「その一件、このアベコンベにお任せ願いやしょう!」
データ
概要
第二十七幕「入替人生」に登場する上下あべこべの顔のような、渦巻く雷雲のような姿を持つアヤカシであり、妖怪『火車』伝承のルーツとされている。一人称は「あっし」で、江戸っ子口調で話すのが特徴。
全体的な姿は黒い雷雲がそのまま人の形になっているが、顔は頭部ではなく腹部にあり、2つのライオンの顔が1つの口を中心として上下に一対ずつ目鼻が付いている形をしている。会話もこの腹部の口で行う。
武装している武器は、筋雲重長巻(すじぐものかさねながまき)という。
本編で最初に登場した筋殻アクマロの配下であり、主君である彼自身より一足先に登場した。
長らくアクマロの配下として動いていた為、血祭ドウコクもその存在を把握していなかった。
その能力は両手から撃ち出す針の様な物体を人間と器物に突き刺し、胸部を発光させる事で両者の魂を入れ替えてしまうと言うもの。これによって人間の肉体に入れ替えられた器物の魂は、元のそれと同じポーズを取ったまま微動だにしなくなり、逆に器物に入れ替えられた人間の魂はそのまま一切の身動きが取れず、器物には口も無いので声を上げても誰にも気付いてもらえない。
その為、その人が何と魂を入れ替えられたかは、その人の肉体のポーズを見て推察して見抜くしかなく、入れ替えられた器物に特徴が無い場合はそれを見抜くのはかなり困難である。
当然器物が損壊したり腐敗したりすれば、そのまま魂を器物に入れ替えられた人間は何もできず、誰にも気づかれぬまま、絶望の中で死を迎えるしかないと言う恐ろしい運命が待っている。
そうしてアベコンベは、自身の能力によって物言わぬ器物に魂を入れ替えられた人間が、何も知らない別の人間によってその命を奪われると言う、地獄へと現世を作り変えようと目論んだ。
さらにアベコンベ本人は、その様を見て「知ってても知らなくても人殺しは人殺し」と楽しむ醜悪な趣味の持ち主で、劇中で自身の能力から逃れた谷千明と花織ことはの2人を「残り物」と言い捨てる等、ナチュラルに人間を物と同等の存在としてしか見ていない。
アクマロに仕えているかドウコクに仕えているかの違いはあれど、アヤカシは所詮はアヤカシでしかないと言う事である。
弱点は、腹部の顔をなぞるように存在する胸の部分の器官であり、そこが入れ替え能力の核となっていて、そこを傷つけられると入れ替え能力は喪失して入れ替えられた人もまとめて元に戻る。
ただし、腹部の口から強力な火球を吐き出して攻撃でき、本人の直接的な戦闘力もかなり高い。
シンケンジャー達も含めた作中で描写された犠牲者の内訳は以下の通り。
人物 | 入れ替えられた器物 |
---|---|
志葉丈瑠 | 招き猫(千明のイタズラ兼景気づけで顔に猫のヒゲを落書きされた。後になってもこれで弄られる羽目に。) |
池波流ノ介 | 小便小僧(千明によってトイレに入れられた。ことはのリアクションから察するに、アウトなこともやっていたと思われる。) |
白石茉子 | 扇風機 |
梅盛源太 | 寿司(傷んできたので黒子に冷蔵庫にしまわれそうになったが、アベコンベが現れたので途中で去ってしまい、そのまま台所に放置され、猫に食い殺されそうになった。そのせいで寿司恐怖症になってしまう。) |
ジョギング中の男性 | 街灯 |
中年女性 | 看板 |
サラリーマン | 自転車 |
女子学生 | 空き缶 |
劇中での活躍
アクマロの露払いとしてこの世に侵攻するや、上述の能力で人々を様々な器物と入れ替えて行く。
その過程で駆け付けたシンケングリーンとシンケンイエロー以外のメンバーも各者各様の器物と入れ替えるが、水切れの為に一時撤退を余儀無くされる。
一旦六門船にいる血祭ドウコクの前に挨拶がてら顔を出すと、骨のシタリからも三途の川の水が増水しているとして評判は上々。
「我が主、然るお方の狙いは、そんなちっぽけなモンじゃねェんで!」
しかし、アベコンベはそう前置いた上で、物に入れ替えられた人間は、他人に物としてしか扱われなくなり、知らない内に人の命を奪ってしまうと語る。そして、自身の能力の犠牲になった人間達に降り掛かるであろう、恐ろしい死の運命を前提に、三途の水を溢れさせる以上の自身の目標を豪語した。
「知ってても知らなくても、人殺しは人殺し。この世を、人が人の命を奪う地獄にしてみようってんで!」
半ば呆気に取られるシタリを他所に、「気に入った!テメェの言う地獄、楽しみにしてるぜ」と楽しそうにドウコクは笑っていた。
しかしその後、現れた二人を「シンケンジャーの残り物か…」と言い捨てて交戦するも、イエローに上述の能力を利用されてグリーンと自身の人格を入れ替えられてしまう(その際、上記の台詞と共に困惑した様子を見せた)。
