徳間ガメラ
とくまがめら
「最後の希望ガメラ、時のゆりかごに託す。」
金子修介・伊藤和典・樋口真嗣のタッグにより製作された、「平成3部作」に登場する主役怪獣。
それまでの昭和シリーズのガメラとは設定が大きく異なる生物である。
俗に「平成ガメラ」として広く認知されているのはこの個体。なお、本来なら正式呼称は「徳間大映ガメラ」になるのだが、長すぎるので割愛。また、後の作品群に登場した亜種たちとは、どちらも平成の世に産み出されたので、便宜上「徳間ガメラ」としている。
本シリーズにおいては古代アトランティス文明によって、「地球生命の守護者」として作り上げられた生体兵器という設定で、「マナ」と呼ばれる地球上に存在する生体エネルギーを集めて作られた人工生命体となっている。
先にアトランティスの高度な遺伝子工学によって生体兵器として開発されたギャオスに対抗するべく生み出されたものの、ガメラが生まれた頃にはアトランティス文明はギャオスに滅ぼされており、生き残った者達はやがて復活するギャオスの脅威から世界を守る最後の希望としてガメラを後世に託したという。
後にアトランティスが残したガメラの伝承はアジアに伝わり、四神の一柱である玄武的な存在となったと考察する者たちも現れた。
『1』の時点で、昭和ガメラと関連性があるエスキモー文化と古代中国文化が似ている事から、ガメラの甲羅に中国文化や亀甲墓やアンキロサウルスのイメージを、ギャオスには西洋のドラゴンや春秋戦国時代の中国龍のイメージが使われた。
アトランティスの滅亡から1万年以上もの間、手足を引っ込めた状態で環礁となって休眠、太平洋上で漂流していたが、同じくアトランティスによって生み出されたギャオスの覚醒に呼応して活動を再開(なお、漂流中も多少の意識はあった模様)。
ギャオス、レギオン、イリスなどの怪獣と激闘を繰り広げ、最後は体を抉られ、右手を切り落とされるなどといった満身創痍の状態となりながらも、総力戦を決定した自衛隊と共に、1万羽以上のギャオスハイパーの大群に立ち向かっていったところで物語は終結した(『3』が目標として定められた興行成績10億円を達成できず、結局平成ガメラはここで打ち切られてしまった)。
身長 | 80m |
---|---|
全高 | 不明(京都駅ビル構内に侵入できる程度) |
体長 | 不明 |
甲羅長径 | 60m |
甲羅短径 | 40m |
重量 | 120t |
年齢 | 約1億5千万歳 |
視力 | 30.0 |
飛行速度 | マッハ3.5(宇宙空間では亜光速) |
水中潜航速度 | 180ノット |
歩幅 | 不明 |
出身地 | 古代アトランティス大陸 |
能力 | -
|
契約者 |
半永久的に稼動可能な生物兵器であり、短期間の間に自身の体細胞や肉体構成を進化させることが可能なため、より戦闘的な容姿・能力へと変容を繰り返している。
最初に現れた時は濃い緑の体色をした全体的に丸みを帯びた体および顔つきが特徴だったが、レギオン襲来時には体色の黒みが増し、顔つきもかつての面影を残しつつもどこか凛々しいものへと変化している。
しかし、次に渋谷に出現した時には体全体が異様にごつくさらに武骨なフォルムに変化しており、さらこれまで曲線的だった甲羅も縁までエッジが突き出したような極めて禍々しい形状になっている。特に頭部は首が長くなったものの逆に頭自体は小さくなり、頭頂部には鶏冠のような突起が生えた鮫か猛禽を彷彿とさせる面構えに、白目がなくなりほとんど濃緑色に染まった眼という本当に同じ個体なのかと疑いたくなるほどの変貌を遂げている。
公式かどうかは不明だが、『2』公開時に発売された一部の解説本には、「これがガメラ本来の姿」と書いてあり、確かに見た目の印象も『2』以前と『3』とで異なる印象を受ける(ただし、制作側からしたら『3』の形態が本来の姿)。
あと、やっぱり軽い。
その軽さは昭和ガメラに輪をかけたもので、計算上は体長を2mまで縮めると重さがわずか1.8㎏と発泡スチロールよりも低密度になっている。
身体機構
基本的には昭和ガメラと武器は同じで、怪力や知能、そして何より強靭な生命力や再生力が特徴。
エネルギーとなっているのは体に満ちる「マナ」の他、昭和と同様に熱や電気などもエネルギー源とする。
一作目ではコンビナートの火災で生じた炎を直接吸収するという描写がある。
莫大なエネルギーを体内で濃縮し、超放電を伴った巨大なプラズマ体にして吐き出すプラズマ火球が代表的な武器で、鉄など本来は燃焼が不可能な物質でさえ一気に燃やせる威力を誇る。
火球は連射が可能であり、度々火球を3連射する芸当を見せている(これは特技監督の名を取って「樋口撃ち」と呼ばれる)。が、これはほとんど敵に避けられていたり防がれたりしている。
- 樋口撃ちを最初に披露した一作目の対ギャオス戦では東京で飛び去るギャオスとの空中戦で使用。ただギャオスになんなく回避されてしまい、逆に射線上にあった建物を爆砕してしまった。
