曖昧さ回避
もしかして→邪神エリス
DATA
別名 |
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概要
全体として人型に非常に近い形をした、異色の怪獣である。
超古代文明によって作り出された怪獣の一種だが、何らかの経緯で奈良県・南明日香村にて、「柳星張」という名で呼ばれ、遥かな昔から卵の状態で洞窟の中の祠に封印されていた。「柳星張」とは古代中国で使われていた二十八宿においての「柳宿・星宿・張宿」を縮めたものと解釈されており、南(うみへび座の方角)を意味する言葉であろうとされていた。
その実態はギャオスの変異体・亜種であるが、頭部にわずかな面影があるくらいで、他は似ても似つかない成長を遂げる。外観は相違点が多いものの、卵の粘液から採取された遺伝子はギャオスのそれと同一である。また、イリス自身の遺伝子も、ギャオスのそれと異なるが似ており、ギャオスから変異、もしくは進化した存在である事を予測させている。
劇中に登場するヒロインである「比良坂綾奈」は、「あの子も仲間をガメラに殺された」と述べている。この「仲間」をギャオスと見做す事もできるし、生体兵器という背景からも、イリスという「種族」が存在していた可能性もあるのかもしれない。実際、漫画『大怪獣激闘 ガメラvsバルゴン』では、過去にイリスの別個体が存在し、バルゴンやジャイガーやジグラなどと戦っていたことが示唆されている。
「イリス」という名前は、ギリシャ語の虹を意味する単語(同時にギリシャ神話の虹の女神)からで、比良坂綾奈がかつて飼っていたが、両親と共に亡くなってしまった猫の名前に由来する。綾奈によって名付けられたものであるため、創造した古代文明で何と呼ばれていたのかは不明(ガメラやギャオスは解読された古代文明での名称からである)。
外見
幼体
幼体はカタツムリやタコやフジツボをも思わせる奇怪な姿をしているが、同時につぶらな黒い瞳の持ち主であり、どこかファンシーでかわいらしい見た目をしている。
これにも実は理由があり、
「最初から人間のメスに母性本能を起こさせて、世話させる&接近するためのアピール」
とされている。
その根拠として、上記のつぶらな瞳は実は目としての機能を持たない擬態であり、頭部中央に皮膜で隠された光る単眼が存在していることが分かるシーンがある。
成長体
綾奈と交配して遺伝子情報を得るための形態。幼体とさほど変わらないが、外殻が開いたり、触手で立ち上がったりしている。
その後、綾奈を取り込んだ際には繭状になっている。
成体
綾奈や捕食したキャンパー等から得た人間の生体情報に沿って変化・急成長した姿。それゆえに、人型をしている。しかし、鹿や他の動物も捕食していたので、それらの影響も全くないとは言い切れない。
両肩から2本ずつ、計4本生えている伸縮自在の触手、両腕(っぽく見える触手)には槍状の鋭利な手甲、部分的に発光する胴体、背中にはガメラの甲羅によく似た外殻に加えて4枚の翼状の突起、頭部で光る単眼などが特徴。
なお、この姿はあくまでも「人間寄りに変化した」というだけであり、「完全体ではない」。捕食の対象が異なれば、劇中に登場したものとは全く別の進化を遂げ得たと考えられる。
また、封印岩に描かれていた「鳥」の様な姿との乖離が激しいが、この理由は不明。
- ファンの界隈では、「取り込んだ生物の遺伝子情報によって姿を変化させる」ので、この姿が伝わった過去の時点では、つまり作中に登場したイリスの先祖は「よりギャオスに近い鳥の様な姿」をしていたのではないか、と推測されることが少なくない。
能力
あらゆる生物の遺伝子を吸収して自らに組み込み、自在に進化していく能力を持つ。つまり、作中でヒト型に成長したのは比良坂綾奈との接触が故であり、他の生物との接触を果たしていれば全く別の姿になったことも考えられる。
