曖昧さ回避
- 『シン・ゴジラ』正式タイトル決定前に暫定的に用いられていたタグ。
- 『シン・ゴジラ』に登場した“ゴジラ”と呼称された怪獣。実際、「怪獣王シリーズ」や「ムービーモンスターシリーズ」などの一部のフィギュアのシリーズではこの名称で発売されている。本稿で解説。
概要
略称「GULF(Giant Unidentified Life-Form)」、つまり「湾」という意味である。
その正体は60年前に各国が深海に投棄した放射性廃棄物を摂取し生態変化を起こした太古の海洋生物(なお、ゴジラの前身となった古代生物がどのような存在なのかは解明されていない)。すなわち、単純な突然変異ではなく「自己進化による適応個体」であるという点において従来のシリーズで見られた各個体とは一線を画す由来を持つ。
「ゴジラ」の名称はその存在を予見していた牧悟郎元教授により、彼の故郷大戸島に伝わる荒ぶる神「呉爾羅」にちなんで付けられた。なお、牧元教授は日本の学会から見放される形で米国DOEに渡り研究を続けていたため、この時に「GODZILLA」の英名も与えられている(GODの三文字を頭に据えたのは呉爾羅に対する畏怖と、一神教信者が多数を占める米国民に対する皮肉、もしくは警告と思われる)。
地球の生態系の実質的な頂点に君臨する完全生物であり、体内には未知の放射性元素と人間のおよそ8倍という膨大な遺伝子情報を内包し(専門家らの考察によれば「遺伝子の内で意味のある部分が人間の8倍」との意見もある)、その外見は鳥類・爬虫類・魚類など様々な生物の性質を併せ持っているという。
世代を経由しない一個体のみの進化による形態変化によって様々な環境に適応する他、放射性物質の毒性を克服しており、更に生物として避けては通れない「死」という概念すら超越している可能性が示唆されている。
当初は、体内に原子炉のような器官を持ち、放射性物質を捕食して核分裂によるエネルギーを得る生物だと推測されていた。しかし、終盤で体内に「熱核エネルギー変換生体器官」と呼ばれる生体システムを持つことが判明する。これは体内に取り込んだ物質の元素を細胞膜を通して任意の元素へと変換するものであり、水素や窒素などの陽子数の少ない元素から生存に必要な元素を生成し、更にその際の崩壊熱をもエネルギー源として利用している。いわば生成される元素を任意で選べる核融合炉であり、水や空気さえあればどこであっても栄養素とエネルギーを生み出し生存が可能。そのため霞を食べて生きる仙人にも喩えられた。
自分の意思で状況に合わせた進化および適応による肉体の変化や能力の発現が可能であるが、これは先述の膨大な遺伝情報と元素変換能力があってこそのものと思われる(遺伝情報から必要な部分を選択して必要な物質を生み出し形態変化すると考えられる)。また単体での自己増殖機能も有していると見られる他に、進化が進めば有翼化して飛翔することも考えられる。
食事を必要としないため舌はなく、牙も不揃いで物を咀嚼するには向かないなど、口の機能は退化が認められる。また、天敵と呼べる存在がいないことから感覚器官に対する防御や周辺警戒の必要性がなく、目や耳にはそれらを守る瞼も耳介も存在しない(一応、両眼には鏡面の瞬膜のようなものが付いており、それで眼球を保護することはある)。
熱核エネルギー変換生体器官が発する熱は背ビレによる放熱と血液による液体冷却によって処理される(メイン冷却は血液冷却であり、背ビレの放熱は補助システム的な意味合いが強い)。
その一方でこれら冷却システムが機能不全を起こした際には急激な冷却を必要とするため、体内で原子炉スクラムと同様の現象が発生し、生体活動を停止するという欠点を持つ。
そのため、血液凝固剤の大量投与によって液冷機能を封じることがゴジラを凍結させる唯一の手段と言えるが、その巨体に流れる血液全てを凝固させるには大量の凝固剤とそれを輸送するためのタンク車、凝固剤を経口投与させるためのポンプ車を確保する必要があり、その上ゴジラに接近する際に体内から漏れ出る膨大な放射線に晒される危険も伴う。
