概要
1940年、映画会社のMGMがアニメ参入にあたって、当時同社に属していたウィリアム・ハンナとジョセフ・バーベラ(後のハンナ・バーベラプロダクション)に制作を依頼したのがはじまり。
経営者テッド・ターナーがMGMから権利を買い取った関係で、1990年以降はターナー系列が、1996年以後はタイム・ワーナーのワーナーブラザーズが製作している。
(ハンナ・バーベラ・プロダクションは1996年にワーナー・ブラザース・アニメーションへ吸収合併)
現在でもカートゥーンネットワークでTVシリーズが制作されており、日本国内でもカートゥーンネットワーク日本版で最新作から旧作まで吹き替え付きで放送されている。
長編アニメの方も年1回の頻度で制作されている。
猫のトムと鼠のジェリーの追いかけっこを中心に、様々な騒動を描く。
中には戦前の作品もあり、日本でも60年代から放映され繰り返し再放送されるなど人気を博した。
実は元から社会風刺画として作られたため、当時の社会風俗やパロディなど社会派要素も含んでいる。
(そもそもタイトルのトムとジェリー自体、アメリカないしイギリスとドイツの当時の俗称から来ている模様。)
セリフが殆どなく、スラップスティックコメディーに近いドタバタ感が年齢を超えて親しまれており、アカデミー賞を7回受賞した他、更に北朝鮮でも放送されたくらいに世界的なアニメーションとして認知されている。
2020年にはアプリゲームとして「トムとジェリーチェイスチェイス」が配信され、全世界ダウンロード数が1億を突破。
様々な脇役キャラがプレイヤーキャラに選ばれ知名度を上げている。
なんと、日本でもオリジナルアニメ『とむとじぇりー』が制作されている。
pixiv内では普通に描かれたファンアートの他、トムとジェリーのパロディ作品や、直接は関係なくとも見ていて思わず「仲良くケンカしな♪」と言いたくなる様な作品に対して「トムとジェリー」のタグが付けられることが間々ある。
また、登場キャラを擬人化したものも数多く存在し、オス同士で仲良く喧嘩して追いかけっこを~という内容からそっち系の妄想を繰り広げた作品も投稿されているため、苦手な方は検索の際にご注意を。
登場キャラクター
余談
その1『喋れることについて』
近年作ではシリーズの主役であるトムとジェリーは台詞を発さず、二人の心情はナレーションで代弁するのが常となっている。
そのため、ネコとネズミだから言葉を喋れないと素直に思い込んでいる視聴者も多いのだが、作中でトムとジェリー以外の動物キャラが出てきたときは普通に言葉を喋っている。つまり、トムとジェリーの二匹だけに台詞を喋らせてないのである。これはチャップリンなどの古典的なサイレント映画の喜劇のノリを意識した演出と思われる。
しかし、1990年代よりも古い作品では、トムとジェリーに台詞を喋らせないというスタンスはそこまで徹底されておらず、話によっては結構ペラペラ喋ってたりした。そのため、この時代の作品をTVで見てた世代にとってはトムとジェリーが「喋れない」という印象を持たない代わりに「最近のトムとジェリーは無口な性格になった」みたいに感じてしまうようだ。
そういう感想を逆手にとって、長編作「トムとジェリーの大冒険」の作中ではトムとジェリーの二匹が相手が喋れる事を互いに知って仰天するというメタなギャグシーンがあったりする。
ただ、喋らなくなっても叫び声や笑い声は発声しており、そのためだけに吹き替え声優を起用している。
トムは八代駿→高橋和枝→ダン小路→肝付兼太→佐藤せつじ。ジェリーは藤田淑子→太田淑子→チマ→堀絢子があてている。
(だが一部の無印版は別の人があてているし、大冒険のトムは堀内賢雄があてているなど微妙に異なる。また独自にナレーターも付くことがあり、谷幹一【八代&藤田・版】・植木等【高橋&太田・版】らが担当した)
この他、仮面ノリダーの第31話にて石橋貴明演じるハリネズミ男が大好物のチーズを目にして仲良くケンカしなを歌っていた。
その2『ヴァン・ビューレン版トムとジェリー』
現在でも愛され続けている「トムとジェリー」だが、実はそんなトムとジェリーがデビューする少し前に、もう1つの「トムとジェリー」が存在していた事はご存知であろうか。
それが1931年にヴァン・ビューレンスタジオで制作されたこの、「トムとジェリー」である。
とはいえこれは前述の猫と鼠の追いかけっこアニメとは違い2人の人間が冒険をするという物語だ。
のっぽの方が「トム」。チビの方が「ジェリー」。