ガメラと同様に、人間と交信する事で力を増幅する性質から、勾玉に似た交信機のような物質を持っている。しかし、ガメラと違ってイリスは、対象となる人間と生態融合を遂げることでその力を最大限に発揮する。
全身の発光体も内部には触手があり外部へと展開できる。胸部の発光器官は当初の設定では獲物に直接精神攻撃をする器官とされていた。
手甲と化した触手は槍のように敵に突き刺す強力な武器になり、その威力は頑丈なガメラの甲羅を刺し貫くほど。また、パワーもガメラに劣らず、劇中ではガメラが押し負けるシーンが目立った。
触手は最大2km近くまで伸長可能で、ガメラのプラズマ火球をも払いのけるほどの強靭さと器用さを持つ。また、触手の先端からはギャオスのものより遥かに強力な超音波メスを放つ。
そのほか、ガメラの血液を取り入れた際には「オーバーブースト・プラズマ」という疑似プラズマ火球も取得していた。この際、ガメラの右腕がわずか数秒で痩せ細りはじめていることから、その気になれば(動物や人間を襲ったのと同様に)敵怪獣の体液を搾り取って倒すことも可能だと思われる。
背中から「生体エネルギー」という謎の媒体(前作で語られたマナに近いもの?)をジェット噴射することによって飛行・加速し、触手が変形した皮膜のような翼で制御することによって、マッハ9という凄まじい飛行速度と、戦闘機F-15Jを凌駕する機動性を発揮する。
泳いでいるかのような飛行時の姿は「美しい」の一言に尽きる。劇中では、月夜の雲上というシチュエーションも相俟って、禍々しい性質とは裏腹に優雅ささえ感じさせる姿を見せる。
また、注意して見ると飛行中では脚部も変形している。
消化器官に当たるものが確認できず、頭部にも口は無い。その代わりに、触手と手甲の先端部に吸引孔があり、触手などを対象に打ち込む事で体液を吸い取って栄養を摂取する(摂食と同時に、対象の遺伝子を吸収する)。幼体時はこれでペットフードの缶詰の中身だけを吸入した。
作中では人間との生体融合を遂げる前に失敗し、ガメラ化をも果たせずに死亡したため、完全体としての戦闘力は未知数のままである。
また、未使用に終わったが、昭和ギャオスが持っていた「消火霧」も披露する案があった。
ストーリー
南明日香村に、「大いなる災いをもたらす忌むべきもの」としてその存在が伝承されており、卵の状態で、洞穴の奥深くの祠に封印され続けていた。
柳星張の監視役を担う守部家の刀自によると、人智の及ばぬ何らかの力(恐らくはマナを操る古代文明の技術)で封じられていたらしく、「江戸時代に力自慢の関取が封印をしていた亀型の石(封印岩)を動かそうと試みたが、ぴくりとも動かなかった」という。そして、「もし少しでも動いてしまえば、世界が滅ぶことになる」とも。
前作に登場した宇宙怪獣レギオン撃滅のためにガメラが地球上のマナを大量消費したことで、封印が綻びていたところへ、ガメラとギャオスの戦いによって両親を殺された比良坂綾奈が偶然に祠を訪れ、彼女によって柳星張の封印は解かれてしまう。亀型の石を見てガメラを連想した綾奈が触れると、これまでびくともしなかったはずの石が容易に動いた事から、彼女がガメラへの憎悪から「選ばれた」事が窺える。石の下には卵型の物体があり、これが柳星張であった。
卵から孵化した直後の柳星張に、綾奈が両親と共に喪った愛猫の名を取り、「イリス」と名付ける。
ガメラへの憎悪に燃え、周囲から孤立する綾奈の心に付け込み、自らを保護させて成長して行く。綾奈は「この子もガメラに仲間を殺された」と言っていたが、イリスにとっての彼女は道具でしかなかった。
自身を倒そうと行動を開始したガメラを超える能力を手に入れるため、綾奈の命と引き換えに無数のギャオス幼少体を産ませ、これにより人類を滅亡させようと、綾奈との融合を目論む。
しかし一度目の融合は守部家の長男・龍成によって阻止された。目的のためだけに見境なく振る舞う悪魔の様な所業は、タイトルにも「邪神」と冠されて然るべきもの。
