pixivで多いタグは「貞子」。
概要
鈴木光司の小説『リング』に登場するキャラクターで、本作含む以降のシリーズにおけるあらゆる怪現象の「元凶」と呼ぶべき存在。
原作小説では、作中のキーアイテムである「呪いのビデオ」の原点に迫る形でその来歴に触れられる程度であったが、1998年にオリジナル設定で映像化された同名の映画にて登場した姿が定着し、現在に至る。
容姿
原作小説・映画・ドラマなど、様々な媒体で展開され、またそれぞれの作品で色々と設定が異なっているが、生前は『超能力を扱うことが出来る美女(少女)』という点はほぼ共通している。
現在定着している貞子の姿は、顔を覆い隠す長い黒髪に血の気が引いたように白い肌、ワンピースタイプの白い服と爪の剥れた手、相手を呪い殺す際に髪の隙間から覗かせる見開いた目…などが挙げられる。井戸からゆっくりと近づき、テレビ画面の中から這い出てくるシーンのインパクトが凄まじく、以降の様々なコンテンツにも影響を与えた
経歴
原作および派生作品にて共通している設定は以下の通り。
- 映像を観た者を7日後に呪い殺す「呪いのビデオ」を生み出した人物で、作中では数十年前に死没している過去の人物。
- 超能力者の母・山村志津子と心理学者の伊熊平八郎の子として伊豆大島で生まれる。
- 生前の貞子も強力な超能力の持ち主で、周囲に様々な怪現象を引き起こしていた。
- 母・志津子は後にマスコミの前で行われた公開実験の席で、記者から「インチキ」だと罵られたことに気を病み発狂、投身自殺してしまう。
- 成人を前に凶害を受け、人気のない古井戸の底に捨てられる。
- その無念から成仏できなかった貞子の恨みが世の中への強大な怨念となり、「呪いのビデオ」を念写し現世に呪いを広めることになる。
- 死後数十年の時を経て、呪いの解き方を探していた主人公たちによって遺体が発見される。
以降、原作である鈴木氏の小説シリーズ、火付け役となった映画シリーズに分けて解説する。
原作小説の貞子
主人公である雑誌記者の浅川和行とその友人で哲学講師の高山竜司が「呪いのビデオ」の出自を調査する中で明らかとなった存在。
1947年に誕生。生前は母と同じく予知や念写などの能力を持つ超能力者であったが、そのことで父や母が社会から迫害を受けた過去があり、以降はその力を直隠しにしていた。また、外見については「この世にこれほど整った顔が存在するのか」とおもわせるほどの美女であるが、半陰陽でもあった。
1965年、高校卒業後に舞台女優となるが、超能力による事件を起こし、その後退団。
1966年、結核を患い箱根の病院に入院した父を世話していた最中、担当医師の長尾城太郎に強姦された末に殺害され、井戸に死体を遺棄された。享年19歳。また、長尾に強姦されたことで天然痘ウイルスに罹患しており、これが続編『らせん』の物語に繋がることになる。
数十年後の1990年、和行・竜司の二人によって遺体が発見され呪いが解けたかに思われたが、竜司は映像を観た7日後に、鏡に映る腐乱した「百年先の自分の姿」を幻視して死亡してしまう。7日後も生き残った和行は自分と竜司の行動で何が違かったを考えた結果、「ダビングした映像をまだ呪われていない他者に観せたかどうか」だったと思い至り、同じくビデオを観てしまった妻子を救うべく、妻の両親にビデオを観てもらうために車を走らせた。
続編『らせん』では、貞子の生み出したビデオは最終的にダビング含め全て処分されるが、彼女の呪いの正体は罹患した天然痘と、この世への未練を抱いた彼女の遺伝子情報が組み合わさった「リングウイルス」という過去に例のない性質のウイルスであることが発覚。
このウイルスは、ビデオに限らず彼女の過去にまつわる文章や映像に触れた者の体内に植え付けられ、感染者にウイルスの進化や増幅に協力させようと働きかける。増殖に手を貸さなかった場合、一週間後に心臓周辺の冠状動脈に肉腫を発生させ心筋梗塞で死亡する。逆に感染者が協力的な場合、ウイルスは脳へと向かって感染者を操り「呪いのビデオ」と同じ効果のある文章を書かせ、他者に感染を広げようと働きかける。また排卵日の女性にはウイルスが精子となって子宮へ侵入し、1週間で貞子のクローンを産ませる。
結果、竜司の恋人だった高野舞を母体に貞子は現世に復活。