- 次に樋口撃ちを披露した二作目の対レギオン戦では着地後にスライディングしながら行ったが、今度はレギオンの干渉波クローによって中和・無効化されてしまった。
- 最後に披露した三作目では唯一複数回の樋口撃ちを行っている。渋谷での対ギャオスハイパー戦では地上から上空のギャオスハイパーに対して2回行い、1回目は回避されるが2回目で3発すべてを命中させてこれを粉砕した。しかし京都での対イリス戦では、京都に降り立ったイリスに対し上空から急降下しながら撃ち下ろす形で行ったが、結局イリスの触手によって着弾前に弾かれてしまった。双方の戦いではいずれも、外れた火球は市街地に着弾して大きな被害を与えている。
喉元にある「プラズマ・チャンバー」でエネルギーをチャージする事により、通常よりも遥かに威力の高い火球「ハイ・プラズマ」を放つことが可能。3部作でも一発ずつ使用しており、一作目では西部劇よろしくギャオスと繰り広げた撃ち合い、二作目では札幌で高濃度の酸素を吸い込んでからレギオン草体に向けた手始めの一発、そして三作目では渋谷に墜落した満身創痍のギャオスハイパーへのとどめとして使われている。
形態変化を経るごとにプラズマ火球の威力も上昇し続けており、3作目のそれは自身の強靭な右腕を吹き飛ばし、渋谷および京都戦では一発一発が約1kmの街並みを火の海に変える巨大な爆発を起こしている。
その他、地球上のマナの殆どを自らの体に取り込み、腹部から巨大な熱線として打ち出すウルティメイト・プラズマや、欠損した自分の腕を相手のプラズマ火球で補い、巨大なエネルギーの拳にして相手に突き刺すバニシング・フィストなど、多彩な技を持つ。
その他、採用はされなかったがジェットの出力を極限にまで高めて武器とする「バーナー」や、ミサイルの如く目標を自動追尾する火球「ホーミング・プラズマ」等の設定もある。
(バーナーに近いイメージ)
肘部にはエルボークローと呼ばれる鋭利な骨の突起をもち、格闘時に強襲用に使って大きなダメージを与えることが可能。一作目では内蔵されていたが、二作目以降は露出固定式となる。なお、二作目ではクローが二股になっている形状だったが、三作目では直線的な形状で、しかも常に前方を向いており、あたかも6本目の爪のように見えるものとなっている。
また、後ろ足の後部にも同様の「カーフ・クロー」が生えている。
林家しん平師匠による自主制作版『ガメラ4 真実』では、エルボークローを基点としたビームソード状の武器を展開可能している。
回転飛行と、足だけを引っ込めての飛行が可能なのも昭和ガメラと同様だが、2作目からは、腕部がウミガメのヒレのようなブレード状に変形し、まるで翼のような働きをして高い機動力を持つようになる。3作目では甲羅や腹部の装甲の一部、尻尾も可変し、航空機のフィンの如く持ち上がったり可動する。
また、3作目での描写から甲羅の内部に空気を溜めて調節し、飛行に利用している可能性がある。戦闘機以上の高速性とヘリコプター以上の高機動性を両立している。
(片腕を失った後、二足ジェット飛行ができるかは不明である)
生命力および再生力にも優れており、たとえ腹から背中まで貫くダメージを受けても戦闘続行が可能で、たとえ体全体が焼き尽くされて仮死状態になったとしても、炎熱エネルギーを取り込むことで再生を果たしている。
腹部や甲羅に覆われていない部分の防御力はそれほど高くないのか、ギャオスの超音波メス、マザーレギオンのサイズレッグ、イリスのスピア・アブソーバーであちこちを切り裂かれたり貫かれたりといったシーンが目立つ。
また、自衛隊の攻撃を受けて悲鳴を上げ、墜落や転倒をするなどの場面も見受けられた。
それでもある程度は素の防御力も向上しているようで、ギャオスハイパーの超音波メスを手で防いだ時には光線のかなりの部分が反射しており、ガメラの手はほとんど傷ついていないレベルにまで達している。
また、具体的な方法は不明だが地中を掘り進むことも可能であり、第一作では東京タワーに巣食ったギャオスに奇襲を仕掛けるためにこの方法で迎撃をやり過ごしつつ接近している(比較的浅いところを進んでいたのか、この時進行にともなって道路の陥没やマンホールの蓋が吹き飛んだり、地下の基礎を破壊されたビルが倒壊するなどの影響をもたらしている)。
ちなみに三作目では心肺蘇生措置を講じても息を吹き返さなかった人間が息を吹き返した際に、まるでガメラが何らかの方法で蘇生させたことを暗に示唆する場面があるが、詳細は不明となっている。
人間との関係
人類が操る生体兵器として開発されたためか、漂流中に体表を覆っていた岩塊の中にはガメラの素性が端的に書かれた石碑とガメラとの交信を可能にするオリハルコン製の曲玉が多数埋め込まれており、その曲玉に選ばれた者はガメラと心を通わせることが出来るようになり、ある程度ガメラに指示を出すことも可能になる。
