「なかなか死ねない体でな…… 手でなくば足…!でなくば口……!! 剣を持てる限りこの快楽は続く…!!!」
「所詮人の世の事はすべて…命さえも幻!!」
「…が、この手応えだけは真実!!!!」(第四十七幕)
演:唐橋充(怪人態でのスーツアクターは清家利一)
概要
外道衆の幹部の一人で、名前は「不破十蔵」ではなく「腑破十臓」。
「腑に落ちない」の「腑」に内臓の「臓」なので、「五臓六腑」と覚えよう。
人からアヤカシに転生したはぐれ外道であるため人間の姿とアヤカシの姿両方を持ち、人間態はボサボサの髪とヒゲを生やした壮年の男性、怪人態は顔面の赤い骸骨のような姿。人間態の服装は白いネックレスに赤い服、黒いズボン、ボロボロの白い着物(?)を羽織っているが、生前は黒い羽織で浪人のようなまげも結っていた。
生前
元々は200年ほど前に生きていた武士で、不治の病に侵され「残りわずかな命で何ができるか」を考えた末に人斬りに身を落とした模様。そして妻の制止も振り切って人を斬り続け、その末に外道に堕ちはぐれ外道となった。
筋殻アクマロとはこの時点で面識があり、どこからともなく現れた彼から「どうぞ…これで満たされぬ器を……」と裏正を手渡されたのが最初。十臓はその裏正がただの妖刀ではないことを見抜いていたが気にも留めず、それまでの得物に変わる新たな愛刀として携える事になった。
なお現時点で体調が悪そうな様子はほとんどないものの、「三途の川に入ってもままならないのはこの体か…」と呟いている辺りやはり万全ではないらしい。
ちなみに彼の一族は悉く非業の最期を遂げたとされ、しかも「外道に堕ちた者の家系」という理由からどの寺院にも門前払いされて無縁仏となってしまった模様。この事を憐れんだ天幻寺(志葉家の菩提寺)が密かに供養を請け負い、ささやかながらきちんと墓が建っている。
何の罪もない一族郎党は供養を受けられるのも道理だろうが、外道に堕ちた張本人である十臓がどう扱われているのかは不明。
性格
「この世のすべては幻だ」と断じるように虚無的な態度が目立つが、剣豪としての(彼なりの)矜持か「斬り合いだけがこの世の真実」と語る危険人物。
また仮にも外道衆の一員でありながら三途の川を増水させる計画には一切興味や関心がなく、人間界に出てもむやみな破壊活動や通り魔といった蛮行は行わない。
彼が求めるのは強敵との戦いのみであり、自身が戦うに値すると認めた相手はシンケンレッドこと志葉丈瑠。
超がつくほどの戦闘狂なのは間違いないものの、「ただ強い相手と戦えれば満足」という単純なものではないようで「徹底的に命を捨てた斬り合いでなければならない」としている。つまり真に彼が魅入られ、求めているのは「勝利の快感」でも「強敵と戦う手応え」でもなく「殺し合いの果てにある”死の境地”」そのものといえ、「自身が満足できるほどの斬り合いを以て死の境地に至り、その充足感の中で死ねれば本望」ということになるのだろう。
丈瑠との会話でもそうした願望を窺わせる言い回しが多かった。
「腕のある者と心行くまで斬り合う…それが俺と裏正の望みだ」
丈瑠:「それで剣の道が極まるとでも言うつもりか?」
「…剣の道、か…… 教えてやる いいか、剣の道とは苦しみに非ず…"快楽"にあり」
「どんなに技を鍛え、大試合に勝ったとしても…」
「命ひとつ斬る手応えには及ばない」
丈瑠「ただ愉しむだけがお前の”剣”か……!!!」
「たった数十年の人の命でどれだけの事ができるか まして死病に冒されていては……」
「だから堕ちた ”外道”に」
「悔いるとすれば……堕ちても癒えないこの”飢え”だなァ…!! これを満たすほどの斬り合いだけが望みだ いずれ骨の髄までバラバラになるほどに……!!!」(第二十四幕)
戦闘能力
人間態・怪人態のどちらでも自前の剣術のみで戦い、特殊能力の類は持っていない。また純粋なアヤカシではないため二の目(再生巨大化)も無いが、代わりに水切れが起きないので継戦力は純粋なアヤカシより有利。
さらに血祭ドウコクの”縛り”=アヤカシを支配し拘束する能力にもある程度の耐性があり、しばらく動けなくなる程度には効くが影響は多少軽減できる模様。
裏正
十臓が得物として振るう妖刀。峰側が赤いノコギリのようになっており、そちらが本性=真の切れ味。もちろんどちらの向きでも切れ味は申し分ないが、強敵と戦う際には峰側を向ける。
なお裏正は一度丈瑠との戦いで折られてしまい、それをアクマロに預けて修復している間は「蛮刀毒泡沫」という短剣を装備していた。
実はこの裏正、筋殻アクマロが十臓の妻の魂で作り出したもの。
はぐれ外道でこの世の者でもあの世の者でもない十臓は「裏見(うらみ)がんどう返しの術」を発動させる最後の鍵でもあったが、当の本人はアクマロの目的に興味は一切無く、裏正の修理が完了するや否や用済みとなったアクマロを容赦なく斬り捨てた。
裏正が妻の魂で作られていた事についても最初から気づいており、その上で戦いを求め、人を斬り続けた彼は、本当の外道になり果てていたのである。
