概要
熊本県の天草に出没するとされる路傍の怪。本来は「油ずまし」と表記するらしいが、近年は濁らずに「すまし」と呼ぶ事が多い。
草隅越と言う峠道で、孫を連れたおばあさんが「この道には昔、油瓶を下げた者が出没したそうだ」と噂すると「今でも居るぞ!」と言って姿を見せたと言う。
その正体は不明だが、一説に「すまし」「ずまし」は方言で“油を絞る”意味の「すめる」と言う単語から派生した語句と言われており、油を商う人間との何らかの関係を示唆する説が存在する。
また京極夏彦の対談集「妖怪馬鹿」では、柳田國男の著作「妖怪談義」において釣瓶落とし、薬缶吊るやさがりと同じ項目に記述されていることに注目し、油瓶が下がってくる怪異である可能性が指摘されている。
姿かたちに関する詳しい言及はないが、一般には水木しげるのデザインした、ジャガイモのような頭(文楽の蟹首がモデル)に蓑笠をつけ杖をついた姿が有名である。
上記のように姿かたちは不明なため、pixivの妖怪絵師たちによって水木版に縛られない様々な姿が描かれている。
創作での扱い
水木しげる作品
声 - 小林通孝(第3作)、塩屋浩三(第3作・地獄編)、中井和哉(第4作)、平野正人(第5作)、江川央生(第5作・劇場版『日本爆裂!!』)、龍田直樹(第6作)
水木御大は上記の通り、一般に広まっているデザインの考案者である。
油すましは『ゲゲゲの鬼太郎シリーズ』では味方キャラクターとして準レギュラーの位置を占めている。アニメ3期のエピローグ・『地獄編』ではレギュラーとして活躍する。
アニメ5期では、熊本県の妖怪四十七士の座をアマビエに取られてしまった。妖怪大裁判を原作とするエピソードではモブとして登場している。
6期では、第4話でゲゲゲの森の住人として登場し、その姿を見て感激した裕太に伝承通り「うむ、今もいるぞ」と答えた。鬼太郎とは将棋友達のようである。
一方、御大のもう一つの代表作『悪魔くん』では、油すましは敵として登場している。
妖怪大戦争
1968年度版では、前作「妖怪百物語」に続き日本妖怪のリーダーとして登場。水木デザインであることを知らずに登場させたため、水木がコミカライズの権利を得たといわれている。
水木の創設した「怪」メンバーが関わった2005年度版では、竹中直人が顔に色を塗り、CGで変形させ水木デザインを表現した。
妖怪変紀行
モンスターとエイリアンが地球の支配者の座を争う「ラストハルマゲドン」の番外編として開発されていたPCロールプレイングゲーム。ストーリー上、油すましが中心的な役割を持っていたが、水木デザインであることが発覚したため発売延期の後、発売中止となったといわれる。
さくや妖怪伝
「油すまし」のままでは登場させられなかったらしく、「化け地蔵」というそっくりな妖怪が登場した。
侍戦隊シンケンジャー
「油すまし」の伝承の元になったという設定の外道衆のアヤカシ「オイノガレ」が登場した。
女神転生シリーズ
本編には登場しなかったが「真・女神転生TRPG」ではデータが存在する。また金子一馬氏は”秘神”キンマモンの初期デザインのモチーフにしていたが、製品版では変えてしまったことを語っている。
妖怪ウォッチ
あにめたまえ!天声の巫女
「正体不明の妖怪だから、もしかしたら黒ギャルだったかもしれない」という大胆な発想によってボディオイル塗れな黒ギャルの姿に美少女化されて登場する。ジャガイモ頭と蓑笠の代わりにベレー帽とマフラーを身に着け、杖や腰のベルトから油瓶を吊り下げており、水木デザインや伝承で語られている特徴をギャルファッション風にアレンジしたデザインとなっている。
本編には未登場だが、公式アプリゲームにて言吹神社の参拝客として登場している。
余談
2004年に熊本県栖本町に「油すましどんの墓」と呼ばれる石像が確認され、町文化財となった。