記念作品。主演は神木隆之介で、子役時代の神木を代表する一作。
昭和版のリメイクという扱いだが、「妖怪が大挙して登場する」というコンセプトとタイトルのみを借りた別物。時代劇だった前作に対して、今作は現代を舞台としたジュブナイル色の強い冒険ファンタジーに仕上がっている。
角川から刊行されていた妖怪雑誌『怪』の主要作家である水木しげる、京極夏彦、荒俣宏、宮部みゆきがプロデュースチームとして参加したほか、劇中にカメオ出演し、『怪』も劇中の小道具として登場する。また、荒俣の代表作である『帝都物語』から加藤保憲がダイモンに代わる悪役として参戦を果たした。
本編のほか、荒俣の書き下ろした小説版が存在する。また、水木しげるによる漫画版が『怪』で連載された後、『水木版 妖怪大戦争』の題で単行本化された。
キャスト
稲生タダシ - 神木隆之介
稲生俊太郎(タダシの祖父) - 菅原文太
稲生陽子(タダシの母) - 南果歩
稲生タタル(タダシの姉) / のっぺらぼう - 成海璃子(2役)
タダシの父 / 大人になったタダシ - 津田寛治(2役)
佐田(「怪」編集者) - 宮迫博之
「怪」編集長 - 佐野史郎
農夫 - 柄本明
宮部先生 - 宮部みゆき
川姫 - 高橋真唯
鳥刺し妖女アギ - 栗山千明
スタッフ・データ
監督 - 三池崇史
脚本 - 三池崇史 / 沢村光彦 / 板倉剛彦
製作 - 黒井和男
製作総指揮 - 角川歴彦
音楽 - 遠藤浩二
主題歌 - 忌野清志郎with井上陽水「愛を謳おう」
撮影 - 山本英夫
編集 - 島村泰司
配給 - 松竹
公開 - 2005年8月16日
上映時間 - 124分
製作国 - 日本
言語 - 日本語
『妖怪大戦争 ガーディアンズ』(令和)
2021年公開予定。監督は三池崇史が続投。主演は寺田心。
平成版の流れを汲む続編。ゲストとして昭和版のダイモンのルーツでもある大魔神が、映画作品としては実に55年ぶりに再登場する。また、ノベライズ作品である『平安百鬼譚』では玄武(ガメラ)も鵺への切り札として登場した。
関連タグ
映画 / 邦画 / ホラー映画 / ファンタジー映画 / 妖怪映画 / 映画の一覧
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