概要
参謀(英:Staff officer)とは、軍隊などの組織における役職のひとつ。
「謀(はかりごと)に参ずる」という語意のとおり、軍隊をはじめとする組織において、指揮官の意思決定を補佐する職である。その仕事上の役割(司令部で指揮官とともに勤務にあたること)から、「幕僚」という呼び方も用いられている。
参謀の使命は、軍隊などの組織が作戦(課題)に直面した際に、自身もしくは自身が率いる部門の専門的な知見をもとにして、作戦立案などの段階において指揮官に対して提言や進言を行い、結果として指揮官の意思決定と組織の円滑な作戦遂行に貢献することである。このため、指揮官の下に配される参謀は、人事、情報収集、作戦立案、兵站(へいたん)など、いくつかの専門分野ごとに分かれており、それぞれの分野をつかさどる参謀が自らもしくは自身が率いる部門の力によって、指揮官の意思決定に必要な専門的要素を収集・精製するのである。
また、軍隊における最高位の役職が「参謀総長」や「幕僚長」などと呼ばれているのも、彼らが出身の陸海空軍それぞれの全部隊を掌握しているという事実とともに、彼ら自身が国家元首や大臣の下について国防上の意見を申し立てる立ち位置にあることに由来しているためである。
余談だが、「オタクは特定の分野(サブカルチャーなど)に関して深い情報と知識を持っていることから、自身が所属するコミュニティ(クラスタ)のNo.2、いわゆる”参謀”になりたいと思っている」という風潮もあるものの、実際には情報や知識だけを持っていても参謀本来の役目は果たせないというのが通説である。参謀は、組織が直面している任務の要望、そしてそれに臨む指揮官の企図をとらえたうえでこれらに応えることを本務とするため、これらを無視した「一方的な私見の押し通し」は組織の足並みを乱すのが常である。くれぐれも、参謀と「コメンテーター」「ご意見番」を混同しないようにしよう。
日本軍における悪例
なお、戦後の日本では、帝国陸海軍時代の最末期の暴走からか、参謀は軍国主義の権化と見なされ、「とかく有能、あるいは意欲のある指揮官の邪魔をする、尊大で鼻持ちならない中間管理職の輩」と見なされているが、実際には、さすがの日本軍においても、戦後日本の戦争映画のように「躊躇なく上官を陥れ、自分の思い通りにならないと、周囲の人間にヒステリックにわめき散らす子供のような精神状態の者」はごく少数に過ぎなかった(ただし、本当にそうだった例として辻政信や、彼とほぼ同類の神重徳が該当する)。とはいえ、太平洋戦争当時の日本軍参謀は源田実がそうであったように、ある部分で有能でも、大局的には影響を及ぼせなかったので、陸の辻政信、海の神重徳の越権行為がとかく悪目立ちした面は否めない。
フィクションでの参謀
なお、日本軍の事例が大いに誤解を招いているが、彼らは参謀の本来の職責の範囲を逸脱した悪例である。フィクションでいえば、『銀河英雄伝説』でのヤン・ウェンリーの幕僚時代、『映画ドラえもん』のドラコルルがそうであるように、指揮官に進言をし、彼らを上手く動かし、彼らに手柄を立てさせる立ち位置こそが本来の想定任務なのである。
また、戦後、日本軍を批判的に論じるにあたって言われだした常に安全なところから、兵隊に指示を飛ばすだけの立場でもない。例えば、『ベルサイユのばら』のオスカルの恋人であり、副官であったアンドレ・グランディエはオスカルを凶弾からかばって戦死したし、『銀河英雄伝説』のジークフリード・キルヒアイスもラインハルト・フォン・ローエングラムをかばい、身代わりに死を遂げているのだ。
ちなみに、『マクロスF』の名言「ご存知、ないのですか!?」の発言者であるゼントラーディ人の参謀も参謀のひとりである。
つまり、参謀とは責任を負わされる危険もあり、戦場での死亡率も高いが、その代わりに自身が支えた将校が出世すれば、棚からぼた餅で自分も出世できる見込みがあるポジションというのが正確なところなのだ。
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