移動するだけで甚大な被害を及ぼし、更にゴジラ自身やその残留物からも高い放射線が発生するため、都市部に侵攻した際の被害や経済的損失は計り知れず、後述の形態変化の能力もあって人類の存続を脅かす脅威そのものである。その一方、新種の生物にして生きた原子炉でもあるゴジラの存在は様々な分野で注目されており、ゴジラに関する情報はそれ自体が政治的な交渉材料として扱われた。特に水や空気から無尽蔵に物質とエネルギーを生み出す体内システムは人類に無限の物理的な可能性を示唆する福音であるとも称される。
なお、ゴジラの体内で生み出される未知の放射性物質の半減期は約20日間と極めて短く、2~3年ほどで完全に無害化することも判明している。
このゴジラの行動原理については一切判明しておらず、なぜ今になって出現したのか、なぜ日本に上陸したのか、そして人間をどう認識しているのかは定かではない(日本への襲来と短期間の急速な進化については牧の関与が疑われているが、それも具体的には明らかにされていない)。
形態
第0形態(仮称)
古代生物の生き残りが不法投棄された放射性廃棄物を摂取して変化したもの。牧教授らDOEのチームはこれを研究していたが、それ以上のことはわからない。
第1形態
全高 | 不明 |
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全長 | 不明 |
体重 | 不明 |
東京湾に出現した当初の形態。長大な尾を持つオタマジャクシのような形態と言われているが、本編中で確認できるのは尾の部分のみのため、詳細な外見は不明。
ヒレ状の脚部を持つとされ、歩行を補助的な移動手段として水中を蛇行移動する。当初は上陸すれば自重に耐えられず潰れて死亡すると想定されていたが、後述の第2形態へ進化したことで陸上環境への適応を果たす。
この形態でも核分裂によって膨大な熱量を伴っており、出現と同時に大規模な水蒸気爆発を発生させた他、あまりに急激な成長に伴う体液の流出なのか、周辺の海域を真っ赤に変色させている。
(海水の変色は高熱で水中のプランクトンが死滅した事による赤潮、という解釈もあるが、赤潮とは色素を持ったプランクトンの異常繁殖による変色である)。
- 巨大なオタマジャクシ型の不定形という意味ではヘドラ第1&第2形態に近い意匠なのかもしれない。
第2形態
全高 | 28m |
---|---|
全長 | 122m |
体重 | 不明 |
陸上環境に適応し始めた形態。頭部は深海魚のラブカに似ており、首元には水生生物の名残りであるエラが見受けられる。体色は薄茶色。
脚部を獲得したものの、前肢はまだ体内に収納されていて肘だけが張り出しており、後肢も体を持ち上げるにはまだまだ貧弱であるため、地面に這いつくばって不格好に移動する。移動速度も時速13キロと決して速くはない。
しかし、全長122m(旧・日本軍の伊400と同サイズ)もの巨体の力は馬鹿にできず、進路上の自動車や電柱などは頭を振り回して薙ぎ払い、胸部から突き出た胸骨によってアスファルトをものともせずに砕いて突き進む他、10階建て程度の建造物ならよじ登って押し倒すほどのパワーを持っている。その上、エラから排出される体液は強烈な腐臭が伴い、更に大量の放射性物質が含まれているので、移動に伴う被害は甚大。
この状態で東京都大田区蒲田に上陸し、初めて人類の前にその全容を現した。
第3形態
全高 | 57m |
---|---|
全長 | 168.25m |
体重 | 不明 |
第2形態が後ろ脚を使って直立し、二足歩行能力を得た形態。
前肢が小さいながらも腕としての形を取り、表皮も焼けただれたような茶褐色へと黒みを増し、内皮も熱を帯びて赤熱化している。また、立ち上がったことで第2形態の倍近い全高57mへと成長し、全長は168.25m(旧・日本軍の鳳翔と同サイズ)までに巨大化している。
しかし、この段階では体内の冷却システムが進化速度に追いついておらず、陸上での活動可能時間は短い。熱量が一定を超えた際には身体を冷やす必要があるため、一時的に身体を第2形態に近い形へと退化させ、東京湾へ姿を消す。
矢口蘭堂ら巨大不明生物特設災害対策本部はこの欠点を解明し、血液凝固剤の経口投与によるゴジラ凍結プラン「矢口プラン」を立案することになる。
