概要
1935年11月15日生まれ、鹿児島県鹿児島市(旧喜入町)出身。本名は「肝付兼正(かねまさ)」。愛称は「肝さん」。
所属事務所は、劇団七曜会→劇団作品座のあと、TBS(現・東京放送ホールディングス)放送劇団出身の千葉耕市に誘われてあるプロダクションに所属していた(プロダクション名は不明)。その後、劇団河→俳優東京→俳協を経て、青二プロダクション→ぷろだくしょんバオバブ→劇団21世紀FOX主宰を経て、2016年2月に81プロデュースに移籍。死去まで所属していた。
大伴氏の氏族で大隅国の豪族・薩摩藩重臣の肝付氏の末裔。同族に戦国時代の大名肝付兼続(肝付本家16代目当主)、明治維新に携わった維新の十傑小松帯刀(喜入肝付家第10代当主・兼善の4男)がいる。なお肝付家は兼太の出身地・喜入の領主であった。
2016年10月20日、肺炎により死去。満80歳没。死去直前の数ヶ月前より体調が思わしくなく、療養に専念するため活動を縮小していた矢先での出来事だった。
その後、2017年1月に放送された『声優総選挙』では、計21ポイントを獲得して第23位にランクインを果たし、その更に一年前に亡くなった朋友たてかべ和也とも併せて追悼の念が示された。
特色
高めのしゃがれたような声での演技が知られる。少年から老人まで幅広い年齢を演じ、動物などのキャラクターも多数演じた。「ドラえもん」のスネ夫や「おそ松くん」(第2作)のイヤミ、「それいけ!アンパンマン」のホラーマンのようにシニカルだが憎めない役柄が多い。
藤子不二雄作品に多数出演。
テレビ朝日版の『ドラえもん』では骨川スネ夫役を1979年の放送開始以来2005年までの26年間に亘って担当したが、1973年に半年間だけ放送された日本テレビ版の『ドラえもん』では、ジャイアン役を担当していた。だが、スネ夫を演じ続けていたせいか、その頃ジャイアンを担当していたことに関して自身は「あまり記憶には残っていなかった」と語っており、日本テレビ版の『ドラえもん』のことは「白黒作品であった」と勘違いしていた。
有名な「のび太のくせに生意気だぞ!」の台詞は当時のアドリブから生まれたものである。
『にこにこぷん』のメインキャラであるじゃじゃまるの「オッス、じゃじゃまるさんだぞ」という挨拶も同様であるなど、国民的キャラの性格付けに多く貢献した。
もともと、声優活動を始める前より舞台役者として活動しており、演劇ブームの再興に触発されて再び舞台に立つべくバオバブを離れ、劇団21世紀FOXを旗揚げした。劇団の無期限活動休止に入るまで、俳優として出演するだけでなく、自らメガホンを取って演出を担当したり、肝付本人が制作した創作戯曲を積極的に公演したりし、俳優として時折特撮やテレビドラマに顔出し出演していた。
『おかあさんといっしょ』では前述の「にこにこぷん」のじゃじゃまるの声を担当する以前の当番組の人形劇コーナーには第5作目である「うごけぼくのえ」カリの声、第7作目である「ブンブンたいむ」ごじゃえもんの声も担当している。
エピソード
藤子不二雄作品に多数声を当てているが、同じしゃがれ声でも「大人」を演じる時と「子供」を演じている時のそれぞれの声の質は明確に使い分けている。例えば『ドラえもん』の骨川スネ夫と『怪物くん』のドラキュラではしっかり声を使い分けている事が解る。
……なのだが、シンエイ動画/テレビ朝日版『怪物くん』が終了後、藤子A作品として『忍者ハットリくん』がシンエイ動画製作でアニメ化。ここでケムマキケムゾウ役をやることになったのだが、スネ夫とケムマキはともに小学生である上、「キザ・イヤミ・普段は猫かぶり」とキャラの性格も被っていたため、ドラ映画公開直前の声優顔見せスペシャル(当時は藤子不二雄の正式解散前で「ドラ・ハッ・パー」と称してキャンペーンされていた)で大山のぶ代から、
- 大山「スネ夫くん」
- 肝付「なんだよ」
- 大山「ケムマキくん」
- 肝付「なんだよ……」
とイジられ、スタジオ内が笑いに包まれたことがある。この大山の発言が台本にあったものなのか、アドリブなのかは不明。
たてかべ和也とは先の通り盟友と言える仲であり、ドラえもん降板後も役繋がりで同じ作品に起用されたりしていた。晩年もたてかべは肝付の演出した舞台を見に来ていたという。肝付は役者の卵を師匠として舞台に導き、時には声優業界へ羽ばたかせていたのに対し、たてかべは人材の発掘者として活躍しており、性格はまるで違った。
