概要
英語での表記は『Xenomorph』。
画家・イラストレーターのH・R・ギーガーがデザインした。
全身が艶のかかった漆黒で、頭部の特徴的なフードや後頭部は男性器をモチーフとしている。
その昆虫的・生物的でもありながら、機械的でもある斬新かつ秀逸な造形は当時画期的なものであり、公開直後から現在に至るまで様々な作品にパクられ……もとい影響を与え続けている。
生態
社会性昆虫のように、一体の女王体エイリアン・クイーンを中心に繁殖を行う。性別が有るかは現在不明。
エイリアン・クイーンが生んだ卵はエイリアンではなく、サソリのような姿をしたフェイスハガーの姿で孵る。フェイスハガーは人間や動物・生命体を見つけると、顔面に組み付き体内に幼体を産む。寄生した幼体は宿主の体内でDNA情報を書き換え/吸収しながら成長、しばらくするとウナギのような姿(チェストバスター)となり、宿主の体を突き破って体外へ出てくる。
そして短期間で脱皮を繰り返し大型化、宿主のDNA情報によりその形質に似た種類のゼノモーフが誕生する。対象が犬なら四足歩行、人間に寄生していれば人型になる。
- フェイスハガーは、生物の体内に卵を産み付けて苗床にするわけではない。フェイスハガーが産んだエイリアンの幼体が「宿主の体内でDNAを書き換え、内臓の一部をエイリアンを産む臓器に変化させる」と言った方が近い。この手法により、その環境に適した生命体の状態で生まれる事が可能となる。
- 『ALIEN』のディレクターズカット版で復刻された『ダラス船長とブレッド機関士の真の最期』から『女王を含めた「別個体が存在しない」環境』では『犠牲者の肉体を(卵=エッグチャンバーに)変質/変換する事で繁殖の下地を作る』生態を持つ事が示唆されている。ゲーム『エイリアン:アイソレーション』やダン・オバノンの初期脚本をコミカライズした『エイリアン:スタービースト』でも同様の設定が採用されている。
- 『ALIEN ROMULUS』においてチェストバスターから成体になる際に1度脱皮をした後、繭を形成して急速に成長する事が明かされた。その状態では目の前に人間がいても何のアクションも起こさないが、攻撃を受けると尻尾で反撃する事が可能。
劇中に登場した個体の殆どが知的生命体を宿主としていたためか、知能の高さも特筆すべきものがあり、意図的に施設の電源を落としたり、フェイスハガーの卵をトラップとして使ったりと、(個体によってバラつきはあるが)時に人間をも出し抜くほどの狡猾さを見せる。
しかし「宇宙人」と呼ぶには、その行動はあまりに冷酷無比で、本能的かつ暴力的。
同族以外の生物は全て獲物か外敵としか見做しておらず、捕獲目的でなくとも遭遇すると容赦なく襲い掛かって命を奪う。さらに仲間であっても種の保存のためなら犠牲にする様子も散見される。
同時に、どのような宿主から生まれようとその習性・行動原理は一切変わらない。
『ALIEN』の前日譚とされる2012年に公開された映画『PROMETHEUS』では、エンジニアと呼ばれる知的生命体が作った謎の生体物質によって誕生したことが示唆されていたが、『エイリアン:コヴェナント』での起源は、エンジニアが創った謎の生体物質に人間が創ったアンドロイドが改良を加え、生み出した生物である。
戦闘能力
口腔内に仕込まれた第2の口『インナーマウス』と、鋭利な刃を備える尾を主な武器とし、傷を負った時に撒き散らされる強酸性の血液も敵対者に被害を与える。なお、当然ながら自分の体がこの血液で溶けることはない。
純粋な身体能力の面でも強力無比で、巨漢のプレデターも軽々と持ち上げる膂力と高い機動力で以って獲物を追い詰める。血液の性質も相まって、ゼノモーフに格闘戦を挑むことは死を意味すると言っても過言ではない。
鋭い爪と強靭な握力で凹凸のない壁や天井に軽々としがみつき、移動する事が可能。
また、這った時の移動速度が速く、体格の割に狭い空間にも身体を納めて移動できる。
これらを利用し、天井やダクト、床下など、思いもよらない場所から接近して奇襲を仕掛けるやり方を得意とする。
隠密性も高く、気配を殺されるとかなり接近されても気付かない事が多い。また、外皮の性質からか赤外線の放射レベルがかなり低いらしく、サーマルセンサーに引っかからないという厄介な性質もある。
