概要
仕官せず、職を失っている状態の武士。【同義語】:牢人。以下で解説する。転じて、試験に落ち、次期試験準備中の受験生(浪人生)や、所属チームの無いアスリート(主に球技)も指す。
仕えていた主君が滅亡・取り潰されたり、あるいは何らかの理由でクビになったり、自ら出奔した武士が浪人である。つまり、失業中の武士を指す。主君を失っても武士としての身分まで失うわけではないので、江戸時代に認められていた苗字や帯刀の特権は引き続き持ち続けた。
戦国時代の大名は戦乱続きの世ということもあって慢性的に人手不足であり、浪人が再仕官する道のりは穏やかであった。しかし江戸時代になり平和な世が訪れると、浪人たちの前途は苦しいものになった(主君から暇を出された者も少なからずいたとされている)。
余程文武共に能力があるものでなければ浪人から藩に召し抱えられることはなく、その前途も多難であった。多くの浪人は手工業などで生計を立てており、学問に秀でた者は塾を開いて百姓・商人の子供達に読み書き算盤を教えていた。治安が悪化し商家が盗賊に襲われる事件が多発した時代には、腕に覚えのある浪人が用心棒として豪商に雇われる場合も多く、道場を開いて庶民に護身術を教える者もいた。前途のない身の上に嫌気が差した浪人の中には侍という身分を金で売ってしまう者も数多くいた。
食うに食われず追い詰められた浪人のなかには犯罪に手を染めたり、中には由比正雪のように幕府に対して反乱を企てるものもいた。その一方で武芸や芸術の才能を生かして成功した者もいた(宮本武蔵、近松門左衛門など)。
幕末になり幕府の力が衰えると、武士ではない身分の者(町人や百姓など)が勝手に苗字や帯刀を行い、浪人を名乗ることが行われるようになった。先述のように、身分を金で売った浪人から侍の身分をえた商人も多かった。
かの新選組を構成していた者たちも、その多くがそうした自称浪人だったとされている。
イメージ
時代劇等に出てくる浪人は月代をせず、顎髭を蓄える乱暴者という役柄で出ていることが多く、傘張りなどのアルバイトをしている描写が多い。
ちなみに海外では黒澤明の映画や「るろうに剣心」などの影響で「RONIN」の名前で結構な著名度がある。
主君や上下関係に取らわないで、自由に正義の剣を振るうという部分が外国人にも受け入れやすい為とされている。
現代の浪人
現代で「浪人」というと、歴史や時代劇の話題でもない限り、前述の通り「入学(あるいは採用)試験に落ちてしまい、次期試験の機会を待っている受験生」のことを指す。
なお、学業に関する「浪人」は正確には「過年度生」と呼称するが、あまり定着はしておらず、専ら「浪人」で通じるケースが大半である。
その他、学業ではなく就職試験の機会を待つ「就職浪人」や、司法試験関係で浪人中の「司法浪人」などが存在する。
地方では高校自体の選択肢が少ないため、都市部と比べると高校受験浪人の割合が比較的高い。
一昔前の漫画には「主人公の隣近所に住む浪人生」(苅野勉三など)とか「そもそも主人公自身が浪人生」というキャラクターがよく登場したものだが、近年の作品にはほとんど登場しなくなっている(ニートやひきこもりに取って代わられたという見方もできる。但し、近年の作品でも漫画『スロウスタート』の一之瀬花名のように、とある事情で浪人経験を持っているキャラが登場している作品は存在している)。
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傘貼りが似合いそうな浪人。 |
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