「“外道に堕ちる”とはそういう事だ…もはやコイツは一蓮托生…!!」(第四十三幕)
活躍
当初はドウコクに従っていたが、丈瑠こそが己の好敵手と分かると単独行動を始め、事実上第三勢力に。
その後勝負運に恵まれず丈瑠と一騎打ちすることが出来なかったが、中盤にて遂に実現。瀬戸際まで追い詰めたが、捨て身の太刀で裏正を折られて敗北し海中に落下。
しかし生き延びており、その後は一時的に身を隠していたが、裏正の修理を条件に薄皮太夫とともにアクマロに雇われた。また、上記の通り裏見がんどう返しの鍵となるよう計画されていたが、既にそれを見抜いていた彼は裏正修復後に本性を表してアクマロを不意討ち、楔を残らず破壊して彼の計画を破綻させた。
そして物語終盤、本来の志葉家当主が表に出てきたことで全てを失った丈瑠に最後の決戦を挑み、昼夜を通して激烈な切り合いを繰り広げる。そしてレッドの渾身の一撃で決着したかに見えたが……
「…!? 確かに手応えはあった…!!」
「なかなか死ねない体でな…」(第四十七幕)
互いに変身が解けてもなお、十臓は斬り合いの快楽を追い求めようとする。
しかし、裏正はまるで彼を止めるかのごとく左足に刺さったまま抜けず、彼の目には足をつかみ戦うことを止める妻の姿が映るのを見て悟った。
妻は二百年間、十臓の外道を止められるその瞬間を待っていたのだ。
「ここに来て…! …いや、この時を待ってか……!!? 裏正ァァァァアア!!」
「それが…お前の 『真実』なんじゃないのか……!?」
「いや……全て幻だ!!! この…快楽こそ……!!」
「……!! お前の……剣… 骨の…髄まで……」(第四十七幕)
何かを悟りながらもなおそれを振り切らんとする十臓。しかし、かつて切り捨てたはずの妻との絆が己の外道を断ち切り、外道を失った彼は噴き上がる火柱に飲まれて消滅。
そして後に残った裏正も、丈瑠と仲間達の絆を見届けて安堵したかのように消えていった。
海外版
アメリカで製作されたアレンジ版・「パワーレンジャー・サムライ」ではデッカーという名前に(ギリシャ語で「十」の意味の「デカ」にかけたネーミングだろうか)。ウルトラマンとは関係ない。
元人間で怪人になった点や、レッドを狙う好敵手ポジションなのは同じだが、怪人になった経緯が「快楽のために人を斬り続けた」では問題だと見なされたのか、
「火事に巻き込まれて瀕死の重傷を負い、紆余曲折の末に記憶を失ってナイロック(≒外道衆)の怪人になった」
というものに。
また原作では(一応)妻帯者だった十臓だが、パワレンではなんとダユウ(≒薄皮太夫)とは人間時代に恋人だった間柄で、ダユウの三味線とデッカーのウラマサは人間時代に互いへ贈ったプレゼントということになっている。なおダユウの三味線は元々ギターだった。
ちなみにダユウがナイロック怪人になったのは、デッカーを助けようとして彼を怪人にしてしまった償いだとか。太夫が外道衆になったシーンはヘビー過ぎるので、同じ元人間の十臓≒デッカーに絡めて設定を変えるのが得策と判断されたのだろう。
余談
- 演じる唐橋充氏は『仮面ライダー555』にて海堂直也/スネークオルフェノク役で出演していた。そのためなのか、十臓が一時退場した回では「海堂町」の名前が出てきている。
- キャラクター的にはかつての特撮時代劇『快傑ライオン丸』に登場した、悪のヒーロータイガージョーに変身する虎錠之介のオマージュとも取れる。
- 「シンケンジャー」のチーフプロデューサーを務めたのは宇都宮孝明氏。当時はスーパー戦隊シリーズにおける素面タイプの敵幹部が女性というイメージで定着しがちである事に懐疑的である故か、女幹部である薄皮太夫を怪人タイプにして、逆に男性である十臓を素面タイプにしたらしい。
- この『素面タイプの敵幹部=男性』というパターンは、宇都宮氏がチーフプロデューサーを勤めた作品としては『海賊戦隊ゴーカイジャー』のバスコ・タ・ジョロキアや『烈車戦隊トッキュウジャー』の闇の皇帝ゼット、『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』のザミーゴ・デルマ、そして後日談に当たるVシネマ限定ではあるが『動物戦隊ジュウオウジャー』のポカネ・ダニーロに受け継がれている。
- その一方で「戦隊VSシリーズ」では過去の戦隊シリーズに登場した素面タイプの女幹部や劇中で人間体になったことがある怪人タイプの女幹部をゲストとして登場させる事がある。ただし、いずれも全員が改心済みで二度と地球の人間達に危害を加えないと決心した面々だったりする(その面々とは不死身の密使や当時は死亡状態だった女大臣、元々人畜無害な組織の一員であるくノ一、キープ・オン・スマイリングでたまに人間態になる戦騎である) 。
- 2010年代の最初に撃破された戦隊シリーズの幹部怪人となった。
- スーパー戦隊ヴィランズに参戦、復活…2099年4月1日上映予定?