綾奈との融合に失敗したイリスは手段を変更、彼女を引き取っていた親戚たちを含む南明日香村の住民27名を捕食、栄養分と遺伝子を吸収し急激に成体へと成長する。
- 一見すると、南明日香村の住民は全滅したと思われがちだが、作中で村に駆け付けた警官の無線での「村の半分ほどやられた」という発言から判断すると、最大で約半数の生存者がいる事が判明しており、実際に未公開シーンでは守部龍成の妹の美雪と祖母は生存しており、警官と応対しているシーンが存在している。
その後は、南明日香村付近の山中やキャンプ場にいた動物や人間を捕食していた。出動してきた自衛隊の小隊を山中で遁滅させ、綾奈の身柄が京都に移されたことを察知して飛び立つ。
紀伊半島上空で航空自衛隊のF-15J、次いで追跡してきたガメラとの壮絶な空中戦を展開。ガメラと一進一退の攻防を繰り広げるが、自衛隊が発射したペトリオット2発がガメラに命中し、その隙を突いてイリスは戦闘領域を離脱してガメラを引き離した。
やがて京都市内へと降下し、綾奈を求めて市内を進み始めた。
しかし、そこへ飛来したガメラの3連射のプラズマ火球を弾き飛ばしたことで、京都市全域が炎上してしまう。
そして、市内中心部でガメラと激しい肉弾戦を展開するが、憎悪に燃えながらその戦いを見つめる綾奈との交信によってか、凄まじい戦闘力でガメラを圧倒し、ついにはその腹部を手甲で貫いて瀕死に追い込む。
そのまま京都駅内部で再度、綾奈との融合を試みるが、彼女の身を案じる龍成の介入によって綾奈が正気を取り戻す。それでもなお綾奈との融合を図って龍成を触手で吹き飛ばし、綾奈を腹部に取り込み融合しようとするが、綾奈の悲鳴に呼応するかのように立ち上がったガメラに腹部を抉られて彼女を奪還され、融合と完全体への進化は遂に失敗。
京都駅構内で屋内戦へと突入したイリスは、ガメラの右手を潰し、その遺伝子情報からプラズマ火球をも自らのものにする。とうとうガメラに止めを刺すかと思われたが、右腕を犠牲にして火球を受け止めるというガメラ渾身の一撃である「バニシング・フィスト」を綾奈を救出する際に抉られた腹部に叩き込まれ、内部から爆発四散してしまった。
死後、頭部や触手の残骸が残ったが、それらもガメラに踏み潰されている。
エピソード
- 『平成ガメラパーフェクション』に掲載された最終稿では、昭和ギャオスの能力であった「消火液」を散布する、ガメラの「ホーミング・プラズマ」を逆にコントロールする、風の渦を作る、海水を念力で自在に操り、様々な武器や手段として使う、瞬間移動の様に消える、遠隔からガメラの肉を吹き飛ばす、念力を持つ、詳細不明の必殺技を持つ、海馬体に快感と不快感を与えることで人間やギャオスを支配・隷属させる、ギャオスを進化させて一斉に覚醒させてコントロールしたのはイリスである、イリスは自分に隷属される人間を支配して人間の軍団を作り上げ、意図に従わない人間と戦争を起こさせる、「リセット」が済んで荒廃した世界において、イリスが残った人々を導き救う、などが記載されている。
- ガメラとイリスは元は一つという案もあり、綾奈もイリスの危険性に途中から気付いていたが「リンク」を遮断できず、浅黄と綾奈が協力して光の粒子から「2つの勾玉」を作り出してイリスの撃破に貢献するという案もあった。
- 初期案では、ギャオス戦でのアイディアでもあった、最後はガメラがイリスを首を絞めるか嚙み殺す予定だったらしい。しかし、それは流石に(スタッフ的にも)あからさまに大人の事情すぎるので変更になったとか。要は散々今まで喰い散らかしてきて最後に喰われるというイリスの因果を、当初サブテーマとしてあった恋愛論と絡める事で興味深い繋がり方になる予定だったらしい。
- 『平成ガメラパーフェクション』によれば、イリスのモチーフにはバイラス、クトゥルフ神話のキャラクター、『マジック・ザ・ギャザリング』の「またたくスピリット」がある他、ガイガンやスイスのデザイナー、ギーガーなどがデザインした生命体などの超獣や、仏像やバフォメット、更に前述のギーガーのデザインによるゼノモーフなどもあるとされる。