なお、札幌で行われた発声可能上映での島本和彦氏の話によると、「この第3形態は皮膚が柔らかいため、通常兵器でも十分倒せた」と庵野秀明監督が食事で言っていたとのこと。民間人への被害を考慮して攻撃命令を中止した大河内首相の判断を一概に責めるのは酷ではあるが、これが事実であるならば、結果的にこの時に攻撃して倒しておけば後の大惨事は間違いなく防げたと考えると居た堪れないものがある。
第4形態
全高 | 118.5m |
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全長 | 333m |
体重 | 92000t |
第3形態から冷却システムを進化させ、陸上環境に完全適応を果たした、実質的な最終形態。
体高は第3形態から2倍以上の118.5m(旧・日本軍の特型駆逐艦と同サイズ)にまで成長し、全長は333m(東京タワーやニミッツ級と同サイズ)までに巨大化を果たしている。
巨大な身体に対して小振りな前脚に赤熱化した内皮など基本的な特徴は第3形態そのままであるが、さらに体全体が引き締まり、頭部は丸みを帯びている。体重を支えるためか上半身と比べて下半身の成長が著しく、特に正面から見たシルエットは生物的なバランスを欠いていびつに見える。
真っ黒にまで染まったその体表は歴代最強クラスの頑強さを誇り、自衛隊の運用する機関砲(1万6千発全弾命中)、榴弾砲、誘導弾 (砲弾やミサイルはそもそも表皮に突き立てることすらできなかった)、さらに戦闘機からの空爆(2000ポンド=炸薬量400㎏爆弾で、体重あたりのダメージに換算すると、人間がプロ野球選手2人に同時にバットで殴られるのと同等)を受けても物ともしない。無人在来線爆弾という前述の空爆すら上回る尋常でない威力の爆発(詳細はリンク先を参照)を受けた際はさすがに一時的に転倒して動きが止まったが、しばらくすれば活動を再開するに至っている。アメリカ軍のMOP2(架空のバンカーバスター)でようやく表皮を突き破ることが出来たが、非常に高い自己再生能力も持つため、火器攻撃はいずれも致命傷には至らない結果に終わっている。
体格に比して眼球はそれほど肥大化しておらず、相対的にはかなり目が小さくなったように見える。瞬膜を展開するシーンがあるが、ゴジラ化の過程で新たに会得したのか、元々有していたものが進化したのかは不明(ちなみに、第2形態のモデルのラブカは瞬膜を持たない)。
この瞬膜は、熱、衝撃、光等からの保護に使用されるようで、航空爆弾の超近距離爆発をも防いでおり、その耐熱性・耐衝撃性は相当な水準であることが窺える。
また、自衛隊・米軍との戦闘によって熱線放射能力を獲得。放射線流を使用可能となった。詳細は後述。
そして、本編の最終盤、長大な尻尾の先端に、焼け爛れた人間のような形の小さな骨格、さらには歯のようなものが発生・集積し始めている様が確認できる。
第5形態
全高 | 不明 |
---|---|
全長 | 不明 |
体重 | 不明 |
作中で示唆された群体化が実現しつつあった第4形態からの分離体。
その外見は背ビレや尻尾の生えた人間のような骨格を持つ。
本体が凍結された二日後に尻尾先端部から数体が形成されかけている。
凍結される時には尻尾から此の様な物体が生えていないことを省みるに、凍結の直後より分裂が始まっている可能性が示唆されている。また、「霞を食べる仙人のような存在のはずなのにしっかりとした歯が生えている」ことも特徴(参照)。
第4形態の時には「かみ合わせが悪そうな歯並びだ。これじゃ核物質も捕食できんぞ」と評されていたが、きれいになった歯並びで何を捕食するつもりだったのだろうか。
“ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ”(TAOSG)において正式に『第5形態』であると明言された。
- H.R.ギーガーによる『エイリアン』のエイリアンの造形との共通性を指摘する声もあるが、これも因果なのか、エメリッヒ版ゴジラのプロポーションもエイリアンと似ていると言われることもある。
- 後に公開された削除シーンには、ゴジラからしたたり落ちた肉片が建物などにこびりつき、目玉が各所に生えるなどゴジラ化している場面が描かれている。
能力
形態変化 / 自己増殖
自己崩壊と自己再生を繰り返すことで世代を経ないまま自身を進化させる能力。