映画1作目「エイリアン」では完全生物と呼ばれ、ゲーム「ALIEN ISOLATION」ではその設定を反映して、全ての攻撃でダメージが与えられない存在となっている。しかし、多くの作品では熱耐性や気圧変化への頑強さに反して、物理攻撃への耐性はさほど高くないと描写されている。
9mm拳銃では死にかけでも頭部に連続で当てないと沈黙させられない程度にはタフだが、アサルトライフルや12ゲージショットガンなどの高火力銃ならば十分に殺害可能。そのため、相応の装備があれば(奇襲を喰らわない限り)決して敵わない相手ではない。
ゼノモーフ達も強力な銃火器で武装した兵士・兵器と正面から戦った時は十把一絡げに薙ぎ倒されてしまっていたりもする。
種類
- エイリアン・エッグ
フェイスハガーを生み出す卵。「エッグチャンバー」と呼ばれる事があるが、それはエッグが納められていた部屋を指す言葉。
殻ではなく革の様なもので構成されており、獲物が近づいたのを探知すると上部が開き、そこからフェイスハガーが飛び出す。
クイーンに産み落とされるが、クイーンがいない環境下でも人間をエッグに変質させる、人間の胎児を直接チェストバスターに変貌させる事で繁殖する事は可能。
ゼノモーフの幼体で他生物に寄生するための中間体。
寄生対象から誕生するゼノモーフの幼体。作品によっては人間に寄生した個体でも腕が生えていたり、成体同様に四肢を備えていたりとデザインは異なる。
『ALIEN』で登場した個体。
人間のDNA情報を吸収したものであり、以降の作品でも主に同じような個体が登場する。
- エイリアン・ウォーリアー
『ALIEN2』から登場した個体。ゲーム作品では「ドローン」とも。
最も数の多い種類。社会性昆虫でいえば働きアリや兵アリと同じような生態を持ち、獲物の捕獲・クイーンの護衛・脅威排除などを行う。
本作で判明した生態の他にも、前作ではゆっくりとした動きをしていた個体とは対照的に、壁を飛び跳ねて移動するなど機敏な動きを見せており、後のエイリアンのアクションはこの個体を踏襲している。
外見は上記のビックチャップとほぼ同じだが、ビッグチャップの頭部を覆うフード状の半透明の甲殻が無いなど、細部が異なる。
『ALIEN2』から登場した個体にして、エイリアン社会のトップに君臨する存在。
種の繁殖を役目を持ち、フェイスハガーを内包する『エイリアン・エッグ(エッグチャンバー)』を産み落とす。
- ドッグ・エイリアン
『ALIEN3』に登場した個体。ゲーム作品では「ランナー」とも。
犬や牛などの四足動物に寄生したものがDNA情報を吸収し、高い身体能力を獲得した。
また、天井や垂直の壁にへばり付いたまま駆ける程の運動能力、溶けた鉛の海に沈められても死なない耐久性を持つ。
反面、動物ベースであるためかウォーリアーに比べ知能は低い。
趾行性の後脚で常に四足歩行をしており、背中にパイプ状の突起が無いなど、映像作品において寄生対象によって外見や能力に違いが出る事を示された個体である。
- ニュー・ウォーリアー
『ALIEN4』に登場した個体。
人間の遺伝子を得たクローンクイーンを母とする為か、高い知性を獲得。仲間と謀って知性がない振りをしてチャンスを窺う、仲間を攻撃・殺害して強酸性の血液で檻を溶かし脱走する……等、エイリアンとしての本能に左右されない、高度な知能プレーを見せた。
口から酸を吐いて攻撃する能力を持ち、血液ほど強力でないものの、浴びた人間の顔が焼け爛れさせて凄まじい激痛を与えている。
デザインはビッグチャップと比べてパイプ状の突起と腹回りは細く、趾行性の後脚を持つ恐竜のような体型をしている。水中を泳ぐシーンがあるためか尻尾にはヒレが追加され、以前の個体よりも若干太くなっている。
『ALIEN4』に登場した個体。
詳細はリンク先参照。
- バトル・エイリアン
『ALIEN vs PREDATOR』に登場した個体。
何気に初めて地球に現れた種類であり、人類の歴史に関わりを持つ種でもある。
儀式に使う為、プレデターによって品種改良された個体であり、繁殖力や戦闘力が軒並み向上させられている。