シリーズ作品も数話ほど作られたが残念ながらミッキーマウスやベティ・ブープのような人気は得られず1933年に打ち切られたという。
現在は著作権が切れており完全にパブリックドメインとなっている。
こうしてみると「名前が似ているだけの関係ない凡作」と思われるが、実はこの作品なんと後の主な製作者の一人、ジョセフ・バーベラ氏が制作にかかわった最初の作品でもあるのだ。
バーベラ氏はこの作品を制作した後MGMスタジオに入社し、もう1人の作者であるウィリアム・ハンナ氏とともに「トムとジェリー」の制作に入ったという…。
その3『錨を上げて』
1945年に公開された『錨を上げて』という映画にて、トムとジェリーがカメオ出演しており、ジェリーが『ジーン・ケリー』という俳優と一緒に踊るシーンはかなり有名。
実はこの映画は当初、あのミッキーマウスを出演させる予定だったとのこと。
しかしディズニー側からは却下されてしまい、代わりに当時大ブレイクしていたトムとジェリーから同じネズミのキャラクターとしてジェリーマウスが出演することになった。
また、トムも召使い役として数秒ながら出演している。
その4 『意外な因果?』
MGM時代にかの有名なバッグス・バニーとネタがモロに被った事がある。
無印版の「ピアノ・コンサート」アカデミー賞受賞のロゴが入っているので他作と区別可能。
MGM、ワーナー双方で訴訟合戦になったものの、何の因果か現在は同じグループの作品になっている。
その5 『作画ミス』
実は、昔の『トムとジェリー』でも、色塗りを忘れている部分や、物が変色する部分、中にはトムの尻尾が一時的に消える部分があるという作画ミスが存在している。
特に『あべこべ物語』でトムが持った本の色が変色するシーンと、『王様を起こさないで』で花瓶を落とそうとするニブルスの体色や服の色がジェリーと同じ色になるシーンはかなり有名。それ以外にも作画ミスが存在しているため、それをまとめた動画も存在している。
ちなみに、作画ミスは多くの人が気にすることが多いアニメの失敗点の一つだが、この作品においては、その作画ミスに気付いていなかったり、もしくはその場面の殆どがギャグ展開になったりする関係もあり、作画ミスを気にしていない人も多いようだ。
『トムとジェリー(無印版)』の製作者の違い
後述の作品一覧では1940年~1967年が『トムとジェリー(無印版)』になっているが、この時期の時に制作された作品は、それぞれ制作者が異なる時期がある。
『ハンナ・バーベラ』版
1940年~1958年に制作された作品が、最も有名な『ハンナ・バーベラ』版の作品。全114本。
アカデミー賞受賞の作品が多く、前述の「ピアノ・コンサート」以外にも、6つの作品がアカデミー賞受賞、さらに初登場作品の『上には上がある』を含めた6つの作品がアカデミー賞ノミネートされている。
公式Twitterでもこの時期の作品の一部シーンの動画を含めたツイートが多く、LINEスタンプも、この時期の名シーンを再現したものが多い。
『ジーン・ダイッチ』版
1961年と1962年に制作された作品が『ジーン・ダイッチ』版である。全13本。
1960年にMGMがトムとジェリーの新作短編シリーズを再開することを決めたこともあり『ジーン・ダイッチ』版のトムとジェリーが誕生した。
ちなみに、ジーン・ダイッチが所属していた制作スタジオは、当時アメリカと敵対関係になっていた東側諸国のチェコスロバキアに所在していた。
この時期のトムとジェリーは他の時期と比べるとかなり異色な作品が多く、人間っぽい叫び声をしたり、ホラーが強めの作品があったりする。
特に『猫はワンワン犬はニャーオ』はトラウマになった人も多いだろう。
一部のファンからは賛否両論であり、この時期の作品だけ購入特典のDVDにしか収録されていないなど、他の時期の作品と比べると扱いがあまり良くない。
『チャック・ジョーンズ』版
1963年~1967年の作品では、ワーナーの『ルーニー・テューンズ』、特にバッグス・バニーで有名なチャック・ジョーンズが制作した話になっている。全34本。
この時期、チャック・ジョーンズはワーナーから離れていて、その際にMGMがチャック・ジョーンズを起用したことで、『チャック・ジョーンズ』版のトムとジェリーが制作されるようになった。
チャック・ジョーンズが「トムとジェリーのブランドに自身のスタイルを当てはめる」という意向で進めていたため、キャラデザインや演出も『ルーニー・テューンズ』に近いものになっている。