環境の変化や敵の攻撃に対して急速に対応できる。この能力から、日本政府は進化の度にゴジラの脅威度を改める必要を迫られた。
第1形態から第4形態まで都合三回の進化を遂げているが、第4形態以降も活動を続けていた場合、環境の変化等を経験することで更に進化し、自己増殖・分裂能力を獲得しての群体化、果ては翼竜のような形態となり、有翼化による飛行能力の獲得とそれに伴う大陸間移動の危険性も示唆されており、本サイトにその飛行形態のコンセプトが載っている(実は、エメリッヒ版ゴジラも小説ではジャンプ時に背びれを羽ばたかせており、まるで将来の進化性を思わせる部分がある)。
なお、ゴジラの姿は各形態で大きく異なるが、死んだ魚のように見開いた目と鋭い背ビレ、そして異様に長く歪な先端形状を持つ尾等の特徴が共通している。
ちなみに第2形態から第3形態へ変化する際、セミの様に背中から脱皮、なおかつ大量の放射線エネルギーをまき散らすという設定も考えられていたが、結局は劇中のように第2形態が直接立ち上がって第3形態へ移行する形となる。
なお、本編では自己増殖する過程で劇中ラストのように尻尾の先端から人間体が分離すると言う形が取られているが、企画段階ではその他にも背びれの部分から無数の人間体ゴジラが誕生するというコンセプトもあった模様で、米軍の爆撃で飛び散った肉片などから自己再生することも検討されていた。
さらに東宝からは却下されたものの、ゴジラが小型体として群体化するのではなくゴジラがそのまま増殖して群体化する案も検討されており、アメーバのように一つの身体から別のゴジラの頭部が生えたりするイメージボードもあった。
これらの特徴はエメリッヒ版ゴジラや本多猪四郎氏のアイディアと似ているという指摘もある。本多氏は、「気体化と固体化」、「敵を吸収して巨大化」、「複数に分裂」、「非生物化」などのゴジラ像を描いていた模様。
放射線流
発射時には下顎が分裂し、アゴが外れたかのように大きく開く。
初使用時当初は膨大な熱風と黒煙を噴出し、直後にこの黒煙に着火して巨大な火炎放射に変化したが、この段階でも超広範囲のビル群を薙ぎ払い、焼き尽くすほどの威力を誇る。やがてこの火炎が急速に集束されて紫色の細い光線状に変化し、1辺50m程度の高層ビル群を瞬時に両断する熱量と貫通力、優れた放射時間、そして高速で飛来する弾頭及び上空5000メートルを飛行するB-2爆撃機や遠方のヘリを正確に狙撃・撃墜するだけの射程距離と精密性を持つ凶悪な破壊光線と化した。初使用後は攻撃能力として完成したためか、火炎放射の段階を経ることなく光線を即座に吐き出せるようになっている。
直撃による爆発も強大な威力を伴っていた従来個体の熱線と違い、上記の通りの熱量の結果対象を「溶断」するのが主たる攻撃手段となっており、爆発は熱量に伴う二次被害に過ぎない。なおこの熱線を太さ1m、ビルの溶断に要した時間が0.1秒と仮定すると、熱線が当たった物体は計算上16万℃に加熱されたということになり、この熱戦に耐えられる物質は地球上はおろか宇宙のどこにも存在しないという恐るべきものであるとわかる。
脚本中では初期の黒煙状態を「超高熱放射性粒子帯焔」と表現しており、超高温かつ高密度な放射性物質の粒子を吐き出していたことが明らかになった。つまり熱線の正体は凝縮された火炎などではなく、高温の放射性粒子を超高速で撃ち出す“粒子ビーム”の一種であるらしい。
また、放射線流のエネルギーを体内に留め、背ビレの間から放出する体内放射も同時に体得。最終的には尻尾の先端部から放射線流を放出する能力さえ獲得し、自在にポジションを変更出来る自由度を以ってその迎撃能力を底上げさせている。
しかし、その一方で放射線流の使用は長時間のエネルギーチャージを必要とし、消耗は非常に激しい。これを初めて使用した際にはゴジラは活動再開までに約450時間(19日)もの休眠を余儀なくされた。
体内放射
放射線流のエネルギーを体内に留め、口からではなく背ビレから複数同時に放出する放射線流の派生技。上空からの攻撃に対抗する為に編み出した物であり、対空迎撃能力に優れる。
更にゴジラはフェーズドアレイレーダーに似た感覚器官を体内に作り出しており、これと併用する事で自身に接近するミサイルや航空機を本能的かつ的確に迎撃する。この能力は休眠中も無意識のうちに機能し続け、一切の航空機・無人偵察機の接近を許さない。