戦闘中にプレデターの放ったネットランチャーにより、傷跡が残った個体は『グリッドエイリアン』と呼ばれ、プレデターと激しい肉弾戦の末に勝利するなど、他の個体よりも飛び抜けた戦闘力を見せており、本作に登場するエイリアンのリーダー的存在として活躍していた。
デザインはニュー・ウォーリアーそのままだが、足は人間と同じ蹠行性に戻っている
- AVP2のエイリアン・ウォーリアー
『ALIEN vs PREDATOR2』に登場した個体。
新たな儀式の準備のために宇宙船に積み込まれていた数匹のフェイスハガーが、墜落に乗じて脱走後に人間に寄生して誕生した個体。
親が違うプレデリアンをリーダーとして地下下水道に潜伏していたが、掃討しに現れたプレデターとの戦闘の過程で町へ進出。遭遇した人間を次々と殺し回り、戦闘の余波による発電所の破壊で町中を停電させるなどの事態を引き起こした。
後にプレデターによってで全滅するが、後述のヌーヴェル・ウォーリアーの出現で事態が収束することは無かった。
ちなみに、彼らが収容されていた容器の液体は一種のマーカーになっている様で、プレデターはその液体を解析、それをヘルメットで視覚化させて追跡していた。
外見はバトル・エイリアンの体と2のエイリアン・ウォーリアーの頭部を組み合わせた様なもので、鳴き声も2と同じものを使用されている。
頭部の形状はエイリアン・ウォーリアーと同じものに見えるが、実際はそれを基に制作された全く違う形をしている。
- ヌーヴェル・ウォーリアー
『ALIEN vs PREDATOR2』に登場した個体。
プレデリアンの独自の繁殖方法により、人間の胎児が変異して誕生した個体。本来のエイリアンは1人の宿主で1匹が誕生するが、この個体は1人につき複数匹が誕生するために瞬く間に増殖した。
クイーンとプレデリアンで繁殖方法は違えど、人間を苗床にして増殖し、殺戮を繰り返しては町を混乱に陥れていく様は、リプリーが思い描いていたであろう悪夢の映像化と言える。
「ヌーヴェル」はフランス語で「新しい」を意味している。
外見はAVP2のウォーリアーと同一。
州兵たちを襲ったのもこの個体群である。(エイリアン・ウォーリアーは数匹しかいなかった上に、プレデターとの戦いで数を減らしていたのだが、戦闘中の兵士が「ウジャウジャいる」と発言した事から)
『ALIEN vs PREDATOR2』に登場した個体。
プレデターのDNAを吸収している。
詳細はリンク先参照。
- プロトモーフ
『ALIEN COVENANT』に登場した個体。
アンドロイドのデヴィッドが様々な研究と実験を繰り返した末に誕生した、エイリアンシリーズにおける時系列上では原初のエイリアン。
凶暴性や残虐さは他のエイリアンと同様だが、この個体の場合はそれらよりも殺意が高く、自身がクレーンに拘束された時や前方からブルドーザーが迫っている状況でも、構わずに標的の殺害を優先していた。
外見はビッグチャップに近い体格だが、皮膚を剥いた人体標本の様なデザインに変更されている
- スコーチド・ゼノモーフ
『ALIEN ROMULUS』に登場する個体。
スコーチドは「焦げた」を意味しており、過去作におけるグリッドエイリアンに相当する個体。
本作におけるエイリアンの代表的存在で、ウェイランドユタニ社が回収したエイリアンから生み出したフェイスハガーのうちの1匹が人間に寄生して誕生し、繭形態を経て成長した。
頭部はビッグチャップ同様に半透明のフードに覆われているが、よく見ると2に登場するウォーリアーのものを彷彿させる意匠が見られる。(フィギュアなどで確認すると分かりやすい)
成体になる前にショックバトンを刺された上に電気を流し込まれた事で、頭部に傷跡がついており、時折その傷口に電気が走る描写がある。
作中では落下する人物を尻尾で受け止めて救うシーンがあるが、近くにフェイスハガーがいた事、近くに陣取って威嚇して逃げられないようにしていた事、貨物室でとある人物を拉致する際に尻尾で突き刺したために重傷を負わせてしまった事で、単に健康な人間に寄生させるためであって善意で救出したわけではない。
- ロムルスのエイリアン
『ALIEN ROMULUS』に登場する個体。
外見は上述のスコーチド・ゼノモーフと傷跡以外同一。
