解説
眠っている人間の枕元に現れ、その人が頭に敷いている枕をひっくり返していく妖怪。
単純に枕の裏表を返すものから、布団の向きそのものを変えるものまで様々いるらしい。
いくらか種類が存在し――
……など、様々。
基本的には起きた相手を驚かせる程度の軽い悪戯ぐらいであり、然したる害は無い。
恐るべき“枕返し”
しかし、これとは別に命を奪いに来る枕返しも存在する。
有名なのは和歌山県の枕返しで、彼らは樅(モミ)の大木に宿る精霊だった。
八人の樵(きこり)たちが、一日かかっても切れないほどのこの大木を切ろうと鋸を引くが、中ほどまで切っても翌日には元通りになるという怪現象がおこり、これが精霊たちによっておがくずで塞いで元通りにしていたと知る。そこで樵たちは、おがくずを燃やして精霊たちが大木の修復を出来ないようにして、伐採を完了させた。
するとその日の晩、精霊たちが樵たちの枕元に現れ、彼らの枕を次々にひっくり返していったという。翌朝、枕を返された樵たちは全員亡くなっていが、一人だけは寝るときに般若心経を唱えるクセをもっており、精霊が“信心深い”と判断して見逃し、奇跡的に生き残ったという。
枕返しの「意味」
民俗学において、枕は「夢の世界と現実世界の境界」と言われている。
これは古来、日本人が「寝ている間は魂は別世界へ飛んでいっている」と考えていたことに由来し、この飛んでいっている間に見聞きした世界の情景が“夢”であるとしていた。
よって、魂の抜けた状態で枕の裏表や位置を変えられると、飛んでいった魂がちゃんと戻れなくなり、死に至るのだという。
また枕を返すことは“秩序の逆転”も意味し、魂が帰るべき世界を入れ替えてしまい、起きたときには異次元世界へと飛ばされてしまうとも考えられた。
こうした民間信仰から、枕返しは単なる悪戯妖怪というだけでなく、恐るべき妖魔としての一面も持ち合わせているのである。
ゲゲゲの鬼太郎
CV:北川米彦(1期)、屋良有作(3期)、肝付兼太(4期)、石塚運昇(5期)、岩崎ひろし(6期)
シリーズでは敵として登場することが多い。
人間、とくに子供を夢の世界へ誘拐して食べてしまう。
夢を自在に操る事ができ、目に入ると眠気を引き起こす砂を所持している(5期では砂かけ婆が作ったものを奪っており、6期では夢繰りの鈴を使っていた)。
夢の国への虹の橋を作る能力も持ち、この橋は本来は誰でも渡れる訳ではない。鬼太郎のリモコンゲタを使わないとダメなこともある。
塩に弱く、かけられると溶ける(原作、4期。1期と5期では貘に食べられて倒された。3期では貘に悪夢を食べられて降参している。
3期では夢の世界の番人として登場し、寂れてしまった夢の世界を復興するために天童夢子の魂を使おうとした。後にユメコに励まされて改心した。
5期では子供の夢を壊す妖怪として登場している。
6期では第14話「まくら返しと幻の夢」にて登場。(これは枕返しがシリーズで唯一最初から味方として登場した回であり、第9話に登場したいそがしと同じく、かつてのシリーズで悪さをした妖怪が疑われて味方に回るケースである。)
かつては夢繰りの鈴を使って子供を夢の世界に拐ったが、おっかない坊さんにこてんぱんにされ、鈴を奪われた事からもう人間を襲わないと誓っていた。
それなのに目玉おやじに疑われた事に腹を立て、一端は協力を拒んだのだが、犬山まなが知り合いを助けるために一芝居打った挑発にあっさり乗せられ、鬼太郎達を夢の世界へ案内する。
夢の世界についての注意をするつもりで「絶対に『怪物に追いかけられる』『橋が壊れる』と考えるな」とわざわざ想像させるようなことを言って余計にピンチを招いたり、結局自分の夢に夢中になってしまった猫娘とまなに「おまえらは何もしなかったじゃないかよ」とツッコミを入れるなどコミカルな一面を見せている。
大人達を夢の世界へ連れ去った黒幕と対決する際、夢を操る力を与えて目玉おやじを「全盛期をイメージした姿」に変身させ、勝利に貢献した。
夢の世界に鬼太郎一行を誘ったり、目玉おやじの支援を行ったりするときに唱えた呪文は「ネムネムネムネム……ヤーッ!!(裏声)」というひどく可愛らしいものだった。
余談
- 1期で枕返しに拉致されたバク達は夢の世界の闇に落ちてからの顛末が不明である。原作の顛末をご存じの人は追記をお願いします。
- 3期にて、枕返しを救出する際に鬼太郎達がクジラの飛行船で向かった際にぬらりひょんと朱の盆が双眼鏡で発見するシーンは、4期で目玉おやじ達が化け鯨に乗って救出に向かう際に朱の盆が発見してぬらりひょんに報告するシーンと似ている。
関連イラスト
関連タグ
反枕:鳥山石燕の『画図百鬼夜行』および『陰陽師(ゲーム)』での表記。
布団被せ:寝具に関する妖怪の例。