オイノガレ
おいのがれ
第十九幕「侍心手習中」に登場。
油袋の集まりのような、2つの笑顔のような姿を持つアヤカシで、『油すまし』という妖怪の伝承のルーツとされている。
楕円形の大きな頭部の左右には布袋か大黒天のようなふくよかな男の顔が2つあり、その2つの顔に挟まれた中央には鋭い牙を覗かせた口がある。
全体のカラーリングは赤茶色で、胴体や四肢の随所に丸いイボのような物が見受けられ、腹部も丸く膨らんでいるが、やはり両肩と二の腕、そして下半身を埋め尽くす無数の油袋が最大の特徴。カラーリングも油膜のように紫と緑のグラデーションになっており、かなりファンシーな出で立ちをしている。
得物は「油坏滑蛮刀(あぶらつきぬめりばんとう)」という、峰が泡立ったようなフォルムの剣。ちなみにリペイントされて腑破十臓の「蛮刀毒泡沫」として流用された。
全身がギトギトの油で覆われてヌルヌルしているので、如何なる攻撃もツルツルと滑らせる事で受け流してしまえる。これによって攻撃しても大したダメージにはならず、捕まえる事も難しい。
さらに周囲に油を撒き散らしてあらゆる物質から摩擦を奪う「三途の油地獄」という技も持ち、彼と相対した者は攻撃が通らないわ、足下を滑らされて思うように動けず機動力を奪われるわ、加えて手から武器も滑ってつかめなくなるわという泥沼にはまってしまう。
一方で頭は回らないらしく、任務を忘れて武器を油まみれにしたり、撤退すべき状況でも欲に目が眩んで進軍したりと迂闊な行動が多い。このためシタリからも「バカだねェ」と呆れられる始末であった。
油が自慢だけに最大の弱点は炎だが、凍結も苦手。
とある山中に出現すると、かつて三途の川と繋がっていた枯れ井戸を復活させるため骨のシタリに協力。彼が賽の河原の石で作った斧で9人の若い女性を斬り、それを井戸に投げ込む事で三途の川の水を引き込むという算段であった。
女性の悲鳴を聞きつけたブルーとゴールドの2人を三途の油地獄で圧倒するが、交戦時に斧を使っていたせいで油まみれになり研ぎ直す羽目に。
ちなみにゴールド&ブルーは「滑らされて持てないなら、落とさないようにすれば良い」という機転でハチマキを手首に巻きサカナマル(シンケンマル)を固定するという作戦を取り、山中にいたナナシ連中を一掃。そしてオイノガレは龍折神の攻撃で怯んだ隙に斧が枯れ井戸の底に落っこちて作戦が頓挫してしまった(シタリ曰く「アレ造るの大変なんだよ!!」とのことで、そうおいそれと工面できる代物ではないようだ)。
そうこうしている間に残り4人が合流。シタリは計画の頓挫に加え、「シンケンレッドじゃお前さんとの相性は最悪さ!!」と至極真っ当な進言をして撤退するも、彼が恐れをなして逃げ出したと考えたのか「恐るるものでは!!!」と突撃。
だが案の定レッドの火炎の舞で全身の油が燃え火だるまになってしまう。自慢の油膜も燃え尽きて普通に攻撃が当たるようになったため、続け様にピンク達3人の連撃とブルー&ゴールドの合体技「水流百枚おろし」を受けて敗北。
この時オイノガレ自身が井戸に落ちてしまい、爆発の衝撃で吹き飛んだ……という(ややご都合的な)ミラクルプレーが発生し、計画は完全にご破算となった。
直後に二の目となって巨大化すると、そのままイカシンケンオーと交戦。
全身の油膜が復活したため、三途の油地獄で相手を武装解除に追い込むも、烏賊折神に逃げられ再度武装を許してしまう。そして氷漬けにされたところにそのまま槍烏賊一閃を喰らって爆散した。
モチーフは油袋と笑顔。名前の由来は油の英訳である「オイル」で、「ル」の字を「ノ」と「レ」に分解して間に「ガ」を入れて「ノガレ(逃れ)」となり、ここから「油(オイル)で攻撃から逃れる」という意味合いになっている。
現代の伝承に於いて、『油すまし』という妖怪は油瓶を手にした不思議な化け物らしいが、オイノガレの油がそのルーツになったとされる。
特撮一般で油すましがモチーフに使われた怪人はこのオイノガレが初である。
声を演じた桜井氏は昨年の『炎神戦隊ゴーオンジャー』でもジシャクバンキの声を担当していた。
海外版「パワーレンジャー・サムライ」ではアントベリーという名前で登場。
こちらでは油ではなくスライムを司る能力になっているが、レッドレンジャーの火のシンボルパワーで燃やされている(そもそも原典のスライムも火に弱いので、描写的に問題はない)。
流石に女性を殺して井戸に投げ込む…というのはマズかったのか、子供が大事にしている玩具を奪い、それを壊して井戸に投げ捨てるという作戦に変更された。作中の三途の川は人々の悲しみや苦痛・嘆き…といった負の感情によって水かさを増すので、これはこれでさぞかし効果覿面だろう。
侍戦隊シンケンジャー 外道衆 アヤカシ(シンケンジャー) 油すまし
こちらは油ではなく「臨気」というエネルギーを粘液状にして体を覆っているが、相手の攻撃を滑らせ無効化する防御特化の能力はよく似ている。
というわけでコイツも自慢のヌルヌルボディを突破されて倒された。
ブレン(仮面ライダードライブ):6年後のライダー怪人で、こちらもヒーロー側の攻撃を受けて火達磨になった繋がり。