当初は無数のフェイスハガーとスコーチド・ゼノモーフのみが活動していてアンドロイドからも言及されていなかったが、脱出時に唯一の道である区画で形成された巣に潜んでおり、既に無数の個体で群れを成していた事が判明した。
さらにその位置が宇宙ステーションの最下層に当たる区画で、なおかつ血の特性で迂闊に攻撃出来ない状況だったため、完全にお手上げ状態に追い込まれた。
どのようにして繁殖したかは明確な説明がないものの、エイリアンの暴走と死亡後に流出した酸性の血液で施設が破壊された事により、化合物「Z-01」を生成するための素体であるフェイスハガーが脱走したためと思われる。
- オフスプリング
『ALIEN ROMULUS』に登場する個体。
エイリアンの襲撃で重傷を負った妊婦の女性が、エイリアンを素体に生成された「Z-01」を投与した結果、胎児が影響を受けたために誕生した異形の生物。
臍帯が繋がった卵の状態で出産され、孵化からわずか数分で直立すると約2.5mもの巨体に成長を遂げた。
人間とエイリアンの混合生物であるニューボーンと同質の存在と言えるが、あちらは人間の影響を受けたクイーンから生まれたのに対し、オフスプリングはエイリアンの影響を受けた人間から生まれるという対照的な出自をしている。
そのためかニューボーン以上にエイリアンの要素が混合した人間と言うべき姿で、人間そのままの顔(厳密に言えば人類の起源であるエンジニアの顔)、エイリアンと同じ尻尾とむき出しの肋骨、短いながらパイプ状の突起がある、人間の舌とエイリアンのインナーマウスが融合した異様な舌を持つなど、異質かつ生理的嫌悪を感じさせるデザインをしている。
ニューボーンと同様に母親である女性に匂いを嗅いで懐くかのような描写があるが、
・拒絶されるなり怒りを露わにして体液を吸い取って殺害する。
・進行方向にただ立ってただけのアンドロイドに対し、邪魔と言わんばかりに首を爪で引っ掻いて重傷を負わせる。
・追い詰めた標的に対し、足掻く様を嘲るかのように醜悪な笑みを浮かべる。
・宇宙船から放り出されそうな状況かつ、金属粉で全身がズタズタになった状態にもかかわらず、標的の殺害を優先する。
など、凶暴性はエイリアンと変わらない。
映画以外で登場する種類
- Tarkatan Xenomorph
『モータルコンバットX』にゲスト参戦した際の姿。
MK世界における魔界の戦闘民族『Tarkata』の1人であるバラカのDNA情報を継承しており、口部に鋭い牙が連なり、両腕に伸縮式のブレードを忍ばせている。
他の個体と比較すると若干筋肉質。
- プラエトリアン
ゲーム版『ALIEN vs PREDATOR』や『ALIEN COLONIAL MARINE』などに登場した個体。
ウォーリアー(ドローン)からクイーンへと成長する言わば中間形態であり、平時はクイーンの護衛や他のウォーリアーの統率を担う。
クイーンが死ぬと、群れの中で最も強いプラエトリアンが次のクイーンへと成長する。
- クラッシャー-
『ALIEN COLONIAL MARINE』に登場した個体。
ドッグ・エイリアン(ランナー)の進化形態で、進化前とは比較にならないほど大型で頑強な体躯を有する。
銃弾を弾き返すほどの強固な頭部外殻を有し、その頭を向けたまま獲物に向かって突進する先方を得意とする。
※これらの他、94年頃には、アメリカの玩具会社「ケナー」より、フィギュアオリジナルシリーズとして、多くのオリジナルゼノモーフが登場している。
様々な動物に寄生し、その特徴を有した個体として誕生したという設定で、「マンティスエイリアン」「スウォームエイリアン」「ゴリラエイリアン」「スネークエイリアン」「ブルエイリアン」といったものが発売。それぞれには玩具らしいギミックが搭載され、同スケールのリプリー他海兵隊のフィギュアと戦わせて遊ぶことができた。通常のゼノモーフ(「スコーピオンエイリアン」と名付けられている)、およびクイーンもラインナップに入っている。
また、翼があり飛行する「フライングクイーン」、ゼノモーフの突然変異体で最強の個体「キングエイリアン」といったものもあった。日本でも当時、野村トーイから輸入販売されている。
さらに非公式であるがフェイスハガーがポケモンのキャラクターであるピカチュウに寄生した結果誕生した「ゼノチュウ」やフシギダネに寄生した「ブルバモーフ」が登場している。