- 先述した通りイリスは均整の取れた長身の人型体型なのだが、実際の撮影では胴長短足な体型の着ぐるみが用いられた。また、高下駄のような形状をした足ではボリュームある上半身や触手を支えながら歩くことすらままならないため、撮影では足元を写さないようにし、スーツアクターの大橋明氏はゴム長靴を履いて演じている。
- 事実、劇中でイリスの全身が映し出されたシーンはそのほとんどがCGであり、着ぐるみによる全身シーンは可能な限り排されている。
- 造形を担当した品田冬樹氏曰くイリスは「シリーズ唯一の超獣」という見解を述べており、「むしろイリスから突然変異で変化したのがギャオスだと考えている」とイベントにてコメントしている。また、イリスのデザイン画などの当時の資料によれば、人やギャオス、海洋生物の他にも、クトゥルフ神話の邪神の一柱であるクトゥルフもモチーフに取り入れられていることが明言されており、イリスの持つ邪神の異名は其処から来たのではとも言える。
余談
- 柳星張の名が南を表すように南方を守護する幻獣・朱雀に対応しており、北方を守護する玄武に対応するガメラとは対になる関係ではないかと劇中で推測されている。ただし本来朱雀は炎属性、玄武は水属性であり、ガメラ本来の設定と、後付け設定との兼ね合いで、属性に関しては全く考慮されていない。意図的なものもあるのではないかとする意見もあるほか、この矛盾を根拠に、イリスの設定にこの朱雀の要素を組み込んだうえで考察すること自体が無意味なものであるとする意見(超古代文明の怪獣の伝承を、封印に携わる人間が後付けで四聖獣の朱雀と玄武とに結びつけたものであろう、といったもの)もあるが、果たして…?
- 『ガメラ2000』には、ヒト型のギャオスや触手を持つギャオスなど、まるでイリスを先取りした様なギャオスの亜種が登場した。
- 名前の元ネタであるギリシャ神話の虹の女神イリスも、怪鳥ハーピーとは巨神族に作られた成功作と失敗作の関係にあるのだがぶっちゃけてしまえばどちらも人にとっては迷惑なバケモノである。なお、実際のギリシャ神話でこの怪獣の別名である邪神に該当するのはイリスの上司のヘラである。
- スペックにやたら「9」や「1999」が目立つのは、当時が(『ノストラダムスの大予言』なども含めて社会が色めき立っていた)世紀末が近い1999年であったのが理由だとされている。
- 当時からソフビ人形が発売されていた。2023年にはアクションフィギュア『S.H.MonsterArts』枠で発売。当時の造形を担当した品田冬樹氏監修の元、差し替えで飛行形態も再現できるほどのクオリティに仕上がっている。
関連イラスト
関連タグ
虚実妖怪百物語:ガメラや大魔神とは異なり直接の登場はしていないが、作中で言及されている。
ジーダス:イリス同様、ギャオスと深い関わりを持つ後年の作品の敵怪獣。
魏怒羅:ゴジラシリーズそれも金子修介作品に登場するスーツアクターが同じ怪獣。主役怪獣の敵である点も同じだが、魏怒羅は人類の味方に対しイリスは敵という真逆のポジションである。また、主役怪獣に圧倒される違いもある。また神話生物と関連づけられ、最珠羅と同様に、伝承上の姿と実際の姿に相違点がある点が共通している。
最珠羅:金子修介作品の怪獣繋がり。神話生物と関連付けられ、魏怒羅と同様に、伝承上の姿と実際の姿に相違点がある点が共通している。一方で同作に登場した婆羅護吽は真逆で、伝承上と実際の姿が概ね共通している。
MECHAGODZILLA(モンスターバース):平成ガメラシリーズとモンスターバースの類似性は金子修介自らインタビューで認めており、このメカゴジラも「主役怪獣の天敵の生物情報を持っている」「人間の神経を乗っ取ってくる」「主役怪獣の得意技を模倣した攻撃を持つ」「球状の発光体がついた槍状の武器を持つ」などの点が類似している。