こちらも放射線流と同じくエネルギー消費が激しく、長時間の飽和攻撃には脆い(※)という欠点を持つ。
※ ゴジラ自身の意思とは無関係に発射されるため、一度に大量の航空機を送り込まれると自分では止められずにエネルギーが尽きるまで延々と撃ち続けてしまう。
また、あくまでも飛来する物体を迎撃することに特化した能力であるため、その死角を突くことは可能である。
デザイン
キャラクターコンセプトは監督の庵野秀明が考え、それを元に前田真宏がイメージデザインを興し、そしてそこから竹谷隆之が原型となる雛形の造形を行った。
メインとなる第4形態は胸部が鋭角的に隆起したやや細身の上半身に対し、異様に肥大化した爪先立ちの脚部を持つ下半身という非常に独特なバランスで構成されている。
両腕はティラノサウルスのそれと同じく身体に比べてかなり小振りで、しかも脇の部分で固まっているのか、指以外はほとんど動かせず、常に掌を上に向けている。
表皮が剥けているような歪な先端部を持つ尻尾は身体よりも長大で、これを高く持ち上げて振り回しながら歩行し、先端はたとえ休眠状態であっても決して地面に着けることはない。
また、その尾の先端部は様々な生物の要素を内包しているという設定で造形され、よく見るとさもそこが第二の頭部であるかの如く目や歯のようなパーツが埋め込まれている。これもまたゴジラが自己増殖する過程で生まれたものであるが、実は上手く分離することができなかった成れの果てとして尻尾の先端に現れている。なお、TAOSGでの庵野総監督のインタビューによれば、正面の頭部はあくまで熱線放射のための器官でしかなく、脳があるのは実は尻尾の方というイメージでデザインしたという。ただし、同誌に掲載された尻尾先端部のイメージボードには“頭部やセキツイ、内臓のような組織はあるが全く機能しない”という注約が記されている。
背びれのデザインはvsシリーズの個体と同じく大きな柊葉に近い形状だが、先端に白縁の無いかなり荒々しい感じになっているのが特徴。デザイン段階では原子炉を体内に宿していることから制御棒を背びれの代わりにしたスタイルが検討されていたこともある。
全身を覆う外皮は野菜のゴーヤをイメージしたゴツゴツした質感の筋肉繊維や骨格が剥き出しになったような漆黒の皮膚であり、加えてバーニングゴジラと同じく常に高温の熱エネルギーを湛えているという設定を踏まえてか、その各所にはまるで冷えて固まりかけたマグマを髣髴とさせる赤い光が漏れている。
その為夜になると黒い身体の中で赤色の部分だけが闇夜にぼんやりと浮かんで見える感じとなり、これもゴジラの圧倒的存在感と恐怖を引き出すのに一役買っている。
この光はゴジラ自身のエネルギー活動を表しており、休眠状態に入ると一時的に消失するが、やがて活動再開が近づくと身体の各部分が少しずつ光り出すようになる。
頭部に至っては初代の雛形デザインのようにきのこ雲を連想させる形状をしているが、その顔の輪郭は酷く焼け爛れたような醜悪なものであり、見開かれた両眼は頭部と比しても極端に小さく、瞳も常に下方を向いて一切動かさないため、その意志を汲み取るのは困難。半開きの口は棘のような細い不揃いな牙が並び、さらに下顎には舌がなく、獲物を飲み込む際の蛇の如く左右に広げることができるなど、今までシリーズ最恐と言われていたGMKゴジラ以上に見る人の感情移入を拒む不気味な面構えをしている。
その大きく裂けた口から細いレーザー状の熱線を乱射して街を焼き払う様は、総監督である庵野秀明および樋口真嗣の二人が以前に手がけた『巨神兵東京に現わる』のアレンジ版巨神兵にも近い禍々しさと悍ましさを醸し出している(なお、今回のゴジラの造形を担当した竹谷隆之はその巨神兵のデザインも行っている)。
第5形態のデザインは見た通り人間を模した形状をしているが、庵野総監督いわく「この星で進化していくとヒト型に辿り着く」というイメージで考案したという。総監督自身が幼い頃に見た“彼の巨人”のイメージが呪縛のように離れなかったため、最終的にはそれに従ったデザインとなったが、初期デザインの中には天使などを模して背中に羽のような結晶を生やしたものや、身体は人間体でも頭部はゴジラを意識したもの、巨神兵をイメージしたものなど、様々なデザインが検討されている。