- 彼は「普通」と評される源太の寿司を好んでいるが、これは十臓の生きていた江戸時代では江戸前寿司が庶民の食事とされていた時代(当時は屋台形式)である他に、現在ほど保存技術が確率されていなかった事も起因していると思われる。
- 現代で屋台の…それも新鮮な寿司を食えた事は彼にとってとても喜ばしい事だったのかもしれない。その証拠に第二十三幕では残さず食し、天幻寺で出会した源太に「お前の寿司、気に入った」と伝えていた。
- 幹部たちとのアヤカシ関係
- ドウコク→十臓の''外道''に共鳴するものがあったのか、当初は多少好意的だった。しかし刺客のウシロブシを差し置いて丈瑠とやり合った(共闘ではないので実質ウシロブシを妨害しただけ)かと思えば、その丈瑠がシタリに毒を盛られた際は手荒ながらも救助し、「志葉家が『封印の文字』を有している」という最重要事項すら「勝負の邪魔」という理由で他言せず……という相当な問題児ぶりから次第に疎むようになっていき、自ら制裁したのみならず薄皮太夫に暗殺を指示した事も。
- シタリ→信用こそしてないがどちらかといえば中立寄り
- 薄皮太夫→同じはぐれ外道ゆえに彼女なりに親近感を持っていたようで、距離は置きつつも密かに援助していた節がある
- アクマロ→十臓を利用していたつもりだったが土壇場で裏切られる羽目に
シタリに信用されてなかったり、しばしばドウコクの怒りを買ったりと太夫に比べると折り合いは悪かったと言えるが、元々一匹狼タイプなのでそれで問題なかったのだろう。
はぐれ外道ゆえに二の目を持たないことから巨大化することはなかったがスーパー戦隊レジェンドウォーズではキリサーク軍の手で巨大化を行っている。
関連タグ
侍戦隊シンケンジャー 外道衆
バスコ・タ・ジョロキア:『海賊戦隊ゴーカイジャー』における顔出し男性敵幹部のポジション。気ままな行動を取り続けているという点では十臓と共通する。
闇の皇帝ゼット:『烈車戦隊トッキュウジャー』における顔出し男性敵幹部。気ままな行動をとっているのは共通するが、十臓やバスコとは違って組織の首領でもある。なおこちらの演者も劇場版ゲストながら平成ライダー出演歴あり。
蛾眉雷蔵:『手裏剣戦隊ニンニンジャー』における敵幹部。剣豪で戦闘狂、戦隊レッドと戦うことに執着する点が十臓と共通する。また(声のみだが)演者が平成ライダーレギュラー歴ありという共通点も。
宮本武蔵、富加宮隼人:仮面ライダーシリーズにおける、演者が同じ剣豪のキャラクター
キール星人グランデ:十臓と同じく強敵との戦いを好むウルトラシリーズのライバルキャラ。上の2人と同じく、演者が共通している。
緋村剣心:峰部分の方が切れるようになった特殊な刀を使うキャラクター繋がりで、こちらは主人公。
火黒(結界師):元人間の武士&強者との戦いを好む戦闘狂である妖怪キャラ繋がり。こちらも刀が武器で、主人公に執着している。
ザンギル:14年後のウルトラマンにおいて唐橋氏が演じる侍モチーフの宇宙人。