彼女の物語も前作主人公の和行が遺したレポートに興味を持った兄の浅川順一郎に持ち出され、出版・映像化計画が進められることになる。また、復活した貞子の体には己の遺伝子による交配・妊娠で自己増殖する能力まで備わっており、またその能力を応用して他者を死亡する直前の記憶のまま復活させることも可能だと言う。舞の姉「高野真砂子」として接触した医師の安藤満男に、かつて海難事故で死去した彼の息子を復活させるという条件で、貞子が復活後の協力者として選んだ竜司の復活に協力させた。
完結編『ループ』では、実は『らせん』で貞子や竜司が復活した世界が、環境シミュレーターにより人工的に作られた仮想現実「ループ」であることが判明する。竜司は現実世界での復活を望み、責任者のクリストフ・エリオットに願いを投げかけ「二見馨」という人物として復活する。しかしこれにより、ループで竜司の感染していたリングウイルスが現実世界に持ち込まれることとなり、「転移性ヒトガンウイルス」として現実世界まで貞子が侵食する事態が発生。竜司は偶然にも己の体がウイルスの抗体であることを知り、ループの中でウイルスが蔓延するより前の時系列に戻りワクチンを生成し、増殖を未然に防ぐことに成功する。
これにより、貞子の長きに渡る呪いに終止符が打たれた。
(ただし、後年の続編にあたる『エス』『タイド』では丸山真砂子として生存、若干数の貞子のクローンも生まれていた事が判明し、完全に駆逐されていない)
映画版での貞子
主人公がTV局の女性ディレクターの浅川玲子と、彼女の元夫で超能力者の高山竜司に変更され、同じく「呪いのビデオ」について調査する中でその存在が浮上する。
1951年8月に誕生。生前は超能力者だったことは共通だが、加えて念力も使えたことや起伏の激しさが強調され、母の公開実験の際にその能力をイカサマ呼ばわりして罵倒した記者を変死させている。その後、1968年、原作よりも若い時期に劇団に入団するが、実は団員の中に上述の殺害した記者の元婚約者が在籍しており、団員たちとの確執と合わせ当時の報復を受けることとなり、最終的に団員全員を殺害する。
この一件で全てに絶望した父・平八郎は心中を決意し、古井戸に誘い出した貞子を背後から襲い突き落とした。貞子は必死で這い出ようともがくがとうとう叶わずそのまま命を落とすことになる。享年17歳…のハズだが、『リング2』での検死の結果、死後1~2年とも判定され、井戸の中で約30年も生きていたという可能性が示唆された。また、ビデオで呪殺した人間の姿や声を借りる能力も備えており、玲子と竜司の息子浅川陽一にビデオを観させる能力も備えている。
クライマックスでは原作同様、竜司にビデオの呪いが降りかかるが、原作での幻視ではなく、貞子本人が彼の前に姿を現す形に変更される。彼の部屋にあったビデオに突如井戸の映像が現れ、そこから爛れた白いワンピースを纏い、顔を長い黒髪で覆い隠した少女がゆっくりと井戸から這い上がり、ぎこちない不気味な歩みでカメラの眼前まで迫ったかと思うとそのまま画面を突き抜けて竜司の前に現れる。前髪の隙間から覗く血走った目で睨みつけられた竜司はそのまま絶命した。
以降は原作小説になぞった『らせん』や、一作目設定に準拠し新たな物語が綴られる『リング2』と枝分かれして展開される。
海外リメイク作品での貞子
本作は海外でも(それぞれの制作国に合わせ)リメイクされており、ハリウッド映画版『ザ・リング』では「サマラ・モーガン」、日本未公開の韓国版では「パク・ウンソ」という少女が貞子のポジションとなっている。
ファンの反応
本来は美人・美少女という設定もあって、2002年11月ごろから萌えキャラ化が著しく、pixivでも可愛らしく描かれていることが多い。また、描かれる際にはテレビか井戸とセットになっている場合がほとんど。→貞子たん
その他、テレビ画面からキャラクターが這い出ているようなイラスト、長髪で顔が隠れているイラストにも「貞子」のタグがつけられることが多い。
貞子が襲ってきた場合の対処法として、テレビを壊したり貞子を殴り倒すなどのネタが描かれることも多いが、マジレスしてしまうと、あれは映画ならではの演出あるいは幻覚であり、実際に貞子がテレビから出てきているわけではない。物語冒頭、呪いのビデオを見た若者はテレビのない場所で死んでいる。仮に何らかの方法でやり過ごせたとしても、その時点で呪いによる死は確定しているため無意味である。