反面、選ばれし者は巫女のような役割を与えられ、ガメラを何時も思うようになり、ガメラが戦う際は自分の身も顧みずその側に駆けつけてしまう。曲玉で繋がっている間はガメラが受けたダメージや苦痛も巫女に伝わってしまう。
ガメラ自身は地球生命全体の守護者としての立場が強く、特に人間に贔屓した味方というわけではなく、むしろ人類が地球環境を脅かす存在となるのであれば人間とも容赦なく敵対する可能性が示唆されている。
直接人類を襲うことは無くとも、最初に上陸した福岡ではギャオスがいる福岡ドームに向かう際に街を蹂躙し、後の渋谷ではギャオスとの戦闘の余波で1万人以上の人間を巻き添えにするなど、人類に対して幾度も多大な被害を及ぼしている。
その一方で、劇中では意図的か偶然かギャオスやレギオンの攻撃から守ろうとするような描写も散見されており、作品が進むにつれて薄れてはいったものの人間との絆を持ち続け、それを完全に断ち切ることは出来なかったとも言われている。
この人間との絆がガメラ自身の選択なのか、ガメラを作った存在の意思に沿ったものなのかは不明。
人間側からの対応はかなり流動的であり、当初は福岡で出した被害からギャオス以上の脅威として抹殺対象となっており、ギャオスよりも優先的に攻撃を加えられた。二作目ではそれ以上の脅威たるレギオンの存在もあってか特に人類と対立する事態はなく、ガメラとレギオンの最終決戦では自衛隊が現場判断でガメラの支援を決定しており、この時に陸上自衛隊が見せた79式対舟艇対戦車誘導弾による支援射撃シーンは必見。しかし、三作目では上記の渋谷災害の件が重く受け止められ、再び攻撃対象に指定されてしまうことになった。
これによってイリスの追撃中に航空自衛隊のペトリオットで攻撃されたことで大きく速力を落としてしまい、イリスを取り逃がして京都飛来を許してしまう。その後、三作目ラストで大量のギャオスハイパー飛来が判明した際に攻撃対象から再度外されている。
一方で子供からは非常に好かれており、仙台で草体の爆発に巻き込まれて生死不明の沈黙状態になった際には多くの子供たちがガメラの様子を見に来ていた。
- 「手足を引っ込めて飛ぶ亀の怪獣」というコンセプトに、特撮担当の樋口は「どう頑張ってもギャグにしかならない」と一時は絶望したものの、努めて生物的なデザインを取り入れてそれを防ぐことに成功している。
- 週刊SPA!1999年3月17日号に掲載されたインタビューにて、金子修介は「『3』のラスト後のギャオスの大群にもガメラは勝利する」と述べている。
- コンセプト段階では、プラズマ火球の発射時に首が発光する(後のシン・ゴジラに通じる)、「歩くと脚から機械音がする」などの「生体ロボット」的なアイディアがあった。
- 四神の他の該当者は、現在は邪神イリスしか判明していない(イリスは姿を可変させるため、1999年の姿と異なり、朱雀に比喩された過去の姿がよりギャオスに近い姿をしていた可能性がある)。
- ガメラの設定は、金子と伊藤のコンビ結成が叶わなかった作品に登場する怪獣ナギラに似ている。
小さき勇者たち:徳間ガメラの最初のプロットを再利用している。徳間ガメラの「古代文明」「ガメラの墓場と海底遺跡」などのアイディアも「小中ガメラ」に由来し、後に『デジモンテイマーズ』や『ウルトラマンティガ』にも応用された。
宇宙怪獣ガメラ:とある漫画作品では、アトランティスの技術で蘇生された昭和ガメラが平成ガメラと同じ姿に転生して歴史改変のために過去に送られたとされている。
大魔神:平成ガメラシリーズの制作時期に、藤谷文子の父であるスティーブン・セガールを主役にしたリブートが計画され、実現こそしなかったが小説が発売されている。その後、『妖怪大戦争ガーディアンズ』にて大魔神が銀幕に復活したが、外伝作品である『平安百鬼譚』では、ガメラに該当する「玄武」が登場し、『ガメラ3』を意識してか京都の守護者として描かれている。
鯨神:『ガメラ3』の最終稿では、オマージュとしてガメラがセミクジラの親子と「ガメラの墓場」および「古代遺跡」の付近で接近遭遇する場面が描かれる予定だった。この「墓場」と「遺跡」も原案は「小中ガメラ」に由来している。
ウルトラマンシリーズ、仮面ライダーシリーズ:『平成ガメラパーフェクション』に掲載された長谷川圭一氏へのインタビューによれば、『ガメラ大怪獣空中決戦』以降の数多くの特撮作品が影響を受けたとされており、「平成ガメラが起源の撮影法」なども確立された。それらの影響を最も大きく受けたのが、平成ガメラ以降のウルトラマンシリーズと仮面ライダーシリーズだとされている。
ブルース・リー:大橋明はガメラの演技にブルース・リーのイメージを投影しており、11月27日は両者の「誕生日」である(参照)。
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