さらにサッカーボールと入れ替えられたりと自分が弄ばれる羽目になり、自分の身体を盾にされた上で恐喝に近い取引を迫られた為、止むを得ず自分の身体の能力の核となる器官を破壊して能力を解除した所へ、スーパーシンケングリーンの真・木枯らしの舞を受けて敗北。
直後、二の目となって巨大化すると、グリーンとイエローはダイカイシンケンオーで応戦。二人のみでの搭乗となったのでかなりモヂカラの消耗が激しく、二人は最速で短期決戦に挑む事を余儀なくされる。
それに対してアベコンベは腹部の口からの火球で応戦するも、火球を海老刀で弾かれ、背面からの光線に怯んだ所へ、一気に止めの二天一流乱れ斬りを喰らって爆散した(年少組二人だけなので、モヂカラの総量不足からイカテンクウバスターは使えなかった)。
そしてアベコンベの敗北後、三途の川の中から主人である筋殻アクマロが姿を現した……
余談
現代の伝承では『火車』は葬儀場から死体を持ち去る、火を纏った大きな猫のような化け物であるらしく、シンケンジャー世界ではアベコンベの腹部の猫のような顔と火球を操る様がそのルーツだとされている。また、火車は地獄の使者であるともされており、「人が人を殺す地獄」をこの世に齎そうと目論むその言動が伝聞された結果、このような伝承が生まれたのかもしれない。
主であるアクマロの目的を考えると、地獄の使者と呼ばれる妖怪のルーツになった存在が配下にいたというのは中々皮肉である。
この第二十七幕のエピソードで寿司に人格を入れ替えられた源太は、危うく猫に食べられて殺されそうになり、それがトラウマとなって寿司恐怖症に陥ってしまうが、これが後に新戦力であるダイゴヨウ誕生の伏線となる。ちなみにそのダイゴヨウとは江戸っ子口調なのが共通している。
デザインを担当した篠原保氏曰く、「提出したラフ画の時点では『枕返し』をモチーフにしていたが、鬼太郎では魂を入れ替える能力を持っている、という話の関係でモチーフを変更した」との事。
入れ替わり能力を持つ怪人や悪役や入れ替わり回自体は戦隊に限らず珍しくはないが、大抵は人物同士での入れ替わりが殆どで、非生物と入れ替わりを行うのはスーパー戦隊に限らず珍しいタイプである。また、大抵特撮の入れ替わり回はギャグ回になるのだが、本作のアベコンベの場合は本当に洒落にならない惨劇が起きかねなかったシリアスな背景があるという点で珍しい(というか、シンケンジャー達の与り知らないところで、既に何人か犠牲者が出ていた可能性もある)。
声を演じた檜山氏は、昨年の『炎神戦隊ゴーオンジャー』でもハツデンバンキと言うヒーローと人格が入れ替わった怪人の声を担当している(※アベコンベと違ってこちらは偶発的)。更に9年後の『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』でもマンタ・バヤーシと言う同じく自身の能力でヒーローと中身を入れ替えた怪人の声を当てる事となり、背景にえげつないものがあることも共通している。
海外版「パワーレンジャー・スーパーサムライ」ではスイッチビーストの名で登場。
この場合のスイッチは「切り替え」という意味であると思われる。
入れ替えられたものも海外版では異なっており、レッドレンジャー=ジェイデンはドワーフ人形(奇しくも招き猫と同じようなポーズ)、ブルーレンジャー=ケビンはオルゴールのバレリーナ人形(ついでにグリーンレンジャー=マイクの悪戯で元の身体の方にもバレリーナのスカートを履かされた。下ネタは流石にアウトということか。ちなみにこの後マイクがこの姿をモーファーの待ち受け画面にしていたことが判明する)、ゴールドレンジャー=アントニオは魚(猫に食われそうになって次回の話でトラウマを抱えるのは原作と同じ)になっている。
ピンクレンジャー=ミアは原作と同じく扇風機である。
また、コメディリリーフのバルクとスパイクも入れ替えられており、バルクは空き缶、スパイクは古新聞と入れ替えられた。
関連項目
侍戦隊シンケンジャー 外道衆 アヤカシ(シンケンジャー) 火車
アベコンベ:ドラえもんの秘密道具としてのアベコンベはこちらを参照。
カシャ(カクレンジャー):『忍者戦隊カクレンジャー』に登場した大先輩。
妖怪カシャ:『手裏剣戦隊ニンニンジャー』に登場する後輩。
カシャ(魔化魍):『仮面ライダー響鬼』に登場する火車繋がりのライダー怪人。
ツタコタツ:『爆竜戦隊アバレンジャー』に登場した人格の入れ替え能力を持った怪人。
レガエル:『海賊戦隊ゴーカイジャー』に登場する、同じく人格の入れ替え能力を持った怪人繋がり。上下反転した顔を持つデザインも共通。