また、“短期間で自己進化する”、“細胞単位で無限増殖する”という点は同シリーズのヘドラやデストロイア、あるいはフランケンシュタインの怪物達にも通じている。
バトルスピリッツ
第四形態までがカード化されている。
- 第一形態(イラスト:田島幸枝)
赤のスピリットカード。
コスト:2(1)/系統:地竜
維持コスト&BP<1>LV1 1000 <2>LV4 4000
Lv1・Lv2『このスピリットの召喚時』
自分のデッキを上から4枚オープンできる。
その中のカード名に「シン・ゴジラ」と入っているスピリットカード1枚を手札に加える。
残ったカードは破棄する。
Lv1・Lv2『自分のメインステップ』
このスピリットを破壊することで、自分の手札にある「シン・ゴジラ(第二形態)」1枚をコストを支払わずに召喚する。
東京湾のアクアトンネルを破壊した巨大不明生物は廃棄された核物質を摂取して進化したと考えられる。
<解説>
名称サポートがメインのシン・ゴジラカードの中では最軽量を誇る。
召喚すると山札から四枚をめくり、その中にあるシン・ゴジラのカードを手札に加えることができるサーチ能力の持ち主。デッキの中にゴジラの各形態3枚ずつ合計12枚入れていれば確率は跳ね上がる。
自信を破壊して第二形態に進化する効果は召喚されたそのターンからでも発動が可能で、前述のサーチ能力と相性抜群。
- 第二形態(イラスト:藤岡八房)
赤のスピリットカード
コスト:4(2)/系統:地竜
維持コスト&BP:<1>Lv1 3000 <3>Lv2 5000
Lv1・Lv2『このスピリットの召喚時』
相手のネクサス1つを破壊する。
Lv1・Lv2『自分のメインステップ』
このスピリットを破壊することで、自分の手札にある「シン・ゴジラ(第三形態)」をコストを支払わずに召喚する。
東京湾大田区に上陸した巨大不明生物は、進行方向にある物すべて破壊しながら品川方面へ進んでいった。
<解説>
コスト・レベルごとのBP・レベル維持に必要なコアすべてが「ゴジラ[1971]」と全く同じ。
召喚するとネクサス一体を破壊可能。
第一形態と同じく召喚してすぐに破壊し、第三形態へと進化が出来る。
- 第三形態(イラスト:かんくろう)
赤のスピリットカード
コスト:6(3)/系統:地竜
維持コスト&BP:<1>Lv 8000 <2>Lv2 10000 <4>Lv3 13000
Lv1・Lv2・Lv3『自分のメインステップ』
このスピリットを破壊することで、自分の手札にある「シン・ゴジラ(第四形態)」をコストを支払わずに召喚する。
Lv2・Lv3『このスピリットのアタック時』
BP5000以下の相手のスピリット1体を破壊することで、このスピリットは回復する。
品川付近にて進化した巨大不明生物は突如進行を停止し、東京湾へ戻っていった。
<解説>
第四形態召喚への要となるカード。
アタックするとBP5000以下のスピリットを破壊し、アタック前の状態に回復することができる。
これまでと同様自信をすぐに破壊して第四形態を召喚できるが、1ターン目からの召喚はあまりメリットはない。
- 第四形態(イラスト:藤井英俊)
赤のスピリットカード
コスト:12(6)/系統:地竜
維持コスト&BP<1>Lv1 15000 <3>Lv2 20000 <6>Lv3 30000
Lv1・Lv2・Lv3『このスピリットのアタック時』
BPが合計15000までの相手のスピリットを好きなだけ破壊する。
Lv2・Lv3『相手のアタックステップ』
相手のスピリットがアタックしたとき、このスピリットのBP以下の相手のスピリット1体を破壊する。
Lv3
このスピリットは相手のブレイヴ/ネクサス/マジックの効果を受けない。
首都を突如襲ったシン・ゴジラが進化を繰り返し、たどり着いた姿。
体中から放射熱線を放ち、周囲を焼き払う。
<解説>
アタック時に合計BP15000までのユニットを好きなだけ破壊可能。相手がアタックした時にアタックしたスピリットを含め、自身のBP以下のスピリットを破壊。ブレイヴ、ネクサス、マジックの効果無視と劇中の暴れっぷりを再現したような効果が特徴。
余談