異色なキャラデザインや演出から賛否も分かれるが、ストーリーラインそのものは『トムとジェリー』の定型に沿っており、元の雰囲気は失われていない。
レオ・ザ・ライオンの代わりにトムが鳴くオープニングもこの時期で生まれた。
通常のDVDなどでは『ハンナ・バーベラ』版と一緒に収録されているが、一方でキャラデザインが違うため、この時期のトムとジェリーを用いたフィギュアはあまり登場していない。
作品一覧(年代順)
※日本語で書かれているものは、日本国内で公式に展開されたことがある作品
短編作品
制作年 | タイトル | 備考 |
---|---|---|
1940-1967 | トムとジェリー(無印版) | 劇場公開用の短編シリーズとして制作された。 |
1965-1967 | トムとジェリー(TV版) | 劇場短編シリーズの第1期『ハンナ・バーベラ』版をTV用に再構成。 |
1975 | 新トムとジェリー | トムとジェリーが喧嘩をせずに普通に仲良くする異色作。 |
1980-1982 | トムとジェリー大行進 | 原題は『The Tom and Jerry Comedy Show』。ここから喧嘩路線へ回帰。 |
1990 | トムとジェリーキッズ | トムとジェリーの二匹を幼い子猫/子鼠としてデフォルメした。 |
2006-2008 | トムとジェリーテイルズ | TV版の平成版と言える話もあれば、ファンタジーや童話がモチーフである摩訶不思議なものも。季節感が強調された初のシリーズでもある。 |
2014・2016 | トムとジェリーショー | 舞台設定が放映当時であることが強調され、スマートフォンやドローンなどテック系ガジェットが頻出。一方非日常が舞台になることも。 |
2021 | トムとジェリー ショート | |
2021 | トムとジェリー in ニューヨーク | ニューヨークを初めとした世界中の街が舞台。日本の話もある |
2022(予定) | Tom and Jerry Time |
長編作品
制作年 | タイトル | 備考 |
---|---|---|
1945 | 錨を上げて | トムとジェリーのシリーズ作ではないがカメオ出演した |
1953 | 濡れたらだめよ | 上記と同じ |
1993 | トムとジェリーの大冒険 | トムとジェリー自身の初の長編アニメーション |
2001 | トムとジェリー魔法の指輪 | ウイリアム・ハンナの遺作 |
2004 | トムとジェリー火星へ行く | |
2005 | トムとジェリーワイルドスピード | |
2006 | トムとジェリーの宝島 | |
2007 | トムとジェリーのくるみ割り人形 | ジョセフ・バーベラの遺作 |
2010 | トムとジェリーシャーロック・ホームズ | |
2011 | トムとジェリーオズの魔法使 | |
2012 | トムとジェリーロビン・フッド | |
2013 | トムとジェリージャックと豆の木 | |
2014 | トムとジェリーと迷子のドラゴン | |
2015 | トムとジェリースパイ・クエスト | 「ジョニー・クエスト」とのコラボ作品 |
2016 | トムとジェリーすくえ!魔法の国オズ | |
2017 | トムとジェリー夢のチョコレート工場 | 「チャーリーとチョコレート工場」とのコラボ作品。横山だいすけが声優に挑戦したことでも有名 |
2021 | トムとジェリー(実写版) | 実写とCGアニメーションの合成。ある人間の女性の結婚式に纏わる騒動を縦軸にしたドタバタ人情噺 |
2022 | トムとジェリーカウボーイ・アップ! | |
2022 | トムとジェリースノーマウスと雪の魔法 |
「トムとジェリーの大冒険」予告映像
「トムとジェリー魔法の指輪」予告映像
「トムとジェリー(実写版)」予告映像
関連タグ
トム(トムとジェリー) ジェリー 仲良くケンカしな トムジェリ
ハンナ・バーベラ MGM ワーナーブラザーズ カートゥーンネットワーク
みちのく銀行・・・青森県に本社を構える地方銀行。1980年よりイメージキャラクターとして使用。他に本作をイメージキャラクターとして使用した地方銀行は七十七銀行、佐賀銀行、但馬銀行、十六銀行、四国銀行、鳥取銀行、宮崎銀行、横浜銀行、北陸銀行、大阪銀行(現:近畿大阪銀行)がある。
パジェロミニ・・・三菱自動車の軽SUV。初代モデルの初期CMキャラクターとして起用された。なお三菱では初代RVRでもCMキャラクターにバッグスバニーを起用している。