概要
1605年?ー1651年9月10日
時の将軍徳川家光の死の直後に起きた、浪人たちによる江戸幕府転覆計画「慶安の変」の首謀者とされている。
しかしながらこの当時の社会的大事件に至るまでの出生や経歴には不明確な点が多い。
一説では現在の静岡県静岡市清水区由比地区の染物屋の息子として誕生したと言い伝えられている。
名字についても諸説があり、彼について記されている文献には由井、油井、遊井、湯井、油比などの表記も見受けられる。
慶安の変
慶安4年、正雪は幕府政策への批判と浪人の救済を掲げ、宝蔵院流の槍術家丸橋忠弥、金井半兵衛、熊谷直義など浪人を集めて幕府転覆を計画した。当時の幕府は武力を背景にした強い大名統制体制をとり(武断政治)、多くの大名が過失や後継者不在を理由に改易や減封となったため、浪人が多く発生して社会不安の原因となっていた。慶安の変はまさにそうした事象を背景に、困窮していた浪人たちの現状への不満が噴出したものである。
だが奥村八左衛門が密告したことにより計画は決起前にバレてしまう。7月23日に忠弥が江戸で逮捕されるが、正雪はその前日に江戸から出発し駿府へと移動していた。正雪は計画が幕府にバレていることを全く知らないままであったが、到着した次の日の朝である26日に駿府奉行所によって包囲されてしまう。観念した正雪は拠点にて自決、30日に正雪の死を知った金井も大坂にて自害し果てる。逮捕された忠弥は8月10日に磔刑に処され、慶安の変はここに潰えた。
事件の影響
この事件の1年後、慶安の変と似たような事件・承応の変(事件自体が起きた当時は慶安だったが、決着がついたのが承応だったのでこう呼ばれる)が発生する。この2つの事件を教訓に幕府はそれまでの武断政治を見直し、文治政治へと移行するようになった。計画自体は失敗したものの、世の中は正雪が思い描いた方向へと動き始めたのだった。
関連項目
丸橋忠弥:共同作業者のひとり。真偽不明ではあるが、長曾我部盛親の忘れ形見といわれており、慶安の変に参加した理由は長曾我部を滅ぼした幕府への復讐とする説もある。
柳生十兵衛:創作物における相対する宿敵としてよく描かれる。
徳川頼宣-乱の後ろ盾として幕府に疑われ、江戸に十年間留め置かれた。
由比正雪が登場する作品
- 『伊賀の影丸』(横山光輝作の漫画)・・・作中では慶安の変では死なず、再起を図る。実は忍者。
- 『時の行者』(横山光輝作の漫画)・・・『伊賀の影丸』の正雪とは別キャラクター。金縛りの術の使い手。
- 『槍の忠弥』(池波正太郎作の短編小説)
- 『江戸を斬る 梓右近隠密帳』(TBSの時代劇)
- 『柳生十兵衛七番勝負』シリーズ(NHKの時代劇)…村上弘明演じる十兵衛の宿敵。和泉元彌が演じた。作中で起きた各事件の黒幕の参謀を務める。第2作『島原の乱』までは『由比富士太郎』を名乗った。第3作『最後の闘い』で由比の紺屋の倅であることと彼の野望の最終点が『鎌倉時代の北条氏のように執権になること』(かつて和泉が「北条時宗」で主人公・北条時宗を演じたことのオマージュ)であることが明らかとなっている。最終話で慶安の変を起こすが、十兵衛によって追い詰められてしまう。最期は十兵衛の介錯のもと、「武士として死なせてくれる」ことに感謝しながら切腹し果てる。なお、このシーンは最終話の冒頭である。
- 『信長の野望』シリーズ(コーエーテクモ)…天翔記パワーアップキットで登場したのみ。
- 『蛮勇引力』(山口貴由作の漫画)・・・当人では無いが、主人公の名前がそのまま由比正雪であり、他の登場人物達も慶安の変に関連した人物の名前が当てられている。
- 『Fate/Samurai Remnant』(Fateシリーズ)…詳細はこちらを参照。