- 第2形態に見られたエラ自体は日本のゴジラとしては初めて(ギャレス版GODZILLAにも判りにくいがエラがある)だが、昭和ゴジラにもエラの機能を持つ孔が首にあるという設定があり、この時はいわば初代ゴジラからの「海棲爬虫類から陸上獣類への移行期」であるため、イクチオステガなどの両生類に近い性質を持ち、これに続く陸上生物の先祖と同じ形態をしているのである。なお、第2形態はファンからの呼称は一定していないが、pixivにおいては「蒲田のあいつ」タグが有力で、ネタバレ阻止にも一役買っている。
- 背びれはシリーズ史上初の5列になっている。これまでのゴジラは初代から一貫して背びれが3列であり、エメリッヒ版GODZILLAのデザイン雛型が東宝に公開された際も「背びれを3列にするように」という注文をするほどの伝統となっていた。ただし、メインとなる基本の背びれは従来通り3列とのことで、5列や7列に見えるのはランダムに配置された背びれによる効果が大きいという。
- 本作のゴジラはフルCGだが、第4形態については動きを取り入れるモーションアクターとしてあの劇場版『陰陽師』で主演も務めた狂言師・俳優の野村萬斎が当てられている。当初、第4形態のモーションについてもコンピュータで16パターン以上作成されたが、「生物感があり過ぎる」「神や幽霊のイメージを取り入れたい」との理由で全てボツになっている。
- 萬斎はゴジラのモーションアクターを担当するにあたって嘗て自身が演じた晴明の役作りや狂言の技能を最大限に発揮したらしく、ゴジラの歩き方には反閇を取り入れている。
- ゴジラの鳴き声は第3形態では初代ゴジラの、第4形態で2代目ゴジラの鳴き声が使われているが、ある重要なシーンでのみ一度だけ3代目ゴジラの鳴き声が使用されている。また紅白歌合戦とのコラボではミレゴジの鳴き声が使用された。
- ゴジラ第4形態の腕について、掌がちょうど「何かを抱えているかのように上を向いている」ため、広告のコラボでは「ポスターのゴジラが手に何かを抱えている」という趣向のネタが多い。なお劇中では手を使用するシーンは登場しなかった。
- なお、本作のゴジラが掌を上にしていることについて、中の人の野村萬斎は「能における神は掌を上にしている」と発言している。
- 本作はフルCG作品だが、実は大型のゴジラの上半身模型が存在しており、それを映したスチールが公開前に流出したことがある。この模型は実際の撮影も想定されておりワイヤー操作で姿勢を変えたり指や眼球なども動かしたりできる精巧なものだったが、結果としてフルCG撮影に絞られたことから没となっている。
- 上記の画像が流出した当時、そのグロテスクなデザインから「グロすぎる」「汚らしいだけで風格もない」など評価は否定的なものが多く見られ、ひいては映画そのものについても「80年代の特撮オタクが夢想していたようなリアル志向の、それこそオタクしか喜ばない映画になってしまうのではないか」と危惧する声も多かった。が、作品そのものの大ヒットによってこれは杞憂に終わった。
- 日本のゴジラとしては総合的に他の怪獣と戦わずに終わった初のゴジラとなっている(初代ゴジラは『ゴジラ×メガギラスG消滅作戦』にてメガギラスと戦っている為)。
- 『シン・ウルトラマン』に登場するゴメスはこのゴジラのCGモデルに手を加えたものになっており、見た目が非常によく似ている。これは、原典におけるゴメスの着ぐるみがゴジラの着ぐるみの改造であることへのオマージュである。
関連イラスト
関連項目
徳間ガメラ:「大怪獣空中決戦」の樋口氏によるコンテではプラズマ火球を吐く際には口が大きく裂けるという設定だった。とは言えこちらはあくまで顎の骨が微妙に外れるくらいの範囲。また、当時のギニョールには表情が近いものがある。
平成版ギャオス:一方のギャオスは「高い環境適応能力」「無性生殖による爆発的な増殖」が危惧されていた。ただしその進化サイクルおよび繁殖方法は全く別であるが
イデオン:無数の軌跡と共に放たれる体内放射線流の描写はイデオンの全方位ミサイルのそれに似ている。
巨神兵:ビーム状態の放射線流の描写がこれの陽子砲に近い。また、上記の通り第5形態にはこれを意識したと思しきデザインもある。
ゴジュラスギガ:ゴジラをモチーフにしたキャラクターであり、背鰭からビームを発射する点では先輩とも言える。