しかし「(たてかべに)相談すると、意見がすごく頭に入ってくる。そういう考え方もあるんだなって」と語る程、考え方は違うが気が合う仲だったとのこと。
弔事ではマスコミでも話題になったようにスネ夫の声で呼びかけるなどしていたが、過去の破天荒な思い出話で来場者を沸かせていたりもした。
劇団21世紀FOX下では多くの役者を排出している。特に有名かつ縁の深い弟子は山口勝平であり、山口本人は「師匠」と呼んで、プライベートでも家族のような付き合いがあった。自身が出演する舞台などでもゲストとしてトークパートに呼んだりもしている。亡くなった際は「今の時代に(役者として)師匠と弟子という言葉を堂々と使えるのが誇りでした」と偲ぶ会でコメントした。
名付け親としても有名で、山口勝平、関智一、高木渉による「さんにんのかい」を命名したり、山口勝平や樹元オリエの芸名の命名も行っている。
スネ夫役を引き継いだ関智一とは以上のことから面識があり、死去する少し前にも車を運転中に偶然顔を合わせたという。関は「今まで肝付さんとスネ夫の人物像が噛み合わなかったが、ドラえもんでの共演時(関はスネ夫の幼年期役)、スネ夫を演じている時の肝付さんの背中が本当の小学生に見えて鳥肌が立ち、驚愕した」と感銘を受けたことをしばしば語っている。
関は肝付が演じるスネ夫のモノマネをレパートリーの一つとしており、そのクオリティも高いのだが、自身の演じるスネ夫は「あえて似せないように」という指示があったことや、キャラデザ変更により頭身が変わったことを受けて新たな演技プランを用意したとのこと。
過去に声帯ポリープを発症していたが、持ち味のしゃがれ声が出なくなる事を恐れて切除手術をせずにピンセットでポリープを潰してもらうという荒療治をしている。
死去前最後の仕事となった『ラジオ深夜便』では闘病中ということもあり、車椅子に身を委ね、酸素ボンベにチューブという姿で収録現場に参じたという。実際番組中には呼吸器の電子音が聞こえていたが、長時間の対談にははっきりと応じていた。また、2018年2月9日には生前撮影していた『新 京都殺人案内』が放送され、これが生涯最後のテレビドラマ出演となっている。
主な出演作品
アニメ
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イラスト未確認
カル@海のトリトン
パパ@ウルトラB
アリステア・コーンウェル(ステア)@キャンディ・キャンディ
アララ・コリャリャ・ヨッコーラⅢ世@NG騎士ラムネ&40
ハカセ@オバケのQ太郎(第3シリーズ)
コオロギ@樫の木モック
ロン@どんどんドメルとロン
カバ夫@パーマン(第1シリーズ)
プーヤン@ハゼドン
おじいちゃん@ポコニャン
トッド@名探偵ホームズ(劇場版)
ハリー@山ねずみロッキーチャック
枕返し@ゲゲゲの鬼太郎(第4期)
アニメ(吹き替え)
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イラスト未確認
セラのパパ@リトルフット(劇場公開版)
人形劇
特撮
イラスト未確認
ゲーム
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CM
その他
スター・ツアーズ(F-22)
脚注
- *1 後任は矢尾一樹(没後に製作された劇場版『ブルブルの宝探し大冒険!』以降)。
- *2 左上のキャラクター。
- *3 右から二番目の人物。
- *4 左のキャラクター。
- *5 中央のキャラクター。
- *6 後任は佐藤せつじ(療養に伴う降板後に製作された『もっと!トムとジェリーショー』吹き替え版から担当)。
- *7 後任は多田野曜平(没後に制作されたゲーム『キングダムハーツ3』以降)。
- *8 第39話で顔出し出演で人間態も担当。
関連イラスト
関連タグ
薬丸裕英…先祖が肝付氏との縁があり、先祖の薬丸氏は肝付家の家臣であった事が実は判明した。
外部リンク
- 肝付兼太 - 劇団21世紀FOX公式サイトの紹介ページ・Wayback Machineによるアーカイブ
- 肝付兼太:所属俳優:81produce - Wayback Machineによるアーカイブ
- 肝付兼太 - Wikipedia
- 肝付兼太(@tonoma_zura_)さん | Twitter - 本人のツイッターアカウント