公式が貞子たん
2012年公開の映画『貞子3D』の完成試写会にて、まさかの本人登場(本作で貞子を演じる橋本愛とは別人)。
監督の英勉への耳打ちを通して出演陣の質問に応え、以下のように語っている。
- 年齢:享年17歳(ざっくり高2)
- 今回ネット動画を用いた理由:ビデオテープ今売って無い。IT革命。
- 井戸での生活について:狭い。湿気が多い。ルームシェアしたい(柏田誠司と)。
- 髪は切らないのか:気に入っている。今度イメチェンで田山さんみたいにしたい。
…などなど、これまでの映画での怖ろしいイメージとは真逆のコミカルな回答を展開した。
これを機に、彼女のメディアへの露出がどんどん加速していくことになる。
2012年4月25日には映画宣伝と合わせ、日本ハムVSロッテの試合の始球式に登場。
しっかりスパイクを履いてスタスタとマウンドに登板した。
事前に肩は慣らしたらしく、ボールは弧を描いてノーバウンドで鶴岡慎也捕手(日本ハム)の手に届いた。
登板予定ではなかった斉藤佑樹投手からも記念写真を求められる一幕もあった。
更には、ブルーレイ&DVDの数量限定で生産される「貞子の呪い箱」セットの特典に、貞子写真集「貞子の休日」が付属されることが発表された。
その他にもイベントやtwitterで原作の陰鬱な雰囲気を微塵にも感じさせないはっちゃけた行動もちらほら見受けられるため、公式が貞子たん状態である。
2022年にはとうとうYouTubeチャンネル『貞子の井戸暮らし』を開設。
また、カナダ開発のオンラインゲーム『Dead by Daylight』にキラー(殺人鬼サイドの操作キャラクター)として実装されたりコナミのアーケードゲーム『チェイスチェイスジョーカーズ』に首塚ツバキのオニ役として呼ばれたりなど、今なお様々な話題で賑わせ続けている。
(原作でも『らせん』で現世に復活した際には安藤との映画デートを楽しみ、小悪魔的かつ天真爛漫な女性として振る舞っている)
担当女優
何度も映画やドラマ、ラジオなど多くのメディアで映像化されているため、多数の女優・声優が演じている。
『リング』シリーズ(完結作『ループ』は未映像化)
テレビドラマ『リング ~事故か!変死か!4つの命を奪う少女の怨念』(1995年・2時間単発)
- 三浦綺音
- 竹島由夏:幼少期
ラジオドラマ・ドラマCD『角川ドラマルネッサンス リング』(1996年)
映画『リング』・『リング2』・『リング0 バースデイ』(1998年・1999年・2000年)
映画『らせん』(1998年)
連続テレビドラマ『リング~最終章~』・『らせん』(1999年)
『貞子3D』(2013年)
『貞子VS伽椰子』(2016年)
- 七海エリー
『貞子』(2019年)
- 南彩加
『貞子DX』(2022年)
海外リメイク版
アメリカ版『ザ・リング』・『ザ・リング2』・『ザ・リング リバース』(2002年・2005年・2017年)
- デイヴィ・チェイス:アメリカ版貞子『サマラ・モーガン』(1、2)
- ケリー・ステイブルス:サマラの邪悪な人格・『イーブル・サマラ』(2のみ)
- ボニー・モーガン(リバースのみ)
日本語吹替
韓国版『リング』(1999年・東京国際映画祭では『リング・ウィルス』)
※:日本では劇場で未公開
- ペ・ドゥナ:韓国版貞子『パク・ウンソ』
- じゅよん:少女期
余談
上述通り、三部作の中の貞子の存在は「数十年前に死没した怨霊の呪い」「天然痘と結合して生み出された新型ウイルス」…と新たな事実により覆されているが、これは原作者の鈴木光司氏が、続編を作る上で奥さんに展開を予想してもらったところ、自分が想定していたものをほぼ言い当てられてしまい「もっと予想外のものを作らなくては」という想いからこのように展開されたらしい。
井戸と女の化け物の話は、中国にも見られる(参照)。ちなみに、中国で作られたドラマに「日本軍が残したフィルムから出現した貞子が共産党軍に入隊し日本軍と戦う」というものがある。
貞子の母親のモデルである御船千鶴子だけでなく、高橋貞子という人物が貞子のモデルではないかという都市伝説が存在している。作者は、貞子にはモデルはいないとしていて、ネットで都市伝説化している貞子のモデル実在説を見て驚いたが、その後某番組が高橋貞子を追跡したところ、史実の高橋貞子とリングの貞子に奇妙な類似点があると判明し、その調査結果を見て作者は「リングを書いていた当時は異常なインスピレーションに支配されて3か月ほどで原稿が完成した。この調査結果は意味のある偶然だと思う。もしかしたら、(千里眼事件などで不幸を被った)御船千鶴子や高橋貞子や長尾郁子などの怨念が自分にリングシリーズを書かせたのではないか。」
と述べている。
都市伝説の「カシマさん」がモデル、テレビから登場するシーンはアメリカ映画「ポルターガイスト」が由来という説もある。
貞子の見た目は、公開中止となった幻の作品「シェラ・デ・コブレの幽霊」とそれをまねた映画「女優霊」から応用されている。
関連イラスト
原作版
映画版
二次創作(派生)キャラ『貞子たん』
関連タグ
虚実妖怪百物語:クロスオーバーの一環として登場。多数の有名なキャラクターたちと共演している。こちらではガメラや大魔神とも共演しているが、ガメラシリーズと『リング』シリーズは『ガメラ3』以降に何度か製作面やイベントにおいて関係しあってきたと判明している。
俺の嫁よ出て来い企画:「モニターから好きなキャラクターが出てくる」絵を描く企画。ときおり貞子タグが一緒に付いている。企画目録
シノビマスター:閃乱カグラシリーズの一作ではあるが、まさかの期間限定コラボで登場。……ただし、本人ではなくあくまで「貞子のコスプレをした両姫」としての登場ではあるが。ホーム画面を「貞子の井戸」にすることもできるので、リングのあのシーンを再現することができる。なお、あくまで「貞子のコスプレ」であるため、購買部の衣装交換にてアイテムを用いて他のキャラ用の衣装を交換すればコラボキャラを含めた任意のキャラを貞子っぽい見た目にすることも可能。交換用アイテムさえあれば何人でも交換可能なので、(見た目)貞子5人編成なんていう凄まじいことも可能。その上でアクセサリー枠は空いているので猫耳などで好みの貞子たんを再現することもできる。なんなら髪型のみ貞子の髪型にして、裸リボンだのバスタオルだのと欲望全開の見た目にすることも可能という、ある意味で貞子ファンにとっては素晴らしい作品。
関連人物
高山竜司:原作小説・映画版共に登場するシリーズ通して作中の重要人物。
佐伯伽椰子、佐伯俊雄:『呪怨』シリーズに登場する怨霊母子。『貞子VS伽椰子』で対戦(?)したライバル。
THE ONRYO:『Dead by Daylight』とのコラボでの貞子の名義。本作での設定は凡そ映画第一作目に準じている。
浅川陽一:映画版に登場する浅川玲子と竜司の息子。原作では女児であり、竜司との血縁はない。上述のゲームでサバイバー(生存者)として成人した姿で登場しており、twitterやYoutubeでの貞子からは愛着込めて「陽一くん」と呼ばれている。
変なおじさん:志村けんのバカ殿様のリングのパロディコントで、貞子の正体が変なおじさんだったというオチ。
そっくりさん
黒沼爽子:あだ名が「貞子」。
蕾家祈:早乙女雀から「貞子」呼ばわりされている。
結城澪呼:見た目や登場シーンが貞子そのもの。
見崎鳴(Another):映画『貞子3D』宣伝用twitterアカウントにおいて映画版Anotherおよび見崎鳴を『後輩』扱いしており、お互いに仲が良い様子。映画版AnotherのTVCMにも出演。また映画版のキャストが同じ人。
泉こなた(らき☆すた):『貞子3D2』とのコラボレーションで、「さだこなた」が誕生。
バグスター:(特撮『仮面ライダーエグゼイド』の敵対勢力。原作での出自を考えると実は酷似した存在である。)
ホラーアナグマ:ヤッターマン(平成版)第54話に登場したドロンボーメカでアナグマにホラー要素のモデル(さらに近年の地デジ化に因みアナログテレビの要素を合わせた)として使われている。ヤッターモグラを恐怖に陥れたが、モグラが出したビックリドッキリメカ『ハサミメカ』で髪を切られ可愛くなったため成仏すると言うオチになった。